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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ミラーカメレオン編

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第六話 姿を映す怪人

第六話 姿を映す怪人


「人間じゃない、か」


北山が腕を組んだ。


CASHの室内。


前日に行われた囮捜査の映像が、モニターに映されている。


最初に現れたのは男だった。


川出を観察するように見ている。


CASHが動く。


男が逃げる。


人混みに入る。


「ここです」


川出が映像を止めた。


再生する。


男の姿が人混みに隠れる。


次に現れたのは、走っている若い女。


「俺たちは最初、この女を別人だと思って見失いかけた」


川出が言う。


「でも、こいつだった」


映像が進む。


女が行き止まりへ追い込まれる。


地面を蹴る。


壁へ足をかける。


さらに跳ぶ。


そのまま建物の上へ消えた。


「……人間の跳び方じゃねえな」


ニシが呟く。


「僕もそう思う」


シラメ博士が画面を見ながら答えた。


「普通の身体能力として処理するのは、さすがに無理があるね」


「怪人と考えた方が早いだろ」


南浦が言う。


「その可能性はかなり高い」


東が答えた。


「でも、まだ分からないことの方が多い」


モニターを見る。


「顔だけなのか。身体まで変わっているのか。一度見た人間なら、いつでもその姿を使えるのか」


「それに」


川出が続ける。


「変わった瞬間そのものは見てない」


「そういうこと」


東が頷いた。


「推測と事実は分ける」


「でも、次に見つけたら」


南浦が言った。


「今度は怪人相手だと思って動くんだろ」


「そのつもりで準備する」


川出が椅子へ身体を預ける。


「やっと俺たちの領分になってきた感じですかね」


「嬉しそうに言わないで」


「別に嬉しくはないですよ」


「昨日囮になった人が言っても説得力ないわよ」


「まだ言います?」


「言う」


ニシが笑った。


◇


「……お前ら、何か知ってるだろ」


刑事が川出を睨んでいた。


「何の話です?」


「とぼけるな」


川出は困ったように笑う。


通常の捜査班も、前日の騒ぎを把握していた。


CASHが追った人物。


その対象が、普通では考えられない動きで建物の上へ逃げた。


「お前らが追ってた女」


「はい」


「あれは何だ」


「それを今、調べてるんですよ」


「怪人だとか言うんじゃないだろうな」


「俺、まだ何も言ってませんよ」


「その顔がもう嫌なんだよ」


「どんな顔ですか」


「与太話を本気で追ってる顔だ」


「ひどいなあ」


刑事はため息をついた。


以前なら、それで話は終わっていた。


だが今日は違った。


「……何か分かったら」


刑事が言う。


川出が見る。


「こっちにも回せ」


「珍しいですね」


「勘違いするな」


「はいはい」


「はいは一回だ」


「最近それ流行ってるんですか?」


「何の話だ」


川出は笑った。


信用されたわけではない。


CASHを見る目が変わったわけでもない。


ただ。


通常の捜査だけでは説明しづらいところまで、事件が来ていた。


◇


昼下がり。


パンさんの店。


客が途切れたところで、パンさんがドラムスティックを指先で回していた。


タン。


タタッ。


タン、タン。


カウンターを軽く叩く。


紀人は食事をしながら、その音を聞いていた。


「相変わらずですね」


「何が?」


「暇になるとすぐ叩くところ」


「暇じゃない」


「今、客俺しかいないじゃないですか」


「お前は客じゃないのか?」


「それ、この前ニシさんにも言ってませんでした?」


パンさんの手が止まる。


「何で知ってる」


「適当に言っただけです」


「……お前、嫌な勘してるな」


紀人が笑う。


また軽いリズムが始まった。


昔から聞き慣れた音。


パンさんは昔からこうだった。


スティックを持てば、何かを叩く。


机でも。


カウンターでも。


音が出れば、それでいい。


紀人にとって珍しい光景ではない。


