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ビーストギア  作者: 時根脱才 
ミラーカメレオン編

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第1話 二人いる

第四章 ミラーカメレオン編


第1話 二人いる


昼休みを少し過ぎた頃だった。


銀行の自動ドアが開き、一人の男が入ってきた。


紺色のスーツに、白いシャツ。

ネクタイは少し曲がっている。

手には黒いビジネスバッグ。


どこにでもいそうな会社員だった。


男は店内を見回すこともなく、番号札を取った。


椅子に座る。


呼ばれるまで待つ。


何人かの客が出入りした。


「三十二番のお客様」


番号が呼ばれた。


男は立ち上がり、窓口へ向かった。


「本日はどういったご用件でしょうか」


行員が尋ねる。


男はビジネスバッグをカウンターへ置いた。


「金を出せ」


行員の表情が止まった。


「……はい?」


「聞こえなかったか。金を出せ」


男がバッグを開く。


中から取り出したものを見て、行員が息を呑んだ。


悲鳴が上がった。


銀行内の空気が、一瞬で変わった。


警備員が駆け寄る。


「動くな!」


男は振り返った。


警備員が距離を詰める。


その瞬間だった。


男の身体が動いた。


速い。


警備員が腕を伸ばすより早く、その懐へ潜り込む。


鈍い音。


警備員の身体が床へ転がった。


「きゃあああっ!」


客たちが逃げ惑う。


男は騒ぎにも動じなかった。


顔を隠そうともしない。


帽子もない。

マスクもない。


防犯カメラの下を堂々と歩いている。


やがて男は金の入ったバッグを手にすると、そのまま銀行を出ていった。


◇


数時間後。


警察は、銀行の防犯カメラに映った男の身元を特定していた。


顔があまりにも鮮明だったからだ。


警察官二人が、その男の勤務先を訪れた。


受付で事情を説明すると、ほどなく一人の男が奥から歩いてきた。


「私に何か?」


警察官二人が顔を見合わせた。


間違いない。


銀行の防犯カメラに映っていた男だった。


「今日の昼頃、どちらにいましたか?」


「昼ですか?」


男は不思議そうな顔をした。


「ここにいましたけど」


「ずっとですか?」


「ええ」


「銀行には?」


「銀行?」


男はますます怪訝な顔をする。


「行ってませんよ」


当然、警察がそれだけで信用するはずがない。


だが、調べ始めるとおかしなことが次々と分かった。


男は朝から会社に出勤している。


昼前には会議に出席していた。


昼食も社内で取っている。


銀行強盗が起きた時間には、複数の同僚が男と話をしていた。


入退室の記録も残っている。


さらに、社内の防犯カメラにも男の姿が映っていた。


時間を確認する。


銀行の防犯カメラにも男がいる。


会社の防犯カメラにも男がいる。


ほぼ同じ時刻。


二つの場所は、どう急いでも短時間で移動できる距離ではなかった。


「……双子の兄弟は?」


「いません」


「よく似た親族は?」


「いませんよ。というか、何なんですか?」


警察官は答えなかった。


答えられなかった。


銀行にいた男。


会社にいた男。


二つの映像を並べても、違いが分からない。


どちらも同じ顔だった。


◇


翌日。


銀行周辺では、まだ警察による聞き込みが続いていた。


「昨日の昼、この辺りでこの男を見ませんでしたか?」


刑事が写真を見せながら、近くの店を回っている。


その少し後ろを、別の男が歩いていた。


川出だった。


「すみません。ちょっといいですか?」


通行人を捕まえて話を聞こうとしたところで、


「おい」


後ろから声が飛んできた。


川出が振り返る。


刑事が、露骨に嫌そうな顔をしていた。


「何してる」


「聞き込みです」


「見れば分かる。なんでお前らがやってるんだ」


「ちょっと気になることがありまして」


「これは強盗事件だぞ」


「知ってますよ」


「だったら邪魔するな」


川出は困ったように笑った。


「邪魔するつもりはないんですけどね」


刑事は川出の顔をじっと見る。


そして、その胸元へ目を落とした。


「CASHか」


その言い方には、敬意らしきものは一欠片もなかった。


「また怪人だの化け物だの言い出すんじゃないだろうな」


「まだ何も言ってませんよ」


