閑話① サクラ(仮)
閑話① サクラ(仮)
その日の配信は、いつもと少し違っていた。
怪人が現れる。 キッドが戦う。
そこまでは、これまでと同じだった。
けれど、画面に映った怪人を見た瞬間から、コメント欄には妙な熱が生まれていた。
『今回の怪人、なんか女っぽくない?』
『羽あるぞ』
『蝶?』
『いや蜂っぽいのも混ざってる』
『何モチーフなんだよ』
『また盛ったなあ』
『羽の怪人でいいだろ』
『雑すぎるw』
好き勝手な呼び名が飛び交う中、怪人が構えた。
そこでコメントの流れが変わった。
『待って』
『こいつ空手使うの?』
『構えめっちゃ綺麗じゃね?』
『経験者っぽい』
『怪人にも空手ってあるんだな』
『怪人空手とは』
対するキッドも構える。
二人は向かい合い、そのまま一騎打ちへ入った。
◇
『キッドいけ!』
『今回の相手強そう』
『羽あるなら飛ぶんじゃね?』
『気をつけろー!』
最初こそ、いつもの配信と変わらなかった。
けれど、拳が何度か交わされたところで、視聴者たちも違和感に気づき始める。
『……あれ?』
『なんか変じゃない?』
『何が?』
『こいつら動き読みすぎじゃね?』
『また避けた』
『キッドも読んだ』
『今のフェイントにも反応してたぞ』
『初見でこんなことできる?』
怪人が踏み込む。
キッドは半歩だけずれた。
拳が空を切る。
その隙へキッドが反撃するが、怪人はすでに身体を引いている。
『これ初対面じゃないと思う』
『なんで?』
『互いに次の動き知りすぎ』
『格闘技詳しい人?』
『空手やってる。少なくとも怪人側はかなり慣れてる』
『キッドもいつもより読み合ってる感じする』
『怪人と知り合いなの?』
『そんなわけある?』
『じゃあ何でこんな息合ってんだよ』
『元同門説』
『怪人と同門って何だよw』
冗談だったはずの書き込みも、戦いが続くほど冗談に見えなくなっていく。
怪人が仕掛ければ、キッドが読む。
キッドが誘えば、怪人は乗らない。
その裏を狙えば、さらに先を読まれる。
『何手先まで読んでんだよ』
『将棋やってんじゃねえんだぞ』
『空手で将棋すんなw』
『今の絶対避ける方向分かってただろ』
『でもキッドもそれ読んでたぞ』
『何なんだこいつら』
そして。
キッドの声が、配信に乗った。
『サクラ!』
一瞬だけ、コメントの流れが止まる。
『??????』
『サクラ?』
『誰?』
『名前出たぞ』
『怪人の名前?』
すぐさま、怪人が叫んだ。
『私はサクラじゃない!』
『否定したw』
『じゃあ誰だよw』
『キッド完全にサクラって呼んでるじゃん』
『人違い?』
『こんだけ戦えて人違いだったら怖いわ』
『知り合い説さらに濃くなった』
『サクラって普通に人間の名前っぽくね?』
『おいやめろ』
『何が?』
『怪人の正体が人間とか言い出すなよ』
『さすがに飛躍しすぎ』
その書き込みも、大量のコメントに押し流されていった。
◇
戦いは続く。
ところが、いつの間にかコメント欄からキッドを心配する声が減っていた。
理由は単純だった。
二人とも、妙に楽しそうなのだ。
『……なあ』
『何』
『こいつら笑ってない?』
『笑ってる』
『キッドめっちゃ楽しそう』
『怪人側もだろ』
『お前ら敵同士だよな?』
さらに。
『やっぱお前と組手するのが一番楽しいわ!』
『組手って言ったぞw』
『やっぱ知り合いじゃねえか!』
『完全に昔からのライバル』
『もう怪人退治じゃない』
『ただの組手配信になってる』
『俺たちは何を見せられてるんだ』
『同窓会』
『怪人との同窓会やめろw』
当然のように、怪人から声が返ってくる。
『私はサクラじゃない!』
『はいはいサクラさん』
『もうサクラでいいだろ』
『本人が違うって言ってるだろ!』