一瞬だけ。


もっと昔の音が重なった。


パンさん。


自分。


そして――。


スマートフォンが震えた。


紀人は画面を見る。


東。


「はい」


『今、大丈夫?』


「大丈夫です」


『例の奴、見つけた』


紀人の表情が変わった。


『今度は逃がさないように動いてる。でも、怪人だった場合はあなたが必要になる』


「分かりました」


『それと』


「はい?」


『現場には川出たちもいる』


紀人は意味を理解した。


「……分かってます。気をつけます」


『お願い』


通話を切る。


「出るのか?」


パンさんが聞いた。


「ちょっと用事」


「最近その『ちょっと用事』多くないか?」


「そうですか?」


「学校も休むことあるんだろ」


紀人が一瞬止まる。


「何で知ってるんです?」


「お前が思ってるより、昔馴染みってのは情報入るんだよ」


「怖いなあ」


「変なことしてないだろうな」


「してませんよ」


紀人は店を出た。


パンさんはその背中を見送る。


少しだけ首を傾げる。


そしてまた。


カウンターを軽く叩いた。


◇


「いた」


川出が小さく言った。


通りの向こう。


一人の男が歩いている。


昨日とは違う顔。


だが。


あの目。


周囲を見る目。


人間を観察する目。


「対象確認」


通信へ伝える。


『全員、そのまま』


東の声。


『まだ動かない』


男は歩く。


店を見る。


人を見る。


防犯カメラを見る。


川出は距離を取って追った。


周囲にはCASHの隊員が配置されている。


昨日より多い。


逃走経路も想定してある。


男が一人の通行人を見る。


長い。


川出が目を細めた。


「また顔を選んでるのか……?」


男が歩き出す。


『川出』


「はい」


『人が減ったところで動く』


「了解」


男が細い道へ入る。


その先。


人通りは少ない。


『今』


「止まれ!」


川出が声を上げた。


同時に、前方から隊員が出る。


男が振り返る。


別方向。


そこにも隊員。


逃げる。


「追え!」


男が走り出す。


角を曲がる。


川出が追う。


次の道。


そこにいたのは男ではなかった。


中年の女。


「そいつだ!」


川出は迷わなかった。


女の顔が一瞬歪む。


走る。


「もうそれじゃ逃げられないぞ!」


別の隊員が前へ出る。


女は方向を変える。


若い男。


次に見えたときには、また違う顔。


「何人分あるんだよ!」


川出が追う。


だが。


今回は顔が変わることを知っている。


見ているのは顔だけではない。


動き。


視線。


逃げる方向。


CASHは追跡を続けた。


やがて。


対象は広い空き地へ追い込まれた。


前。


後ろ。


左右。


CASHの隊員。


逃げ道はない。


川出が息を整える。


「終わりだ」


目の前にいるのは若い男だった。


「顔を変えても、もう追うぞ」


男は動かない。


「大人しくしろ」


返事はない。


ただ。


周囲を見ている。


逃げ道を探している。


「もうないよ」


川出が言った。


そのとき。


男の顔が揺れた。


川出の表情が変わる。


「……おい」


輪郭が崩れる。


顔だけではない。


首。


肩。


腕。


身体全体が変わっていく。


人間の姿が剥がれるように消えていく。


その下から現れたもの。


異形。


カメレオンを思わせる身体。


鏡のような意匠を持つ怪人。


隊員たちが一斉に武器を構えた。


「やっぱり……」


川出が呟く。


「怪人か」


怪人が動いた。


◇


「逃がすな!」


川出が叫ぶ。


CASHの隊員たちが距離を詰める。


怪人の姿が周囲へ溶け込む。


「消えた?」


「いや、いる!」


完全に消えたわけではない。


だが、見つけづらい。


怪人が位置を変える。


上。


「来るぞ!」


隊員が避ける。


別方向から攻撃。


怪人が逃げる。


その先にも隊員。


さらに方向を変える。


またCASH。


「囲め!」


倒すことより。


逃がさない。


それが今の目的だった。


怪人が壁際へ走る。


川出が進路へ入る。


「そっちは駄目だ」


怪人が逆方向へ。


