↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア  作者: 時根脱才 
バイクコヨーテ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/118

第4話 関係者なんだろ?

第4話 関係者なんだろ?


 最近、紀人とサクラが同じ日に教室へいることは、めっきり少なくなっていた。


 今日は紀人の登校日だ。


 朝の教室へ入ると、窓際にあるサクラの席は空いている。体調不良でもなければ、単なる欠席でもない。今ごろ彼女は、学校とはまったく違う場所で警察側の対応に入っているはずだった。


 三人の警察上層部のうち、すでに二人が死亡した。


 一人目は、自宅で家族や使用人もろとも殺害された。二人目は道路陥没に巻き込まれて死亡したと思われていたが、検視によって転落だけでは説明できない致命傷まで見つかっている。


 そして残された三人目は、自分が次に狙われることを確信しているかのように、CASHへ厳重な警護を求めた。


 怪人が関与している可能性が残っている以上、何かあった時に紀人とサクラの二人とも学校にいる状態は避けた方がいい。


 そこで今は、一日おきを基本に登校日をずらしている。


 紀人が学校へ来る日はサクラが警察側へ回り、翌日はサクラが登校して紀人がそちらへ入る。学校側にも事情は伝えてあり、教師たちも二人が警察に協力していることまでは知っていた。


 もちろん、本当のところまで教えているわけではない。


 内田紀人が、配信で怪人と戦っているキッド本人であること。


 同じクラスのおとなしい女子生徒であるサクラが、あのヴェネチアンマスクをつけて怪人へ毒針を突き立てる「サクラ」本人であること。


 そこまでは秘密のままだ。


「内田」


「はい」


 朝のホームルームを終えた担任が、何枚かのプリントを持って紀人の席へやってきた。


「これ、昨日配った分な。サクラに渡しておいてくれ」


「分かりました」


「それと今日進んだ範囲も、明日伝えてやってくれ。向こうにも同じこと言ってあるから」


「はい」


 受け取ったプリントを鞄へしまう。


 少し前なら、高校生二人が交互に休み、その日の授業内容を互いに引き継ぐなど妙な話だっただろう。だが今では、担任もすっかり慣れてしまっている。


 昨日はサクラが紀人の分を受け取っておき、今日は紀人がサクラの分を持ち帰る。


 怪人だの警察だのとはまるで関係なく、数学のプリントも英語の小テストも待ってはくれない。


 担任が教室を出ていった。


 扉が閉まる。


 紀人は教科書を机へ出そうとして――前の席の男子が、待っていましたとばかりに振り返ったのを見て手を止めた。


「なあ、内田」


「……何だよ」


 嫌な予感しかしなかった。


「結局、お前ら警察の何手伝ってんの?」


「またそれかよ」


「だって気になるだろ。一日おきに交代で学校来る高校生なんて、普通いないって」


 その声を聞きつけ、近くにいた何人かまで寄ってくる。


「今日は内田で、明日サクラだろ?」


「警察って高校生に何やらせてんの?」


「事情聴取とか?」


「捜査の手伝い?」


「怪人探す仕事だったりして」


「そんなの俺に聞くなよ」


「だって関係者じゃん」


「その『関係者』って言い方、最近便利に使いすぎだろ」


 紀人は顔をしかめた。


 教師たちは余計なことを言わない。


 だが、二人が警察への協力を理由に交互に休んでいれば、クラスメイトが興味を持たない方がおかしい。


「で、実際何してんの?」


「言えることと言えないことがあるんだって。それに、俺だって警察が調べてること全部教えてもらってるわけじゃない」


