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ビーストギア  作者: 時根脱才 
フレイムピジョン編

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待っていられない

待っていられない


 CASHでは、神社と駅前で起きた二件の火災について、引き続き調査が行われていた。


 机の上には、二つの現場から集めた目撃証言や周辺地図が広げられている。


 壁のモニターに映っているのは、駅前火災の際に撮影された映像だった。


 炎。


 煙。


 逃げる人々。


 その向こうに、白い姿が見える。


 川出は二つの火災について、これまでに分かっている情報を一つずつ整理していた。


「神社の方は、白い服の人物を見たという証言。それから、頭の辺りが光っていたという証言があります」


「駅前は?」


 東が尋ねる。


「白い姿を見た人間が複数。映像も残っています」


「怪人だろ」


 南浦が短く言った。


「可能性は高いです」


 川出が答える。


「ただ、火をつけた瞬間は確認できていません」


「毎回、火事の場所にいる」


「それも事実です」


 ニシが机の上の地図を覗き込んだ。


「二つに共通してるものは?」


「いくつかあります。ただ……」


 川出が神社と駅前を順番に示す。


「気になっているのは、鳩です」


「鳩?」


「神社にも多い。駅前広場にもかなり集まっています」


 東が地図を見る。


「それだけ?」


「今のところは」


「二件じゃ弱いわね」


「はい。偶然でも説明できます」


 少し離れた場所では、シラメ博士が駅前の映像を何度も見返していた。


「これさ」


「何です?」


 川出が振り返る。


 シラメ博士は映像を止め、白い姿の頭部を拡大した。


「頭の上」


 画面の中で、炎のようなものが揺れている。


「これ、本当に燃えてるように見えるね」


「飾りじゃなくて?」


 ニシが尋ねた。


「映像だけじゃ分からないよ。でも、光り方は炎っぽい」


 少し映像を進める。


 白い姿が動くたび、その上にある炎らしきものも揺れていた。


「少なくとも、頭に火みたいなものを乗せた白い怪人が、二件目の火災現場にいた」


 東が腕を組む。


「結局、まだ分からないことばっかりね」


「もう少し材料が必要です」


 川出がそう答え、再び手元の画面へ目を落とした。


 目撃情報。


 公開されている映像。


 周辺の情報。


 使えるものがないか、一つずつ拾っていく。


 その指が止まった。


「……ん?」


「どうしたの?」


 東が尋ねる。


「火事です」


「火事?」


「住宅街で。かなり大きいみたいです」


 川出が場所を確認する。


 住宅街に囲まれた、小さな公園付近。


 最初に目に入ったのは、住宅街から立ち上る黒煙の写真だった。


 投稿されたばかりのものらしい。


 画面を更新する。


 新しい投稿が増えた。


『住宅に燃え移ってる』


『消防車すごい』


『何軒燃えてるんだこれ』


「……これ、今起きてるの?」


 東が川出の画面を覗き込む。


「はい」


 さらに更新する。


 また増えた。


 火災現場を遠くから撮影した動画。


 消防車が住宅街へ入っていく映像。


 避難している人々。


 そして――。


 川出の指が止まった。


「東さん」


「何?」


「これ」


 映像をモニターへ送る。


 燃える住宅街。


 黒煙。


 飛び交う鳩。


 その向こうに、白い姿が立っていた。


 部屋の空気が変わる。


「同じ奴か?」


 ニシが立ち上がり、モニターへ近づく。


「駅前よりはっきり映ってます」


 川出が別の投稿を開いた。


 今度は違う位置から撮影された映像。


 そこにも、同じ白い姿がある。


「怪人だ」


 南浦が言った。


 シラメ博士も画面を覗き込む。


「頭の上も同じだね」


 さらに別の映像。


 テレビの生中継を切り抜いたものだった。


 レポーターの背後。


 煙が流れた瞬間、白い怪人が数秒間映り込んでいる。


「テレビにも出たの?」


「生中継みたいです」


 東の表情が変わった。


「上からは?」


 隊員がすぐに確認する。


「……何も来てません」


「何も?」


「はい」


 東は一瞬黙った。


「火災はいつから?」


「確認します」


 川出がニュース速報の時刻と、現場から投稿された最も古い映像を追っていく。


「少なくとも、もうかなり時間が経っています」


「それで何もなし?」


「はい」


 東はモニターを見た。


 燃える住宅。


 飛び交う鳩。


 その近くに立つ白い怪人。


 次々に追加される現場の映像。


 それでも、上からCASHへは何も来ていない。


 東は椅子から立ち上がった。


「行くわよ」


「上からの指示は?」


 隊員が尋ねる。


「待たない」


 東は即答した。


「これだけ揃ってるのに、まだ待ってられないわ」


     ◇


 現場へ向かう間にも、状況は変わり続けていた。


 川出は移動しながら公開されている情報を追っていく。


「火勢、かなり落ちてきてます」


「消防が抑えた?」


「そのようです」


「怪人は?」


「新しい目撃情報はありません」


 ニシが顔をしかめた。


「間に合わねえか」


 南浦が窓の外を見たまま言う。


「もういないだろ」


 誰も否定しなかった。


 川出が新しい投稿を開く。


 救急車。


 担架。


 焼けた住宅。


 投稿に添えられた文章を追っていた川出の表情が変わった。


「……死亡者が出たという情報があります」


 車内が静かになる。


「確かなの?」


 東が聞く。


「まだ正式発表ではありません。投稿だけです」


「現場で確認する」


「はい」


 それ以上、誰も何も言わなかった。