『否定すればするほどサクラに見える』
『サクラ(仮)』
『それだ』
『サクラ(仮)でいこう』
『勝手に決めんなw』
本人の知らないところで、ネット上では一つの呼び名が定着し始めていた。
◇
一方、戦いそのものを冷静に見ている視聴者もいた。
『怪人側、力任せじゃないな』
『キッドの間合いに合わせて距離変えてる』
『フェイントにもほぼ引っかかってない』
『キッドも怪人の癖知ってるようにしか見えない』
『やっぱ同門じゃね?』
『でもそれより気になることある』
『何?』
『羽』
『あ』
『使ってないな』
『こんだけ立派なのあるのに飛ばない』
『飾り?』
『動いてるから飾りじゃないだろ』
『蜂っぽいなら毒針とかありそう』
『それも使ってない』
『能力縛ってんの?』
そこで、別の誰かが気づく。
『キッドもメモリー使ってなくない?』
『……マジだ』
『どっちも能力使ってない?』
『空手だけでやってんのか』
『何で???』
『縛りプレイ?』
『だから怪人戦で縛りプレイすんなw』
『マジで何なんだよこの二人』
画面の中では、視聴者たちの疑問など知る由もなく、二人の攻防がさらに激しくなっていく。
拳が交差する。
蹴りが空を切る。
間合いを詰めれば離れ、離れればまた詰める。
互いに相手の動きを読み、その読みすら読んでいた。
『今のやば』
『キッドが避けるの分かって次入れてた』
『でもサクラ(仮)も返し読んでたぞ』
『だから空手で将棋すんなって』
『これどっちが強いんだ?』
『ほぼ互角じゃね』
『今までの怪人と明らかに違う』
そんな中。
『でもさ』
『何』
『キッドも本気で倒そうとしてなくない?』
『サクラ(仮)もじゃね?』
『……何で?』
『殺し合いじゃないから?』
『じゃあ何しに来たんだよ』
『キッドと戦うためとか』
『わざわざ?』
『果たし状でも送ったのかよw』
『昭和かよw』
真相を知る者がいれば、笑えないほど正確な書き込みだった。
けれど、それもすぐにコメントの海へ沈んでいった。
◇
やがて、二人が距離を取った。
互いに構える。
『そろそろ決まりそう』
『どっち勝つ?』
『キッドだろ』
『いやサクラ(仮)普通に強いぞ』
『だからサクラじゃないって本人言ってるだろ』
『(仮)つけたからセーフ』
『何がセーフなんだよ』
キッドが腰を落とす。
怪人も構えた。
コメントの速度が一気に上がる。
『来るぞ』
『次で決まる?』
『キッドいけ!』
『サクラ(仮)も頑張れ』
『怪人応援すんなw』
『だってもう敵に見えねえんだもん』
その時だった。
『ん?』
画面の端で、白い何かが動いた。
『待って』
『後ろ』
『なんかいるぞ』
『一匹じゃない』
『え』
『増えた』
『増えてる増えてる』
『これ前に出た奴じゃね?』
『白蟻?』
『めっちゃいるんだけど!?』
一体。
二体。
三体。
さらに、その後ろからも。
白蟻たちが次々と姿を現した。
『うわああああ』
『邪魔入った!』
『空気読め白蟻!』
『今いいところだっただろ!』
『怪人に空気読めって言ってる俺ら何なんだよ』
キッドが白蟻へ視線を向ける。
サクラ(仮)も、同じ方向を見る。
『誰が来いと言った!』
コメント欄が、また一瞬止まった。
『……え?』
『今なんて?』
『羽の怪人もキレてる』
『こいつら仲間じゃないの?』
『白蟻来るの知らなかったっぽい』
『どういう勢力図なんだよ』
『敵の敵?』
『いや待て待て』
画面の中。
さっきまで殴り合っていたキッドとサクラ(仮)が、並んで同じ方向を向く。
『…………』
『ちょっと待って』
『これ』
『まさか』
そして。
『こいつら共闘すんの?』
※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。




