074.爺、後は任せたぞぃ。
キルトと呼ばれた少年が仰天しておるのじゃがな、童子2人はそんなキルト少年を見てキョトンとしておるわえ。
「そんなに凄いんかぁ?」
「そうなんかぁ?」
「さぁ?」
などとのぅ。
まぁ、元々術者が少ないゆえに術で癒すと言う凄さは知られてはおらぬ。
特に幼子で術にて癒す凄さに気付くと言うことは、かなり物知りな部類と言えるであろうな。
キルト少年は、ひょろりと青っチョロイ感じのひ弱少年じゃがのぅ、代わりに頭は良いのであろうよ。
逆に倒れておるジュゾと呼ばれた少年は大柄で筋肉質の少年じゃな。
こちらが頭が良いかは分らぬが、少なくとも、ひ弱と言うことはなかろうて。
それはそれとしてじゃ。
「キルトと言うのかえ」っと、キルト少年に話しかけるとな。
「えっ、どうして僕の…あっ、タットが僕の名を呼んでましたね。
ええっとぉ、助けてくれてありがとです。
で、なんでしょうか?」
畏まったように応対をのぅ、真面目な性格が出ておるわえ。
「うむ、村へ戻って衛兵を呼んで来て欲しいのじゃよ。
コボルトを始末してしまいたいのじゃがのぅ、現場を衛兵に見せた方が良いと思うてな。
儂が呼びに行くと、おぬしらの誰かが残らねばなるまい。
それじゃとな、何時なんどき獣なんぞが現れるか分らぬここへ残ることになるでな。
安全とは言えぬ場所じゃて、それは悪手じゃろうて。
ゆえに、おぬしに衛兵を呼びに行って貰いたいのじゃよ。
できたら幼子達も連れ戻ってくれぬかえ。
ジュゾ少年は儂が見ておるでな」
そう告げると、キルト少年はしばし考えた後で了承してくれたぞえ。
まぁ、キルト少年ではジュゾ少年を抱えて、いや背負っても移動は無理であろう。
じゃがの、気を失のうた幼女ならば背負って戻るていどならば可能であろうからのぅ。
一応はコボルトの群れを斃しはしたものの、他にも魔物が居らぬとは言えぬ。
そして獣や魔獣は魔物よりも現れる確率は高いのじゃ。
そのような場所へ、何時までも幼子を居らすわけにもいかぬでな。
キルト少年も、そのことには気付いておるようでな。
「分りました、早めに衛兵を呼んで来ます」
そう生真面目な顔で告げて一礼をの。
その後は、儂が手伝うて幼女をキルト少年に背負わせて童子達と村へと戻らせたぞい。
残るはジュゾ少年だけじゃがのぅ、未だに意識は戻らぬわえ。
キルト少年達が去るとの、儂はコボルトの以外を一箇所に纏めてから辺りの警戒をのぅ。
いやな、獣の気配…いや、魔力の濃さから魔獣やもしれぬ存在の気配をのぅ。
なにせコボルトを屠った血臭が漂っておってのぅ、この臭いが獣を引き寄せておるのやもしれぬわえ。
儂は魔術にて風を起こし血臭を散らしておいたぞい。
多少は効果はあったとは思うのじゃがのぅ。
じゃがのぅ、コボルトの死骸より漂う死臭なんぞも微かに漂っておろうからのぅ。
その臭いに釣られる獣なんぞが現れるかもしれぬわえ。
辺りを警戒しつつ背嚢より弓矢を取り出しておくぞい。
いつでも射れるように準備を整えつつ警戒を緩めぬようにな。
そうこうしておるとな、キルト少年が数人の衛兵を伴い現れたのじゃ。
いや、衛兵を呼んでくれとは言ったがのぅ、まさか衛兵を連れて戻って来るとは想定外じったわえ。
村の領主の兵である衛兵が儂の元へと近寄って来たわえ。
「これは…アナタ1人にて?」っとの。
「うむ、このていどならばの、1人で十分じゃてな。
それよりもじゃ、コヤツらは少々痩せ過ぎておるようでな。
ここら辺に現れるのも有り得ぬことじゃと思われるぞい。
なにか異変が起きておるやもしれぬでな、少年にぬしらを呼んで貰うたのじゃよ」
儂が告げるとな、衛兵の1人がコボルトを検分して告げる。
「確かに、痩せ過ぎと言えますな。
コボルトは森林地帯奥へ住まう魔物として知られております。
森林地帯の外へ現れたこともあると聞いたことはありますが…流石にここら辺には現れたことはなかったのです。
そう考えると、何やら異変が起こっているのかもしれませんなぁ」
検分を終えて、考え込んでおった衛兵が呟くように告げておるのぅ。
「お知らせいただき感謝いたします。
して頼みたいことがございまして…」
「コボルトの遺骸かえ?」っと儂が促すとのぅ。
「はっ!その通りでございます。
遺骸を持ち帰り報告したく。
証拠を提示した方が話しもスムーズに進みますゆえ」
まぁ、そうじゃろな。
儂は別にコボルトの素材なんどには未練もないゆえ、快く譲ることにのぅ。
っと言うかじゃ、これらの調査なんぞに巻き込まれては堪らぬからな。
後始末は任せたいものよのぅ。




