↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア  作者: 時根脱才 
ガスねずみ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/117

第五章 第十話 アガト

第五章 第十話 アガト


三箇所目。


キッドの目の前で、ネズミ型怪人が大きく吹き飛ばされた。


地面へ叩きつけられ、そのまま動かなくなる。


「……倒した?」


キッドは、怪人を吹き飛ばした相手を見る。


女性タイプの謎のヒーロー。


自分以外にも、一人で怪人を倒せる存在がいる。


それだけでも、十分な驚きだった。


キッドは警戒しながら近づく。


「お前、誰なんだ?」


謎のヒーローが振り返る。


だが、答えは返ってこない。


「一人でこいつ倒したんだよな?」


もう一度聞く。


すると、謎のヒーローはほんの少しだけキッドへ顔を向けた。


「後でね」


「……は?」


それだけ言って、謎のヒーローは走り出した。


「ちょ、待て!」


キッドも追おうとする。


だが、謎のヒーローはあっという間に遠ざかっていった。


「後でって、いつだよ!」


返事はない。


キッドは立ち止まり、しばらくその姿が消えた方を見ていた。


「……何なんだ、あいつ」


答えは分からない。


ただ、自分以外にも怪人と戦うヒーローがいる。


その事実だけが残った。


◇


一箇所目。


主怪人が、メス型怪人へ向かって飛び出した。


薬剤の散布を邪魔された。


今度の狙いは、明らかに彼女だった。


その前へ、アガトが立つ。


攻撃しようとはしない。


ただ、メス型怪人を守るように、そこから退かなかった。


「危ない!」


川出が叫ぶ。


主怪人の腕が振り下ろされる。


その直前、北山が横から踏み込んだ。


空手の蹴りが主怪人の脇腹へ叩き込まれ、その軌道が逸れる。


「下がれ!」


その隙に、ニシが正面から組みついた。


「こっちだ!」


怪人をアガトたちから引き離そうとする。


だが、主怪人は身体を大きく振り、ニシを強引に振りほどいた。


「ぐっ!」


そこへ東が踏み込む。


素早いステップからレイピアを突き出す。


怪人が身体をひねる。


東は深追いせず、すぐに間合いを取った。


その瞬間、銃声が響く。


南浦の通常弾が怪人を捉える。


一発。


さらに一発。


怪人の身体が揺れた。


川出も側面へ回り込む。


近距離へ入れば動きを邪魔し、距離が開けば射撃で牽制する。


北山。


ニシ。


東。


川出。


南浦。


それぞれ違う戦い方。


それぞれ違う間合い。


それを繋いで、怪人を少しずつ追い込んでいく。


攻撃は効いている。


傷も増えている。


動きも鈍っている。


それでも、倒れない。


「やっぱり、これだけじゃ……!」


東が息を整える。


南浦も分かっていた。


普通の攻撃では、主怪人を倒し切れない。


◇


少し離れた場所。


アガトは、倒れたメス型怪人の身体を支えようとしていた。


だが、メス型怪人が別の方向を見る。


そこには、負傷して動けなくなった隊員がいた。


メス型怪人は、自分も傷ついているにもかかわらず、その隊員の方へ向かう。


「……?」


隊員が顔を上げる。


メス型怪人が身体を支える。


反対側からアガトも手を貸した。


二体で、負傷した人間を戦闘区域の外へ運んでいく。


南浦は、狙撃位置からその様子を見ていた。


怪人が、人間を助けている。


一度ではない。


何度も。


それでも南浦は何も言わない。


銃口も、二体には向けなかった。


◇


主怪人が再び突進する。


北山が正面へ出る。


拳を受け流し、突きを返す。


ニシが横から組みつく。


東がレイピアで腕の動きを制限する。


川出も逆側へ回った。


主怪人が暴れる。


北山が弾かれる。


ニシも引き剥がされる。


東のレイピアをかわし、怪人が前へ出た。