「じゃあさ」


 別の生徒が声を挟んだ。


「今ニュースになってる事件は?」


 紀人の動きが、ほんの一瞬だけ止まった。


「警察の偉い人が二人死んだやつ」


「ああ、あの記者会見に出てた三人のうち二人だろ?」


「一人は一家殺されて、もう一人は道路陥没だっけ?」


「やっぱり怪人がやったの?」


「何か警察から聞いてない?」


「聞いてても言えるわけないだろ」


 言った直後、しまったと思った。


 案の定、周囲の顔が一斉に変わる。


「おっ」


「今の言い方!」


「絶対何か知ってるじゃん!」


「だから、そういう意味じゃない!」


「じゃあ怪人だったの?」


「俺も全部知ってるわけじゃないって言ってるだろ。それに、知ってることがあったって勝手に話せないの!」


 言えば言うほど怪しくなっていく。


「じゃあ警察から聞いた話じゃなくて、内田個人としては?」


 今度は女子の一人が聞いてきた。


「怪人だと思う?」


 紀人はすぐには答えなかった。


 軽い雑談として聞いているだけだと分かっている。それでも、今の紀人には簡単に「そうだと思う」とは言えなかった。


「……分からない」


「警察に協力してても分からないんだ?」


「そりゃそうだろ。分からないものを最初から怪人って決めつけるのも違うし、逆に人間がやったって決めつけるのも違う。調べないと」


 何人かが顔を見合わせる。


「なんか内田、最近警察っぽいこと言うな」


「影響されてんじゃね?」


「されてない」


「いや、されてるって」


 教室に軽い笑いが起きた。


 紀人もそれ以上は言わず、教科書を開いた。


 けれど、今口にした言葉は、警察に言われたから覚えたものではなかった。


 怪人なら倒せばいい。


 以前の自分なら、それだけで済ませていた。


 人を襲う怪人が現れれば止める。倒す。それが自分にできることだと思っていたし、実際それしか知らなかった。


 だが今は、怪人の中には元々人間だった者がいるかもしれないことを知ってしまった。


 だからといって、誰かを殺そうとしている相手を見逃すことなどできない。必要なら戦う。その気持ちは変わっていない。


 問題なのは、その先だ。


 最後の一撃を入れる時。


 もし、目の前の怪人も元は人間だったら。


 ――本当に倒してしまっていいのか。


 その疑問だけが、まだ紀人の中に残っている。


     ◇


 事件の話が別の方向へ転がったのは、次の休み時間だった。


「でもさ」


 一人の男子が、ふと思いついたように言った。


「内田とサクラって、怪人事件で警察に協力してるんだよな?」


「だから?」


「だったらキッドとか、配信のサクラとも会ったことあるんじゃないの?」


 紀人の手が止まる。


「……何でそうなるんだよ」


「だってキッドも警察と一緒に動いてるだろ?」


「サクラも」


「ってことは、正体知ってたりする?」


 いきなり危険なところまで飛んできた。


「知ら――」


 反射的に否定しかけ、紀人は口を止めた。


 今の自分は、表向きにも怪人事件へ関わる警察協力者という立場になっている。


 ここで「何も知らない」と言い切ってしまうのも、それはそれで不自然だ。


 ほんの一瞬迷った末、


「知ってても言えるわけないだろ」


 と答えた。


 そして、言った瞬間に失敗を悟った。


「知ってるんじゃん!」


「今の完全に知ってる奴の答え!」


「誰? キッド誰なの?」


「教えるわけないだろ!」


「会ったことは?」


「その辺も話せない」


「じゃあ今度、会わせてよ」


