-枯れない花の言い伝い-20
藍色の空へと傾き始めた頃に港町、アクト・レイスの船着き場に着くとナルは船を直す準備を始めていた。
「家まで帰れそうか?何なら家に泊まってってもいいけど」
身体が動くかどうか確かめてみる。
立ち上がって足にも体重をかけてみると多少ふらつくけど歩けない程ではなかった。
「ありがとう。でも、もう大丈夫だ。何とか帰れそう」
「そっか。アオ、こいつが無理しないように見張っといてくれよ」
「うん、任せて~」
「今日は僕達の為にありがとうございました」
「おう。また、いつでも船に乗りに来い」
船から降りてナルと別れた。
「結局、虹陽花ってどんなんだった?ちゃんと見てなかったから気になったけど…」
「これだよ。陽の光が当たるようになってから生き返ったんだ」
何でも出て来るナツキの本から取り出された虹陽花はケースに入っていた。
見せてもらった虹陽花は花びらの色が一枚一枚違っていて、水もかかっていないのに夕陽の光に反射して輝いている。
重なる花びらの位置によって違う色が見えていた。
「このままお城まで行かないとだけど、本当に駄目そうなら隠さず言ってね?」
「だから、大丈夫だって。無理はしないから」
ふらつく身体をアオイとゼロが支えてくれていたお陰で躓いたりして倒れる事は無かった。
「あ!母さんにあげるお土産買ってない!……どうしよ」
「…はぁ。しょうがないから代わりに買ってきてやる。何でもいいだろ?」
「いいの?なら、来た時に見た泳いでた魚がいい!」
「ん…?あー…。うん?……何でもいいか」
魚の種類を覚えていないらしく適当な魚を買いに行ってしまった。
持って帰って来たのは全然色と形が違ったけどゼロは喜んでいたから結局は何でもよかったみたいだ。
アルーナウェントに着くと真っ先にお城へと向かう。
戻って来るまでには殆ど身体の状態もよくなってきていた。
アルーナウェントのお城の中はナツキのお城とはまた雰囲気が違い、両端に分かれている階段を上った先にある謁見の場で皇帝に直接虹陽花を渡すと代わりに受け取った報酬の金額が多くて驚いた。
お辞儀をして謁見の場から出るとギルドへ向かってギルドカードを受け取った。
「ボク、家に帰りたいんだけど…誰か連れて行ってくれない?独りじゃ辿り着けそうにない…」
「それだったら僕とハルで連れて行くよ。アオちゃん一人でジュンを連れて行ける?」
「寮も近いから問題はない、かな!」
「いや、もうちゃんと歩けるから…」
「それでも駄目~」
意地でも連れて行こうとするアオイに引っ張られてナツキ達と別れてそれぞれの寮に戻る。
俺の寮まで来ると今度は俺が送り届けないといけなくなるから結局アオイとは女子寮前で別れた。
隣のナツキ達が戻って来てもゼロは戻って来なかったから今日は家で過ごすのだろう。
久し振りの独りの部屋は静かすぎて何処か落ち着かなかった。




