第六章 第7話 銃乱射テロ
第六章 第7話 銃乱射テロ
戦闘が終わっても、CASHに休んでいる暇はなかった。
「こっち、もう一人!」
川出の声が飛ぶ。
倒れていた隊員のもとへ救急隊員が駆け寄る。
少し離れた場所では、アガトが負傷者を引きずるようにして安全な場所まで運んでいた。
「アガト! 次、あっちお願い!」
「アガト!」
東が指した先へ、アガトはすぐに向きを変える。
ユキも、動けなくなった一般人のそばを離れようとしない。
「その人はもう大丈夫!」
東が声をかけると、ユキはようやく次の負傷者へ向かった。
怪人特別対策班。
約五十人。
自分の足で立っていられる者は、わずかだった。
その生存者たちも、次々と救急車へ運ばれていく。
東は、その光景を黙って見ていた。
◇
川出は現場の記録を続けていた。
建物の壁。
道路。
破壊された車両。
砕けたガラス。
そこに残っているのは、怪人が暴れた痕跡だけではない。
特殊班が使用した高火力武器による着弾跡も、至るところに残っていた。
「……これ」
東が振り返る。
川出は崩れた建物を見たまま言う。
「どう説明するんでしょうね」
東は答えなかった。
怪人が暴れた。
怪人特別対策班が応戦した。
その武器が市街地へ被害を広げた。
そして、一般人まで巻き込まれた。
どこを切り取っても、簡単に説明できる状況ではなかった。
◇
東の端末が鳴った。
本部からだった。
画面を見た東は一瞬だけ顔をしかめたが、それでも応答する。
「はい」
『現場の映像記録をすべて確保しろ』
東の眉が動いた。
「……はい?」
『一般人が撮影した映像についても可能な範囲で確認。怪人に関する映像が外部へ流出しないよう対応しろ』
東は周囲を見た。
まだ救急隊が走り回っている。
まだ負傷者が運ばれている。
「今、その話ですか?」
『社会的混乱を防ぐためだ』
「まだ助かる人がいるんですよ」
『救助活動を止めろとは言っていない』
「だったら、そっちを先にしてください」
東の声が低くなる。
『報道対応はこちらで行う。CASHは現場の情報管理を――』
「……分かりました」
東は通信を切った。
ニシが聞く。
「何だって?」
東はしばらく端末を見つめていた。
「怪人の映像を外に出すなって」
南浦の顔が険しくなる。
「もう隠す話かよ」
東は何も答えなかった。
◇
警察本部。
別の会議室では、すでに報道発表についての話し合いが始まっていた。
「怪人の存在を公表するべきでは?」
一人が意見を出す。
「今回の規模です。目撃者も多い。いつまでも従来の説明では――」
「認められん」
即座に却下された。
「しかし――」
「怪人の存在を警察が公式に認めれば、社会がどうなると思っている」
「ですが、すでに現場では――」
「だから情報を管理する」
別の者が資料を見る。
特殊班の多数の死傷者。
一般市民への被害。
市街地の大規模な破壊。
「それに」
上層部の一人が口を開く。
「怪人特別対策班を正式に発足させた直後だ」
誰も答えない。
「初の本格実戦でこの結果が公になれば、警察そのものへの信頼に関わる」
社会の混乱。
それは確かに理由の一つなのだろう。
だが、それだけではない。
「では、どう発表します?」
少しの沈黙。
「銃乱射事件だ」
「……銃乱射?」
「重武装した集団による大規模襲撃事件。警察部隊との交戦によって、多数の死傷者が出た」
「市街地の被害は?」
「交戦によるものとして処理する」
「怪人は?」
「記載する必要はない」
資料から、怪人という存在そのものが消された。
◇
CASHにも、報道発表の概要が送られてきた。
東が画面を読み、途中で止まる。
「……銃乱射テロ?」
川出が横から確認する。
「怪人の記載が……ありません」
南浦が奪うように画面を見る。
「ふざけてんのか」
ニシも覗き込む。
「これ、俺たちがいた現場の話だよな?」
北山が険しい顔をする。
「別の事件みてえじゃねえか」
東は何も言えなかった。
シラメ博士が後ろから資料を見る。
「へえ」
声だけは、いつもと変わらない。
「随分綺麗になったね」
東が振り返る。
シラメ博士は笑っていなかった。
「都合の悪いものを全部消したら、報告書ってこんなに読みやすくなるんだ」
誰も、その言葉に返せなかった。
◇
病院。
怪人特別対策班の生存者の一人が、ベッドに横たわっていた。
身体には包帯。
腕には点滴。