「無理」


「一回だけ」


「無理」


「キッドのサインくらい頼めない?」


「なんで俺が頼むんだよ!」


「関係者だから」


「だから、その言葉を万能の通行証みたいに使うな!」


「じゃあサクラ」


「もっと無理!」


「サクラの方が会いたい」


「俺は芸能人のマネージャーじゃないんだぞ!」


 周囲から笑い声が上がった。


 警察協力者という肩書きだけが一人歩きし、いつの間にか紀人は「キッドやサクラに頼み事を通せる人間」扱いされつつある。


「せめて写真」


「無理」


「サイン」


「無理」


「握手」


「知らん!」


「ケチだな」


「なんで俺が悪いんだよ!」


 紀人がうんざりしている横で、一人の男子が何気なくサクラの空席へ目を向けた。


 そのまま数秒。


「……ちょっと待て」


「何?」


「うちのサクラも、警察に協力してるんだよな」


「そうだな」


「で、配信で戦ってる方も名前はサクラ」


 紀人の背筋に、ぞくりと冷たいものが走った。


 そこに気づいたか。


「ひょっとして」


 男子が面白半分の顔で言う。


「サクラとサクラって、同一人物だったりして」


 紀人は反射的に口を開きかけた。


 何を言う。


 否定するのか。


 否定しすぎても怪しい。


 適当に笑って流すべきか。


 ほんの一瞬で頭の中をいくつもの考えが走ったが、紀人が何か言うより先に、別の生徒がサクラの席を眺めて首を傾げた。


「……いや、ないだろ」


「ないよな」


「あのサクラだぞ?」


「学校じゃめちゃくちゃおしとやかじゃん」


「怪人に向かって走ってって毒針ぶっ刺してる姿とか、想像できねえ」


「配信のサクラ、戦い方けっこう容赦ないしな」


「名前一緒なだけだろ」


 紀人は、表情を動かさないようにしながら心の中だけで大きく息を吐いた。


 危なかった。


 いや。


 危なかったというより――ほとんど正解だった。


 警察への協力。


 同じ名前。


 そこまで全部つながっていたのに、日頃のサクラの印象だけで本人たちが勝手に答えから離れてくれた。


「……まあ、そうだよな」


 紀人も何食わぬ顔で話を合わせる。


「だろ?」


「あのサクラが怪人と戦ってるとか、さすがにないって」


 ――本人だけどな。


 心の中だけで突っ込む。


 これで助かった。


 紀人はそう思った。


 だが、話は終わらなかった。


「じゃあ内田は?」


「は?」


「キッド」


「なんで俺まで来るんだよ!」


「いや、せっかくだし何かないかなって」


「せっかくって何だよ。探すな」


 男子の一人が紀人の名前を見ながら腕を組んだ。


「内田紀人……紀人……」


「考えるなって」


「紀人をさ、音読みっぽく無理やりこじつけて……キッド?」


 一瞬、教室が静かになった。


 紀人も黙った。


 妙な汗が出そうになる。


 ところが。


 言い出した本人が、次の瞬間には吹き出した。


「いや、安直すぎるだろ!」


 教室に笑いが広がる。


「正体隠す名前でそれは雑すぎ!」


「自分の本名から取るにしても、もうちょいひねるだろ!」


「バレたくないのにそんな名前つける奴いる?」


 紀人は机の下で、ぐっと拳を握った。


 ――仕方ないだろ!


 あの時、ついキッドって名乗っちゃったんだから!


 まさか後になって、自分のクラスメイトから命名センスを採点されるとは思ってもみなかった。


 確かに、後から考えて「もう少し別の名前もあったんじゃないか」と思ったことがないわけではない。


 だからこそ余計に腹が立つ。


 ――安直って言うな!


