092.爺、帰りましょうぞい。
晶石産地に留まり修行漬けの日々を送っておった儂にの、朗報が齎されたぞい。
なんと、皇都への帰還となったのじゃ。
皇都への連絡には魔鳥を用いた伝書魔鳥にて迅速に行われたそうな。
複数の魔鳥を放ち連絡を行うそうでの、これは道中の危険を鑑みて無事に辿り着けぬ場合のリスクを考慮してとのことじゃった。
やはり道中の危険が増しておることが帰還の原因らしいわえ。
いや、セルフィス様によるとの、それだけのことではないらしいのじゃが…
「アナタの有用性から鑑みて、他国へと向かわすリスクを犯すのを忌避したのでしょう。
なにせ、今のアナタは機密の固まりに近いのですから…」
そのようなことをのぅ。
はて、何のことやらっと思うておったらのぅ、呆れたように告げられてしもうたわえ。
「まずアナタは様々な魔導具、特に空間拡張と軽量化を施すことが可能。
これだけでも大した技術ですが…ゼルダ様と共に開発しているポーションでしたか?
あれほどの画期的な品は他には聞きませぬ。
さらに独自に人工晶石を造り上げる技術を得ていますよね?
そして…全属性を人工晶石へと付与できるのはアナタだけ。
これなしにしてポーション開発は有り得ぬらしいてではないですか。
しかも治癒術まで扱える人材となっては国外に危なくて出せませんよ。
他国に知られでもしたら皇国に帰って来れる保証などないでしょう」
そんなことをのぅ。
「ふむ、儂の観点から言うても、強力な武具精製を成せる者は稀少ゆえに囲い込みが激しいものじゃて。
こたびはダリル殿に着いて来たゆえに同行できたのじゃが…そもそも儂は国外へは出ぬつもりであったからの。
皇国では割と自由にさせて貰っておるが、他国では囲い込みされて身動きもできぬありさまでのぅ。
なんとか抜け出して、この国へと到ってはおるが…
うむ、もう不自由な暮らしは真っ平じゃて」
ゼルフト様が、うむうむと頷きつつのぅ。
「むろん、私もラセヨツラも国外には同行しない予定でした。
ゼルダ様も国内までですね。
己の身を完全に守れぬ者が安易に他国へ赴くのは危険を伴います。
特に有用な術を身に付けた者は他国にとって垂涎の的ですからねぇ。
国内であっても不貞の輩は潜んでおりますから安易に出掛けられないのです。
この度は騎士団とダリル様が同行されることもあり、私も久々に皇都を離れることができたのですよ。
やはり身を守る術は必要ですね。
アナタはある程度は身を守る術を得てはいますが…今のように機密の固まりのようになってはねぇ」
いや、セルフィス様…そがぁに困ったように告げられんでものぅ…
しかし厄介なことになったものよ。
いずれは気儘な1人旅なんぞと思っておったのじゃがの、下手に皇国を出たら拉致監禁の恐れが付き纏うことに…
いや、儂のことが知られているとは限らぬのでは?などと甘いことを告げると鼻で笑われてもしうたわえ。
他国の間者にて儂の情報なんぞは当の昔に他国へとのぅ。
そのことはの、皇国の間者が他国にて知り知らせて来ておるそうな。
スパイ合戦かえ…まるで物語の世界のようじゃわい。
いや、この世界はゲーム世界じゃったかえ?…いや、正確には仮想環境シミュレーターにて構築された世界かえ。
リアルでは既に身罷った身である儂の葬儀は滞りなく済んでしもうておるのでのぅ。
一時的に世界最高齢となった儂の葬儀へ参列した者の中には政府役人の姿もあったそうな。
いや、世界最高齢となった者としてもじゃ政府役人が何ゆえ列席となったのか…
マスコミにて騒がれる嵌めにのぅ。
っか、ゲーム会社の社長殿が列席したのも話題にの。
どうして、そのような迂闊な真似をするのじゃっ!
GMとの遣り取りにて知って呆れてしもうたわえ。
まぁ、今の所は儂の存在は世に知られてはおらぬがのぅ。
そうそう、GMとの遣り取りを通じての、仮想環境から外の世界へのアクセスを試みる魔導具開発に着手しておるのじゃよ。
やはりリアル世界での情報は有用じゃての、なんとか外のネット環境へとアクセスできぬかと、そう思っておるのじゃ。
中々に苦戦しておるのじゃが、GMと対話する際の絡繰はある程度把握したでな、不可能ではないぞい。
ま、GM連中に悟られぬように行う、これが厳しい!
ゆえに、遅々として進んでおらぬのが現状じゃのぅ。
後、苦戦しておるのが時を操る術を構築することじゃが…
こちらは理論だけは構築できておるのじゃがの、発動せぬのじゃよ、ぐぬぬぬぬぬっ。
なにが悪いのじゃろうかのぅ?
まぁ兎に角、明日には皇都へ向けて出発と決まったゆえ修行漬けの日々とは…えっ?道中で?さいですか…
まぁ、ダリル様とカンム様に連れられて晶石産地内へ赴くことはなくなるわけでのぅ。
これだけでも助かるわえ。
流石にドラゴンクラスは現れなんだのじゃが、それでも膨大な魔獣や魔物を狩ることにの。
あれを修行の1言で済ますのは勘弁して頂きたいものじゃてのぅ。
っと言ってもじゃ、皇都へと帰る道中も魔獣が以前より増えておるそうな。
ゆえに退屈はせぬとか…いや、それは退屈で良いのでですがのぅ…駄目ですかいの?




