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ビーストギア  作者: 時根脱才 
アリア編

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第三話 俺たちの武器

第三章

第三話 俺たちの武器


 CASHの拠点には、大小さまざまなケースが並べられていた。


「…………」


 東は、その一つ一つを見比べる。


 長いもの。


 幅のあるもの。


 人ひとり入ってしまいそうなほど大きなもの。


「博士」


「なに?」


 隣では、シラメ博士がどこか満足そうに立っている。


「今日は訓練だと聞いていたんだけど」


「うん。訓練もするよ」


「も?」


「その前に」


 シラメ博士がケースの列へ手を向けた。


「僕から、みんなにプレゼント」


「プレゼント?」


 川出が目を輝かせる。


「なんか、いい響きですね」


「そうか?」


 南浦は腕を組んだまま、並んだケースを眺めている。


 ニシにいたっては、すでに一番大きなケースの前へ移動していた。


「これ、俺のか?」


「まだ開けちゃ駄目だよ」


「いいじゃねえか、見るくらい」


「順番があるんだから」


「博士、こういうところ妙に細けえな」


「研究者だからね」


「関係あるか?」


 北山が小さく笑った。


 東は改めてケースを見る。


「つまり」


「うん」


 シラメ博士が頷く。


「みんなの専用装備が完成したんだ」


     ◇


「専用?」


 北山が聞いた。


「全員、別々なのか?」


「もちろん」


 シラメ博士は即答した。


「東さんはフェンシング。北山さんは空手。ニシさんはプロレス。南浦さんは狙撃。そして川出さんは機動力」


 一人ずつ指を向けていく。


「得意なことが全部違うのに、同じものを持たせても仕方ないでしょ?」


「まあ、それはそうだけど」


 川出がケースを覗き込む。


「だから僕は」


 シラメ博士が言った。


「武器に君たちを合わせるんじゃなくて、君たちに武器を合わせたんだ」


「…………」


「今まで培ってきたものを捨てて、新しい戦い方を一から覚えるより」


 ケースを軽く叩く。


「今までできたことを、そのまま怪人にも通用する形にした方が早いからね」


 南浦が聞いた。


「通用するのか?」


「白蟻タイプにはね」


「…………」


「そこはもう実証済み」


 シラメ博士の表情が、少しだけ真面目になる。


「でも」


 一同を見る。


「勘違いはしないでね」


     ◇


「まず」


 シラメ博士が言った。


「この装備をつけたからって、君たちがキットと同じところまで来たわけじゃない」


「…………」


 誰も口を挟まない。


「今のところ」


 一拍。


「人類側で、怪人に正面から対抗できるのはキットだけだよ」


 南浦の眉が、わずかに動いた。


「僕たちには、まだそれだけの力はない」


「…………」


「白蟻タイプなら、この装備で戦える。倒すこともできる」


 ケースを見る。


「でも、モズキャッチャーみたいなボス級が相手なら話は別」


「どのくらい使える?」


 東が聞く。


「せいぜい」


 シラメ博士は少し考えた。


「威嚇」


「…………」


「ひるませる」


「…………」


「隙を作る」


「……その程度なの?」


「その程度だよ」


 シラメ博士は迷わず答えた。


「モズキャッチャーの時から、性能が何倍にもなったわけじゃないからね」


「…………」


「だから、自分たちだけでボスを倒そうなんて思わないで」


 そして。


 机の上に置かれていた資料を取る。


 そこには、キットの姿が写っていた。


「資料で見ている通り」


 シラメ博士が言う。


「キットは僕たちの協力者」


「…………」


「あくまでも君たちの任務は」


 資料を置く。


「キットがボスと戦う時、その攻撃を邪魔するものを排除すること」


「雑魚を片づけろってことか」


 ニシが言った。


「簡単に言えばね」


「…………」


「君たちはキットの代わりになる部隊じゃない」


 シラメ博士は、はっきりと言った。


「キットが戦いやすい状況を作るための部隊なんだ」


     ◇


「それと」


 シラメ博士が、今度は防具を指した。


「プロテクターについても言っておくね」


「何?」


 川出が自分の身体を見る。