事情を聞きに来た警察関係者が、椅子に座っている。
「覚えている範囲で構いません」
生存者は天井を見たまま答えた。
「怪人です」
「……」
「人間じゃない」
少し息を整える。
「撃っても止まらなかった」
担当者は記録を続ける。
「それから……ネズミ型の怪人がいた」
手が止まる。
「ネズミ型?」
「二体」
生存者が目を閉じる。
「最初は敵だと思った」
だが、思い出す。
自分たちが戦っている間。
倒れた仲間を運んでいた。
一般人を守っていた。
「あいつら……俺たちを助けてた」
担当者は黙っている。
「CASHが来てから分かったんだ。あいつら、最初から人を助けてたんだよ」
そして、もう一つ。
忘れられない。
CASHの武器。
自分たちが三発、四発と撃ち込んで、ようやく倒していたシロアリ怪人を。
たった一発で倒していた。
「俺たちは……」
生存者の声が震える。
「何のために、あそこに行かされたんですか」
担当者は答えなかった。
しばらくして、静かに言う。
「今は、外部には余計なことを話さないようにしてください」
生存者が顔を向けた。
「……余計なこと?」
「捜査中ですので」
「怪人がいたことが?」
「……」
「助けてくれた怪人がいたことが?」
「今は――」
「仲間が死んだことも余計なことですか?」
担当者は何も答えられなかった。
◇
夜。
パンさんの店。
テレビではニュースが流れていた。
『本日、市街地で大規模な銃乱射事件が発生し――』
紀人が画面を見る。
『警察関係者を含む多数の死傷者が確認されています』
映像。
規制線。
壊れた建物。
救急車。
パンさんが眉をひそめる。
「物騒だな……」
「……そうですね」
紀人は画面から目を離せなかった。
見覚えがある。
あの場所。
それだけではない。
映像の端。
ほんの一瞬。
見慣れた車両が映る。
CASH。
紀人の表情が変わった。
ニュースでは、銃乱射事件。
だが。
「……本当に?」
小さく呟く。
パンさんが聞く。
「何か言ったか?」
「いや、何でもないです」
紀人は端末へ手を伸ばしかける。
東に聞きたい。
だが、パンさんがいる。
今は止めた。
◇
同じ頃。
ネット上でも、ニュースについての書き込みが増えていた。
『これ本当に銃乱射?』
『建物壊れすぎじゃない?』
『武装集団って何持ってたんだよ』
『前に怪人見たって書いて炎上してた奴いたよな』
その書き込みへ、すぐに反応がつく。
『また怪人厨かよ』
『ニュースでテロって言ってんじゃん』
『特撮と現実混ぜんな』
『こんな事件でふざけるな』
また流れていく。
真実に近い言葉ほど、冗談として。
◇
翌日。
CASHの拠点。
空気は重かった。
誰も、いつものような軽口を叩かない。
テレビでは、昨夜から何度も同じニュースが流れている。
『大規模銃乱射テロ』
その文字を、東は黙って見ていた。
やがて、口を開く。
「私たちを、わざわざ逆方向に送って」
誰も口を挟まない。
「五十人近い部隊を、自分たちだけで現場に行かせて」
拳を握る。
「一般人まで巻き込んで」
そして、画面を見る。
「それで、銃乱射テロ?」
南浦が吐き捨てる。
「都合よすぎんだろ」
ニシも黙ったままだった。
北山の表情も険しい。
東がシラメ博士を見る。
博士だけが、朝からほとんど何も言っていない。
「博士」
「ん?」
「何か言わないの?」
シラメ博士はテレビを見る。
少しだけ間を置いた。
「言うよ」
東が見る。
「ただ」
シラメ博士は静かに立ち上がった。
「言う相手が違う」
いつもの軽い調子はなかった。
「本人たちに直接言うよ」
◇
その時、東の端末が鳴った。
本部からだった。
東が応答する。
「はい」
しばらく話を聞く。
そして。
「分かりました」
通信を切った。
川出が聞く。
「何ですか?」
東は端末を見る。
「呼び出し」
「本部から?」
「私と博士に」
シラメ博士が見る。
「内容は?」
東が読み上げる。
「今後の怪人対応体制について、協議したい」
数秒の沈黙。
東が乾いた笑いを漏らした。
「今さら協議?」
シラメ博士が立ち上がる。
「ちょうどいいね」
東が博士を見る。
その顔には、いつもの笑みはなかった。
「僕も」
静かな声。
「聞きたいことが山ほどある」
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