「言ってるようなもんだ」


刑事はため息をついた。


「現場を荒らすな。捜査の邪魔もするな。分かったな」


そう言い残して去っていく。


川出は、その背中を見送った。


「……嫌われてるなあ、俺たち」


隣にいた隊員が小さく笑った。


「今さらですか?」


「まあ、そうなんだけどさ」


川出は気を取り直し、再び周辺を見回した。


銀行強盗そのものなら、CASHが首を突っ込む話ではない。


だが、一つだけ引っ掛かる。


犯人とされた男が、同じ時間に会社にいた。


警察は双子や変装、映像の問題を疑っているらしい。


それは当然だ。


普通なら、そう考える。


だが――。


川出たちは、普通ではないものが本当に存在することを知っている。


だからこそ、普通なら笑って捨てるような話を捨てられなかった。


◇


「同じ人間が、同じ時間に二か所か」


北山が腕を組んだ。


集められた情報が机の上に並んでいる。


東も資料へ目を落としていた。


「警察は?」


「普通に捜査してますよ。双子、変装、共犯、映像の細工。そっちを疑ってるみたいです」


川出が答える。


「まあ、そりゃそうですよね」


北山が言った。


「普通はそう考える」


「でも、俺たちは?」


川出が尋ねる。


東が顔を上げた。


「普通じゃない可能性も捨てない」


それだけだった。


まだ怪人だと決まったわけではない。


怪人なら、何をどうやっているのかも分からない。


そもそも本当にCASHが追うべき事件なのかすら分からない。


だから調べる。


ただ、それだけだった。


◇


午後。


パンさんの店では、甘い香りが漂っていた。


「はい、お待たせ」


パンさんがテーブルへ皿を置く。


東の前にはコーヒーとスイーツ。


東は満足そうにフォークを手に取った。


「やっぱり、ここに来ると落ち着くわね」


「休憩なんだから、仕事の顔は外に置いてきな」


「そのつもりよ」


そう言いながら、東は一口食べた。


少し離れたところに紀人がいた。


東はコーヒーへ手を伸ばし、それから紀人を見る。


「あ、そうだ」


「はい?」


「あなたも必要になる話かもしれないから、一応耳に入れておくわ」


紀人が東を見る。


「何かあったんですか?」


「強盗事件」


「……強盗?」


紀人は拍子抜けしたような顔をした。


「それ、俺に関係あります?」


「普通の強盗ならね」


東はコーヒーを一口飲んだ。


「犯人の顔は防犯カメラにはっきり映ってる。身元も分かってる」


「じゃあ、捕まったんですか?」


「それが、その本人は犯行時間に会社で仕事をしてたの」


紀人の表情が変わった。


「……どういうことです?」


「そのままよ。銀行に犯人がいる。同じ時間に、会社にも本人がいる」


「双子とか」


「今のところ違うみたい」


「変装?」


「警察はそういう線も含めて調べてるでしょうね」


紀人は黙った。


東はスイーツをもう一口食べる。


「私たちもまだ何も分かってない。怪人が関係してると決まったわけでもない」


「じゃあ、なんで俺に?」


「だから言ったでしょ」


東は紀人を見る。


「必要になるかもしれないから」


紀人は少しだけ視線を落とした。


怪人。


その言葉を聞いたとき、頭に浮かぶものが以前とは違っていた。


怪人は怪人。


倒すべき敵。


少し前までなら、それだけだった。


だが今は違う。


サクラは、人間だった。


そのサクラが怪人になり、自分と戦った。


紀人は無意識に拳を握っていた。


東はそれ以上、何も言わなかった。


◇


その日の夜。


一人の女がコンビニのレジに立っていた。


「袋、大丈夫です」


「はい。ありがとうございます」


女はスマートフォンで支払いを済ませ、商品を受け取った。


店を出る。


入口の上にある防犯カメラが、その姿を映していた。


時刻は、午後九時十二分。


同じころ。


そこから離れた場所。


別の防犯カメラにも、一人の女が映っていた。


同じ顔。


同じ髪型。


同じ体格。


女は、閉ざされた施設の入口の前に立っていた。


ゆっくりと顔を上げる。


監視カメラを見た。


そして――。


笑った。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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