↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア  作者: 時根脱才 
復活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/118

第六章 第8話 捨て駒

第六章 第8話 捨て駒


警察本部へ向かう車内。


東は、ほとんど口を開かなかった。


隣に座るシラメ博士も同じだった。普段なら、どちらかが何かしら軽口を叩く。しかし今日は、何もない。


東が窓の外を見たまま口を開いた。


「博士」


「ん?」


「大丈夫?」


シラメ博士は少しだけ東を見る。


「大丈夫だよ。まだ何も言ってないから」


「……まだ、ね」


東は小さく息を吐いた。


その言葉の方が、むしろ不安だった。


◇


会議室。


東とシラメ博士が入ると、すでに数人が席についていた。


今回の作戦を決定した本部上層部。


怪人特別対策班の関係者。


その中には、出動前の会議でCASHとの連携を提案していた者の姿もあった。


二人が席につくと、上層部の一人が口を開いた。


「まずは、先日の件についてだ」


資料が机に置かれる。


「非常に残念な結果となった。敵戦力が、こちらの想定を大きく上回っていた」


シラメ博士は黙ったまま。


東は机の下で拳を握る。


「怪人特別対策班にも多数の犠牲が出た。一般市民にも被害が発生した。今回の結果を踏まえ、今後の怪人対応体制を見直す必要がある」


そして、ようやく本題に入った。


「怪人特別対策班とCASHの連携を強化したい。また、CASHが使用している対怪人装備についても、怪人特別対策班への供給を検討する」


一枚の資料が、シラメ博士の前へ置かれる。


「シラメ博士。あなたの技術提供をお願いしたい」


シラメ博士は、置かれた資料をしばらく見つめた。


そして、顔を上げる。


「……その前に、一ついいですか?」


「何だね」


「なぜ僕たちに、本当の場所を知らせなかったんですか?」


会議室の空気が変わった。


◇


「その件については、当日の情報に錯綜が――」


「違いますよね」


シラメ博士が遮った。


声は大きくない。


だが、逃げる余地を与えない。


「僕たちには、別の場所を教えた。しかも、時間まで指定して。怪人が出る可能性が高いから、そこへ行けって」


誰も口を挟まない。


「でも、怪人特別対策班は全然違う場所にいた」


上層部の一人が口を開く。


「作戦上、複数地点を警戒する必要が――」


「じゃあ、何で本命を教えなかったんです?」


「……」


「間違えたんじゃないですよね。わざわざ僕たちを別の場所へ行かせた。CASHを、本当の現場から遠ざけた」


少しの沈黙。


やがて、上層部の一人が答えた。


「怪人特別対策班単独での実戦運用を確認する必要があった」


東の表情が変わる。


シラメ博士は、一度だけ小さく頷いた。


「……やっぱり」


その声から、いつもの軽さが消えた。


◇


「僕たちに知らせてくれていれば、少なくとも、あそこまでの被害にはならなかった」


上層部の一人が反論する。


「それは結果論だ」


「結果論?」


初めて、シラメ博士の声が強くなった。


「五十人近くですよ。五十人近い人間を送り込んで、生き残ったのはほんの数人。それを結果論で済ませるんですか?」


「敵の能力が想定外だったことは事実だ」


「だから何です?」


「……」


「想定外があるから、実戦経験のある僕たちがいたんでしょう?」


シラメ博士は机の上の資料を指す。


「CASHの武器なら、あのシロアリは一発で倒せる。あなたたちの部隊は、三発、四発当てて、やっと一体だった」


上層部の一人が顔をしかめる。


「装備性能だけの問題では――」


「そうですよ。装備だけじゃない」


シラメ博士は即答した。


「経験も、連携も、怪人の特性を見る力も、負傷者をどう救うかも。全部です」


少し間を置く。


「あなたたちは、それを全部無視した」


声が低くなる。


「自分たちだけで怪人を倒したかったから」


東が上層部を見る。


シラメ博士は、もう止まらなかった。


「あなたたちが守りたかったのは何です?」


「市民ですか?」


「部下ですか?」


返事はない。


「違いますよね」


シラメ博士の声が会議室に響く。


「CASHを使わずに怪人を倒したっていう実績でしょう?」


一拍。


「そのために、あなたたちは自分の部下を捨て駒にした」


◇


「言葉を慎みたまえ!」


上層部の一人が声を荒らげる。


「事実でしょう!」


シラメ博士も返した。


「現場責任者は撤退を命じた。隊員たちは仲間を助けようとした。最後まで必死に戦った!」


拳が机に落ちる。


「それを今になって、現場の運用にも問題があったみたいに言うんですか?」


「実際、現場判断には検証すべき点が――」


「まだ言うんですか!」


会議室に声が響いた。


東ですら、一瞬シラメ博士を見る。


普段の博士からは考えられない。


「三発、四発撃たなきゃ倒せない武器を持たせて、撃たれても止まらない相手に、初めての本格実戦で、市街地の真ん中で戦わせて、その上、助けに入れるCASHをわざと遠ざけた!」


