073.爺、クライマックス!なのかえ?
少々急いではおるが、儂が感じた感じでは、さほど危険な存在とは思えぬ。
じゃがの、子供達にとっては荷が重い可能性もあるでな。
「なんだぁ、なんでぇ、なんなんだよぉっ!」
「ひぇっっ、びぇぇぇん、おがぁじぁぁんっ!」
「きゃぁぁぁっ、いやぁぁぁぁっ、来ないでぇぇぇっ!」
いや、思った以上の阿鼻叫喚状態なのかえ?
慌てて駆け付ける速度を上げるぞぃ、いったい何が起こったと言うのじゃえ?
茂みを抜けると子供達の姿が見えたのじゃがな、儂にとっては雑魚でしかないコボルトの一団がのぅ。
6匹ていどであろうかえ。
儂にとっては取るに足らぬ手合いではあるのじゃが、子供達にとっては手に負えぬ相手であろう。
年長の少年1人が鉤爪の付いた手で引っ掛かれ倒れておるな。
息はあり致命傷ではないようじゃが、浅い傷ではないようじゃぞぃ。
もう1人いた年長者である少年が震えながら3人の子供達を守るようにのぅ。
うむ、感心なことじゃが…行動に力量がのぅ。
コボルトが噛み付こうとしておる!
この距離では間に合わぬわいっ!
慌てて手甲に仕込んでおいた金属飛礫を取り出し、くだんのコボルトへと放つぞい。
円錐形を2つ底辺で土台に付けたような形の飛礫でな、土台へと接しておらぬ外周部にはギザギザの反しが付いておる代物じゃ。
咄嗟ではあるのじゃが、練った魔力と氣を帯びた飛礫は弾丸以上の速さでコボルトの目を射抜くでな。
「グキャァァァンッ」っと断末魔を放ち、ドッと倒れるコボルト。
脳にでも達したかえ?
儂は駆け寄りつつ次々と飛礫を放っていくぞぃ。
魔術では放つのに少々時間がのぅ…あまりにも子供達に接近し過ぎじゃわいっ!
じゃが足止めていどなれば飛礫で十分じゃてな。
放った飛礫が次々とコボルトを襲う。
1匹目のように急所へとは行かぬがの、手足や胴体に接した飛礫は肉を抉り潜り込むでな。
そして反しが潜り込んだ飛礫を肉の中へと取り込ませ抜けること能わぬわい。
弱者である子供達を弄っておったキャツらはのぅ、急襲を受けて混乱しておる。
その間に子供達の前へと出た儂が抜き打ちに刀で次々と切り伏せたぞい。
いやな、儂からしたら瞬時に屠ることが可能な輩でしか過ぎぬでのぅ。
容易く討伐を終えてしもうたわえ。
しかし…このような村近くにまでコボルトが現れるのは、ちと問題ではあるまいかえ?
儂が知っておる限りでは、コボルトは森林地帯の奥に生息しておると聞き及んでおるのじゃ。
浅い場所でも、たまには見かけるとのことなのじゃが、森林地帯の外へは滅多に出ぬとな。
このような森林地帯から離れた場所に、何ゆえコボルトが現れておるのじゃ?
まぁ、そのようなことよりもじゃ、倒れておる少年の怪我を治すのが先じゃてのぅ。
「ジュゾ、ジュゾぉっ、シッカリしてくれよぉ~」
半泣きで倒れた少年の肩を、もう1人の少年がゆすっておる。
いや、それは悪手だてのぅ、怪我人や病人をゆするではないわえ。
「これこれ、無闇に怪我人をゆすってならぬぞぇ。
悪化するでのぅ」
呆れて告げつつ怪我をした少年の下へな。
うむ、前面を鉤爪にてバッサリかえ…逃げずに皆を守った勲章とも言えるが、無謀者の証でもあろうな。
「にっちゃ、ジュゾ、大丈夫け?」っと半泣きで問うて来るわえ。
「うむ、大丈夫じゃ、任せておけ」そう請け負ってやる。
儂は魔術で…いや神術にしておこうかえ。
なにやら不穏な気配を感じたでのぅ…ふぅ。
魔術に比べ慣れてはおらぬ神術ではあるがな、この程度の傷であれば容易く癒すことが可能じゃてな。
ただ…恐るべきことに神術は欠けた肉体はむろん、失うた血まで補うてくれるでな。
本当に癒すと言う意味では神術の方が遥かに優れておると言えるであろうよ。
守られておった3人の童達なのじゃがな、幼女は安心したのか気を失うてしもうておるわえ。
2人の童子が幼女を心配して見ておるのぅ。
いや、それは見ておるだけで看病とは言わんのだぞい?
倒れておった少年の傷は瞬く間に完治し、今は眠っておるな。
「ひ、ひぇぇぇっ!傷がぁ、怪我がぁぁっ!?」っと仰天して悲鳴をのぅ。
いや、驚いたとは言え五月蝿いわえっ!
「キルト兄ぃ!ジュゾ兄者が、どうかなったんかぁっ!?」
「ジュゾ兄、死んだ?」
いや、勝手に殺すでないわっ!
「これこれ、単に傷を癒しただけであろうが、大袈裟じゃぞい」っと告げて頬を掻いておるとな。
「な、なんで癒せるので?」っと、恐る恐るのぅ。
そう言えばじゃ、魔術師も神術使いも稀有な存在じゃったかえ?
最近は身近に多過ぎるゆえ、失念しておったわい。
まぁ、儂自身が両方兼ねておったりするでな、はははっ。




