閑話二 怪人特別対策班
閑話二 怪人特別対策班
事件から数日後。
警察本部では、新たな組織の設立が決まっていた。
怪人。
これまでなら、その言葉だけでまともに取り合われなかった存在。
だが今回は、通常の警察官たち自身が目撃している。
人間の姿をした相手へ何発撃ち込んでも倒れず、その人間が怪人の姿へ変わった。
もう、見間違いや作り話では済まされない。
警察としても、怪人の存在を前提とした対策が必要になっていた。
その結果、警察本部主導による新たな怪人専門部隊の設立が決定した。
◇
「怪人特別対策班……」
東は渡された資料を読みながら、その名前を呟いた。
「正式に作るんですか?」
川出が横から覗き込む。
「そうみたい」
資料には、新部隊の目的や人員、装備について細かく記載されていた。
怪人事件への出動。
一般人の避難誘導。
怪人の制圧。
情報収集。
そして、必要に応じた撃破。
ニシが資料を覗き込んだ。
「……これ、俺たちが今までやってたことじゃねえか?」
全員が黙る。
言われてみれば、その通りだった。
北山が人員表を見る。
「東の名前ないな」
「え?」
東も確認する。
ない。
川出も、シラメ博士も、北山も、ニシも、南浦も。
誰一人として、新しい対策班には入っていなかった。
「……私たち、全員いないんだけど」
東の声が少し低くなる。
南浦が鼻を鳴らした。
「怪人は認める。でも俺たちは認めねえってことだろ」
「露骨ね……」
東がため息をつく。
川出は資料を読みながら言った。
「まあ、本部側の理屈も分からなくはないですけどね」
「川出さん?」
「俺たち、本部が正式に作った部署じゃないですから」
怪人の存在が事実だった。
だからといって、これまでの東たちの動き方まで、すべて正しかったことにはならない。
本部からすれば、正式な指揮系統の中に改めて怪人対策を専門とする部隊を作りたい。
それ自体は、おかしな話ではなかった。
「分かるけど……面白くはないわね」
「それは同感です」
川出も苦笑した。
◇
「装備も新しく作ったみたいだな」
北山が別のページを見る。
そこには、新設部隊が使用する装備の写真が掲載されていた。
大型の銃器。
厚い装甲。
全身を覆う防具。
見るからに重装備だった。
ニシが感心する。
「なんか、俺たちより強そうじゃねえか?」
「見た目はね」
シラメ博士が答えた。
その声が妙に冷たい。
東が振り返る。
「博士?」
「何?」
「今の言い方、絶対何かあるでしょう」
「別に」
シラメ博士は資料を受け取り、銃器の仕様や防具の構造へ目を通していく。
しばらく黙った後。
「へえ」
その一言だけで、東は嫌な予感がした。
◇
新設部隊の銃器は、怪人への使用を前提として作られていた。
通常警察の標準装備とは比較にならない威力を持つ。
これまで通常警察の銃でシロアリ怪人を倒そうとすれば、一体だけでも大量の弾丸が必要だった。
それを考えれば、大きな進歩には違いない。
北山が言う。
「でも、怪人用なんだろ?」
「そう書いてあるね」
「じゃあ結構使えるんじゃないか?」
シラメ博士は資料を見たまま答えた。
「さあ?」
「さあって」
「実際の怪人相手に試してないんでしょう?」
北山が止まる。
「……あ」
「威力が高いことと、怪人と戦えることは同じじゃないよ。相手は撃たれたら大人しく止まってくれるの?」
誰も答えない。
シロアリ怪人には痛覚がない。
銃弾を受けても、それだけで怯んだり逃げたりはしない。
傷つきながらでも、そのまま向かってくる。
川出が言った。
「威力が上がっただけじゃ、実戦でどうなるかは分からないってことですか」
「そういうこと」
シラメ博士は資料を机へ置いた。
「まあ、実際に使えば分かるんじゃない?」
◇
東は、防具の写真を見る。
「でも、こっちはかなり頑丈そうじゃない?」
装甲は厚く、全身を覆っている。
見た目だけなら、東たちの装備より遥かに防御力が高そうだった。
「それも同じ」
シラメ博士が即答する。
「厚いのに?」
「防具なんて、厚くすれば怪人の攻撃を防げるってものじゃないよ」
「でも、普通の防具よりは強いんでしょう?」
「それは強いと思うよ。普通の攻撃を受けるならね」
「……怪人相手だと?」
