↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア  作者: 時根脱才 
復活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/117

第六章 第1話 スピーカーだけ

第六章 第1話 スピーカーだけ


昼下がり。


大型家電量販店の店内は、いつもと変わらない賑わいを見せていた。


テレビを見比べる家族連れ。スマートフォンを手に取る若者。店員へ商品の説明を求める客。


その中に、数人の男女が入ってくる。


服装も年齢もばらばらで、誰が見ても買い物に来た普通の客にしか見えなかった。


ただ、彼らは店内へ入ると迷うことなく同じ場所へ向かった。


スピーカー売り場。


大型の据え置き型。小型の携帯用。オーディオ機器につなぐもの。


価格も大きさもメーカーも違う。


その一団は、突然それらを次々と持ち上げ始めた。


店員が異変に気づく。


「お客様、そちらの商品は――」


返事はない。


一人が大型スピーカーを抱え、そのまま出口へ向かう。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


店員が腕を掴んだ。


次の瞬間。


「うわっ!」


軽く振り払われただけだった。


それなのに店員の身体は大きくよろめき、商品棚へぶつかる。


周囲の客が一斉に振り返り、別の店員が慌てて警備員を呼んだ。


「止まってください!」


二人の警備員が男を取り押さえようとする。


だが、男は片腕に大型スピーカーを抱えたまま、もう片方の腕だけで二人を振りほどいた。


「なっ……!」


人間の力ではない。


それでも、その姿はどこからどう見ても人間だった。


他の者たちも同じようにスピーカーを抱え、黙々と出口へ運んでいく。


テレビにも。


パソコンにも。


スマートフォンにも。


高価なゲーム機にも。


一切目もくれない。


狙っているのは、スピーカーだけだった。


◇


通報を受けた警察が到着した頃には、一団はすでに姿を消していた。


店内には倒れた商品棚と混乱する客、そして不自然なほど何も残っていないスピーカー売り場だけが残されている。


警察官が店員へ尋ねた。


「盗まれた商品を確認できますか?」


店員はまだ呆然としていた。


「はい……スピーカーです」


「スピーカー?」


「ほぼ全部です」


警察官が周囲を見回す。


「他の商品は?」


「ほとんど手を付けられてません」


「現金は?」


「レジも金庫も無事です」


警察官は眉をひそめた。


意味が分からない。


防犯映像を確認すると、映っているのはやはり普通の人間だった。


ただ、大型スピーカーを一人で軽々と持ち上げ、警備員二人を片腕だけで振り払っている。


「……何だ、こいつら」


映像を見ていた警察官が呟いた。


◇


しばらくして、川出も現場へ到着した。


店員、警備員、目撃した客から一通り話を聞いた後、防犯映像を何度も確認する。


東も画面を見る。


「ここね」


大型スピーカーを抱えた男へ、警備員二人が飛びかかる。


男は、ほとんど力を入れていないような動きで二人を振り払った。


川出が映像を止める。


「普通じゃないですね」


「うん」


「見た目は完全に人間です」


東の表情が変わった。


以前の事件で、人間の姿に擬態していたネズミ型怪人。


あの時と同じ可能性がある。


「……擬態?」


「可能性はあります」


まだ断定はできない。


怪人体になったところを誰も見ていない。


だが、以前なら考えなかった可能性を、今は最初から疑わなければならない。


川出は別の映像へ切り替えた。


「それにしても……盗み方が変です」


売り場を歩く一団。


テレビの前を通り、高級オーディオ機器の前も通る。


それでも一切触れない。


持ち出しているのは、すべてスピーカーだった。


東も首を傾げる。


「何のために?」


「そこが分からないんですよね」


◇


拠点へ戻った川出が、調査結果を報告する。


「被害額自体はかなりあります。ただ、狙われた商品の選び方が不自然です」


東が聞く。


「やっぱりスピーカーだけ?」


「ほぼ全部そうです」


ニシが腕を組む。


「何でだ?」


北山が言う。


「音楽でも聴きたいんじゃないか?」


東が振り返る。


「怪人が?」


「知らねえよ」


ニシが笑う。


「しかも何十台も? ライブでもやる気か?」


南浦は資料を見たままだった。


「少なくとも金目当てじゃねえな」


「そうですね」


川出が資料をめくる。


