↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/65

第四十一話 毒蛇の這い寄る夜

エテルとディアナが二人寄り添い、穏やかな眠りに落ちている王太子宮の静寂とは対照的に、第一教会の西の蔵では、不穏な灯火が揺れていた。

「……おかしいわ。絶対におかしい!」

オーレリアンは、取り憑かれたような手つきで埃を被った古文書を読み漁っていた。

先日のリヴァベラ王妃との茶会後、耳にした侍女たちの噂話が、彼女の誇り高い自尊心をズタズタに切り裂いていた。

『王太子殿下と専属聖女のディアナ様、ただならぬご関係よね。常に手を繋いでいるし、どこへ行くにも殿下が付き添ってるわ……』

『私も見た! でもディアナ様、分け隔てなく人を助けてくれる良い方ですもの。殿下とお似合いよね……!』

(不老不死で容姿端麗なエテル殿下の側にいていいのは、この私だけよ! なぜあんな下級聖女が……!)

怒りで視界が真っ赤に染まる。自分の寿命を削らなければ人を癒やせない無能な女に、国一番の聖女である自分が負けるなど、あってはならないことだった。

殿下までもがあの女に毒されたのか、「短命種も長寿種と同じように尊ぶべきだ」などと口にし始めている。

(短い命で消えていくような雑草に、情けをかけるなんて時間の無駄よ。そんな暇があるなら、癒やしの力で美しさを保つ方が何倍も利益になるわ。私のこの美貌に、跪かない男なんていなかったのに……!)

オーレリアンの美への執着は、今や歪んだ殺意へと変貌していた。

あの女から殿下を奪い、排除する。そのためには、確かな「証拠」が必要だった。

(あの晩餐会で、私は致死性の毒を盛ったはずよ。なのに、あの女は平然としていた……。普通の人間であるはずがないわ。毒耐性がある人間なんて……「死神」くらいのものじゃないかしら?)

その直感が、彼女を禁忌の書庫へと走らせた。

***

棚の奥底で見つけた、一冊の古びた記録『死神と命の理』。

震える指でページをめくると、そこには忌むべき存在の特徴が克明に記されていた。

『死神の特徴・生者の骨のごとき銀色の髪。生への異常なまでの執着。そして、血のごとき紅色の瞳。彼らは毒を食らっても死なず、ただその瞳を呪わしく発光させる……』

「銀色の髪……紅い瞳……。ふふ、ふふふっ……全部、あの女に共通しているじゃない!」

オーレリアンは暗闇の中で、奇妙な吊り上がった笑みを浮かべた。膨れ上がる確信が、彼女の中の理性を少しずつ食い破っていく。

「あの女、死神だったのね……! 殿下の側に、あんな極悪な化け物が潜んでいるなんて。私が殿下を、あのおぞましい死神から守って差し上げなくては。……あの女の正体、殿下だけでなく、国中の皆に知ってもらいましょう?」

狂気に満ちた瞳を光らせ、オーレリアンは西の蔵を後にした。

***

四日後に開催される、国王陛下の誕生祭。

その華やかな舞台を、ディアナの処刑台に変えるための作戦を練り始める。

まずは、城内に巧妙な噂を流すことからだ。

「専属聖女の容姿は、伝承にある死神の特徴と瓜二つである」という、毒の雨を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。