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ビーストギア  作者: 時根脱才 
フレイムピジョン編

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決められない

決められない


「住宅街で火災発生。公園から周辺住宅へ延焼しているとのことです」


 報告を受け、関係者が次々と会議室へ集められていた。


 まだ全員が揃っているわけではない。


 席に着く者。


 資料を抱えて入ってくる者。


 電話で現場の状況を確認している者。


 壁のモニターには、火災が発生した住宅街周辺の地図が映し出されている。


「規模は?」


「現在確認中です。消防が現場へ向かっています」


「出火場所は?」


「住宅街の中にある公園付近とみられています」


「原因は?」


「まだ分かっていません」


「なら、まずは通常の火災として――」


「待ってください」


 報告を続けていた担当者が、手元の端末を見る。


「すでに住宅への延焼が確認されています」


「もう?」


 何人かが時計を見る。


「火災発生の通報が入ってから、まだそれほど経ってないだろ」


「はい」


「何棟だ」


「現時点で一棟。ただし、周囲にも火の粉が飛んでいるとのことです」


「風は?」


「あります。ただ――」


「ただ?」


「現場から、延焼が早すぎるという報告が上がっています」


 会議室の空気がわずかに変わった。


「早すぎる?」


「公園内の火災から住宅へ燃え移るまでの時間が短い、と」


「乾燥していたんじゃないのか?」


「その可能性もあります」


「風が強ければ火の粉は飛ぶ」


「それも含めて、現場で確認中です」


「助燃剤は?」


「まだ分かりません」


「複数箇所への放火は?」


「それも現段階では否定できません」


 原因はまだ何一つ分からない。


 分かっているのは、火が異様な速さで広がっていることだけだった。


「続報が入り次第、上げろ」


「はい」


     ◇


 数分後。


「延焼、二棟目です」


「もう二棟?」


「はい。さらに隣接する住宅にも延焼の危険があります」


「消防は?」


「現場へ到着。消火と救助を開始しています」


「逃げ遅れは?」


「確認中です。複数の住宅で住民の安否確認を進めています」


「やっぱり早すぎるな……」


 一人が地図を見ながら呟いた。


「最初は公園なんだろ?」


「現時点では、そうみられています」


「そこからもう二棟?」


「はい」


「消防から何か来てないのか」


「現場でも延焼速度について確認しているとのことです。ただ、今は救助と消火が最優先です」


「当然だ」


 まだ原因を調べている場合ではない。


 現場では、人命救助が続いている。


 その時、別の担当者の端末が鳴った。


「はい」


 短いやり取り。


 表情が変わる。


「どうした?」


「現場から、別件です」


「何だ」


「白い……怪人のようなものを見たという通報が入っています」


 会議室が静かになった。


「もう一度言ってくれ」


「白い怪人です」


「一人の証言か?」


「いえ。現在確認できているだけでも複数」


「特徴は?」


 担当者が端末を確認する。


「白い身体。鳥のような頭部」


 一度言葉を切る。


「それから、頭の上に炎があったと」


「……駅前」


 誰かが呟いた。


 別の人物がすぐに反応する。


「駅前の火災で撮影されたものと特徴が一致する」


「まだ同じものとは決まっていない」


「白い身体。鳥の頭。頭上の炎だぞ」


「だからといって断定はできない」


「映像は?」


「確認します」


     ◇


 駅前火災の資料が出された。


 モニターに、以前撮影された映像が表示される。


 炎と煙の向こう。


 ぼやけてはいるが、白い姿が見える。


「今回の目撃証言と一致してる」


「証言だけならな」


「複数人が同じ特徴を言ってる」


「だから映像を待て」


 その言葉が終わった直後だった。


「映像、出ました」


「警察からか?」


「いえ」


 担当者が端末を操作する。


「一般人がSNSへ投稿したものです」


「もうネットに出てるのか?」


「はい」


 モニターが切り替わった。


 大きく揺れる映像。


 悲鳴。


 燃える住宅。


 飛び交う鳩。


 その向こうに、白い姿が立っている。


「止めろ」


 映像が止まる。


「拡大」


 白い姿が大きく表示された。


 完全に鮮明とは言えない。


 それでも、駅前の映像よりははっきりしている。


 白い身体。


 鳥を思わせる頭部。


 頭上の炎。


「……同じだろ」


「似ている」


「まだ『似ている』か?」


「断定するな」


「じゃあ何が揃えば断定するんだ」


「怪人が火をつけたところだ」


「現場に怪人がいて、同じ場所で異常な速度の火災が起きてる。それでも別々に考えるのか?」


「可能性と事実を混同するな」


「助燃剤を使った放火の可能性もある」


「その放火と怪人が無関係だという根拠もないだろ」


 声がぶつかり始めた。


     ◇


「テレビ局の中継にも映り込んだようです」


 新しい報告が入った。


「何?」


「生中継です」


「録画は?」


「あります」


 モニターが再び切り替わる。


 現場からの中継。


 レポーターが燃える住宅街を背に状況を伝えている。


 煙が流れる。


 その奥。


 白い姿が現れた。


 数秒間。


 そして、不自然にカメラが横へ動く。


「全国に流れたのか?」


「少なくとも放送には乗っています」


「局は?」


「映像について確認中とだけ」


