第六章 第5話 違う場所
第六章 第5話 違う場所
警察本部。
会議室の机には、CASHから送られてきた資料が並べられていた。
スピーカー、鏡、加湿器、UFOキャッチャー。そして、掃除機。
怪人特別対策班の関係者たちが、それらに目を通している。
「過去怪人の非動物モチーフとの一致。既存能力の転用。複数個体への能力付与の可能性……」
報告を読み上げた男が資料を閉じた。
「少なくとも、次も同様の事件が起きる可能性は高い」
別の男が地図を広げる。
「こちらでも、怪人出現の可能性が高い地点を絞り込めています」
一つの地点に印がつけられていた。
それを見た現場責任者が眉をひそめる。
「CASHにも共有しますか?」
返事はすぐだった。
「必要ない」
「ですが、向こうには実戦経験があります。今回の装備は実戦投入が初めてです。少なくとも合同で――」
「いつまであの連中に頼るつもりだ」
言葉を遮られる。
「正式な怪人特別対策班は、もうこちらにある」
「しかし、相手は怪人です。訓練と実戦は違います」
「実戦経験がないなら、今回積めばいい。そのために五十人も用意したんだろう」
「人数の問題では――」
「装備も通常警察とは別物だ。これだけ揃えておいて、実戦で使えませんでは話にならん」
現場責任者は黙るしかなかった。
別の者が慎重に口を開く。
「せめてCASHを予備戦力として、近隣に待機させてはどうでしょう」
上層部の一人が地図を眺め、少し考えてから本命とはかなり離れた場所を指差した。
「なら、こちらを警戒させろ」
「こちらですか?」
「怪人出現の可能性がある地点だと伝えればいい」
現場責任者の表情が変わる。
「……本当に出現の可能性があるんですか?」
答えはなかった。
ただ、一言。
「怪人特別対策班の初陣だ」
そう告げられた。
◇
同じ頃。
東の端末へ、本部から珍しく詳細な連絡が入った。
「怪人出現の可能性?」
川出が聞く。
「そう。時間まで指定されてる。今日の午後、この地区で怪人が動く可能性が高いって」
東は送られてきた地図を見る。
ニシが眉を上げた。
「随分親切じゃねえか」
南浦が鼻を鳴らす。
「今までこっちには何も寄越さなかったくせにな」
北山も地図を覗き込む。
「罠じゃねえだろうな」
「やめてよ」
東は苦笑した。
だが、自分でも少し引っかかっていた。
これまで、こちらからどれだけ情報を送っても、返ってくるのは『情報提供を受領した』という短い返答だけ。
その本部から突然、時間まで指定された怪人情報が送られてきた。
「……怪しいですね」
川出も同じことを考えているようだった。
「でも、無視はできないわ」
東が立ち上がる。
「行きましょう」
もし本当に怪人が出るのなら、疑って動かなかったでは済まされない。
CASHは指定された地点へ向かった。
◇
現場へ到着したものの、そこは妙に静かだった。
普段と変わらない街。
行き交う人々。
怪しい集団も、異常な動きも見当たらない。
川出が周囲を確認する。
「今のところ、それらしい形跡はありません」
東が時計を見る。
「まだ指定時間まで少しあるわ。待ちましょう」
CASHは周辺へ分かれ、警戒を始めた。
やがて指定された時間になる。
何も起きない。
十分。
二十分。
さらに時間が過ぎても、状況は変わらなかった。
ニシが苛立ったように言う。
「本当にここなのか?」
南浦も腕を組む。
「人っ子一人怪しくねえぞ」
北山が川出を見る。
「何かないのか?」
「ありません。怪人が集まった形跡も、不自然な移動も見つかりません」
東の表情が曇る。
「本部に確認する」
通信を入れる。
しばらくして返ってきた答えは、
『そのまま待機せよ』
それだけだった。
東は端末を見つめる。
「……何なのよ、もう」
◇
その頃。
全く別の市街地には、約五十人の怪人特別対策班が展開していた。
新型銃器。
全身を覆う厚い防具。
隊員たちには緊張と同時に、自信もあった。
「今日が、我々の初の本格実戦になる」
現場責任者が告げる。
「通常警察では対処できない相手だ。だからこそ、我々がいる」
隊員たちが頷く。
「怪人をここで止める」
その時、通りの向こうから人間の姿をした複数の男女が現れた。