一つずつ、叩きつけるように。


「それで失敗したら、現場の責任ですか?」


誰も、すぐには答えられなかった。


◇


少しの沈黙の後、上層部の一人が言う。


「だからこそ、今後はCASHの装備を怪人特別対策班にも供給してもらいたい」


シラメ博士が黙る。


そして。


「嫌です」


即答だった。


「……何?」


「嫌です。僕の武器を、あなたたちには渡したくありません」


「これは個人的な感情で決める問題ではない」


「個人的な感情ですよ。僕が作ったものですから」


「警察組織として必要な装備だ」


「じゃあ」


シラメ博士が上層部を見る。


「僕の武器を持たせたら、今度は何人送り込むんです?」


「……」


「今度は一発で倒せるから大丈夫? 防具ももっと強くする? それでまた、経験のない人間を送り込むんですか?」


誰も答えない。


「武器を強くしただけでCASHにはなりませんよ。同じ装備を持てば、同じように戦えると思ってるなら、何も分かってない」


東は黙って聞いている。


「そんな人たちに僕の装備を渡して、今度は誰を捨て駒にするんですか?」


◇


「これは警察組織としての要請だ」


上層部の声が低くなる。


「拒否できる立場では――」


「CASHに協力を命令するかどうかは、僕が決めることじゃありません」


シラメ博士が遮る。


一瞬、相手の顔が緩む。


だが。


「でも、僕個人にあなたたちのために武器を作れと言うなら」


シラメ博士は真っ直ぐ相手を見る。


「断ります」


「シラメ博士」


「強制するなら、僕はCASHを退きます」


東がシラメ博士を見る。


上層部も黙った。


「僕の技術を、人を捨てるためには使わせません」


◇


「私からもいいですか?」


今度は東が口を開いた。


上層部の一人が、わずかに息を吐く。


「何だ」


東は感情を抑えるように、ゆっくり話し始めた。


「今回、あなたたちは怪人特別対策班だけじゃない。私たちにも嘘をつきました」


「その表現は――」


「違います?」


東が返す。


「私たちに、本当ではない作戦地点を伝えた。私たちはそれを信じて向かった。そこで待機させられた。その間に、特殊班は別の場所で戦ってた」


東の目が冷たくなる。


「それって、必要ならCASHにも同じことをするってことですよね?」


「それは飛躍だ」


「そうですか?」


東は即座に返した。


「五十人近い自分たちの部下を送り込める人たちですよ。次は私たちじゃないって、どうやって信じればいいんです?」


誰も答えられなかった。


◇


東は一度、息を整えた。


「私は、CASHを作らせてもらったことには感謝しています」


上層部を見る。


「怪人なんてものが、まだまともに認められていなかった頃から、こういう部隊を作ることを許してもらった。そのおかげで助けられた人もいる」


一拍。


「その判断まで否定するつもりはありません」


東の言葉に、会議室の空気が少しだけ変わる。


「でも、だからって今回のことまで受け入れる理由にはならない」


そして、はっきりと言った。


「あなたたちの下では、もう動けません」


◇


上層部の一人が顔を上げる。


「何を言っている?」


「そのままです。CASHを、あなたたちの直接指揮から外してください」


「勝手なことを――」


「勝手には動きません」


東が遮る。


「警察を辞めるとも言ってません。CASHを解散するとも言ってません。指揮系統を変えてほしいと言っています」


上層部の表情が険しくなる。


東は続けた。


「CASHの設立を認めた、さらに上の判断を直接仰ぎます」


会議室が静まり返る。


「今後はあなたたちを通さず、そちらからの指示で動かさせてもらいたい」


「そんな要求が通ると思っているのか」


東は少しだけ笑った。


「じゃあ、上に決めてもらいましょう」


机の上に一つの端末を置く。


「今回の作戦について。CASHへ送られた情報。実際の作戦地点。特殊班への出動命令。こちらが事前に送った分析資料。その後の被害状況」


一つずつ挙げる。


「全部、正式に報告します」


上層部の表情が変わった。


「東」


「私たちは今まで、必要な情報は全部こちらから上げてきました。これも同じです。全部、上げます」


そして最後に。


「判断するのは、あなたたちじゃありません」


◇


会議室を出た。


廊下。


しばらく、東もシラメ博士も何も言わなかった。


やがて、東が口を開く。


「博士」


「ん?」


「本当に辞めるつもりだったの?」


「うん」


即答。


東が足を止めた。


「即答なのね……」


「だって嫌だし」


「さっきまであんなに怖かったのに、急にいつもの博士に戻らないでよ」


「怖かった?」


「怖かったわよ」


シラメ博士は少し考える。


「じゃあ、もうちょっと怒っとこうか?」


「やめて」


東はため息をつき、また歩き出す。


シラメ博士が隣を歩く。


「でも」


「何?」


「東さんが先に、僕ごと違う指揮系統に持っていこうとしてくれたから」


東が見る。


シラメ博士は前を向いたままだった。


「辞めずに済むなら、その方がいいよ」


東が少しだけ笑う。


「博士までいなくなったら困るもの」


「頼りにされてるね」


「調子に乗らない」


「はいはい」


少しだけ、いつもの空気が戻る。


だが。


東は一度、後ろを振り返った。


会議室の扉。


その向こう。


そして、静かに言った。


「もう、この人たちの都合で誰かを死なせるのは御免よ」


シラメ博士は何も言わなかった。


ただ、小さく頷いた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。