六日後に向けて
六日後に向けて
「学校のことで、相談があります」
CASHを訪れた紀人は、東とシラメ博士を前にそう切り出した。
「学校?」
「はい。前の火事の時、博士から連絡をもらったじゃないですか」
「うん」
「サクラは警察からの要請って形ですぐ動けた。でも俺は授業中だったから、学校を抜ける理由を考えてました」
結局、二人とも現場には間に合わなかった。
だから、自分が遅れたせいで誰かが死んだなどと思っているわけではない。自分が早く到着していれば犠牲者を救えたのか、それも分からない。
紀人が気にしているのは、次に同じことが起きた時だった。
「また授業中に連絡が来たら、俺は先生に何て言うか考えると思うんです。どうやって抜けるかとか、周りに怪しまれないかとか」
紀人は一度言葉を切った。
「その間に、誰かが死ぬかもしれない」
東は何も言わず、続きを待った。
「俺、普通の高校生でいたいです。学校も辞めたくないし、友達とも普通に過ごしたい。でも、そのために動くのが遅れるのは嫌です」
前回の事件から、ずっと考えていたことだった。
「学校を続けながら、呼ばれたらすぐ動けるようにできませんか?」
◇
東は少し考えてから頷いた。
「できると思う。ただし、学校に全部話すわけにはいかない」
「ですよね」
キッドの正体を明かすわけにはいかない。
それ以前に、怪人事件そのものがまだ正式には公表されていなかった。
「学校には、紀人君が『警察の扱う特殊事件の協力者』だとだけ伝える」
「特殊事件……」
「事件の詳細は捜査上説明できない。緊急時には警察側から呼び出す場合がある。それ以上は話さない」
紀人は少し不安そうな顔をした。
「それで学校が納得します?」
「通すのはこっちの仕事」
東は即答した。
「学校全体に知らせる必要もないわ。校長と担任、それから本当に必要な人だけでいい。生徒には何も知らせない」
紀人の頭に、北山の顔が浮かんだ。
最近の北山は、自分とキッドの関係をかなり疑っている。
余計な情報が広がらないなら、その方がいい。
「お願いします」
「ただし、一つだけ」
東が紀人を見る。
「この扱いが使えるのは、CASHから正式に呼び出した時だけ。自分の判断で学校を抜けたい時に『特殊事件です』はなしよ」
「そんなことしませんよ」
「一応、言っておかないとね」
「分かってます」
「なら、学校との話はこっちでやる」
紀人は頭を下げた。
「お願いします」
これですべて解決したわけではない。
学校側がどこまで受け入れるのかも、まだ分からない。
それでも、毎回その場しのぎの嘘を考えるよりは、ずっと前へ進んでいた。
◇
「じゃあ、六日後の確認もしようか」
シラメ博士が地図を広げた。
フレイムピジョンが次に現れると予測されている二地点には、それぞれ印がつけられている。
「一方にはキッド。もう一方にはサクラ。それぞれCASHの部隊を配置する」
東が説明を引き継ぐ。
「住民の避難と道路規制は、予測時刻よりかなり前に終わらせる予定。消防と救急も区域外で待機させる」
前回とは違い、火災が起きてから避難を始めるわけではない。
フレイムピジョンが現れた時には、戦闘区域から一般人を可能な限り出しておく。
「片方に出たら、もう片方はすぐ合流するんですか?」
紀人が尋ねる。
「すぐには動かさない」
「どうしてです?」
「予測を信用しすぎないため」
東は二つの地点を指した。
「片方に出たからって、もう片方に何も起きない保証はないでしょ。状況を確認してから合流する」
「なるほど」
「今回は先回りできる。でも、だからって油断はしない」
「分かりました」
◇
「サクラの装備は?」
東が尋ねる。
「準備してるよ」
シラメ博士が答えた。
「ただし、人間の姿では使えない。現場で変身してから渡すことになるね」
右腕の毒注入用アタッチメントと、新しい脚部アタッチメント。
どちらも専用ケースに収め、サクラ側に配置されるCASH隊員が管理する。
「僕がそっちにいなくても使えるように、装着手順は隊員にも教えておくよ」
