091.爺、ドラゴン肉祭りじゃぁぁぁっ!
ドラゴンの巨体を魔術陣にて浮かせつつ、なんとか村へと辿り着いたのじゃがの、出迎えたラセヨツラ様がドラゴンを見て驚喜されておるわい。
どうやら、それほどの食材であったようじゃての。
いや驚喜されておるのはゼルフト様もかえ?
なぜじゃろか?鍛冶には関係ないと思うのじゃがのぅ?
不思議に思うて尋ねてみるとじゃ…
「なにを言うておるのじゃっ!
ドラゴン素材から武具を造るのは鍛冶師の夢じゃぞいっ!
強い上に巨大なドラゴンの素材は手に入り難い品でな、儂も扱ったのは数度ほど。
これだけの素材を目にできようとは…」
いたく感動されておられるようだて。
まぁ、ダリル様とカンム様は嬉々としてブラストドラゴンと戦うておったようじゃがの、普通は相対せずに逃げ出すものらしいでのぅ。
儂も本当ならば逃げておったであろうて…最下級のドラゴンと言うても相手はドラゴンゆえに、その強さは格別じゃてな。
そしての、その巨体が、そもそも問題なのじゃて。
ドラゴンが生息する地は、そもそも秘境と呼ばれるような地でな、道などが整っておる筈もない。
そのような地にて討伐ができたとして、どのようにして運ぶと?
人の力では、てもではないが持ち上がらぬぞい。
解体するにも、どれほどの時を有することになるやら…
むろん、そのような地が安全な筈もないゆえ、ドラゴンの屍に釣られて現れる獣や魔獣に魔物…解体どころの騒ぎではあるまいてな。
現に、儂が魔術陣を刻んでおる間にも魔獣や魔物の襲撃があったでのぅ。
ま、ダリル様とカンム様が嬉々として討伐しておられたが…あの、お2人の体力はどがぁなっておるんかいのぅ?
途中で儂が持っておった干し肉なんぞを齧りつつ楽しげに蹂躙しておったわい。
そしての、本来ならば解体した代物を複数に分けて運ぼうと試みたとしてじゃ、見張りを残さねば残りの品は集まった魔獣らに貪られてしまうじゃろうて。
とは言え、巨大過ぎるゆえ、解体せねば持ち運びなんどはのぅ。
つまり、儂が施したような魔術陣を用いた搬送でもない限りは、限られた素材しか搬送不可能ということじゃて。
村の広場へと運び込んだブラストドラゴンへと人々がワラワラと群がるようにの。
皆で解体を行っておるが…流石に儂は疲れたでのぅ、一休みさせて貰うことに…えっ、駄目?さいですか、とほほほほ。
儂も解体に強制参加させられ解体を進めることにの。
いやの、部位により用途が異なるそうでな、解体の仕方にて品質も代わるのだとか。
その解体の仕方を学ぶ良い機会とかでな、教わりつつ解体を…
いや、その、な…ラセヨツラ様は食材として、ゼルフト様は武具素材として、ゼルダ婆様は薬材として、セルフィス様は魔導具素材として…
それぞれが、それぞれに合った解体の指示をのぅ…
これこれ、喧嘩せんでくださいやっ!
まぁ、物が巨大ゆえに、それぞれの素材が得られた訳じゃがの、人の欲望にはキリがないゆえに揉めるわ揉める、ほんに困ったものじゃて、ふぅ。
そんな解体騒ぎが収まった後…儂の処遇にて、また揉め始めておるぞい。
困った人達じゃてのぅ。
結局はラセヨツラ様の元にて調理修行と決まり厨房へとの。
なにせ功労者であるダリル様とカンム様のご要望では致し方あるまいての。
早く食わせろとのご所望には抗えなんだようだて。
そしての、ドラゴン食材にて色々と調理した訳じゃが…ふむ、これが…ドラゴンの…な、なんじゃぁ…これ。
儂も賄いにて食した訳なのじゃがの、なんとも美味い、いや、美味いの一言で片付けて良いのかえ?
リアル世界での生涯を振り返って考えてものぅ、これ程の美味には出会うたことがないぞぇ。
まぁ、しがないサラリーマン程度が食した品しかないゆえに、儂が知らぬだけであったやもしれぬがな。
ダリル様やカンム様が、ただ焼いただけでも美味いと言われておっただけはあるのぅ。
そけを儂とラセヨツラ様が手を加えたのじゃて、それはもう甘露と言うべき仕上がりじゃったわい。
しかし…最下級のドラゴンにてこの味じゃとしたら…上位クラスのドラゴンの味は…じゅる。
いや、それは命懸けじゃてのぅ…ふむ…じゅるり。
思わず葛藤してしまう程の味じゃったわえ、じゅるり。
食事を終えて、ようやく一休みとのぅ。
そのさいに騎士隊長殿から驚くべきことをの。
「ユウ殿、実はですな、今後の方針について皇都へと問い合わせております。
ですので、しばらくはここへ留まることに決まりました」っとの。
いやの、ここまでの旅でも魔獣や魔物が跋扈しておる異常事態に加え、この度の騒ぎじゃ。
自国でも、この騒ぎじゃのに他国へと赴くのはいかがかと、そのようにのぅ。
実はの、数百年に一度ほど地脈や龍脈、天脈や鳳脈などの星脈が活性化することがの。
この影響にて獣の魔獣化が促進される事態が発生するらしいのじゃよ。
魔物が世に放たれてからは、魔物の強さが上がるは繁殖力が増加されるわで、非常に危険となるそうな。
その活性化時期が、どうやら今年ではないかと…いや、マジで?
今の所は懸念に過ぎぬそうなのじゃがの、その恐れがある時期に旅を行う必要もなかろうと…
まぁ、そのようなことならば、無理に危険を冒さぬでものぅ。
ゆえに、今後の方針を皇都へと問い合わせておるそうな。
ならばしばらく、ゆるりと…
「なれば、色々と修行ができようぞ」っとダリル様。
「がはははははっ、槍刀稽古を存分にのぅ」ってカンム様が。
いや、他の方々も実に良い笑顔にて…ふぅ、儂の余暇なんぞはないと?ぐすん。