「一応、怪人の攻撃を想定して作ってある」


「じゃあ、多少殴られても――」


「その考えは捨てて」


「早いな!」


 シラメ博士が川出を見る。


「防具があるから安全、なんて絶対に思わないでね」


「…………」


「言ってしまえば」


 一拍。


「気休め程度」


「そんなに?」


 北山が聞いた。


「即死を免れられるかもしれない」


 シラメ博士は淡々と続ける。


「そのくらいに思っておいて」


「…………」


「攻撃を受ければダメージは通るよ。骨だって折れるかもしれないし、内臓を傷めるかもしれない」


 一同の顔を見回す。


「何より」


 少しだけ、声から軽さが消えた。


「怪人の能力は未知数なんだ」


「…………」


「僕が想定していない攻撃をしてくる可能性なんて、いくらでもある」


 プロテクターを軽く叩く。


「だから僕にも、この防具がどこまで通用するかなんて保証できない」


「…………」


「過信しないで」


 今度は。


 誰も冗談を言わなかった。


「じゃあ」


 シラメ博士が手を叩く。


「説明は終わり」


 川出が目を瞬かせる。


「急に戻ったな」


「お待ちかねの装備紹介だよ」


     ◇


「まずは東さん」


「私?」


「うん」


 一つ目のケースが開かれる。


「…………」


 中に入っていたのは、細身の剣だった。


「レイピア……?」


「正解」


 東が手に取る。


「貴方、フェンシングで国体に出てるでしょ?」


「ずいぶん昔の話よ」


「昔でも、身体は覚えてるよ」


「…………」


 東が試しに構える。


 脚を引き。


 身体を半身にする。


 その瞬間。


 それまで柔らかかった空気が、ほんの少し変わった。


「おお」


 川出が声を漏らす。


「似合いますね」


「そういう感想は求めてないわ」


「褒めてるんですけど」


「ありがとう」


「ちゃんと受け取るんだ」


 シラメ博士が続ける。


「もちろん普通のレイピアじゃないよ」


 東が刃を見る。


「怪人へ攻撃が通るように、特殊な機構を組み込んである」


「詳しくは?」


「壊されたくないから秘密」


「私にも?」


「使い方が分かれば十分でしょ?」


 東は少し呆れた顔をした。


「博士って、時々頑固ね」


「研究者だからね」


「さっきも聞いたわ、それ」


     ◇


「次。南浦さん」


「俺か」


 ケースが開く。


「…………」


 南浦の目が変わった。


 専用の狙撃ライフル。


 黙ったまま手に取り。


 重量を確かめ。


 肩へ当て。


 照準器を覗く。


 一連の動作に、迷いがない。


「説明する?」


 シラメ博士が聞く。


「大体分かる」


「一応聞いてよ。僕が作ったんだから」


「…………」


「白蟻タイプなら有効なのは確認してある。だけど、さっき言った通りボス相手には期待しすぎないこと」


「ああ」


「それと」


 東が南浦を見る。


「南浦」


「なんだ」


「…………」


 少しだけ間を置いた。


「これは、復讐のために渡された武器じゃないわ」


「…………」


 南浦の手が止まる。


「分かってる」


「ならいいの」


「…………」


 それ以上。


 東は何も言わなかった。


 南浦も何も言わない。


 ただ。


 ライフルを握る指だけが。


 ほんの少し強くなっていた。


     ◇


「北山さん」


「はい」


 ケースを開く。


 小手。


 レガース。


 そしてプロテクター。


「…………」


 北山が中を見る。


「武器は?」


「それ」


「これが?」


「うん」


 北山が小手を持つ。


「僕が見た限り」


 シラメ博士が言う。


「君に剣とか銃を持たせるのは、もったいない」


「…………」


「構えも」


「…………」


「間合いも」


「…………」


「突きも蹴りも」


 北山を見る。


「もう身体に入ってるでしょ?」


「まあ」


「だったら、それを使った方がいい」


 北山が小手を装着する。


「この小手とレガースは」


 シラメ博士が説明する。


「君が突きや蹴りを出した瞬間に、特殊機構が働くようにしてある」


「常に力が強くなるわけじゃない?」


「違うよ」


「…………」


「君自身が正しく打つ」


 シラメ博士が拳を作る。


「その瞬間だけ、装備が一撃を補助する」


「なるほど」


 北山が軽く突きを出す。


