13 キーランの独り言
13 キーランの独り言
「もう、大丈夫よ。安心してね」この声に惹かれて意識が戻った。
死ねなかったのか……
だが、その声の持ち主の微笑みを見た時、世界がよみがえった。だが次の瞬間また暗闇に落ちた。
次に目が覚めたときはベッドに横になっていた。あの女性のことを考えた。
探しに行かないと……
すると彼女がやってきた。そして彼女は僕の世界のすべてになった。
それから毎日あの女性ミーナは、料理と共に見舞いにきてくれた。
そしてご近所の人が一緒にやって来た。
俺は、せいいっぱい愛想よくした。彼女以外どうでもいいと思っていることは秘密にしておいたほうがいいからな。
退院のときどこか行くあてはあるかと聞かれて、あてはないと答えた、するとうちにいらっしゃいと、言ってくれた。
身元がはっきりしない男を家にいれていいのかと聞いたら、三十八にもなったら大抵の若い男は息子と一緒でしょ。気にすることじゃないわと笑って言った。
三十八と息子のことがよくわからなかったので、医者に質問したら、ミーナの年の三十八にびっくりしていて年を聞いたことを褒められた。
そして、説明してくれた。
「単純なことだよ。ミーナはここに来てから二十年くらいかな? そのとき、子どもを産んだとして、二十歳の息子がいるってことだろ?きみの歳はそれくらいだろ? だからお母さんの年ってことだろ……しかし若いなぁ、まさか三十八とは。お母さんには見えないね」
彼女の近所の人とも仲良くなるように、どんどんお手伝いをした。
そして、お手伝いをしてお料理を教えてもらって、彼女に食べさせた。喜んでくれた。これからも近所の人も大切にしよう。
そんな、ある日、男が彼女を訪ねてきた。その男は彼女を脅迫していた。
俺はそいつを叩きのめした。それから機会をみて殺してやった。さきにのどを潰してやったから、外に悲鳴はもれなかった。
ゆっくり体を引き裂くとき、ミーナの苦しみが消えるような気がした。
しばらくすると女が来た。こいつも昔、ミーナを陥れたのだった。
こいつは、温泉の宿に泊まっていたので、忍び込んで、耳を切り落とした。
凄まじい悲鳴をあげた。すっきりした。
この女のことは、外部に漏れなかったようで、ミーナはなにも気づかなかった。
それはどうでもよい。ぼくはミーナのためにできることをやるだけだ。
ここで終わりとおもっていたら、あの女が現れた。下品な小娘だ。こともあろうにミーナに絡んだのだ。
こんな女は清らかなミーナの世界にいらない。どうにかして始末したいが、最近外に出て来ない。
まぁ、機会は必ず、巡って来る。あせらずに待とう。
そして、不穏なやつがまた現れた。河原でミーナと過ごしていると嫌な視線をミーナに向けたやつがいる。
ミーナが気が付かなかったが、明らかにミーナに執着している視線だった。
だから、ミーナと離れたくなかったが、近所の家の屋根裏になにかが入り込んだとかで呼ばれた。
その間にそいつがやって来たようだった。ミーナがおかしくなった、随分と気にしているし、俺に話そうとしない、隠している。ダメだ……一人で抱え込むな! きつく問いただしたい。
ミーナが寝ている間にそいつが置いていったカードを探し出した。
さっそく見に行ったら、そいつと来たら……とんでもない趣味を持っていた。
だが、利用できる。
さっそく、エミリーを呼び出した。お誘いの手紙を書いた。
あの女は、おしゃれしてネルフの部屋を訪ねた。
ネルフのやつ娼婦だと思ったようで大歓迎で部屋にいれた。だって娼婦のメグはそのときもう死んでいたからな。
それから、俺は部屋に侵入した。
ネルフと目が合った瞬間、奇妙な感覚が走った。
一瞬だけ、自分の知らない部屋が見えた。
豪奢な屋敷。
王宮の廊下。
震える少女。
誰かの笑い声。
……次の瞬間には消えていた。
気のせいかと思った。
だが、ネルフは、俺を見て満足そうに笑った。
一瞬で、お互いの奥底が触れ合ったようだった。
俺たちは同類だ。
後学の為に見学したいと言ったら快く見学させてくれた。
エミリーのことは本気で娼婦だと思っていたみたいで、いろいろ教えてくれた。
それから今度は、今教えてもらった通りのことをネルフにやった。
ネルフには昔を思い出してもらうという大事な使命があるので、俺も熱が入ったかも知れない。
婚約破棄とか、断罪とか、誰が企んだか? 誰が得したか? その頃のミーナのこと、まわりのこと。あの頃の全てを教えてもらった。
かなり積極的に教えてくれるようになったが、体が弱って死んでしまった。
そのあと、多方面にこの事実を広めた。たいしたことではない。手紙を書いただけだ。
王宮の発表はあたりさわりがなかった。
温泉で休養していた宰相が事故で死んだとだけ。
娼館からはかなり正確なことが漏れたが、おおやけでない分、実際よりひどい話になっていた。
メグには気の毒だったが、遺族には補償がされたので許してもらいたい。
ミーナは一般的な発表しか知らないようだったが、時々考え込むようになった。
そんなときぼくはミーナの好きなお菓子を焼いたり、遠乗りに誘って気分をかえてもらうようにしている。
今もぼくは、最近王都から進出してきたお菓子と新しい本を買って家に戻っているところだ。
多分ミーナは今頃、庭の日差しがまぶしくて家に戻った頃だろう。気が付くと足が速くなっている。
家はすぐそこだ。




