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088.爺、帰りたいのじゃが…駄目ですかいのぅ?

なんとか魔物と魔獣の溜まり場と化した場所の討伐を終えることができたわえ。

皆が一安心しておる間にの、儂は皆を癒していくぞい。

しかしのぅ、魔術にて癒すよりも神術にて癒す方が効果が高いゆえ助かるわえ。


魔術でも確かに癒せようがのぅ、あちらは魔那を制御しつつ傷の補修だてな。

神術は癒す意思を持って発動すれば、勝手に癒してくれるのじゃよ。

ゆえに術を行使する儂に対する負担は軽いと言えるのぅ。


まぁ…絡繰が分らぬ不思議現象ゆえ、少々もやもやするが…ま、仮想現実内であると納得しておくわえ。


「中々楽しめたであるが…」

「ふむ、少々ばかり、異常であるな」


いや、お2人とも…十分に異常ですからのっ!


ダリル様とカンム様は様々な魔物と魔獣を屠れてご満悦と言った感じでな。

この状態にて戦いを楽しまれると言うのは流石と言うか、なんと言うか…戦闘狂共めっ!


そんな中、考え込んでいた騎士隊長がのぅ。

「これは…ガナン大渓谷にて異変が起きているのかもしれませんな…」などとな。


ガナン大渓谷?皇国に、そのような場所があったかえ?

儂が不思議そうに騎士隊長を見やるとじゃ、儂の視線を感じたのか説明をのぅ。


「ガナン大渓谷は隣国にある魔境と呼ばれる地ですな。

 こちらにも数箇所存在いたしますが、そうですな、森林地帯奥地も該当しましょうか。

 あのような地には多くの魔物や魔獣が巣食っております。


 そこで異変が起こり、巣食っていた物がこちら側へと移動して来たと考えれば、あるいは…」


流石に他国の地理までは把握しておらなんだのじゃがのぅ。

彼が言うには、ここの晶石産地と隣接しておる形にて存在する魔境らしいわえ。


こちらは魔那が結晶化した魔那結晶である晶石が生み出されておるゆえに魔素溜まりは発生してはおらぬ。

この晶石化する絡繰は解析されてはおらぬのじゃが、晶石化せねば、ここも魔境と化しておったじゃろうわえ。


逆に晶石が生み出される仕組みが解明されれば、魔境と呼ばれる地を駆逐かのうやもしれぬわえ。

ま、人の手には余るとは思うがのぅ…


「しかしのぅ、隣国の地が原因じゃとしたら、儂らにて打つ手はなかろうて」

困ったように告げる儂に騎士隊長も同意をな。


「ふむ、確かに国同士の話となれば、某達が立ち入るべきではあるまい」

ダリル様が不満気にのぅ。

いや、あれだけ(たたこ)うたのじゃから十分であろうにのぅ、まったく、この方は…


「兎に角ですじゃ、目的は達しておりますでのぅ。

 もう帰りましょうぞ」


そう提案するとな、渋々とお2人が頷かれたわえ。

どんだけ戦いたいのじゃっ!


討伐した魔物や魔獣を集め袋へと収納するだけて一仕事じゃったわえ。

解体?そんなんしておったら、何時までかかるか分ったものではないぞえ。

それほどに大量討伐であったと言うことでもあるのじゃがのぅ。


しかし…用意しておいた袋全てを使うことになろうとはのぅ。

それでも回収できずに破棄したのも多いでな。


とりあえずは地へと埋める前に魔術で焼き切り灰と化してから埋めはしたのじゃが…問題はないよのぅ?


この度は儂らが討伐したゆえ、一端は沈静化したであろうがな。

これが本当に隣国の魔境たるガナン大渓谷より流れて来ておることが原因であれば、一時凌ぎにすぎまいてな。


儂らとしては別件にて立ち入ったに過ぎぬゆえ、義務ではないでのぅ。

厄介ごとに巻き込まれる前に撤退じゃて。


そう考え撤収を開始した儂らであったのじゃがのぅ…どうも無事には帰して貰えぬようじゃわい。


「な、なにゆえ…ブラストドラゴンが!?」

騎士隊長が掠れた声で呟く。


い、いや…ドラゴン種の最下級に過ぎぬ地竜が、なにゆえここに?

最下級とは言え、人の手には余る代物じゃてな。


直ぐにでも撤退…こ、これ、ダリル様?いやさカンム様もかえ。

何故に嬉々として得物を抜いておられるのじゃ?

今にも突撃する様相を醸し出しておられますがのぅ…まさか、のぅ?


「おい、カンム」「うむ」「久々の竜種…楽しみよのぅ」「ああ、堪らぬわ」


獰猛な笑みを湛えて…竜種に向けて走り出さんでいただけんかえっ!

ああ、もうっ!


「騎士達は撤退ねがいますぞっ!」

「ユウ殿は!?」


「放ってはおけませぬわえっ!

 じゃが…あまりに危険極まりますゆえ、貴殿らは撤退をっ!」


己が力量は把握しておるのであろう。

参戦すれば足手纏いにしかならぬ、いや、かえって庇えば危険じゃてな。

それが分っておる彼らは悔しげに撤退をの。


いや、儂も帰ってよろしいかえ?

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