「内田、なんか怒ってね?」


「怒ってない!」


「いや、今絶対ムッとした」


「してない!」


「自分でもちょっと似てると思った?」


「思ってない!」


「でも紀人からキッドって、無理やりならなくもないよな」


「ない!」


 本人が自分の正体を全力で否定するという、何とも妙な状況である。


「まあでも、内田がキッドはないよ」


 誰かが笑いながら言った。


 紀人は思わず聞き返す。


「何で?」


「普段こんなだし」


「『こんな』って何だよ」


「もう少しヒーローっぽくないと」


「ふざけんなよ!」


 再び笑いが起きた。


 正体からは離れた。


 それはありがたい。


 ありがたいのだが、紀人としては全然納得できなかった。


     ◇


 昼休みになり、ようやく正体当て遊びから解放されたと思ったのも束の間だった。


「そういや俺、キッドの配信けっこう見てるんだけど」


 一人の男子がスマートフォンを取り出した瞬間、紀人は嫌な予感を覚えた。


「この前のやつ見た?」


「……まあ」


 見たどころではない。


 映っている本人だ。


「キッドってさ、強いし、決める時は普通にカッコいいんだけど」


「うん」


「戦闘中、けっこうドジかますよな」


 紀人の箸が止まった。


「……は?」


「ほら、ここ」


 スマートフォンの画面に表示された戦闘動画が少し巻き戻される。


 怪人の攻撃を避けた直後、キッドが崩れた足場を踏み、大きく体勢を崩した場面で映像が止まった。


「あー、これな」


「危ねえよな」


「この後、何事もなかったみたいに戻ってるのが余計面白い」


「決める時カッコいいのに、たまに締まらないんだよ」


 紀人の眉がぴくりと動いた。


「いや、待てよ」


「何?」


「あれは仕方ないだろ」


「何が?」


「そこ、足場が崩れてるんだよ。しかも敵の攻撃を避けた直後だぞ? 足元までいちいち確認してる余裕なんてないだろ」


 自分でも、もう少し黙っていればいいと思っている。


 なのに口が止まらない。


「あの状態で完全に転ばなかっただけでも相当だし。そもそも動画の角度だと分かりにくいけど、あの時は――」


 そこまで言って、ようやく周囲が妙に静かなことに気づいた。


 全員が紀人を見ている。


「……何だよ」


「いや」


 スマートフォンを持っている男子が少し引いた顔をした。


「なんでそんな本気なの?」


「本気じゃない」


「いや、めちゃくちゃ本気だったぞ」


「擁護が具体的すぎる」


「内田、キッドの熱狂的ファン?」


「違う!」


「だからさっき名前を安直って言われて怒ったのか」


「それも違う!」


「キッドガチ勢だったんだな」


「違うって言ってるだろ!」


 教室にまた笑いが起こる。


 紀人は面白くない。


 自分の戦闘を、本人の目の前で「ドジ」と言われたのである。


 少しくらい反論したっていいではないか。


 ただ、その当たり前の理由を説明できないのが問題だった。


「まあでも、実際強いよな」


 男子が動画を見ながら、フォローするように言った。


 紀人は反射的に、


「……だろ?」


 と答えた。


 一瞬。


 全員が止まる。


「あ」


「ほら!」


「やっぱりファンじゃん!」


「今のは違う!」


「何が違うんだよ!」


「違うものは違う!」


「キッド褒められて嬉しそうじゃん」


「……もう勝手にしろ!」


 紀人はとうとう諦め、昼食へ逃げた。


     ◇


 午後の授業が始まれば、教室は何事もなかったようにいつもの空気へ戻った。


 黒板に数式が並び、教師が説明を続ける。


 紀人もノートを取りながら、今日進んだ範囲へ印をつけていった。


 明日はサクラが登校する。


 今日受けた授業の内容を伝え、プリントを渡さなければならない。


 一日おきに学校へ来るようになってから、互いの授業を補う作業はすっかり習慣になった。


 怪人事件が起きようが、警察上層部が狙われようが、学校の時間は止まらない。


 宿題は出る。


 テスト範囲は進む。


 授業を休めば、その分は自分たちで取り返さなければならない。


 休み時間になり、紀人がスマートフォンを確認すると、サクラから短いメッセージが届いていた。


『こっちは今のところ異常なし』


 どうやら警護側にも、大きな動きはないらしい。


 紀人は返信する。


『了解。学校も今のところ異常なし』


 そこまで打って、少し考える。


 そして付け足した。


『クラス以外は』


 すぐに返信が来た。


『何かあったの?』


『サクラとサクラが同一人物じゃないかって疑われた』


 送信。


