第2話「小さな火」
フレイムピジョン編
第2話「小さな火」
休日の午後。
大きな公園には、いつものように多くの人が集まっていた。
遊具の周りでは子供たちが走り回り、少し離れた広場では親子がボールを投げ合っている。犬を連れて散歩する人や、ベンチに腰掛けて飲み物を飲んでいる人の姿もあった。
その間を縫うように、何羽もの鳩が歩いている。
誰かが食べ物を落とせば、一羽が近づき、それを見つけた別の鳩も寄ってくる。しばらくすると十羽近い群れになり、人が歩いてきても少し横へ避けるだけで、遠くへ逃げようとはしない。
「また来た」
ベンチに座っていた男性が笑った。
昼食に買ってきたパンを食べているうちに、足元へ鳩が集まっていた。
「悪いけど、やらないぞ」
鳩たちに言っても、もちろん離れない。
一羽が首を傾げるように男性を見る。
「そんな顔しても駄目」
男性は笑いながらパンを口へ運んだ。
少し離れた場所では、小さな子供が鳩を追いかけている。
「待てー!」
鳩たちは飛び立つほどでもないと判断したのか、子供から一定の距離を保ちながら歩いて逃げていく。
「追いかけちゃ駄目よ」
母親が笑いながら子供を呼び戻した。
どこにでもある休日の光景だった。
◇
「……ん?」
最初に異変へ気づいたのは、散歩をしていた老人だった。
遊歩道の脇に積もっている落ち葉から、細い煙が上がっている。
老人は足を止めた。
「何だ?」
煙はすぐには消えない。
むしろ少しずつ濃くなっている。
「おい、燃えてるぞ」
その声に、近くを歩いていた人が振り返った。
直後。
落ち葉の間から、小さな炎が立ち上がった。
「火!」
誰かが叫ぶ。
近くのベンチに座っていた人たちも立ち上がった。
「水ない?」
「自販機で買ってくる!」
「係の人呼んだ方がいいんじゃない?」
火はまだ小さい。
だが乾いた落ち葉へ燃え移り、じわじわと横へ広がっていく。
先ほどまで地面を歩いていた鳩たちが、一斉に飛び立った。
羽音が重なり、何人かが驚いて空を見上げる。
「これ使って!」
ペットボトルを持っていた男性が駆け寄り、中身を火へかけた。
一度では消えない。
別の人も水を持ってくる。
何度か水をかけ、ようやく炎が小さくなったところへ、公園の職員が消火器を持って走ってきた。
白い消火剤が噴き出す。
炎が消えた。
「大丈夫ですか?」
「こっちは平気」
「怪我した人いない?」
周囲を確認する。
幸い、怪我人はいなかった。
燃えたのも落ち葉と、その周囲の草が少しだけ。
大きな被害ではない。
先ほどまで慌てていた人たちも、火が消えたことで少しずつ落ち着きを取り戻していった。
◇
「タバコかな」
少し離れたところから見ていた男性が言った。
「でも、ここ禁煙じゃない?」
一緒にいた女性が返す。
「隠れて吸う人くらいいるでしょ」
「ちゃんと消さないで捨てたとか?」
「それならありそう」
別の場所でも似たような会話が交わされていた。
誰かの不注意。
捨てられたタバコ。
あるいは、子供のいたずら。
小さなボヤであれば、まず思いつくのはその程度だった。
公園の職員が燃えた場所を確認している。
「何か落ちてない?」
「今のところは……」
「タバコとか」
「見当たらないですね」
消火剤で白くなった落ち葉を慎重に動かしてみる。
それらしいものはない。
「じゃあ何で燃えたんだ?」
「さあ……」
原因は分からない。
だからといって、この時点で大事件になるような話でもなかった。
やがて周囲に集まっていた人たちも、一人、また一人とその場を離れていく。
子供たちは再び遊び始めた。
犬の散歩をしていた人も歩き出す。
飛び立っていた鳩も、少し離れた広場へ何羽か戻ってきた。
公園は少しずつ、いつもの休日へ戻っていった。
◇
「…………」
一人の青年が、足を止めた。
先ほどの火事を遠くから見ていたわけではない。
騒ぎが収まり、人が散り始めた頃に、たまたま近くを通っただけだった。
それでも、なぜか木々の間が気になった。
白いものが見えた気がした。
「……人?」
青年は目を凝らす。
木と木の間。
確かに誰かが立っているように見える。
白っぽい服。
けれど、顔までは分からない。
何より妙なのは、その頭の上だった。
赤いものが揺れている。
風に揺れる布ではない。
光っているように見えた。
「……火?」
思わず呟く。
その瞬間、何羽もの鳩が青年の前を横切った。
「うわっ」
反射的に顔を逸らす。
鳩たちは羽音を響かせながら、木々の向こうへ飛んでいった。
青年がもう一度、同じ場所を見る。
「……あれ?」
誰もいない。
木が並んでいるだけだった。
「見間違いか……」
青年はしばらくその場所を見ていたが、やがて首を傾げながら歩き出した。
◇
夕方。
公園の一角には、消火剤に覆われた黒い焦げ跡が残っていた。
近くを通る人が、ちらりと見る。
「何かあったの?」
「昼にちょっと燃えたらしいよ」
「へえ」
それだけだった。
ニュースになるほどの火事でもない。
怪我人もいない。
原因はまだ分からないが、いずれ何か理由が見つかるだろう。
誰もが、その程度に考えていた。
そして公園から少し離れた場所では、一羽の鳩が電線へ降り立っていた。
その下を、人影が通り過ぎる。
白い服。
頭の上で揺れる、小さな炎。
だが、それに気づく者は誰もいなかった。
この日。
後に続くことになる発火事件の最初の一件は、ただの小さなボヤとして処理された。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




