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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ガスねずみ編

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第五章 第五話 同じじゃない

第五章 第五話 同じじゃない


数日後。


午前九時過ぎ。


最初の通報が入った。


場所は、駅から少し離れた住宅街。


「手が……痺れる……」


買い物袋を持っていた女性が、歩道の端で立ち止まった。


指先に力が入らない。


袋が手から滑り落ちる。


近くにいた男性が声をかけた。


「大丈夫ですか?」


「ちょっと……手がおかしくて」


その男性も。


数分後には。


「……あれ?」


自分の足に違和感を覚えた。


身体が重い。


思うように歩けない。


だが。


倒れ込むほどではない。


周囲でも同じように、手足の痺れや軽い吐き気を訴える人が出始めた。


救急車が呼ばれた。


警察にも連絡が入る。


そして。


その報告を受けた本部の反応は、以前とは違っていた。


「またか」


担当者が即座に時計を見る。


「発生時刻は?」


「九時十一分頃です」


「他の地域にも注意を出せ」


「もうですか?」


「前もそうだっただろ」


一件目が起きた。


その後。


短い時間の中で、別の場所でも同じことが起きた。


なら。


今回も。


「何かあればすぐ上げろ」


警察側も。


もう偶然の事故とは考えていなかった。


◇


午前九時四十七分。


二箇所目。


今度は、商業施設の近く。


「救急車!」


叫び声が上がった。


一人の男性が、その場に崩れ落ちる。


「大丈夫ですか!」


「身体が……動かない……」


近くでは。


別の女性が吐き気を訴え。


壁にもたれかかっていた。


「息……苦しい……」


一箇所目とは違う。


明らかに重い。


意識を失う者もいた。


自力で歩けない者も多い。


救急隊員が次々と人を運ぶ。


本部へ連絡が入る。


「二件目です!」


「症状は?」


「前の場所より重いです!」


「重い?」


「意識を失っている人もいます!」


電話を受けた警察官の表情が変わる。


「……濃度が違うのか?」


誰かが呟いた。


だが。


まだ。


その理由は分からない。


◇


午前十時三十二分。


三箇所目。


今度は。


最悪だった。


高齢の男性が倒れた。


その隣では。


女性が胸を押さえている。


「救急!」


「こっちも!」


「呼吸が弱い!」


現場は一気に混乱した。


救急隊員が必死に処置をする。


だが。


すべての人を。


助けられるわけではなかった。


「……」


医師が静かに首を振る。


周囲の空気が変わる。


一人。


そして。


もう一人。


身体の弱い人を中心に。


助からない者が出た。


警察本部へ。


死亡者発生。


その報告が届く。


部屋が静まり返った。


今までとは。


意味が違う。


「人が死んだ」


誰かが小さく言った。


もう。


原因不明の体調不良ではない。


もう。


ただの傷害事件でもない。


短時間に。


複数地点で。


人が倒れ。


そして。


死者まで出た。


「同時多発テロとして扱う準備をしろ」


今度は。


誰も。


その言葉を大げさだとは思わなかった。


◇


その同じ時間帯。


四箇所目。


だが。


こちらは。


あまりにも様子が違っていた。


「怪人?」


「はい!」


通報を受けた警察官が聞き返す。


「またネズミみたいな?」


「たぶん……」


「暴れた?」


「いや」


「人を襲った?」


「それも……」


「じゃあ何してたんだ」


通報者が困ったように答える。


「助けてました」


「……また?」


「はい」


小柄な怪人だった。


白っぽい。


見た目は。


確かに怪人。


だが。


人を襲うどころか。


転びそうになった人の身体を支え。


混乱して車道へ出そうになった人を押し戻し。


泣いている子供を。


人の少ない場所へ誘導していた。


「怖かったんですけど」


目撃した女性が言った。


「何ていうか……」


「何です?」


「怖い怪人って感じじゃなかったです」


「……」


「小さかったし」


「小さい?」


「はい」


少し考える。


「白っぽくて……」


別の目撃者も言う。


「前にニュースになってた怪人と同じかは分からないです」


その情報も。


CASHへ送られた。


◇


CASH。


机の上。


四箇所の資料。


東が被害状況を確認していた。


「一箇所目は軽症が中心」


資料をめくる。


「二箇所目は重症者が多い」


そして。


三枚目。


東の声が少し低くなる。


「三箇所目では……死者が出てる」


