第八話 真似できないもの
第八話 真似できないもの
ミラーカメレオンの脚が変わる。
ノミ。
次の瞬間にはヒクイドリ。
またノミ。
「くそ……!」
キットが身をひねる。
跳躍。
接近。
着地直前の変化。
そこから繰り出される攻撃。
さっきまでなら読めた。
だが今は違う。
一度覚えたものを切り替えて使ってくる。
キットは後ろへ下がった。
手元にはまだ三つのメモリーがある。
コブラ。
カンガルー。
オニヤンマ。
使えば、また戦い方を変えられる。
だが。
ミラーカメレオンの目が、こちらを見ている。
待っている。
新しいものを。
「……見せない」
キットは拳を握った。
「これ以上、お前に増やさせない」
ミラーカメレオンが地面を蹴る。
ノミの脚。
キットが横へかわす。
着地。
ヒクイドリへ変化。
蹴り。
「っ!」
腕で受ける。
衝撃が走る。
キットが押し戻される。
その様子を、シロアリ怪人と戦いながら北山が見ていた。
怪人は、キットが見せたものを使う。
なら。
北山の目が細くなる。
「……そうか」
迫ってきたシロアリ怪人をかわす。
一撃。
距離を取る。
そして。
「キット!」
声を張った。
キットが一瞬だけ北山を見る。
「抜塞!」
「……は?」
紀人の頭の中に、聞き慣れた型の名が響いた。
抜塞。
なぜ今、それを。
北山はもうこちらを見ていない。
次のシロアリへ向かっている。
だが。
意図は。
「……まさか」
ミラーカメレオンが迫る。
キットは構えを変えた。
抜塞。
身体が自然に動く。
何度も繰り返してきた型。
足運び。
重心。
攻撃。
防御。
流れ。
ミラーカメレオンの目が動いた。
見る。
全部。
キットが一歩踏み込む。
怪人が受ける。
さらに続ける。
型の流れを崩さない。
怪人はじっと見ている。
「……来い」
キットが距離を取った。
ミラーカメレオンの構えが変わる。
抜塞。
キットの口元がわずかに動いた。
「やっぱり」
怪人が踏み込む。
紀人には分かる。
次。
その次。
身体がどちらへ流れるか。
どこで重心が移るか。
どこに隙が生まれるか。
怪人の拳。
キットは半歩ずらす。
次の動きへ入る前。
懐へ。
「そこだ!」
拳が入る。
ミラーカメレオンの身体が崩れた。
さらに。
型の流れから外れる瞬間を狙う。
攻撃。
怪人が吹き飛ぶ。
「そういうことか……!」
キットが北山を見る。
北山も一瞬だけこちらを見た。
言葉はない。
だが。
分かった。
コピーするなら。
コピーさせればいい。
◇
「前、二体!」
東が叫ぶ。
シロアリ怪人が左右から迫る。
東はレイピアを構えた。
一体へ踏み込む。
鋭い突き。
退く。
もう一体が横から入る。
「東さん、右!」
川出の攻撃。
シロアリ怪人が止まる。
東が身体を返す。
レイピアが走る。
「次!」
「後ろ!」
南浦の声。
東がしゃがむ。
その頭上を攻撃が抜けた。
背後のシロアリ怪人が倒れる。
「今の危なかった!」
「だから先に言った」
「言うの遅いのよ!」
「避けたんだからいいだろ」
「よくない!」
東が再び前へ出る。
川出が少し笑った。
「余裕ありますね」
「ないわよ!」
次の一体。
東が踏み込む。
川出と南浦がその左右をカバーする。
ニシ。
北山。
一般隊員。
それぞれがシロアリ怪人を押し返していく。
だが。
川出の動きが、一瞬遅れた。
「……っと」
足が滑る。
すぐに立て直す。
そのつもりだった。
ここ数日。
聞き込み。
尾行。
囮。
追跡。
そして戦闘。
動き続けてきた。
まだ戦える。
だが、ほんの一瞬。
身体が思った位置まで戻らなかった。
目の前の一体をかわした先。
別のシロアリ怪人。
「川出!」
南浦が狙う。
だが撃てない。
川出が射線に入っている。
「どけ!」
「分かってる!」
川出が身体をひねる。
間に合わない。
シロアリ怪人の腕が振り下ろされる。