 シュッ――。


「……軽い」


「重かったら、君の空手を邪魔するでしょ?」


「…………」


 もう一度。


 北山が拳を出す。


「いいですね」


「でしょ?」


 シラメ博士が少し得意そうに笑った。


     ◇


「次、川出さん」


「待ってました」


「君だけプロテクター薄いよ」


「待ってましたって言った直後に不安なこと言わないでください!」


「だって重くしたら意味ないもん」


 ケースが開く。


「おお……」


 川出が武器を取る。


 小銃。


 だが、その銃身の一部には、近接戦用の刃が組み込まれている。


「ガンブレード?」


「そう思ってくれていいよ」


「いいな、これ」


「走りながら撃てる」


「うん」


「接近されたら、そのまま斬れる」


「うん」


「持ち替えなくていい」


「そのために作ったんだからね」


 川出が嬉しそうに構える。


「俺ってそんなに、ちょこまかしてるように見えます?」


「見える」


「即答!?」


「偵察」


 シラメ博士が指を一本。


「追跡」


 二本。


「攪乱」


 三本。


「伝令」


 四本。


「君の役目って、止まったら終わりでしょ?」


「…………」


「……確かに」


 川出が納得する。


 そして。


 ふと。


「そういえば」


「?」


「あの映像の人」


 東が川出を見る。


「昨日の?」


「はい」


 川出は武器を肩へ担ぐ。


「実際に歩いてるところ、一度見てみたいんですよね」


「まだ追跡しろとは言ってないわよ」


「分かってます」


「本当に?」


「……東さんまで、その聞き方するんですか?」


     ◇


「最後」


 シラメ博士が言った。


「ニシさん」


「やっとか!」


 一番大きなケース。


 ニシが開く。


「…………」


 そして。


 止まった。


 右を見る。


 左を見る。


 ケースの中を、もう一度見る。


「博士」


「なに?」


「俺の武器は?」


「ないよ」


「…………」


「…………」


「は?」


 川出が吹き出した。


「お前、笑うな!」


「いや、だって!」


「博士!」


「君が言ったんでしょ?」


「何を?」


 シラメ博士が、ケースの中にある装甲パーツを指す。


「自分の身体で戦いたいって」


「…………」


 ニシが黙った。


「だから」


 シラメ博士は少し笑った。


「そうしたよ」


     ◇


「これは」


 シラメ博士が説明する。


「君の代わりに戦う機械じゃない」


 ニシが装甲を身につけていく。


「怪人に特殊なダメージを与える仕掛けも入れてない」


「一切?」


「一切」


「…………」


「このスーツがするのは、君の身体能力を引き上げること」


「…………」


「筋力」


「…………」


「瞬発力」


「…………」


「防御」


「…………」


「それだけ」


 ニシが拳を握る。


「つまり」


「うん」


「殴るのは俺」


「君」


「投げるのも」


「君」


「戦うのも」


「君だよ」


「…………」


 ニシの口元が上がった。


「分かってんじゃねえか」


「その代わり」


「?」


 シラメ博士の顔が真面目になる。


「これは他の装備より、ずっと君の身体に負担をかける」


「…………」


「長時間は使わないで」


「ああ」


「絶対だよ」


「分かった」


「本当に?」


「分かったって」


「それから」


 シラメ博士が小さなケースを取り出した。


「これ」


「薬?」


 中には錠剤。


「一日一回」


「…………」


「必ず飲んで」


「何の薬だ?」


「君の身体を守るためのもの」


「ざっくりしてんな」


「詳しく説明しても分からないと思うよ」


「言ったな?」


「言ったよ」


「…………」


「それと」


 さらに念を押す。


「事件が終わったら、必ず僕のところに来て」


「毎回?」


「毎回」


「面倒くせえな」


「じゃあ使わせない」


「行きます」


「よろしい」


 ニシがため息をついた。


     ◇


「じゃあ」


 装備を身につけた五人を見て。


 シラメ博士が手を叩く。


「試してみようか」


 訓練用の標的。


 最初は東。


 一歩。


 鋭く踏み込む。


「はっ!」


 レイピアが、標的の急所を正確に突く。


