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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ミラーカメレオン編

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第九話 その顔は

第九話 その顔は


ミラーカメレオンの顔が揺らいだ。


「……?」


キットは構えたまま、その変化を見る。


さっきまでとは違う。


脚ではない。


顔。


輪郭が変わる。


カメレオンを思わせる異形の顔が、人間のものへ近づいていく。


首。


肩。


身体。


やがて。


そこに立っていたのは、一人の人間だった。


キットの動きが止まる。


「……誰だ?」


知らない顔だった。


男なのか。


女なのか。


年齢は。


そんなことより。


紀人の頭に浮かんだのは、別のことだった。


こいつは今まで。


実際にどこかにいる人間の姿を使っていた。


銀行強盗。


施設への襲撃。


犯人にされた人間たちには、それぞれ別の場所にいた証拠があった。


なら。


この顔も。


「……実在する人なのか?」


ミラーカメレオンは答えない。


ただ。


人間の顔でキットを見ていた。


◇


「……待って」


東の声だった。


キットがわずかに振り返る。


東は人間姿になったミラーカメレオンを見つめていた。


その表情が変わっている。


「知ってるんですか?」


キットが聞く。


東はすぐには答えなかった。


記憶を確かめる。


何度も見た資料。


写真。


行方の確認が取れていない人間たち。


「……捜してる人間の一人よ」


キットの身体が固まった。


「え?」


「前に話したでしょう」


東は目の前の人物から視線を外さない。


「まだ確認が取れていない五人。その中の一人」


五人。


紀人の頭に。


サクラが浮かんだ。


人間だった。


そして。


怪人になった。


「じゃあ……」


キットは目の前の人間を見る。


「この人が……?」


「分からない!」


東がすぐに言った。


「顔を使ってるだけかもしれない。本人かもしれない。今は判断できない」


「……」


キットの拳が下がった。


目の前にいるもの。


ミラーカメレオン。


そう思っていた。


でも。


もし違ったら。


サクラと同じだったら。


この人自身が怪人にされていたら。


「……本人なのか?」


キットが問いかける。


返事はない。


「お前、本当にその人なのか?」


何も言わない。


人間の顔が。


キットを見る。


そして。


動いた。


「っ!」


拳。


キットが受ける。


押される。


反撃。


拳を出す。


だが。


目の前に人間の顔。


止まった。


その一瞬。


蹴りが入る。


「ぐっ!」


キットが吹き飛ぶ。


◇


「キット!」


東が声を上げる。


川出も人間姿の怪人を見る。


「……あれ、本当に本人なんですか?」


「分からない」


「今までの奴と同じ擬態じゃ?」


「その可能性もある。でも証拠がない」


川出が歯を食いしばる。


これまで。


顔に騙されてきた。


銀行強盗。


施設襲撃。


見た目だけなら、本人だった。


でも本人ではなかった。


「顔だけで判断するな」


川出が言う。


東が見る。


「今までだってそうだった。顔が同じだから本人だと思って、それで捜査がややこしくなった」


「でも」


「分かってます」


川出も武器を下げない。


「だからって、偽物だと決めつけるのも危ない」


撃てない。


東も。


川出も。


周囲の隊員も。


南浦が人間の顔を見る。


以前、川出の報告を聞いたとき。


自分は言った。


怪人を敵か味方か、現場でどう見分ける。


判断を間違えれば、死ぬのはこちらだと。


今。


その問いが、そのまま自分へ返ってきている。


南浦は狙いを定めなかった。


◇


キットが起き上がる。


「くっ……」


人間の姿をしたミラーカメレオンが迫る。


拳。


かわす。


蹴り。


受ける。


キットは防御に回った。


「答えろ!」


怪人は答えない。


「お前は誰なんだ!」


攻撃。


キットが避ける。


その動き。


「……?」


見覚えがある。


足。


踏み込み。


間合い。


ノミ。


人間の脚に見える。


だが、その動きは。


「これ……」


怪人が跳ぶ。


距離を詰める。


着地直前。


攻撃へ。


「俺の……」


キットがかわす。


さらに構えが変わる。


抜塞。


「……そうか」


キットの表情が変わった。


顔は人間。


身体も人間に見える。


でも。


使っているものは。