「高額なものから選んでいるわけでもありません。安いものも高いものも、大型も小型も持っていかれてます」


シラメ博士が口を開く。


「メーカーは?」


「バラバラです」


「用途は?」


「それも」


シラメ博士は少し考えた。


「じゃあ、本当に共通してるのは一つだけか」


全員が見る。


「スピーカーだってこと」


部屋が静かになった。


◇


紀人も、後から事件の内容を聞いた。


「スピーカーだけ?」


「そうらしい」


東の話を聞きながら、紀人が眉を寄せる。


スピーカー。


その言葉には、どうしても思い出すものがあった。


「……セミスピーカー」


東が見る。


「やっぱり思い出す?」


「まあ」


以前戦った怪人。


セミとスピーカー。


ただ、それだけで今回の事件と結びつけるには早すぎる。


紀人も首を振った。


「いや、たまたまかもしれないですけど」


「そうね」


まだ一件だけ。


スピーカーという商品自体、珍しいものではない。


今の段階では、妙な一致。


その程度だった。


◇


CASHは、今回調べた内容をそのまま警察本部へ報告した。


防犯映像。


目撃証言。


犯人たちの異常な身体能力。


人間擬態を行う怪人である可能性。


そして、スピーカーばかりを大量に強奪しているという不可解な犯行。


東が送信を終える。


「これで全部ね」


川出が確認する。


「はい。こちらで分かった範囲は全部入ってます」


怪人特別対策班が新しく作られたとしても、自分たちが警察組織の一部であることに変わりはない。


CASH側は情報を止めず、必要なものは本部へ上げる。


それが当然だった。


◇


警察本部。


CASHから送られてきた資料が確認され、その情報は新設された怪人特別対策班にも回されていた。


「人間へ擬態している可能性あり、か」


「以前確認された、人間に擬態するタイプと同じものか?」


「現時点では不明です」


資料を確認していた一人が尋ねる。


「CASHにも、こちらで掴んでいる情報を共有しますか?」


少しの間。


返ってきた答えは短かった。


「必要ない」


「しかし――」


「正式な怪人特別対策班は、もう設置されている」


机の上へ資料が置かれる。


「怪人への対応はこちらで行う」


「CASHは?」


「もう、あちらが現場へ出る必要はない」


CASHから送られてきた情報は使う。


だが、こちらの情報をCASHへ返す必要はない。


そんな空気が、すでに本部には出来上がっていた。


◇


後日。


東の端末へ、本部から連絡が入った。


短いやり取りの後、通信を切る。


ニシが聞いた。


「何だって?」


東は端末を見たまま答える。


「今回の件、怪人特別対策班が担当するって」


北山が聞く。


「じゃあ俺たちは?」


「独自に現場へ介入しないように、だって」


数秒の沈黙。


南浦が鼻を鳴らした。


「俺たちが集めた情報だけ持ってって?」


東が苦笑する。


「そういうことみたいね」


川出が資料を見る。


「でも、まだ事件は解決してません」


「そうなのよ」


東も腕を組む。


本部がどう思っているかは分かった。


正式な専門部隊ができた。


だからCASHはもう必要ない。


邪魔をするな。


そういうことなのだろう。


シラメ博士は特に驚いていなかった。


「まあ、予想通りだね」


東が見る。


「随分冷静ね」


「今さら怒ってもしょうがないよ」


シラメ博士は資料へ視線を戻す。


「向こうは向こうでやればいい。僕たちは僕たちで調べればいいんじゃない?」


川出が頷いた。


事件が終わったわけではない。


それどころか、分からないことだらけだ。


なぜスピーカーなのか。


犯人たちは本当に怪人なのか。


そして。


次があるのか。


◇


その夜。


別の店舗。


閉店間際、何人かの男女が店内へ入ってきた。


やはり、誰が見ても普通の人間だった。


翌朝。


通報を受けた警察官が、荒らされた売り場へ入る。


店員が青ざめた顔で立っていた。


警察官が尋ねる。


「何が盗まれました?」


「……鏡です」


「鏡?」


「はい」


警察官が店内を見回す。


壁掛け。


卓上。


姿見。


大小さまざまな鏡が並んでいたはずの場所だけが、不自然なほど空になっていた。


「全部?」


店員が頷く。


「ほとんど全部です」


スピーカー。


そして、鏡。


まだ、その二つを結ぶものに誰も気づいてはいなかった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。