「さあ?」
また、それだった。
ニシが笑う。
「博士、性格悪くなってねえか?」
「僕は事実を言ってるだけだよ」
怪人の力。
攻撃によって生じる衝撃。
そして、その性質。
それらを考えず、ただ装甲を厚くしただけなら、どれだけ頑丈そうに見えても実戦では大した意味を持たない可能性がある。
「まあ、実際に殴られてみれば分かるんじゃない?」
「やっぱり性格悪いだろ」
ニシが言った。
◇
さらに資料をめくっていた川出が、ある部分で止まる。
「博士」
「何?」
「これ」
シラメ博士が見る。
新設部隊の装備開発について。
今回の戦闘データだけでなく、東たちが使用している対怪人装備についても分析し、今後の開発へ反映していく。
そう記されていた。
シラメ博士が黙る。
「……」
東が恐る恐る聞く。
「博士?」
「へえ」
また、その声だった。
「僕たちは入れないけど、武器は真似するんだ」
「博士、言い方」
「別にいいけどね」
全然よくなさそうだった。
シラメ博士は椅子へ座る。
「武器を真似しただけで怪人に対抗できるなら、僕も苦労しないんだけどね」
北山が聞く。
「そんなに違うのか?」
シラメ博士は北山を見る。
「そもそも、あれは普通の武器や弾丸とは全くの別物なんだけどね」
東たちが黙る。
「見た目だけ真似して、威力だけ上げて、それで同じものになると思ってるなら好きにすればいいよ」
シラメ博士が少し笑った。
「その違いに気づけるかどうか、見ものだね」
東が頭を抱える。
「博士、完全に怒ってるでしょう」
「怒ってないよ」
「怒ってる人の言い方なのよ」
川出が聞いた。
「向こうから聞かれたら?」
「教えないよ」
即答だった。
「え?」
「僕たちを外して、自分たちでやるって決めたんでしょう? だったら、自分たちで考えればいいじゃない」
南浦が小さく笑った。
「そりゃそうだ」
「煽らないで」
東が南浦を止める。
シラメ博士は悪びれる様子もなく続けた。
「まあ、まずは高みの見物をさせてもらおうかな」
「博士」
「何?」
「今回、本当に性格悪いわよ」
「失礼だな。ちゃんと成功は祈ってるよ」
東が少し安心しかける。
「博士……」
「成功できればね」
「やっぱり怒ってるじゃない!」
◇
一方。
新設された怪人特別対策班。
真新しい部屋には、真新しい装備が並んでいた。
これまでの警察装備とは比べものにならない大型の銃器。
厚い防具。
怪人との戦闘を想定して作られた、新しい装備。
集められた隊員たちは、それを手に取っている。
「これが対怪人用か」
「重いな」
「でも、このくらいないと駄目なんだろ」
「今までの装備とは全然違うらしいぞ」
期待の声が上がる。
当然だった。
今まで、通常の装備ではまともに怪人と戦うことすら難しかった。
そこへ初めて、怪人に特化した装備が与えられた。
自分たちも、これで怪人と戦える。
そう思うのは無理もない。
ただ。
その装備は、まだ一度も本物の怪人を相手に使われたことがなかった。
◇
東は資料を机へ置いた。
「結局、同じ警察の中に怪人を追うところが二つできたってこと?」
「そうなりますね」
川出が答える。
北山が腕を組む。
「仲良くできるのか?」
少しの沈黙。
ニシが言った。
「無理じゃね?」
「早いわよ」
東が突っ込む。
南浦は椅子へもたれた。
「向こう次第だろ」
シラメ博士だけは、どこか楽しそうだった。
「僕は楽しみだけどね」
「何が?」
東が聞く。
「どこまで自分たちでできるのか」
真新しい装備を手にした、正式な怪人特別対策班。
怪人と実際に戦い続け、何度も装備を改良してきた東たち。
同じ警察の中で。
同じ怪人を追う。
だが、二つは決して同じ場所から始まったわけではなかった。
シラメ博士は資料を閉じる。
「さて」
少しだけ笑った。
「まずは、高みの見物といこうかな」
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
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企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




