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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ガスねずみ編

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第五章 第三話 手から出るガス

第五章 第三話 手から出るガス


救急車のサイレンが鳴り響いていた。


歩道には規制線が張られ、消防と警察が慌ただしく動き回っている。


「こちらの方もお願いします!」


救急隊員の声が飛ぶ。


担架に乗せられた女性が、不安そうに自分の手を見ていた。


「まだ……痺れてます」


「指は動かせますか?」


「少しなら……」


少し離れた場所では、男性が地面に座り込んでいる。


「足に力が入らないんです」


「気分は?」


「吐きそうで……」


同じような症状を訴える人が何人もいた。


手足の痺れ。


吐き気。


脱力感。


中には立つことすらできず、そのまま病院へ運ばれる者もいる。


「ガス漏れか?」


現場にいた警察官が聞いた。


消防隊員が首を振る。


「まだ分かりません」


「周辺の設備は?」


「確認しています」


「配管も全部だ」


「はい!」


周囲の建物にも避難を呼びかける。


現場は完全に、原因不明のガス事故として動き始めていた。


◇


だが。


調査を進めても、原因は見つからなかった。


「漏れてない?」


「はい」


報告を受けた警察官が眉をひそめる。


「本当に?」


「周辺のガス設備は確認しました。異常はありません」


「じゃあ、何でこんなことになったんだ」


「それが……」


別の警察官が資料を持ってくる。


「薬品の不法投棄も調べています」


「何か見つかった?」


「今のところは」


「工場とかは?」


「近くにはありません」


「……」


原因になるものがない。


それなのに、実際に人は倒れている。


「事故じゃない可能性もあるな」


一人が言った。


「誰かが意図的に撒いたとか?」


「テロってことですか?」


「まだ分からん」


警察官は現場を見る。


「でも、事故じゃないなら事件だ」


その言葉で。


捜査の方向が少しずつ変わり始めた。


◇


数時間後。


警察本部。


集められた防犯カメラの映像が、何度も再生されていた。


「ここ」


一人が画面を止める。


通行人が映っている。


誰も特に変わった様子はない。


「少し戻して」


映像が巻き戻る。


再生。


その中に一人。


他の人間とは少し離れた場所を歩く人物がいた。


見た目だけなら、普通の人間。


「この人か?」


「その直後です」


人物が立ち止まる。


片腕を上げる。


そして、手を前へ向けた。


次の瞬間。


周囲に薄い煙のようなものが広がった。


「……」


部屋が静かになる。


もう一度。


再生。


腕を伸ばす。


その手の先から、煙。


「何だ、これ」


「手から出てないか?」


「そんなわけあるか」


即座に否定する声。


「何か持ってるんだろ」


「でも、映ってないですよ」


「小さい噴射器とか」


「袖の中に隠してるんじゃないか?」


「カメラの画質が悪いから見えないだけかもしれない」


映像を拡大する。


粗くなる。


ますます分からない。


ただ。


どう見ても。


人間が何も持たず、手からガスを噴き出しているようにしか見えなかった。


「……怪人だったりして」


誰かが冗談めかして言った。


「ないない」


すぐに笑われる。


「人間が手からガス出すより、そっちの方がありえないだろ」


「ですよね」


笑いは小さく。


すぐに消えた。


だが。


映像の説明は、誰にもできなかった。


◇


その映像は、やがてCASHにも回ってきた。


「これね」


東が画面を止めた。


川出。


北山。


ニシ。


南浦。


数人の隊員。


全員がモニターを見ている。


人間らしき人物。


腕を伸ばす。


そして、煙。


南浦が言った。


「手から出してるな」


北山も画面を見る。


「少なくとも、そう見える」


ニシが腕を組んだ。


「普通の人間にできるのか?」


「普通なら無理だろうな」


川出が答える。


東は映像をもう一度再生した。


「本部では、何か道具を使ってるんじゃないかって見てるみたい」


南浦が画面から目を離さない。


「道具か」


「小型の噴射器とか、服の中に仕込んでるとか」


「見えないな」


「映像が粗いから、そこまでは分からないって」


少し間が空く。


南浦は腕を組んだまま言った。


「怪人なら説明はつく」


部屋が少し静かになる。


川出も頷く。


「可能性はあるな」


東はすぐには同意しなかった。


「まだ決めつけるのは早いわ」


そして、映像を止める。


「でも、調べてみる価値はありそうね」


◇


CASHが現場へ着いた時には、すでに一般の警察や消防による調査が進んでいた。


東たちは、その邪魔にならない範囲で周囲を確認する。


「怪しい物は触らないでね」


東が言う。


「分かりました」


川出が周囲を見る。


道路。


歩道。


植え込み。


側溝。


特に変わったものは見当たらない。


「何かあれば、とっくに警察が見つけてそうだな」


ニシが言った。


「それでも見落としはある」


川出は歩き続ける。


少し先。


植え込みの脇。


何かが目に入った。


「……ん?」


しゃがみ込む。


「どうした?」


北山が近づく。


川出は地面を指した。


「これ」


細い。


何かの毛。


北山もしゃがむ。


「動物の毛か?」