隊員たちが一斉に武器を構える。
「止まれ!」
返事はない。
「そこで止まれ!」
次の瞬間、人間の姿が崩れた。
現れたのは、シロアリ怪人。
一体、二体。
次々と怪人体を現していく。
「来るぞ!」
隊員たちの緊張が一気に高まる。
だが、その中には、これまで確認されていたシロアリ怪人とは明らかに違う個体がいた。
身体の一部に、大きな吸入口のような構造。
低い音を響かせながら、それが作動する。
次の瞬間。
周囲の空気が一気に引かれた。
「うわっ!」
看板。
ゴミ箱。
道路脇の破片。
細かな瓦礫。
あらゆる物が一斉に怪人へ向かって吸い寄せられ、隊員たちの身体まで前へ引かれる。
「何だ、これ!」
「踏ん張れ!」
照準がぶれ、姿勢が崩れる。
それでも。
「撃て!」
一斉射撃。
新型銃器が火を噴いた。
通常警察の武器とは明らかに違う威力。
弾丸がシロアリ怪人へ命中し、その身体を削る。
「効いてる!」
一体へ集中射撃。
さらに命中。
傷が増えていく。
「いける!」
隊員たちの間に、一瞬だけ希望が生まれた。
だが。
シロアリ怪人は止まらない。
傷ついても、怯まない。
そのまま前へ進んでくる。
「……止まらない?」
再び強烈な吸引。
隊員の一人が前へ引きずられた。
「うわあっ!」
隣の隊員が腕を掴む。
「踏ん張れ!」
その横から、別のシロアリ怪人が迫る。
「右!」
発砲。
命中。
それでも止まらない。
「何なんだ、こいつら!」
保たれていた隊列が、少しずつ崩れ始めていた。
◇
一方。
CASHはいまだに、何も起きない地点で待機を続けていた。
東が時計を見る。
「もう指定時間、とっくに過ぎてるわよ」
川出も周囲を見回す。
「やっぱりおかしいです」
「本部にもう一回――」
その時、東の端末が鳴った。
通常の連絡とは違う。
緊急通信。
東がすぐに応答する。
「はい」
聞こえてきた内容に、表情が変わった。
「……何ですって?」
周囲のメンバーが東を見る。
「怪人特別対策班が交戦中?」
少しの間。
「場所は?」
伝えられた地点を地図へ表示する。
東が固まった。
「……は?」
ニシが覗き込む。
「どうした?」
東は現在地と交戦地点を交互に指差した。
方向が全く違う。
しかも、かなり離れている。
「全然違うじゃない!」
東の声が響いた。
「私たちが聞いてる場所と、全然違う!」
川出も地図を確認し、表情を険しくする。
「これは……」
「本部に繋いで!」
東はすぐに通信を入れた。
「どういうことですか! 私たちは指定された場所に来てるんですよ! なのに、何で怪人特別対策班が別の場所で戦ってるんですか!」
返ってきたのは、現場が混乱している、情報に食い違いがあった可能性があるという説明。
東は黙った。
やがて、小さく呟く。
「……最初から」
川出が見る。
端末を握る東の手が震えていた。
「最初から私たちを、ここに置いとくつもりだったのね」
ニシの表情も変わる。
南浦が吐き捨てた。
「やりやがったな」
だが、怒っている場合ではない。
東はすぐに顔を上げた。
「全員、移動!」
そして、交戦地点を指す。
「急ぐわよ!」
CASHが一斉に動き出した。
◇
本当の現場では、怪人特別対策班の隊列がさらに崩れていた。
吸引。
射撃。
怒号。
一人の隊員が吸い寄せられ、仲間が腕を掴む。
その間にも、別方向からシロアリ怪人が迫ってくる。
「撃て!」
高火力弾。
だが、吸引によって照準がずれた。
弾丸は怪人を外れ、道路脇の建物へ命中する。
轟音。
壁が大きく崩れた。
「待て!」
現場責任者が叫ぶ。
「まだ避難は終わってない!」
隊員が青ざめる。
「市民がいるぞ!」
その声に、一瞬だけ射撃が止まった。
そして。
その一瞬を逃さず、シロアリ怪人たちが一気に距離を詰めた。
◇
その頃。
CASHの車両は全速力で現場へ向かっていた。
東は前方を睨み続けている。
「お願い……」
誰に言ったのか、自分でも分からなかった。
ただ。
今はそれしか言えなかった。
「間に合って……!」
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




