第十話 ちょっと俺と付き合えや
第十話 ちょっと俺と付き合えや
「ちょっと俺と付き合えや」
ヨミが立っていた。
キットは構えを解かない。
倒れたミラーカメレオン。その向こうにいるヨミを警戒しながら、一歩前へ出る。
「何しに来た」
「ん?」
ヨミは少し首を傾げた。
「別に?」
「別に、で来る場所じゃないだろ」
「そうか?」
軽い。
相変わらず、何を考えているのか分からない。
東たちCASHもヨミを警戒していた。南浦が武器を向け、川出も構える。
だが、東は手を上げた。
「待って」
ヨミはそれを見ても、特に気にした様子を見せない。
「お前、何が目的だ」
「だから」
ヨミが笑う。
「付き合えって言ってんだろ」
そして、メモリーを使った。
「最初からかよ……!」
ワシ。
ヨミの姿が変わり、翼を持つスタイルへと変化する。
キットの目が細くなった。
素の状態なら、ヨミと自分にそこまで大きな差はない。身体能力だけならほとんど互角で、戦えば空手を続けてきた自分の方がわずかに上。
ヨミもそれを知っている。
「なるほど。最初から普通にやる気ないってことか」
「勝てるやり方でやるだけだろ」
「そういうところ、嫌いじゃないけどな」
「そりゃどうも」
ヨミが消えた。
「っ!」
速い。
キットが腕を上げた瞬間、強烈な衝撃が走り、身体が後ろへ押される。
ヨミは止まらない。
続けて放たれた一撃をキットが避け、そのまま拳を返す。だが、ヨミはそれもかわした。
「くそっ!」
蹴りも受けられ、逆に押し返される。
キットが距離を取ると、ヨミは追ってこなかった。
余裕がある。
「どうした?」
「まだ始まったばっかだろ」
「そうか」
次の瞬間、ヨミが再び間合いを詰めた。
◇
「不用意に撃たないで!」
東が指示を出した。
南浦はヨミへ狙いをつけている。
だが撃てない。
キットとヨミの位置が激しく入れ替わり、わずかな判断ミスが味方への誤射につながる。
「速すぎるな。下手に撃ったらキットに当たる」
川出が呟く。
「分かってる。だから撃ってない」
南浦は照準を外さない。
東は周囲へ視線を走らせた。
「残ってる隊員は周辺確認! シロアリの追加がいないか見て! 負傷者の確認も!」
「了解!」
CASHが動く。
戦闘が終わったわけではない。
だが今、あの二人の間へ無理に割って入る方が危険だった。
◇
ヨミの攻撃をキットが受ける。
すぐに拳を返すが、かわされた。
続く蹴りにもヨミは身体を反らして対応する。
キットはそのまま追い、次の拳を叩き込んだ。
今度は当たる。
ヨミが一歩下がった。
「やっぱ」
ヨミが笑う。
「素でやるより面倒だな、お前」
「だったら外せよ、それ」
「嫌だね」
ヨミが踏み込む。
キットが攻撃を防ぐ。
「勝てる方使って何が悪い」
「正論!」
キットが押し返した。
だが次の瞬間には、ヨミが横へ回っている。
「ぐっ!」
攻撃を受けたキットが地面を転がる。
すぐに起き上がった。
強い。
単純な技量だけではない。ワシの力が乗っている。
しかも紀人は、ミラーカメレオンとの戦いを終えた直後だ。呼吸も完全には戻っていない。
「だったら……こっちもやるしかない」
キットはメモリーへ手を伸ばした。
腕のスロットへカンガルー。
足のスロットへヒクイドリ。
それぞれを装着すると、腕と脚が戦闘に適した姿へ変化する。
頭と胴のスロットは空いたまま。
キットが構えた。
ヨミが少しだけ目を細める。
「へえ」
「今度はこっちの番だ」
キットが踏み込んだ。
◇
キットの拳をヨミが受ける。
衝撃で腕が弾かれた。
「おっ」
その隙を逃さず、キットがもう一発。
ヨミがかわした先へ、今度は蹴りを叩き込む。
「っと!」
ヨミが後ろへ跳んだ。
「逃がすか!」
キットが距離を詰める。
拳から蹴りへ。上段から下段へ。
腕と脚を休ませず、連続して攻める。
ヨミは受け、かわし、その合間から反撃する。
キットも受ける。
二人の攻撃が何度もぶつかった。
攻撃力は上がっている。
それでも。
「くっ……!」
押されているのはキットだった。
ヨミは拳をかわし、蹴りを読み、その隙へ正確に攻撃を返してくる。
「まだ足りないのかよ……!」
「悪くないぞ」
ヨミが言う。
「でも、まだ俺の方が上だ」
強烈な一撃を受け、キットが吹き飛ばされた。
◇
東は戦いを見ていた。
「……強い」
北山も黙ったまま二人を追っている。
キットが弱いわけではない。
あれだけの戦いを終えた直後に、さらに二つのメモリーを使って戦っている。
それでもヨミが押している。
「何なんだ、あいつ」
川出が呟く。
東は答えなかった。