その瞬間。
横から何かが飛び込んだ。
「え?」
川出の身体が強く引かれる。
攻撃が空を切る。
そのまま地面へ転がった。
「っ……!」
川出が顔を上げる。
小柄な影。
ネズミを思わせる怪人。
「お前……!」
ネズミ怪人はシロアリへ向かわない。
攻撃もしない。
ただ。
川出の前へ一瞬だけ身体を入れた。
守るように。
「川出、伏せろ!」
南浦の声。
川出が反射的に身を低くする。
乾いた音。
シロアリ怪人が倒れる。
ネズミ怪人はそれを見届ける。
南浦の手が止まった。
「……」
怪人。
間違いなく怪人。
だが今。
川出を助けた。
自分の目の前で。
川出が身体を起こす。
「……また、お前か」
ネズミ怪人は何も言わない。
川出を見る。
一度だけ。
「待て」
ネズミ怪人が背を向ける。
「おい、待てって!」
走る。
シロアリ怪人たちの隙間を抜ける。
攻撃はしない。
ただ避ける。
そして。
建物の陰へ入った。
川出が追おうとする。
「川出!」
東の声。
「今はこっち!」
「……分かってます!」
川出は足を止めた。
もう姿はない。
一度目。
そして。
二度目。
「偶然じゃないだろ……」
川出が小さく呟いた。
南浦は何も言わなかった。
ただ。
ネズミ怪人が消えた方向を一瞬だけ見てから、再び武器を構えた。
◇
ミラーカメレオンが立ち上がる。
抜塞。
まだ使っている。
キットには、その動きが見える。
いや。
見えすぎる。
「コピーしたからって」
キットがかわす。
「全部分かったことにはならない!」
怪人の攻撃。
次の動き。
読める。
かわす。
崩す。
反撃。
また入る。
北山はその戦いを見ていた。
さっき。
自分はただ型の名前を叫んだ。
それだけだ。
なのにキットは。
迷いながらも。
すぐに抜塞へ切り替えた。
しかも。
型を知っているだけではない。
使い込んでいる。
「……やっぱり」
北山が呟く。
シロアリ怪人が迫る。
北山は視線を戻した。
今は考えている場合じゃない。
だが。
疑いは。
さらに濃くなっていた。
◇
キットがミラーカメレオンを押し返す。
怪人が距離を取る。
「もう一回」
声。
北山。
キットが見る。
「五十七歩!」
今度は。
意味を考える必要すらなかった。
キットは構えを変える。
五十七歩。
身体が動く。
怪人が見る。
「見ろよ」
キットが踏み込む。
「好きなだけ」
型に沿って戦う。
ミラーカメレオンの目が追う。
そして。
コピー。
構えが変わる。
「そうだ」
キットが小さく言った。
「それでいい」
ミラーカメレオンが来る。
紀人には分かる。
この型も。
流れも。
動きも。
何度もやった。
何度も崩された。
何度も直した。
ただ形を知っているだけじゃない。
失敗も。
癖も。
隙も。
全部知っている。
怪人が踏み込む。
キットは先に動いた。
「そこ!」
崩す。
ミラーカメレオンの体勢が大きく傾く。
攻撃。
入る。
さらに。
もう一撃。
怪人が地面へ転がった。
起き上がろうとする。
キットが距離を詰める。
逃がさない。
また型。
怪人がコピー。
また読まれる。
今まで。
コピーするたびに怪人は強くなっていた。
だが今は。
コピーするほど。
キットに動きを読まれている。
「真似できても」
キットが踏み込む。
「そこまでだ!」
攻撃が入った。
ミラーカメレオンが大きく吹き飛ぶ。
地面へ。
止まる。
しばらく動かない。
キットは構えを解かない。
息を整える。
「……いける」
初めて。
はっきりそう思った。
ミラーカメレオンがゆっくりと顔を上げる。
その目。
まだ。
キットを見ている。
いや。
違う。
何か。
別のものを思い出すように。
怪人の顔が。
わずかに揺らいだ。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