部屋が静かになった。


川出。


北山。


ニシ。


南浦。


一般隊員。


全員が資料を見る。


北山が眉を寄せる。


「同じ事件ですよね?」


「少なくとも、発生の仕方はかなり似てるわ」


東が答える。


川出が三枚を並べる。


「でも、被害が違いすぎる」


ニシが言った。


「場所の広さとか、風向きとかじゃないのか?」


川出が首を振る。


「それだけでここまで差が出るかな」


南浦が短く言った。


「量だろ」


全員が南浦を見る。


「量?」


東が聞く。


「ああ」


南浦は資料を指した。


「撒いた量が違うか」


次。


「濃さが違う」


北山が考える。


「意図的に?」


「そう考えた方が早い」


南浦は淡々としている。


東は。


もう一度。


三箇所の被害状況を見る。


軽症。


重症。


死亡。


違いすぎる。


「……試してる?」


川出が東を見る。


「何をです?」


東は少し考えてから言った。


「どれくらい使えば」


資料を見る。


「人間に、どの程度の影響が出るのか」


部屋の空気が変わる。


ニシが顔をしかめた。


「人体実験ってことか?」


「そこまでは断定できないけど」


東は静かに続ける。


「もし量や濃さを変えてるなら」


少し間を置く。


「被害そのものを、データとして見てる可能性はあると思う」


南浦が小さく息を吐いた。


「趣味が悪い」


それだけだった。


◇


今回も。


三箇所の防犯映像が集められた。


一箇所目。


人間。


二箇所目。


別の人間。


三箇所目。


また別の人間。


体格。


身長。


服装。


全部違う。


だが。


やっていることは同じ。


腕を伸ばす。


手の先から。


煙のようなものが広がる。


川出が画面を見比べた。


「やっぱり三人いる」


北山が言う。


「前回も三人」


ニシが腕を組んだ。


「今回も三人」


南浦が言った。


「三匹だ」


東が南浦を見る。


今回は。


前のように。


すぐには否定しなかった。


「……そうね」


南浦が少しだけ東を見る。


「今回は止めないんだな」


「可能性はかなり高くなったもの」


東が画面を止める。


「でも、まだ怪人体そのものを見たわけじゃないわ」


「十分だろ」


「十分じゃないの」


東は柔らかいが。


言葉ははっきりしていた。


「疑うことと、確定することは別」


南浦は肩をすくめる。


「分かった」


その後。


今回も。


各現場から長い毛が見つかった。


三箇所。


それぞれ。


少しずつ違う。


川出が証拠袋を見る。


「ここまで揃えば」


北山が続ける。


「ネズミ型の何かが複数いる」


ニシが言う。


「それは、もうかなり濃いな」


東も頷いた。


「そうね」


そして。


少し間を置く。


「ネズミ型の怪人を、探しましょう」


川出。


北山。


ニシ。


三人の表情が。


ほんの少しだけ変わった。


南浦は気づかなかった。


「やっとか」


短く言う。


「最初からそうすればよかった」


東は苦笑する。


「証拠が必要なの」


だが。


川出たちにとっては。


別の問題が始まっていた。


◇


少し後。


川出。


北山。


ニシ。


三人だけ。


川出が小さく言う。


「まずいな」


北山が答える。


「ああ」


ニシも頷く。


三人には。


言葉にしなくても分かっている。


「本当にネズミ怪人を探すことになった」


川出が言う。


ニシが頭を掻く。


「犯人は探さないと駄目だ」


「ああ」


「でも」


少し間を置く。


「あいつまで見つけたらどうする」


北山が黙る。


川出も答えない。


ニシが続ける。


「犯人を探しながら」


苦笑する。


「一匹だけ見つけるなって、無茶じゃないか?」


北山が言った。


「南浦に先に見つけられたら?」


三人。


同時に黙る。


川出が答える。


「撃つだろうな」


「だよな」


ニシが小さくため息をつく。


川出は壁にもたれた。


「少なくとも」


二人を見る。


「俺は、あいつを撃たせたくない」


北山が頷く。


ニシも。


「ああ」


「俺もだ」


だが。


どうするか。


答えはなかった。


◇


一方。


東も。


紀人へ連絡を入れていた。


パンさんの店ではなく。


外。


人通りの少ない場所。


紀人は電話越しに。


しばらく黙っていた。


「……死んだんですか」


「ええ」


東が静かに答える。


「今回、亡くなった人がいるの」


「……」


紀人の声が低くなる。


「それで」


東が続ける。


「CASHでも、ネズミ型の怪人を探すことになったわ」


その瞬間。


紀人が聞いた。


「アガトは?」


東も。


同じことを考えていた。


「……私も心配してる」


「だったら」


紀人が言う。


