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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ミラーカメレオン編

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第三話 次の顔



第三話 次の顔


昼休み。


「なあ紀人、お前最近ちょいちょい休んでない?」


突然そう言われて、紀人は弁当を食べる手を止めた。


「そうか?」


「そうだよ。前はほとんど休まなかったじゃん」


向かいに座っている男友達が答える。


近くにいた女友達も話に入ってきた。


「私もちょっと思ってた。体調でも悪いの?」


「いや、別に。ちょっと用事が重なっただけ」


「ほんとか?」


「ほんとだって」


紀人は笑って誤魔化した。


本当のことなど言えるはずがない。


怪人と戦っていたから休みました。


そんなことを言ったところで、冗談だと思われるのがせいぜいだろう。


「でも不公平だよな」


「何が?」


「休んでるくせに成績落ちてないじゃん」


「知らないよ」


「体育も普通に動けてるし」


「普通だろ」


「お前の普通、微妙に普通じゃないんだよ」


紀人は苦笑した。


何でも一番というわけではない。


勉強でも運動でも、自分よりできる人間はいくらでもいる。


それでも、それなりにはできる方だった。


「そういやさ」


男友達が急に声を落とした。


「あの子、かわいくない?」


視線だけで教室の一角を示す。


「どの子?」


「あっち」


「知らないよ」


「かわいいかどうか聞いてんの」


「普通にかわいいんじゃない?」


「薄いなあ、反応」


「じゃあ何て言えばいいんだよ」


そこへ女友達が笑いながら口を挟んだ。


「人のこと言ってる場合じゃないんじゃない?」


「何が?」


「紀人くんのこと、いいって言ってる子いるみたいだよ」


「え?」


紀人が顔を上げる。


「誰?」


「教えない」


「なんでだよ」


「本人から聞けば?」


「誰か分からないのに、どうやって聞くんだよ」


笑い声が上がった。


くだらない話だった。


でも、それが普通だった。


学校に来て。


友達と話して。


授業を受けて。


誰がかわいいとか、誰が誰を好きらしいとか。


そんな話をする。


チャイムが鳴った。


「ほら、戻れ戻れ」


それぞれが席へ戻っていく。


紀人も弁当箱を片づけた。


そのとき。


昨日、東から聞いた言葉がふと頭をよぎった。


『こっちで、まだ確認が取れてない人間が五人』


五人。


今もどこかで普通に暮らしているのか。


それとも――。


紀人は首を振った。


まだ決まったわけじゃない。


東もそう言っていた。


◇


「二件とも調べ直せ」


刑事が机の上へ資料を置いた。


「犯人とされた二人の交友関係、家族、職場、最近接触した人間。全部だ」


「同一犯だと?」


「分からん。だから調べる」


警察側も動いていた。


一件目は銀行強盗。


二件目は施設への襲撃。


どちらも犯人の顔は記録されている。


そして、どちらの本人にも犯行不可能なアリバイがある。


「変装の可能性は?」


「捨てるな」


「映像の加工は?」


「そっちもだ」


「でも、二件目は警備員が直接見てます」


「だったら映像だけの問題じゃない」


刑事は眉間を押さえた。


「何でもいい。現実的な可能性を一つずつ潰せ」


「CASHの連中は?」


「あいつらは放っとけ」


即答だった。


「また勝手にうろついてるみたいですけど」


「邪魔さえしなきゃ好きにさせろ。どうせそのうち幽霊だの怪人だの言い始める」


「もう言ってるんじゃないですか?」


「聞きたくもない」


刑事は資料を手に取った。


警察には警察のやり方がある。


理解できないからといって、怪人の仕業で済ませるわけにはいかなかった。


◇


「事件の前の日、ですか?」


「そう」


川出は店主の話をメモに書き込んだ。


「この辺を見てた人がいたんですよね?」


「いたねえ」


「人を見てた?」


「人も見てたと思うよ。店も見てたし、カメラも見てた」


川出が顔を上げる。


「人も?」


「通る人を何となく眺めてる感じだったな」


「誰かと話してました?」


「いや、それは見てない」


店を出る。


隣を歩いていた隊員が聞いた。


「どう思います?」


「分からん」


「昨日、誰かが二人になってるんじゃないかって言ってたじゃないですか」


「言ったけどさ」


川出は歩きながら周囲を見る。


「もし本当に誰かが別人になってるとして、じゃあその顔をどこから持ってくる?」


「写真とか?」


「だったら、わざわざ事件の前にこの辺をうろつく必要あるかな」


隊員が黙る。


川出はメモを見た。


人。


店。


防犯カメラ。


何かを探していた。


あるいは――。


「……選んでた?」


「何をです?」


「顔」


隊員が川出を見る。


「まさか」


「俺もそう思いたいよ」


川出は苦笑した。


「実際に見た人間の顔を使ってる、とかさ」


「そんなことできます?」


「知らん」


「ですよね」


「だから調べてるんだって」


自分で言っていて馬鹿馬鹿しい。


