↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア  作者: 時根脱才 
ミラーカメレオン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/120

第四話 怪人が助けた

第四話 怪人が助けた


男は、数歩先で立ち止まっていた。


ゆっくりと振り返る。


川出は何も言わない。


男も何も言わない。


ただ、その目だけが妙にこちらを観察していた。


しばらくして、男は何事もなかったように前を向いた。


歩き出す。


川出は動かなかった。


隣にいる隊員も、男の背中を見ている。


距離が開く。


十メートル。


二十メートル。


川出が小さく言った。


「追うぞ」


「え?」


「気づかれるなよ」


隊員が頷いた。


二人は少し間を空けて歩き出した。


男は振り返らない。


川出も真っ直ぐ男を見ない。


店の看板を見る。


横断歩道を見る。


通行人に紛れる。


男との距離だけは一定に保った。


しばらく歩いたところで、隊員が小声で言う。


「上手いですね」


「何が」


「尾行」


「喋るな。バレる」


「すみません」


男が人通りの多い道へ入った。


川出は速度を変えない。


距離を詰めすぎれば気づかれる。


離れすぎれば見失う。


人の流れの向こうに、男の後頭部が見えている。


まだいる。


川出は歩き続けた。


一台の車が前を横切った。


ほんの数秒。


視界が遮られる。


車が通り過ぎる。


川出の目が細くなった。


「……いない」


「え?」


隊員が周囲を見る。


「どこ行った?」


二人は足を止めない。


不自然に立ち止まれば、こちらが追っていることを知らせるようなものだ。


川出は周囲の人間を一人ずつ見る。


服。


歩き方。


背格好。


そして。


一人の女が前を歩いていた。


何かがおかしい。


理由は説明できない。


だが、刑事だった頃から何度も経験してきた感覚が告げている。


あれだ。


「……まさかな」


川出が呟く。


「何です?」


「いや」


女が角を曲がった。


「行くぞ」


二人はその後を追った。


◇


「次、南浦さん。もう一回お願いします」


シラメ博士がモニターを見ながら言った。


「了解」


南浦が構える。


標的を見据える。


呼吸を整える。


引き金を引く。


乾いた音が続いた。


撃ち終わると、シラメ博士が画面を覗き込む。


「うん」


「どうだ?」


「今日はかなりいいね」


南浦が銃を下ろした。


「今日は、って何だ」


「そのままの意味だよ。前回よりまとまってる」


「前回も悪くなかっただろ」


「僕のデータでは今日の方がいい」


「ならいい」


少し離れたところでは、ニシが身体を動かしていた。


「博士、俺の方は?」


「まだ見てない」


「さっきからずっとやってるぞ」


「見てないものは見てないよ」


「扱いに差がないか?」


シラメ博士がニシを見る。


「じゃあ、もう一回やって」


「おう」


ニシが構える。


シラメ博士は別の端末を操作した。


「ちょうどいいや。二人とも、あとでちょっと付き合ってよ」


「何だ?」


南浦が聞く。


「僕、最近ちょっと作ったものがあるんだ」


ニシが嫌そうな顔をする。


「また実験台かよ」


「性能試験って言って」


「同じだろ」


「違うよ」


「どこが」


「言い方」


南浦が小さく笑った。


シラメ博士は楽しそうに端末を操作している。


事件がない時間でも、CASHの中では誰かが身体を鍛え、誰かが装備を調べ、誰かが新しいものを作っている。


それもまた、いつもの光景だった。


◇


「例の奴、見つけたかもしれません」


川出は歩きながら小声で連絡を入れていた。


『確かなの?』


東の声。


「確証はないです。でも、追ってた男が消えた直後に、妙な女が現れました」


『妙な女?』


「説明しづらいんですけどね」


川出は前を歩く女から目を離さない。


「同じなんですよ」


『何が?』


「見られてる感じが」


少し間があった。


『無理はしないで』


「分かってます」


『川出』


「はい」


『本当に分かってる?』


「たぶん」


『その返事が一番信用できないのよ』


通信が切れた。


隣の隊員が笑いをこらえている。


「何だよ」


「いや、信用ないなって」


「お前もな」


二人は女を追い続けた。


やがて女は、人通りの少ない区域へ入っていく。


「嫌なところ行くなあ」


川出が呟く。


「追います?」


「ここまで来て帰る?」


「帰れって言われたら帰りますよ」


「じゃあ帰れ」


「一人にできないでしょ」


「だったら聞くな」


二人は先へ進んだ。


◇


女が消えた。


「またか」


川出は足を止めた。