     ◇


 CASHが現場へ到着した頃には、激しかった炎はほぼ抑えられていた。


 消防隊員たちが残火処理を続けている。


 水浸しになった道路。


 黒く焼けた住宅。


 焦げた公園。


 割れた窓。


 焼けた臭いが辺りに残っている。


 規制線の向こうには消防車と救急車が並び、今も多くの人間が動き続けていた。


 だが、そこに白い怪人の姿はない。


「……遅かった」


 東が呟く。


「遅すぎる」


 南浦が言った。


 CASHは戦うどころか、怪人の姿を見ることすらできなかった。


     ◇


 現場で状況を確認する。


 負傷者、複数。


 そして――一名死亡。


 ネット上の噂ではなかった。


 東の表情が険しくなる。


「白い怪人の目撃情報は、いつ入ったんですか?」


 現場にいた警察官が答えた。


「かなり早い段階です。複数の通報がありました」


「上には?」


「すぐ報告しています」


「映像についても?」


「はい。現場で撮影されたものが複数あることも上げています」


「……そう」


 東はそれ以上、その警察官を責めなかった。


「分かりました。ありがとうございます」


 現場は報告している。


 怪人の目撃情報も。


 映像が存在することも。


 必要な情報は、早い段階で上へ送られていた。


 それでもCASHには、何も来なかった。


     ◇


「どうだった?」


 ニシが尋ねる。


「現場はちゃんと上げてる」


 東が答えた。


 ニシの表情が険しくなる。


「じゃあ、上で止まってたってことか」


 東は答えなかった。


 答える必要もなかった。


 北山が焼けた住宅を見ながら口を開く。


「前と何も変わってないな」


 その視線の先では、消防隊員がまだ作業を続けている。


「現場が報告しても、俺たちまで届かなきゃ意味がない」


「話にならない」


 南浦が吐き捨てるように言った。


 しばらく誰も口を開かなかった。


 消防隊員が動いている。


 警察官も現場確認を続けている。


 救急車が一台、現場を離れていった。


「俺たち、ニュース見て来たんだぞ」


 ニシが言った。


「怪人を扱うために作った部隊が、怪人事件をニュースで知った」


 東は黙って聞いていた。


 その時、川出が口を開いた。


「このままだと、次も同じです」


 東が川出を見る。


「どういうこと?」


「上から怪人事件として正式に情報が回ってくるのを待つ」


 川出は焼けた住宅へ目を向けた。


「その頃には、今回みたいに全部終わってます」


 南浦が言う。


「なら待つな」


 短い一言だった。


 ニシも頷く。


「先に見つけるしかねえな」


 東は少し考えた。


 やがて顔を上げる。


「……そうね」


 全員を見る。


「次は待たない」


     ◇


 CASHへ戻った川出は、三つの地点を地図に落とした。


 神社。


 駅前広場。


 そして今回の、住宅街に囲まれた小公園。


 東たちが地図を囲む。


「今回もです」


 川出が言った。


「何が?」


「鳩」


 住宅街の公園について集めた情報を表示する。


「かなりいたようです。映像にも映っています」


 東が三つの地点を順番に見る。


「神社。駅前。公園……全部、鳩がいる場所」


「はい」


「三件目か」


 ニシが呟く。


「二件なら偶然でもおかしくありません。でも三件続くなら、無視はしづらいです」


 シラメ博士が別の資料へ目を落とした。


「それだけじゃないよ」


「何?」


 東が聞く。


「火も大きくなってる」


 神社。


 駅前。


 住宅街。


 並べてみれば、被害の規模は明らかに大きくなっている。


「今回の火災、公園から住宅へ燃え移る速度もかなり速かったみたいだね」


「消防側でも気にしているようです」


 川出が補足する。


「原因はまだ分かっていません。ただ、通常の延焼としては早いという話が出ています」


「神社より駅前。駅前より今回」


 シラメ博士が三件の資料を見比べた。


「もし同じ怪人が関わってるなら、火も強くなってるのかもしれないね」


 東の視線が地図へ落ちる。


「次があるなら……」


「もっと大きくなる可能性もある」


 シラメ博士が続けた。


 誰も否定しなかった。


     ◇


 川出は、しばらく三つの地点を見続けていた。


「どうしたの?」


 東が尋ねる。


「足りません」


「何が?」


「三件だけじゃ、次の場所までは読めません」


「じゃあ、次が起きるまで待つ?」


「いえ」


 川出は首を横に振った。


「逆です」


「逆?」


「もっと前を探します」


 東が眉を上げる。


「前?」


 川出は地図上の神社を指した。


「神社が最初だって、誰が決めたんですか?」


 全員の視線が地図へ集まる。


「もっと前に、小さな火事があったかもしれません」


「でも記録は?」


「記録に残るほどの火事だったとは限りません」


 川出は続ける。


「誰かがその場で消した。消防も警察も呼ばなかった。そんな程度だったら、どこにも残ってない」


 東が少し考える。


「つまり、聞くしかない?」


「はい」


「範囲は広いわよ」


「分かってます」


「それでも?」


 川出は三つの地点を見た。


「次が起きてから向かうよりはいいです」


 東は少しだけ黙った。


 そして頷く。


「分かった」


 地図へ目を戻す。


「探しましょう。記録に残ってないところまで」


 川出も頷いた。


 次の火災が起きるのを待つつもりはない。


 今度はCASHの方から、白い怪人を探しに行く。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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