だが、CASHが追ってきた事件は、いつもそうだった。


普通なら笑って終わる話。


それが笑えなくなったとき、怪人がいる。


◇


夕方。


道場に乾いた音が響いていた。


「はい!」


紀人の突きを北山がミットで受ける。


もう一発。


さらに一発。


「そこまで」


北山がミットを下ろした。


紀人が息を整える。


「ありがとうございました」


「おう」


北山はミットを外しながら、紀人を見た。


「お前さ」


「はい?」


「最近、また動き変わったな」


紀人の表情は変わらなかった。


「そうですか?」


「前より判断が早い」


「練習してますから」


「練習ねえ」


北山は少しだけ目を細めた。


「なんつうか、道場だけで身についた動きじゃない気がするんだよな」


紀人が北山を見る。


一瞬だけ、間が空いた。


なるほど。


やっぱり探っている。


紀人は少しだけ笑った。


「北山さんこそ」


「あ?」


「最近、妙に動きシャープじゃないですか?」


「そうか?」


「そうですよ」


「稽古してるからな」


「へえ」


紀人は北山を見たまま続けた。


「何か実戦でもしてるんですか?」


北山の動きが、一瞬止まった。


紀人はそれを見逃さなかった。


「……何だよ、実戦って」


「いや、北山さんが先に変なこと言うから」


「俺は普通に稽古してるだけだ」


「俺もですよ」


二人は見合った。


「……そうか」


「はい」


それ以上は言わない。


北山は別の門下生へ声をかけに行った。


紀人はその背中を見送りながら、小さく息を吐いた。


北山がCASHに参加して戦っていることは、紀人も知っている。


だから聞いたわけではない。


北山が自分をどこまで疑っているのか。


それを確かめるためだった。


今の反応を見る限り――。


やっぱり、疑われている。


一方。


別の門下生へ指示を出しながら、北山も考えていた。


今の質問。


偶然か。


それとも――。


紀人は何か知っているのか。


◇


道場を出てしばらくしたころだった。


悲鳴が聞こえた。


「きゃあっ!」


紀人が走り出す。


道路の向こう。


白い異形が数体、人々を追い回していた。


「シロアリ……!」


紀人は周囲を見る。


人目から外れる場所へ駆け込む。


ベルトを腰へ巻いた。


「配信開始」


指を鳴らす。


身体が変わる。


キット。


紀人はすぐに飛び出した。


一体目のシロアリ怪人が振り返る。


キットは迷わず踏み込んだ。


拳を叩き込む。


二体目。


三体目。


次々と襲ってくる。


身体は自然に動いた。


怖くない。


迷いもない。


ふと、五人という数字が頭をよぎる。


だが。


目の前には何体ものシロアリ怪人がいる。


サクラとは違う。


あの五人が、この群れになっている。


そう考える理由はなかった。


「だったら――!」


キットは迫ってきた一体を蹴り飛ばす。


まだ戦える。


自分は怪人そのものが怖くなったわけじゃない。


そう分かった。


◇


「こっちです」


川出は隊員とともに細い道を進んでいた。


聞き込みで得た目撃情報。


不審な人物が、何度かこの辺りで見られている。


「本当にいるんですかね」


「いなかったら、いなかったでいいだろ」


「今日ずっと歩いてますよ」


「捜査ってそういうもんじゃない?」


隊員は少し笑った。


「川出さん、やっぱり捜査向いてますよね」


「何だよ、急に」


「普通の刑事に戻らないんですか?」


川出が横目で見る。


「……何でそうなる」


「いや、尾行も聞き込みも上手いし。なんでCASHにいるんだろうって」


「余計なお世話だ」


「本来の仕事に未練とかないんですか?」


「お前、今日はずいぶん人の人生に首突っ込むな」


「歩きっぱなしで暇なんですよ」


「だったら周り見ろ。仕事中だ」


「はいはい」


川出は前を向いた。


そのときだった。


少し先を、一人の人物が横切った。


「あ」


川出が足を止める。


「どうしました?」


「あの人」


川出は目を細めた。


聞いていた特徴に近い。


「行くぞ」


二人が追う。


相手は歩いていた。


だが、こちらに気づいたのか。


速度を上げる。


「すみません!」


川出が声をかける。


相手は振り返らない。


「ちょっと話を――!」


走り出した。


「おい!」


川出たちも追う。


角を曲がる。


さらに先。


もう一つ角を曲がった。


「速いな……!」


川出が息を切らす。


そして。


次の角を曲がったところで、姿が消えた。


「……どこ行った?」


道は一本。


脇道もない。


川出が周囲を見る。


そこへ。


向こうから一人の男が歩いてきた。


ごく普通の男だった。


川出たちの横を通り過ぎる。


「すみません、この辺で――」


川出が振り返る。


男も、数歩先で立ち止まっていた。


ゆっくりと。


こちらを振り返る。


川出は何も言わなかった。


男も何も言わない。


ただ。


その目だけが。


妙に、こちらを観察していた。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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