 少し間があった。


『ばれた?』


『自分たちで「学校のサクラがおしとやかすぎるから違う」って否定した』


 今度は返信まで少し長かった。


『……複雑』


 紀人の口元がわずかに緩んだ。


 確かに本人としては、正体を疑われなかったことを喜ぶべきなのか、「戦えるようには見えない」と言われたことを気にするべきなのか、微妙なところなのだろう。


 紀人はさらに打つ。


『あと俺もキッドじゃないかって言われた』


『そっちは?』


『名前が安直すぎるから違うって結論になった』


 数秒後。


『安直なのは否定できないんじゃない?』


「こいつ……」


 小さく声が漏れた。


『仕方ないだろ。あの時ついキッドって名乗ったんだから』


 送った直後、返ってくる。


『自分で安直だったって認めてる』


『認めてない!』


 思わず強く画面を押してしまう。


「内田、何ニヤニヤしてんの?」


 横から声をかけられ、紀人は慌てて顔を上げた。


「してない」


「サクラと連絡?」


「……まあ」


「やっぱ仲いいな、お前ら」


「普通だよ」


「交代勤務の相棒みたいだな」


「勤務じゃないから」


 これ以上話が変な方向へ行く前に、紀人はスマートフォンをしまった。


     ◇


 放課後。


 紀人は自分の教科書を鞄へしまい、今日サクラへ渡すプリントをその上へ重ねた。


 明日は自分が警察側へ入り、サクラがこの教室へ戻ってくる。


 席を立ったところで、昼間の男子に声をかけられた。


「内田」


「今度は何だよ」


「サクラに聞いといてよ」


「何を?」


「配信のサクラと、本当に何の関係もないのか」


「自分で聞けよ!」


「じゃあキッドのサイン」


「だから無理だって!」


「関係者なのに?」


「その言葉、そろそろ禁止にするぞ!」


 教室にまた笑い声が上がった。


「じゃあ、握手だけ」


「俺にどうしろっていうんだよ!」


 紀人は呆れながら教室を出た。


 廊下へ出ても、背後から友人たちの笑い声が聞こえている。


 三人の警察上層部のうち、すでに二人が殺されている。


 残る一人は、自分が次に襲われると確信しているかのように自宅へ閉じこもり、警察とCASHが警戒を続けている。


 今日、その警護側にはサクラがいる。


 明日は紀人がそちらへ入り、サクラがここへ戻ってくる。


 そんな状況の中でも、学校では友人がヒーローの正体を面白半分に予想し、配信された戦闘動画を見ながら「ドジだ」と笑っている。


 そのドジだと言われている本人も、同じ教室で一緒になって騒いでいる。


 考えてみれば、ずいぶん変な日常だった。


 けれど、不思議と嫌ではなかった。


 事件のことだけ考えていれば、頭の中には死んだ人間や、次に襲われるかもしれない人間のことばかりが残る。


 学校へ来れば、授業がある。


 友人がいる。


 くだらない話をする。


 自分の正体をすぐ近くまで言い当てられて肝を冷やし、次の瞬間には「安直すぎるから違う」と笑われる。


 そんな時間が、今の紀人には以前より少しだけ大切に思えた。


 校門を出たところで、スマートフォンが震えた。


 サクラからだった。


『お疲れ。今日はそのまま帰って大丈夫だって』


『三人目は?』


『今のところ異常なし。相変わらず、ほとんど自室から出てないみたい』


『了解。何かあったら連絡して』


『分かってる。明日は交代ね』


『うん』


 紀人はスマートフォンをしまい、帰路についた。


 怪人が現れれば、また戦うことになる。


 次に出てくる怪人が何者なのかも分からない。


 また迷うかもしれない。


 それでも今は、自分にできることをするしかない。


 今日は学校へ来ること。


 明日は必要な場所へ行くこと。


 そんなふうに、一日ずつやっていく。


 しばらく歩いたところで、紀人はふと昼間の会話を思い出した。


「……安直すぎるって」


 思わず口から漏れる。


 やはり、そこだけは納得できない。


「そんなに安直か?」


 誰も答えない。


 当然だ。


 紀人はさらに少し歩いてから、ぼそぼそと言い訳を始めた。


「仕方ないだろ。あの時は急だったんだから。名前なんかじっくり考えてる暇なかったし……」


 数歩進む。


「……キッド、別に悪くないだろ」


 さらに数歩。


「短くて言いやすいし」


 自分で自分を納得させようとして、最後には少しだけむなしくなった。


「……安直って、ふざけんなよ」


 結局そこへ戻り、紀人は一人でぶつぶつ言いながら家へ帰っていった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。