そこにも隊員。


包囲は崩れない。


川出は通信へ声を飛ばす。


「まだ押さえてます!」


『そのまま!』


東の声。


『もうすぐ来る』


誰が来る。


川出は聞かなかった。


今は怪人を逃がさないことだけに集中する。


◇


紀人は現場近くまで来ていた。


遠くにCASHの隊員が見える。


その向こう。


怪人。


東から聞いた通りだった。


紀人はそのまま近づかない。


川出。


南浦。


ニシ。


自分のことを知らない人間がいる。


一般人の紀人がここへ出れば、追い返される。


それどころか。


正体が知られる。


紀人は裏手へ回った。


人のいない場所。


周囲を確認する。


ベルトを腰へ巻いた。


「配信開始」


指を鳴らす。


キット。


紀人は別方向から現場へ走った。


◇


「キットか」


川出が姿を確認した。


「対象はこいつだ。こっちで逃げ道は塞ぐ」


「分かりました」


それだけだった。


CASHは包囲を維持する。


キットがその内側へ入る。


怪人がキットを見る。


その目が動く。


頭。


肩。


腕。


脚。


まるで全身を記録するように。


キットは構えた。


だが。


一瞬だけ。


足が止まる。


一体。


単独。


明確な意思を持って動いている怪人。


東から聞いた五人。


サクラ。


もし。


こいつも――。


怪人が動いた。


「っ!」


キットが避ける。


考えている暇はない。


もう一撃。


受ける。


押し返す。


「まずは止める」


キットが呟く。


何者なのかは分からない。


でも。


人を襲っている。


事件を起こしている。


逃がすわけにはいかない。


キットが踏み込んだ。


◇


拳。


蹴り。


間合いを取る。


キットが攻める。


怪人が避ける。


もう一度。


角度を変える。


今度は当たった。


怪人が下がる。


「戦える」


キットは構え直す。


倒す。


ではない。


今は止める。


その意識なら身体は動く。


再び踏み込む。


怪人は防ぐ。


距離が開いた。


そして。


怪人が構えた。


「……ん?」


キットの表情が変わる。


その構え。


さっきまで自分が取っていたものと似ている。


怪人が踏み込む。


「っ!」


拳。


次の蹴り。


流れ。


キットが避ける。


「待て」


距離を取った。


「今の……」


怪人はじっとキットを見ている。


キットは試す。


今度は違う入り方。


攻撃。


怪人は見る。


次の攻防。


また。


似た動きが返ってくる。


「……やっぱり」


キットが呟いた。


「こいつ、俺の動きを見て覚えてる」


少し離れた場所。


戦闘を見ていた川出が眉をひそめる。


「北山さん」


「何だ?」


「あいつ、キットの動きを真似てません?」


北山も二人の動きを見る。


「……似てるな」


川出が怪人へ視線を戻した。


「顔だけじゃないってことか」


キットは足へ手を伸ばした。


メモリー。


ノミ。


最も使い慣れているものの一つ。


「だったら――」


足へ装着する。


「これはどうだ」


戦い方を変える。


踏み込む。


怪人の反応が遅れた。


キットが押す。


もう一度。


怪人が下がる。


「いける!」


今までとは違う。


キットが攻め続ける。


だが。


怪人は逃げながらも、ずっと見ていた。


キットの足。


動き。


間合い。


身体の使い方。


全部。


やがて。


怪人の構えが変わった。


キットが止まる。


「……まさか」


怪人の脚が変わり始めた。


カメレオンを思わせる全体の姿はそのまま。


だが。


脚部だけが変形していく。


キットの足。


ノミのメモリーを使ったその特徴。


それを映したかのような形へ。


「……動きだけじゃない」


キットが息を呑む。


怪人が身を沈めた。


構えまで。


今のキットによく似ている。


次の瞬間。


怪人が地面を蹴った。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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