周囲には古い建物が並んでいる。


人の気配は少ない。


隊員が辺りを見回す。


「どこ行ったんです?」


「それが分かれば苦労しない」


川出は地面を見る。


足跡が残るような場所ではない。


視線を上げる。


窓。


路地。


屋上。


気配がない。


「一回戻ります?」


隊員が言った。


「……そうだな」


川出も頷こうとした。


そのとき。


何かが擦れるような音がした。


川出が振り返る。


白いものが動く。


「下がれ!」


シロアリ怪人。


一体。


その後ろから、もう一体。


さらにもう一体。


「三……いや」


左右からも姿を現す。


「多いな」


隊員が武器を構えた。


「やるぞ」


「はい!」


一体目が飛びかかる。


川出が狙う。


攻撃。


シロアリ怪人が倒れる。


二体目。


隊員が仕留める。


「いけます!」


「油断するな!」


三体目が迫る。


川出が迎え撃つ。


倒す。


だが。


奥からまた白い影が現れた。


一体。


二体。


三体。


「……増えてません?」


「見れば分かる」


さらに背後。


別の路地からも現れる。


川出は舌打ちした。


一体一体なら問題ない。


武器も通用している。


倒せる。


だが、数が違う。


「下がるぞ!」


二人は応戦しながら後退した。


一体倒す。


また一体来る。


さらに一体。


減らない。


「川出さん!」


「分かってる!」


隊員の背後から二体。


川出が一体を倒す。


「先に行け!」


「え?」


「戻って応援呼べ!」


「でも――」


「ここ狭いんだよ! 二人で固まってたら一緒に囲まれる!」


隊員が迷う。


「行け!」


「……分かりました!」


隊員が走り出す。


シロアリ怪人が追おうとする。


川出が前へ出た。


「そっちは行かせないよ」


攻撃。


一体が倒れる。


もう一体。


さらにもう一体。


川出は後退しながら戦った。


「ったく……何体いるんだよ」


息が上がる。


それでも倒せる。


まだ動ける。


だが。


前。


右。


左。


白い怪人が迫ってくる。


後ろへ下がる。


壁。


「……これは」


川出が周囲を見る。


逃げ道がない。


シロアリ怪人たちが、じわじわと距離を詰めてくる。


「さて」


川出は武器を構え直した。


「どうするかな」


そのときだった。


何かが足元へ転がってきた。


「ん?」


次の瞬間。


白い煙が一気に広がった。


「なっ――!」


視界が消える。


シロアリ怪人たちの動きも乱れた。


「何だこれ!」


川出が咳き込む。


その腕を、何かが掴んだ。


「え?」


強く引かれる。


「おい、ちょっ――!」


足元が開いた。


マンホール。


川出の身体が、その中へ引きずり込まれる。


「うわっ!」


暗闇。


足が地面につく。


だが、腕を掴んでいる何者かは止まらない。


走る。


「待て! 誰だお前!」


返事はない。


「おい!」


ただ引っ張られる。


川出も走るしかなかった。


地下。


狭い通路。


地上から遠ざかっていく。


しばらく走ったところで、ようやく速度が落ちた。


「はあ……はあ……」


川出は息を整える。


腕を掴んでいた手が離れた。


「お前……」


薄暗い地下。


川出は、目の前にいるものを見た。


人間ではない。


小柄な身体。


ネズミを思わせる姿。


怪人。


川出の手が反射的に武器へ伸びた。


だが、止まった。


目の前の怪人は、何もしてこない。


襲わない。


構えもしない。


ただ、川出を見ている。


「……お前が」


川出はマンホールのある方向を見る。


そして、もう一度怪人を見る。


「俺を助けたのか?」


返事はなかった。


ネズミ怪人は、ただ川出を見た。


それから背を向ける。


「待て」


歩き出す。


「おい、待てって!」


川出が追おうとする。


だが、曲がり角を一つ抜けたところで、その姿は消えていた。


「……何なんだよ」


川出は立ち尽くした。


◇


しばらくして。


地上へ戻った川出は、一人で歩いていた。


先に逃がした隊員とは連絡が取れた。


無事だった。


応援も向かっている。


それはいい。


問題は、さっきのことだった。


怪人。


間違いなく怪人だった。


だが、自分を襲わなかった。


それどころか、助けた。


川出は足を止める。


これまで怪人は、人を襲うものだった。


CASHが倒す対象だった。


少なくとも、川出はそう考えていた。


だが今日。


その怪人に命を助けられた。


「……全部が敵ってわけじゃないのか?」


答える者はいなかった。


川出はしばらく、その場に立っていた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。