「先にアガト見つけて、どっか安全な場所に」


「それはできないわ」


東が静かに遮る。


「でも」


「私たちは警察なの」


東の声は柔らかい。


「まだアガトが完全に無関係だって証明できたわけじゃない」


「……」


「そんな状態で、先に隠すようなことはできないわ」


紀人は納得できない。


だが。


東の立場も。


分からないわけではない。


「じゃあ」


紀人が言う。


「南浦さんとかが先に見つけたら?」


「……」


今度は。


東が黙った。


「撃ちますよね?」


「たぶん」


東は誤魔化さなかった。


「だから」


少しだけ声を落とす。


「それが一番心配なの」


紀人が。


しばらく何も言わなかった。


◇


翌朝。


紀人は。


いつもの公園へ走った。


「アガト」


呼ぶ。


しばらくすると。


植え込みの奥から。


姿が出てくる。


「いた」


紀人は。


少しだけ安心した。


アガトが近づいてくる。


いつも通り。


「お前さ」


紀人はしゃがむ。


「しばらく、あんまりウロウロするなよ」


アガトが見る。


「今、ネズミってだけで危ないんだから」


アガトは。


当然。


分からない。


紀人の方へ寄ってくる。


「いや、寄ってくるのはいいんだけど」


紀人は困る。


「そうじゃなくて」


少し考える。


「……分かんないよなあ」


アガトが首を傾げる。


紀人はため息をついた。


「頼むから」


軽く頭を撫でる。


「変なところで見つかるなよ」


アガトは。


やはり。


いつも通りだった。


◇


その日の午後。


CASH。


四箇所目。


怪人目撃の聞き込み結果がまとまっていた。


川出が資料を見る。


「小柄」


北山が続ける。


「白っぽい」


ニシが別の証言を見る。


「怖い感じじゃなかった」


川出が眉を寄せる。


「……あいつ、こんな感じだったか?」


北山も考える。


「いや」


ニシが首を振った。


「何か違う気がする」


三人の頭に浮かぶ。


自分たちが知っている。


あのネズミ怪人。


体格。


雰囲気。


動き。


証言と。


完全には一致しない。


川出が言う。


「じゃあ」


二人を見る。


「人を助けてる方も」


少し間を置く。


「一匹じゃない?」


北山が目を細める。


ニシが。


ゆっくり頷いた。


「ありえるな」


少し離れた場所。


東も。


同じ資料を読んでいた。


小柄。


白っぽい。


東が。


小さく呟く。


「……アガトじゃない?」


もし。


そうなら。


人を助けているネズミ怪人まで。


複数いることになる。


謎は。


さらに増えた。


◇


夜。


地下施設。


四体のネズミ怪人が戻ってきていた。


人間の擬態を解き。


それぞれの姿で。


並んでいる。


少し離れたところ。


男が端末を確認していた。


今回の結果。


一体目。


薬剤使用量。


低。


被害。


軽症中心。


男が数字を見る。


「弱いな」


次。


二体目。


使用量。


中。


重症者多数。


「こっちは悪くない」


そして。


三体目。


使用量。


高。


死亡者あり。


男は。


少しだけ画面を止めた。


「……この辺りで死亡例が出るか」


まるで。


研究室のデータを見るように。


淡々としている。


「次は、この中間で試すか」


量。


濃度。


条件。


数字を調整していく。


そして。


最後。


四体目。


女性型のハツカネズミ怪人。


男の手が止まった。


「……」


画面を見る。


薬剤残量。


ほとんど減っていない。


前回。


濃度を上げた。


使用しやすいよう。


条件も変えた。


それなのに。


減っていない。


「またか」


男が。


初めて少しだけ怪人を見る。


女性型ハツカネズミ怪人は。


黙っている。


「濃くしても」


端末を見る。


「使ってない?」


男の表情が。


少しだけ変わった。


今までは。


散布量の問題だと思っていた。


個体差。


条件。


そう考えていた。


だが。


二度。


続いた。


男は。


女性型ハツカネズミ怪人を見つめる。


「お前」


少し間を置く。


「現場で何してる?」


答えはない。


女性型ハツカネズミ怪人は。


ただ。


静かに。


立っていた。


※本作は、作者とChatGPTが合作しながら制作しています。物語の根幹となる設定・構成・キャラクター・展開は作者が主体となって制作し、AIが生成した文章についても作者が確認・修正・全面的な推敲を行っています。作品としての最終的な判断と責任は、すべて作者にあります。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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