「戦い方は?」
「基本は決まってる」
まず右腕。
パンチを当てるたび、蜂が毒針を刺すように相手へ毒を打ち込む。一発で倒すためのものではなく、何度も命中させることで少しずつ相手を弱らせていく。
その間に、脚部アタッチメントのコンデンサー回路へエネルギーを蓄積する。
「CASHも射撃で援護する。サクラには右腕で毒を入れながら、脚が溜まるまで戦ってもらう」
「溜まったら蹴り?」
「うん。接触した瞬間、蓄積したエネルギーを一気に流し込む」
東が脚部アタッチメントを見る。
「それで仕留める」
「できればね」
「できれば?」
「実戦だから」
シラメ博士は肩をすくめた。
「蹴りがきれいに入る保証なんてないでしょ」
「外したら?」
「その時は前と同じだよ。二発目のフルチャージを待ってる余裕はないから、右腕で毒を入れ続ける。CASHも一緒に攻撃して、とにかく弱らせて倒す」
「じゃあ、この蹴りが唯一の勝ち方ってわけじゃないのね」
「そう。できるだけ早く決めるための切り札」
長引けば、それだけ何が起きるか分からない。
だから決められるなら、一撃で決める。
それが今回追加された選択肢だった。
◇
六日後へ向けた準備は、別の場所でも進められていた。
川出とシラメ博士は、アガトとユキのところへ向かっていた。
「本当に話、通じるんですか?」
移動しながら川出が尋ねる。
「さあ?」
「さあ、って……」
「やってみないと分からないでしょ」
「それはそうですけど」
川出は不安そうだったが、他に方法があるわけでもない。
◇
アガトとユキを前に、川出が話し始めた。
「六日後、事件が起きる可能性があります。場所もある程度分かっています」
二人が川出を見る。
少なくとも、自分たちに話しかけられていることは分かっているように見えた。
「こちらでも準備をしています。ただ、何が起きるか分かりません」
川出は少し言葉を選んだ。
「もし、こっちの話が分かっていて、協力できるなら……力を貸してほしいんです」
アガトとユキが反応する。
だが、それが話の内容を理解した上でのものなのか、単に声や雰囲気へ反応しているだけなのかは分からない。
川出はしばらく二人を見たあと、隣のシラメ博士へ顔を寄せた。
「……通じてるんでしょうか」
「どうだろうね」
「博士がそれ言うんですか」
「僕だって何でも分かるわけじゃないよ」
二人は少なくとも、拒絶するような様子は見せなかった。
川出は迷った末に頷く。
「……協力してくれる、と思っておきます」
「それでいいんじゃない?」
「軽いなあ……」
六日後。
必要になれば、二人にも力を借りる。
確実に意思が通じたと言い切れなくても、今はできる準備を重ねるしかなかった。
◇
「じゃあ、戻りましょう」
川出が立ち上がった。
だが、シラメ博士はその場を動かなかった。
「川出君は先に戻ってて」
「博士は?」
「僕はもう少し、この二人と話していくよ」
川出がアガトとユキを見る。
「まだ何かあるんですか?」
「うん。今回の作戦で、ちょっと試しておきたいことがあるんだ」
「僕も残ります?」
「いや、大丈夫。東さんたちの準備を手伝ってきて」
「……分かりました」
川出は少し気になった様子を見せたものの、それ以上は聞かなかった。
先に戻っていく。
◇
川出の姿が見えなくなるまで、シラメ博士はその背中を見送っていた。
やがて、もう姿が見えないことを確認する。
その場に残ったのは、シラメ博士とアガト、ユキの三人だけだった。
「さて」
シラメ博士が二人へ向き直る。
六日後の作戦に向けて、まだ一つ準備しておきたいことがある。
それがうまくいくかどうかは、博士自身にもまだ分からない。
だからこそ、まず試してみる必要があった。
シラメ博士は二人を交互に見る。
「じゃあ――」
少しだけ間を置く。
「こっちの準備も始めようか」
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