さっきまでミラーカメレオンがコピーしていたもの。


「お前……」


紀人は拳を握る。


それでも。


確証にはならない。


この人自身が怪人にされている可能性だって。


まだ。


ゼロにはできない。


なら。


どうする。


◇


サクラ。


あのとき。


怪人になった人間を見た。


だから知っている。


人間だから。


怪人だから。


そんな二つだけでは決められない。


でも。


もう一つ。


分かっていることがある。


目の前の相手は、人を襲った。


事件を起こした。


今も。


自分を攻撃している。


本人なのか。


偽物なのか。


今は分からない。


それでも。


「……止める」


キットが構えた。


怪人が迫る。


人間の顔。


拳。


キットは避ける。


今度は止まらない。


懐へ入る。


攻撃。


人間の顔が目の前にある。


それでも。


拳を止めない。


ただし。


倒すためではない。


殺すためでもない。


止めるため。


「本人だったとしても!」


怪人の攻撃をかわす。


「このままにはできない!」


反撃。


入る。


怪人がよろめく。


キットが追う。


もう一撃。


人間の姿が揺れた。


「……!」


顔。


腕。


身体。


擬態が崩れる。


その下から。


再びミラーカメレオンの姿が現れた。


キットが息を呑む。


「……やっぱり」


擬態だった。


少なくとも。


今、目の前にいるものは。


あの人本人ではない。


キットの迷いが消えた。


◇


シロアリ怪人の数も、残りわずかになっていた。


「右!」


東が指示を飛ばす。


川出が対応。


南浦が援護。


ニシが一体を押さえ込む。


北山が別の一体へ。


一般隊員も連携する。


最後の一体が倒れた。


「周囲確認!」


東が叫ぶ。


「追加は?」


「見えません!」


「一般人は?」


「避難済みです!」


東がミラーカメレオンの方を見る。


戦いは。


まだ終わっていない。


◇


ミラーカメレオンが構える。


抜塞。


キットには読める。


踏み込み。


かわす。


崩す。


攻撃。


怪人が下がる。


今度は五十七歩。


「それも分かる!」


キットが先に動く。


怪人の体勢を崩す。


拳。


入る。


ミラーカメレオンが吹き飛ぶ。


地面を転がる。


起き上がる。


脚が変わる。


ノミ。


キットもノミへ。


二つの影が跳ぶ。


交差。


着地。


キットの方が早い。


怪人がヒクイドリへ切り替える。


キットがかわす。


「もう」


紀人は息を整える。


「分かってるんだよ」


相手が持っているもの。


全部。


自分が見せた。


自分が知っている。


だから。


読める。


ミラーカメレオンが距離を取った。


キットも止まる。


ここで。


決める。


キットは足へノミのメモリーを装着した。


身体を沈める。


ミラーカメレオンも脚をノミへ変える。


「真似したいなら」


キットが地面を蹴った。


「真似してみろ!」


一気に跳ぶ。


高く。


ミラーカメレオンが顔を上げる。


キットは上空。


さらに上。


そこで。


ノミを外す。


ミラーカメレオンの目が動いた。


キットの手。


次のメモリー。


ヒクイドリ。


「でも――」


空中で装着。


脚が変わる。


身体をひねる。


落下。


重力。


速度。


全部を乗せる。


「こっちが先だ!」


ミラーカメレオンの脚も変わり始める。


ノミから。


ヒクイドリへ。


だが。


遅い。


キットが落ちる。


蹴り。


直撃。


衝撃が走った。


ミラーカメレオンの身体が地面へ叩きつけられる。


土煙。


キットも着地する。


「はあ……はあ……」


構えたまま。


待つ。


土煙が薄れる。


ミラーカメレオンは。


動かない。


脚も。


元の形へ戻っていく。


川出たちも警戒しながら様子を見る。


東がレイピアを構えたまま、一歩進む。


「終わった……?」


キットは答えない。


まだ。


警戒を解かない。


そのとき。


「よお」


声。


全員の視線が動いた。


少し離れた場所。


一人の男が立っている。


キットの表情が変わった。


東も。


北山も。


その姿を見る。


男は倒れているミラーカメレオンを一度見た。


それから。


キットへ視線を移す。


口元をわずかに上げる。


「ちょっと俺と付き合えや」


ヨミが立っていた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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