「まだだ!」


川出が動きを止める。


再び北山が正面へ。


ニシが今度は腰へ組みつく。


東が間合いを詰める。


怪人が、ほんの一瞬止まった。


東が叫ぶ。


「南浦さん!」


南浦は、すでに通常弾から切り替えていた。


一発だけ。


シラメ博士から渡された特殊弾。


狙う。


だが、まだ撃たない。


怪人が僅かに身体を動かす。


照準を修正する。


北山たちも必死に押さえる。


南浦の呼吸が止まる。


完全に射線が通った。


「……そこだ」


銃声。


特殊弾が主怪人へ命中した。


「離れろ!」


川出の声。


北山たちが一斉に距離を取る。


怪人の身体が大きく揺れた。


それでも、立っている。


東の表情が曇る。


「……駄目なの?」


一秒。


二秒。


主怪人が動こうとする。


その瞬間、身体が大きく痙攣した。


膝が落ちる。


そして、そのまま地面へ倒れた。


誰もすぐには近づかなかった。


南浦も銃を構えたまま見ている。


怪人は、もう動かない。


「……効いたな」


南浦が短く言った。


東が息を吐く。


「本当に倒した……」


「一発しかなかったからな」


南浦は、それだけ答えた。


北山。


ニシ。


川出。


東。


そして南浦。


誰か一人ではない。


全員が作った一瞬の隙。


そこへ特殊弾を撃ち込んだ。


初めて、自分たちだけで主怪人を倒した。


◇


一箇所目へ向かっていたキッドの端末が鳴った。


『紀人君』


「東さん?」


『こっちも沈黙したわ』


キッドの足が少し緩む。


「倒したんですか?」


『ええ。もう大丈夫』


「分かりました」


通信を切る。


戦闘が終わったなら、キッドの姿のまま現場へ入る必要はない。


紀人は一箇所目の少し手前、人目のない場所へ入った。


変身を解除する。


そして、普通の紀人として現場へ向かった。


◇


戦闘の痕が残る現場へ、紀人が走ってくる。


「東さん!」


東が振り返る。


「紀人君」


その反応は、ごく普通だった。


だが、他の者たちは違う。


北山が目を丸くする。


「……紀人?」


川出も見る。


「何でお前がここにいるんだ?」


ニシも首を傾げた。


「お前、最近こういう場所に現れすぎじゃないか?」


紀人の顔が固まる。


「えーっと……」


何も考えていなかった。


「近くに……いたんで」


「また?」


「またです」


かなり苦しい。


南浦も怪しそうに紀人を見る。


東だけは、すぐに話を変えた。


「それより、まだ負傷者の確認が終わってないわ」


少し離れたところにいたシラメ博士も続ける。


「そうだね。話はその後にしよう」


紀人は内心で胸を撫で下ろした。


◇


「アガト!」


紀人が見つけた。


アガトがすぐに振り向き、そのまま紀人の方へ近づいてくる。


川出が、その様子を見る。


「……お前もそう呼んでるのか」


紀人が振り返った。


「え?」


「アガト」


「そりゃ名前だから」


「違うぞ」


「……何が?」


北山が言った。


「それ、名前じゃないらしい」


紀人が固まる。


「え?」


川出が説明する。


「『ありがとう』って意味だ」


「……え?」


紀人がアガトを見る。


アガトも紀人を見る。


「アガト」


紀人が指差した。


「ほら! 自分で言ってるじゃん!」


「だから『ありがとう』だって」


「マジで?」


東が小さく言う。


「私もさっき知った」


紀人が振り返った。


「東さんも名前だと思ってたんですか?」


「思うでしょう!」


二人を見る川出。


北山。


ニシ。


微妙な空気になる。


「二人とも同じ間違いしてたのか……」


紀人は少しだけ落ち込んだ。


◇


そこで、シラメ博士が手を叩いた。


「ところでさ」


全員が見る。


「僕と南浦さんからも、一つ聞きたいことがあるんだけど」


