六日後・前編
六日後・前編
CASHの拠点では、これまでに起きた五件の火災が、一枚の地図へまとめられていた。
最初の公園から神社、駅前、住宅街。そして、複数の死者に加え、警察官の殉職者まで出した前回の火災。
最初の公園を中心に距離を測れば、およそ五キロ、十キロ、十五キロ、二十キロ。事件を重ねるたび、発生地点は外側へ広がっている。
川出は五つの地点と記録を見比べながら言った。
「この規則が続くなら、次は二十五キロ前後です」
東が地図を見る。
「でも、それだけじゃ前回と同じよ」
「はい。だから今回は、もっと絞ります」
前回も、二十キロ前後というところまでは読めていた。
大まかな方向と、鳩が集まりやすい場所という条件を重ねて候補を減らし、CASHを複数の班へ分けた結果、実際にフレイムピジョンを発見することには成功した。
対怪人武装で足止めもできた。
それでも、戦力が分散していたため、火災が広がると救助へ人員を割かざるを得なくなり、怪人には逃げられた。
そして、また人が死んだ。
同じ方法を繰り返すわけにはいかなかった。
◇
「まず、方向です」
川出は最初の公園を中心に、五つの事件地点を示した。
完全な一直線ではないものの、すべてが明らかに同じ側へ偏っている。
「前回は大まかな方向までしか見ていませんでした。今度は、もう少し細かく分けます」
地図を十二方向へ区切り、五つの地点を重ねる。
多少のずれはあったが、すべてが一つの範囲へ収まった。
「全部ここ?」
東が尋ねる。
「はい。西側です」
地図を覗き込んでいたシラメ博士が口を開いた。
「十二支の方位なら、酉だね」
「酉?」
「子を北として十二支を方角に割り当てると、真西が酉になるんだよ」
東は五つの地点を見直した。
「鳩の怪人が、酉の方向へ進んでる?」
「偶然の可能性はあります。ただ、五件すべてが同じ範囲です」
約二十五キロという距離に、酉方向という条件が加わった。
次に探すべき範囲が、前回より大きく狭まる。
◇
だが、川出はそこで手を止めなかった。
「もう一つあります。今度は場所じゃありません」
五件の発生日を並べていく。
最初の公園から六日後に神社。さらに六日後に駅前。その六日後に住宅街。そして前回も、そこから六日後だった。
東が資料を見直す。
「全部、六日間隔?」
「はい」
「じゃあ次は?」
「六日後です」
川出がカレンダー上の日付を示した。
今度は場所だけではなく、いつ起きるのかまで見え始めている。
東が何かに気づいた。
「日にちがそこまで揃ってるなら、時間は?」
「確認します」
川出が発生時刻の記録を開いた。
◇
最初の公園だけは正式な記録がなく、管理人の記憶から絞った時刻になる。それでも、残る四件と並べれば無視できない一致があった。
「……これも揃ってます」
「どのくらい?」
「数分程度のずれはあります。でも、ほぼ同じ時刻です」
東が日付と時刻を見比べる。
「六日おきに、ほとんど同じ時間?」
「そうなります」
「そんなことある?」
シラメ博士が資料へ顔を近づけた。
「あり得ない話じゃないよ。鳩って、時間と方向を把握する能力がかなり優れてるんだ」
「時間と方向?」
「太陽を方角の手掛かりにするとしても、太陽の位置は時間で変わるでしょ? だから自分の中の時計で、そのずれを補正して方向を判断する。それに、方向を知る感覚そのものも優れてる。遠くから帰ってこられるから、人間も伝書鳩として利用してきたわけだしね」
東は地図へ目を戻した。
「じゃあ、この怪人にもそういう性質が?」
「そこまでは断定できないよ。でも、鳩を元にした怪人にそういう性質が強く出てると考えれば、今までの動きとはかなり噛み合う」
川出が整理する。
「約五キロずつ外へ移動する。酉方向へ進む。六日周期。そして、ほぼ同じ時刻」
別々に見えていた火災が、一つの規則で結ばれた。
◇
川出はすべての条件を重ね、次の候補を洗い直した。
最初の公園から約二十五キロ。
酉方向。
鳩が多く集まる場所。
六日後。
そして、ほぼ特定された時刻。
距離が外れすぎている場所を除き、鳩が集まる条件の弱い場所も外していく。
地図上に残る印が、一つずつ減っていった。
やがて川出の手が止まる。
「残りました」
「いくつ?」
「二地点です」
東が地図へ近づく。
「どっちかまでは分からない?」
「はい。今ある情報だけでは、ここから先は絞れません」
それでも前回とはまるで違う。
日付が分かる。
時間も分かる。
場所も二つしかない。
東はしばらく二つの印を見比べた。
「だったら、二つとも張れる」
◇
「CASHを二班に?」
川出が尋ねる。
「それだけじゃ駄目」
東は即答した。
前回、CASHの対怪人武装でフレイムピジョンを足止めできることは確認できた。しかし、致命傷を与えて倒し切ることはできない。
CASHだけを二班に分ければ、前回と同じように決定打を欠くことになる。
「どっちに出ても、最初から倒せる戦力を置く」
シラメ博士が察した。
「キッドとサクラ?」
「そう」
東が一つ目の候補地点を指す。
「キッドをこっち」
もう一つへ指を移した。
「サクラをこっち。それぞれにCASHをつける」
シラメ博士が頷く。
「キッドには僕から話しておくよ」
「お願い。サクラには私から話す」
怪人が現れてから二人を呼ぶ必要はない。
六日前から予測できているのだから、予定も事前に調整できる。
予測時刻になった時には、二人ともそれぞれの候補地点で待っていればいい。
◇
東はもう一度、二つの地点を見た。
「……待って」
「何?」
「場所も、日にちも、時間も分かってるのよね」
「はい」
「だったら、戦う前に人を出せる」
川出が顔を上げた。
「事前避難ですか?」
「そう」
前回、CASHの先行班はフレイムピジョンを押さえていた。
だが、火災が広がり、逃げ遅れた人や負傷者が出たことで、一人、また一人と救助へ回らなければならなくなった。
その結果、射撃が薄くなり、怪人を逃がした。
「最初から一般人がいなければ、救助のために戦力を削らなくて済む」
東は続けた。
「消防と救急も、予測時刻より前から区域の外で待機させる。火が出ても、通報を受けてから来る必要はない」
北山が地図を見ながら言った。
「CASHだけじゃ、そこまでの規制は回せないな」
「分かってる」
周辺住民の避難。
道路の封鎖。
交通規制。
消防や救急との事前調整。
CASHも警察組織の一部ではあるが、それだけの規模を独断で動かせるわけではない。
東は嫌そうに息を吐いた。
「……癪だけど、上を動かすしかないわね」
南浦が地図を見たまま鼻で笑った。
「揉めるだろうな」
「言わないでよ」
「事実だ」
南浦は二つの候補地点を見る。
「六日後に怪人が出る。だから二か所から住民を避難させて、道路も封鎖しろ。消防と救急も待たせろ」
そこで一度言葉を切った。
「しかも、外れるかもしれない」
東は眉を寄せた。
「……分かってる」
「素直に通す連中なら、前回あんなことにはなってない」
その言葉に、誰も反論しなかった。
これまで何度も、判断の遅さに振り回されてきた。
今回も簡単にはいかない。
それでも、東は二つの候補地点から目を逸らさなかった。
「でも今回は、動かす」
次の火災まで、六日。
その時間を、会議が終わるのを待つために使うつもりはなかった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




