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庶民の暮らしを見て周ろう

 そうそう。お決まりといえばお決まりだけど、女王のお仕事と言ったらアレよね。アレ。

「ねぇ、今日の午後は割とスケジュールに余裕があったわよね。私からのお願いなんだけど、国民の皆がどんな暮らしをしているか実際に見てみたいわ」

「な、な、なんと! 突然のお申し出で驚きましたが、大変嬉しゅうございます!」

「データだけじゃなくて、いざ自分の目で見てみないことには、良い国政を執れないってものよね」

 お城ばかりにいるのも窮屈だし、たまにはローズウィンド王国の広いところへ足を下ろしてみたいわ。

 そうして今日は午後から城下街へ向かうことに。


「良いですか、リーデ様。今回はお忍びでございますよ、お忍び。突如女王がお出ましにともなれば、混乱を招きかねませんからね」

「それはもう十分聞いたわ。あくまで見て周るだけということもね」

「リーデ様は貴族で侯爵夫人のリリィ様、私めは執事のセバスチャンという手筈でございます。普段女王をなされておられるリーデ様では隠しきれぬオーラがあるかもしれませぬが……」

「まぁ、何食わぬ顔で見て周ればいいだけだと思うのだけど……一応覚えておくわ」

 それにしても、執事でセバスチャンって……ナビビったら、もうちょっと他になかったのかしら……

 そうこうしているうちに、馬車が城下街に近付いてきた。

 お城の中も勿論そうだったけど、お城の外も薔薇のいい香り。そこら中にお花だらけだわ。


「さぁ、この辺で馬車を停めましょうか」

「なかなか活気があっていい街ね。皆楽しそうにお仕事して暮らしているわ」

「訊きやすそうなどこかで直接伺ってみましょう」

 いい薫りが漂ってるパン屋さんにも入ってみたい。たくさんの物が売っていそうな雑貨屋さんにも入ってみたい。そんなの決められそうにないじゃない。

「ねぇ、私も買い物してみたいわ……ダメかしら?」

「な、な、なんという……! そのようなお願いは全くの想定外でございまして、申し訳ないことに手持ちが一切ございません」

「えっ、王族……じゃなかった、貴族なのにお金を持って来てないとでも? ダメねぇ」

「面目無いことでございます。しかしリー……リリィ様、本題をお忘れではないでしょう?」

「分かってるわよ、ちょっと言ってみただけ」

 そうよね、だってリーデじゃなかったら……佐久間すみれだったら普通に街で買い物なんて出来るものね。なんとなくリーデでやってみたいなって思ってみただけ。

 リーデは買い物すら出来ないなんて可哀想だなぁ。


 お店に入ると買い物欲が出てきそうだったから、城下街の大通りでのんびりしながら誰かを待つことに。

 すぐ近くを、小さな女の子とその母親が通りかかって。

「きゃー、ママのいじわるー」

「お約束守れないのがいけないのよ。さぁ、早くおうちへ帰りましょう」

 急いでいる親子かしら。でもなんとなく話し掛けやすそうに見えて、どうしようかと思うより先に言葉が……

「あの、もし。少々よろしいでしょうか?」

「お貴族様ではないですか。何かお困りでしょうか?」

 あ、しまった。道に迷っているように見えてしまったかしら……

「た、確かに……ちょっと道に迷ってしまっている気もしますけど。そうではなくて、あの。ここでの、この国での生活は楽しいですか?」

「フフッ、面白いことをお訊きになるのですね。そんなこと、ここに暮らす子供達の笑顔が全てですわ。子供も大人も、皆この国が大好きです。王室の存在も大きいですね。王族の方達が昔からずっと質素倹約で、お国のことを考えていて下さるからこそ、私達もしっかり納税してお応えしようと頑張っていますわ」

「まぁ……! す、素晴らしい王族の方達ですのね」

 思わず他人事で喋ってしまったけれど、しまった、貴族って王族と直接の関わりばかりだったような……

「……? 変なお貴族様ですね。お城で女王様にお会いすることがありましたら、国民は皆幸せですよとよろしくお伝え下さいませね」

「マーマー、お話終わったぁ?」

「こらっ! あ、ではすみません、この辺でお暇致しますがよろしいでしょうか」

「よ、呼び止めてしまってごめんなさい。ありがとうございました」


 何だかこの国って凄いのね。王族貴族なんていうものは普通偉そうにしてて、庶民から嫌われてるものとばかり思っていたけれど。

 帰りの馬車の中では、晴れやかな、けどちょっと少しムズムズするような、そんな心持ちだった。

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