 次。


 南浦。


 離れた位置から構える。


 呼吸。


 引き金。


 命中。


 北山。


「…………」


 構える。


 一歩。


「せいっ!」


 突き。


 命中の瞬間。


 小手の特殊機構が作動する。


 標的が大きく揺れた。


 続けて。


 蹴り。


「はっ!」


 レガースが攻撃に合わせて作動する。


「なるほど」


 北山が小さく頷いた。


 川出。


 走る。


 射撃。


 標的の横へ。


 さらに走る。


 接近。


 そのまま刃。


「これ、いいな!」


「気に入った?」


「かなり!」


 そして。


 最後。


「俺だな!」


 ニシが真正面から走った。


「うおおおおっ!」


「ちょっと、ニシさん!」


 標的を掴む。


 持ち上げる。


「待って、それは――」


「おらあっ!」


 ドゴン!


「…………」


「…………」


「…………」


 標的が床へ叩きつけられた。


 静寂。


「…………」


 シラメ博士が、壊れた床を見る。


「床」


「あ?」


「壊さないでって言ったよね」


「聞いてねえぞ!」


「言ったよ」


「いつ!?」


「心の中で」


「それは言ってねえ!」


     ◇


 だが。


 問題は。


 そのあとだった。


「次は連携してみようか」


 シラメ博士の一言。


 そして。


 数分後。


「川出!」


「うわっ!」


 東が踏み込もうとした前を、川出が横切る。


「ごめんなさい!」


「射線に入るな!」


 南浦の声。


「俺!?」


「お前だ!」


「ニシさん、そっち!」


「分かってる!」


 ニシが走る。


 その先へ、北山も入る。


「ちょっ!」


「邪魔だ!」


「そっちが!」


「止まれ!」


「今止まったら撃たれる!」


「だから射線に入るな!」


「…………」


 シラメ博士が黙って眺めている。


「…………」


「博士」


 東が聞いた。


「何か言って」


「装備以前の問題だね」


「…………」


「そうね」


 五人が、バラバラに立っている。


 一人一人なら戦える。


 だが。


 一緒に戦えば。


 今は。


 互いが互いを邪魔していた。


「まだ全然駄目ね」


 東が言う。


「初日だぞ」


 南浦が返した。


「こんな別々の戦い方で、いきなり合わせろって方が無茶だ」


「だから練習するのよ」


「…………」


 東が全員を見る。


「一人で怪人に勝てる人間を集めたわけじゃない」


「…………」


「一人じゃ勝てないから」


 一拍。


「この隊を作ったの」


 誰も。


 何も言わなかった。


     ◇


 訓練が終わる。


 東はレイピアを確認し。


 北山は小手を外しながら動作を確かめ。


 ニシはパワードスーツの感覚を確かめている。


 南浦は黙って狙撃ライフルを手入れし。


 川出は。


「…………」


 モニターの前に座っていた。


「またそれ?」


 東が声をかける。


「どうしても気になるんですよ」


 映像。


 あの人物。


 人間の姿で。


 人間のように歩く。


 けれど。


 人間なら必ず出るはずの、わずかな癖がない。


 川出が再生する。


「…………」


 右。


 左。


 右。


 左。


 正確。


 無駄がない。


「やっぱり」


 川出が呟く。


「綺麗すぎる」


 そのとき。


 別の映像が表示された。


「……ん?」


 川出が止める。


「どうしたの?」


 東が近づく。


「これ」


 新しく入った映像。


 一人の人物が、街を歩いている。


「…………」


 服装は違う。


 顔も。


 映像だけでは分からない。


 けれど。


 川出の目は、その脚から離れなかった。


 一歩。


 また一歩。


 一定の歩幅。


 必要なだけ振られる腕。


 滑らかな重心移動。


「…………」


 川出が、ゆっくり身体を起こした。


「いた」


「え?」


 画面の中。


 その人物は。


 どこにでもいる人間のような姿で。


 あまりにも人間らしく。


 歩いていた。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

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