南浦も腕を組む。


「俺もだ」


東が嫌な顔をする。


川出も視線を逸らした。


シラメ博士が言う。


「つまり、みんな前からこの子のこと知ってたんだよね?」


沈黙。


南浦の眉が寄る。


「俺たちには黙ってたのか?」


誰も答えない。


「何で一言相談しなかった」


シラメ博士も続ける。


「そうだよ。相談してくれれば、いくらでもやりようはあったでしょう?」


東たちが顔を見合わせる。


やがて、川出が言いにくそうに口を開いた。


「いや……博士に言ったら」


「僕に言ったら?」


「実験モルモットにされそうだったから」


シラメ博士の動きが止まる。


「……」


今度は、北山たちの視線が南浦へ向く。


南浦が睨む。


「何だ」


ニシが答えた。


「お前に『ネズミ怪人がいる』って言ったら……攻撃対象にするだろ」


「……」


「下手したら、見つけた瞬間撃つだろうし」


南浦が黙った。


シラメ博士と南浦。


二人とも、思った以上に信用されていなかった。


南浦が先に口を開く。


「博士はともかく、俺はそこまでひどくねえ」


「ちょっと待って」


シラメ博士がすぐに返す。


「南浦さんはともかく、僕はそこまでひどくないよ」


二人が互いを見る。


「……」


「……」


東が小さく言った。


「そういうところなのよね」


誰も否定しなかった。


◇


「まあ、それはそれとして」


シラメ博士が咳払いする。


「今回、一つ大きな収穫がある」


空気が少し変わった。


「怪人タイプのサンプルが、二体分手に入った」


北山が見る。


「二体?」


「うん」


一体は、キッドが二箇所目で撃破したネズミ型怪人。


そして、もう一体は、この場所で自分たちが特殊弾によって倒した個体。


シラメ博士が続ける。


「今までは、怪人そのものを詳しく調べられる材料がほとんどなかった。でも今回は違う」


川出が聞く。


「調べれば、何か分かる?」


「可能性はあるよ」


怪人の身体。


耐久力。


通常の武器が効きにくい理由。


今回の特殊弾が、なぜ効いたのか。


分かることは多いかもしれない。


北山の表情が少し明るくなる。


「じゃあ、もっと効く武器も作れるかもしれない?」


ニシも頷いた。


「今までより戦いやすくなるならでかいな」


南浦も、特殊弾を撃った銃を見る。


「一発だけじゃ困る」


東も期待を込めてシラメ博士を見る。


だが、シラメ博士だけは慎重だった。


「まだ調べてもいないからね」


「え?」


「二体手に入った。それだけ」


少し笑う。


「期待するのは、結果が出てからにしてよ」


それでも、人間側には怪人へ対抗するための新しい材料が手に入った。


◇


一通り話が終わる。


東が改めてアガトを見る。


「でも、名前じゃなかったなら……これから何て呼べばいいの?」


全員が少し考える。


紀人が言った。


「じゃあ」


アガトを見る。


「アガト」


アガトがすぐに紀人を見た。


全員が止まる。


紀人がもう一度呼ぶ。


「アガト」


また、ちゃんと反応する。


川出が苦笑した。


「……もう自分のことだと思ってるな」


東と紀人が、ずっとそう呼び続けてきた。


いつの間にか、アガト自身まで、その言葉を自分が呼ばれているものだと覚えてしまったらしい。


北山が言う。


「今さら変える方がややこしくないか?」


ニシも頷いた。


「本人も分かってるなら、もうそれでいいだろ」


東も笑う。


「そうね」


紀人がしゃがみ、アガトを見る。


「じゃあ決まり」


少し間を置く。


「お前は、アガト」


アガトが紀人を見る。


そして、いつものように言った。


「アガト」


本当は、「ありがとう」。


その意味だったはずの言葉は、いつの間にか本当に一匹のネズミ怪人の名前になっていた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。