「たぶんな」


ニシも覗き込む。


「何の?」


川出はしばらく見ていた。


「ネズミ……っぽくないか?」


「ネズミ?」


北山の表情が少し変わる。


ニシも黙った。


確かに。


色や細さだけを見れば、ネズミの毛に見えなくもない。


だが。


「長くないか?」


ニシが言う。


川出も頷いた。


「普通のネズミなら、こんなに長くないと思う」


三人の視線が一瞬だけ重なる。


同じものを思い浮かべた。


あのネズミ怪人。


何度も会った。


少しずつ意思を通わせ。


今では、かなり親しくなった。


だが。


三人は何も言わない。


少し離れたところでは、東もその毛を見ていた。


そして。


東の頭にも、別の経緯から同じ一体の怪人が浮かんでいた。


アガト。


そこへ。


南浦が近づいてきた。


「何かあったか」


川出が毛を示す。


「動物の毛みたいだ」


南浦が見る。


「ネズミか?」


「たぶんな」


「でも長すぎる」


北山が付け加える。


南浦は少し考えた。


そして、あっさりと言った。


「ネズミ型の怪人じゃないのか」


「……」


川出。


北山。


ニシ。


三人が黙る。


東も何も言わなかった。


南浦が続ける。


「防犯カメラの人型が怪人なら、筋は通る」


誰も答えない。


「なら」


南浦はごく当然のように言った。


「ネズミ怪人を探せばいい」


「……」


空気が僅かに固まった。


南浦が四人を見る。


「何だ?」


東が先に口を開く。


「……まだ、この毛だけで決めるのは早いわ」


「そうか?」


「普通の動物の可能性もあるし、たまたまここに落ちていただけかもしれないでしょう?」


川出も続ける。


「毛だけじゃ、事件との関係も分からない」


南浦は毛をもう一度見る。


「……まあ、それはそうだな」


それ以上は言わなかった。


だが。


東。


川出。


北山。


ニシ。


四人にとっては。


単純に。


ネズミ怪人を探せ。


では済まない話だった。


◇


CASHへ戻る。


証拠と映像を並べる。


人間に見える人物。


手から噴き出したように見えるガス。


現場に落ちていた、通常のネズミにしては長すぎる毛。


北山がモニターを見ながら言った。


「もし本当に怪人なら」


東が見る。


「うん?」


「この時、人間の姿をしてたことになりますよね」


川出も画面を見る。


「そうなるな」


少し間を置く。


「前にもいたな」


ニシが顔を上げた。


「ミラーカメレオンか」


「人間の姿になれる怪人」


川出が頷いた。


第四章。


実際に見た人間の姿へ擬態し。


事件を起こしていた怪人。


東も少し考えた。


「同じ能力とは限らないわ」


「でも」


北山が言う。


「無関係とも言い切れない」


「そうね」


東は画面を見る。


そこに映っているのは、どこから見ても人間。


「少なくとも、人間の姿を取れる怪人が存在することは、もう分かってるものね」


南浦が腕を組んだ。


「だったら、なおさら怪人を疑うべきだろ」


東は南浦を見る。


「疑うのと、決めつけるのは別よ」


「……」


「今はまだ、調べましょう」


南浦は短く答えた。


「分かった」


◇


その日の夜。


パンさんの店。


紀人は東の話を聞いていた。


今日はパンさんから少し離れた席だった。


東も声を落としている。


「別の事件でね」


「はい」


「ネズミの毛みたいなものが見つかったの」


紀人の顔から少しだけ笑みが消えた。


「ネズミ……」


「普通のものにしては、かなり長いみたい」


「……」


東は続ける。


「まだ、怪人が関係してるって決まったわけじゃないわ」


紀人は少し黙った。


そして。


「アガトですか?」


「……可能性としてはね」


紀人はすぐに首を振った。


「いや」


東が見る。


「あいつがそんなことするわけないですよ」


声は思った以上に強かった。


東は少しだけ目を細める。


「そう思う?」


「だって」


紀人は続ける。


「あいつ、人助けするようなやつですよ」


「……うん」


「人にガス撒いて倒すなんて、するわけないです」


東も。


そう思いたかった。


いや。


かなり、そう思っている。


だからこそ。


簡単には言えない。


「私も、アガトがやったとは思いたくないわ」


「ですよね」


「でも」


東は静かに言う。


「警察としては、そう思ってるだけじゃ駄目なの」


紀人は黙った。


「違うなら、違うって分かるものを見つけないと」


「……」


「それが一番、アガトのためにもなると思う」


紀人はしばらく考えていた。


やがて、小さく頷く。


「……分かりました」


東も頷いた。


その時だった。


東の端末が鳴った。


「はい」


電話に出る。


「……え?」


紀人が東を見る。


東の表情が変わった。


「場所は?」


しばらく話を聞く。


そして、電話を切った。


紀人が聞く。


「どうしたんですか?」


東は端末を見たまま答えた。


「……またみたい」


「また?」


「別の場所で」


東が紀人を見る。


「同じように、手足の痺れと体調不良を訴えてる人が何人も出たって」


「……」


紀人の表情が変わる。


最初の現場とは離れた場所。


同じような症状。


東は静かに立ち上がった。


「事故じゃないのかもしれないわね」


原因不明の異変は。


一度では。


終わらなかった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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