「ネットは?」


「すでに切り抜かれています」


「早すぎるだろ」


「生放送ですから」


「削除要請は?」


「もう転載が始まっています」


 別の担当者が続ける。


「駅前の映像と並べた投稿も増えています」


「神社の件まで関連づけている投稿もあります」


「神社まで?」


「一般の投稿です」


 会議室で一つの問題について話している間に、外では次の問題が生まれていく。


     ◇


「報道対応を決める必要があります」


「まだ怪人だと発表するわけにはいかない」


「では何と説明します?」


「映像については確認中だ」


「いつまでそれで通します?」


「少なくとも今はだ」


「テレビの生中継だけじゃありません。別方向から撮影された映像が複数出ています」


「加工の可能性は?」


「一本一本なら否定できません」


「なら――」


「ですが、同じ現場を別々の位置から撮影した人間が、全員同じ白い怪人を加工で追加したと説明するんですか?」


 答えは返ってこなかった。


「警察が怪人の存在を正式に認めることになるぞ」


「認めるかどうかではなく、映像はもう出ています」


「だからこそ慎重に扱う必要がある」


「慎重にしている間にも映像は増えています」


 また意見がぶつかる。


     ◇


「負傷者が出ています」


 現場から新しい報告が入った。


 会話が止まる。


「人数は?」


「複数。火傷、煙の吸引、避難時の負傷など」


「重傷者は?」


「確認中です」


「逃げ遅れは?」


「複数の住宅で捜索が続いています」


「CASHへ回すべきだ」


 一人が言った。


 すぐに別の声が返る。


「まだ怪人が火をつけた証拠はない」


「またそれか」


「重要なことだ」


「現場に怪人がいるんだぞ」


「怪人が現場にいることと、火災を起こしたことは別だ」


「じゃあ何のために火災現場にいる」


「それを調べている」


「調べている間にも火は広がってる!」


「CASHは怪人事件を扱う部隊だ」


「だから情報を渡せと言ってる」


「怪人事件と確定してからでも遅くない」


「本当に遅くないのか?」


 誰もすぐには答えなかった。


「公園から始まった火が、もう複数の住宅に広がってる。現場からも延焼速度がおかしいって報告が来てるんだぞ」


「それは放火の可能性を高める情報でもある」


「そして、その中心には白い怪人がいた」


「だから、それだけで因果関係を決めるなと言っている」


 議論は平行線だった。


     ◇


 また続報が入る。


「救助された子供一名。生存確認」


 会議室の何人かが、わずかに息を吐いた。


「状態は?」


「救急が処置中。意識はあるとのことです」


「他は?」


 担当者の表情が曇る。


「別の住宅で、一名の安否が確認できていません」


「年齢は?」


「七十代女性」


「消防は?」


「捜索中です」


 先ほどまでの議論が一度止まった。


 今、現場では一人の人間を助けるために消防隊員が動いている。


 それでも、ここではまだ怪人事件なのかどうかを決められずにいる。


「……CASHへは?」


「まだです」


「なぜだ」


「正式に怪人事件として扱う判断が出ていません」


「その話を、あと何分続けるつもりだ」


「しかし――」


 言葉が続かなかった。


     ◇


 しばらくして。


 電話が鳴った。


 担当者が取る。


「はい……はい」


 話を聞くうちに、その表情が変わっていく。


「分かりました」


 電話を切った。


「どうした」


 すぐには答えなかった。


「報告しろ」


「逃げ遅れていた住民一名の……死亡が確認されました」


 会議室から音が消えた。


「……死者が出たのか」


「はい」


「負傷者は?」


「複数。現在も搬送が続いています」


 誰もすぐには口を開かなかった。


 先ほどまで交わしていた言葉が、一気に違う重さを持つ。


「それでもまだ待つのか?」


 低い声が響いた。


「……」


「神社。駅前。そして今回」


「神社はまだ関連が確定していない」


「今その話をするのか?」


「事実関係は重要だ」


「人が死んだんだぞ」


「だからこそ慎重に――」


「慎重?」


 机を叩く音が響いた。


「慎重に話している間に、人が死んだんだ」


 誰も続けられなかった。


     ◇


 さらに時間が過ぎる。


「現場からです」


 担当者が新しい報告を読み上げる。


「火災は大部分が鎮圧されたとのことです」


「……何?」


「延焼の危険はかなり下がっています。現在は残火処理と、最終的な確認を続けています」


 一人が壁の時計を見た。


 この会議が始まった時。


 消防は、まだ現場へ向かっている途中だった。


 最初の報告では、公園から住宅一棟へ火が移ったばかりだった。


 それが今は。


 複数の住宅が焼け。


 負傷者が出て。


 一人が死亡し。


 そして火は、もう消えようとしている。


「……CASHには?」


 改めて聞かれた。


 担当者が答える。


「まだ、連絡していません」


「まだ?」


「怪人事件として扱うか、正式な結論が出ていませんので」


 沈黙。


 怪人事件なのか。


 通常の放火事件なのか。


 誰が担当するのか。


 何を公表するのか。


 その答えを出せないまま。


 現場では人が死に。


 住宅が焼け。


 白い怪人の姿は、テレビとネットを通じて広がり。


 そして火は――もう消えようとしていた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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