分からない。
ただ、一つだけ違和感がある。
ヨミは戦いながら、少しずつ位置を変えていた。
キットを押し、移動する。
また攻撃し、キットが追えばさらに位置を変える。
戦闘の流れでそうなっているだけにも見えた。
だが。
東は、その先にあるものへ気づいた。
倒れているミラーカメレオン。
「……まさか」
東の表情が変わった。
◇
「キット!」
東の声に、キットが一瞬だけ反応する。
「そいつ、カメレオンの方へ――」
ヨミの拳が飛んだ。
「っ!」
キットが防ぐ。
「余所見すんなよ」
「お前……!」
キットも気づいた。
さっきからヨミは、戦いながら少しずつミラーカメレオンへ近づいている。
「最初から……!」
「何が?」
「とぼけんな!」
キットが拳を放つ。
ヨミがかわす。
続く蹴りを受けながら、さらに一歩ミラーカメレオンへ近づく。
「行かせるか!」
キットが前へ出た。
そのとき。
ヨミの身体が止まった。
「……っ」
ほんの一瞬だった。
ヨミが胸元を押さえ、呼吸を乱す。
「お前?」
「……気にすんな」
「気にするだろ」
「お前、意外と優しいな」
「そういう話してない!」
ヨミが再び動く。
だが遅い。
さっきまでとは明らかに違う。
キットが踏み込み、拳を叩き込む。
ヨミが受け、押される。
続けて蹴り。
「ぐっ!」
今度はヨミが大きく下がった。
「やっぱり」
キットが構える。
「長く使えないんだな、その身体」
ヨミは答えない。
呼吸は明らかに乱れている。
「だったら!」
キットが攻めた。
拳と蹴りを連続して繰り出す。
ヨミは受けながら後退する。
流れが変わった。
キットが押す。
ヨミが下がる。
さらにもう一歩。
そして。
ヨミの足元には、倒れたミラーカメレオンがいた。
◇
「しまっ――!」
キットが気づく。
ヨミが笑った。
「遅い」
拳をかわし、身体を沈める。
その手が、倒れているミラーカメレオンへ伸びた。
身体から一つのパーツを取る。
「お前!」
キットが止まった。
東も川出も、その手元を見る。
ヨミは手にしたものを確認する。
「よし」
「それが目的だったのか」
キットが睨む。
ヨミは肩で息をしながら、それでも笑った。
「目的は果たした」
「返せ!」
「嫌だね」
「囲んで!」
東の声でCASHが動く。
川出。
南浦。
北山。
ニシ。
そして隊員たち。
だがヨミは、迫る彼らを一度見ただけだった。
「悪いな」
翼が開く。
キットの表情が変わる。
「まさか――」
「今日はここまでだ」
ヨミが地面を蹴り、一気に上空へ飛び上がった。
◇
「待て!」
キットが追おうとする。
だがヨミは、すでに空へ上がっている。
「くそっ!」
キットはメモリーを取り出した。
腕にはカンガルー。
足にはヒクイドリ。
そこは変えない。
空いている胴のスロットへ、オニヤンマを装着する。
飛行できる姿へ変化するまでの、ほんのわずかな時間。
それだけでヨミには十分だった。
先に飛び立ったヨミが、一気に距離を稼いでいく。
「待てって言ってるだろ!」
キットも地面を離れた。
追う。
だが、すでに開いた距離は大きい。
「ヨミ!」
声は届かない。
あるいは届いていても、戻る気などない。
ヨミの身体にも限界が来ている。
長く戦える状態ではない。
だからこそ、目的を果たした瞬間に飛んだ。
キットも追い続けるが、最初についた距離が縮まらない。
やがて。
ヨミの姿が見えなくなった。
◇
キットが地上へ戻る。
東たちが待っていた。
誰もすぐには口を開かない。
倒れたミラーカメレオン。
ヨミが持っていったパーツ。
そして、その目的。
何一つ分からない。
「……結局」
川出が口を開いた。
「あいつ、何を取りに来たんだ」
東は首を振る。
「分からない」
南浦もヨミが消えた空を見る。
「最初から、それだけが目的だったのか」
「たぶん」
東が答える。
「キットとの戦いも、そのため」
キットは黙っていた。
ヨミは戦いながら少しずつ位置を変え、自分を相手にしながら目的の場所まで移動した。
拒否反応が出ても、必要なものだけを取って逃げた。
「……やられた」
キットが呟く。
勝った。
負けた。
そんな話ではない。
ヨミは欲しいものを持っていった。
それだけは確かだった。
キットは倒れているミラーカメレオンを見る。
最後に見せた、あの人間の顔。
まだ確認が取れていない五人。
ヨミ。
持ち去られたパーツ。
どこかでつながっている。
だが今はまだ、その形が見えなかった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




