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84話 発見


「じゃあアオ、お前、俺らを尾行してたならコーチから西に行ったシカちゃんを拾った……じゃなくて保護した神社の場所知っとるやろ?あそこに先回りして行ってよ。そこで奉行が神社の普請しとるんやけど、職人さんとかに聞いてなんか足らん物資があったら知らせてくれ」


「ソラさん先回りって言ってもシカちゃんに連れて行ってもらった方が、僕が走るよりよっぽど先に着きますよ」


「俺らこの後リーちゃんの学校に寄ってから行くからさ。そこでお前をずっと待たせるのも悪いし。現地でいるもんあったらローパーちゃんに頼んでこっちに連絡して」


「ローパーちゃんって時々ユイさんに手紙を運んで来るあのでかいハシブトカラスですか?いきなり見ず知らずの僕の言う事聞いてくれますかね?」


「心配ないわアオ。あなたローパーちゃんにも顔馴染みだから大丈夫よ。ずっと見られてたわよ、フフ」


良かったな、あのくちばしで頭をつつかれる心配はなさそうや。マジで痛いからな。ドリルやでドリル。


「そうだ、アオ。あなたの密書、アウル教団に届ける時も頼んでいいわよ。ローパーちゃんは賢いから住所を伝えたら飛んで行くわよ」


「え?マジですか?ユイさん、助かる~」


と言いながらあっち行った。何しに行った?


「ユイ、お前人が悪すぎ。あいつアホやからマジで教団の暗部の住所書くぞ」


「ソラ君、さすがにアオ君でもそこまでは……」


あ、嬉しそうに戻ってきた。


「ユイさーん、書けました~これ教団の住所です~。秘密ですから人には言わないでくださいね」


あ、アホだった!ユイが見る前に慌ててその紙を取り上げて破り捨てる。


「何するんですかソラさん!せっかく書いたのに~」


こんなんバレたらお前怒られるぞ……と言うか怒られるで済むんか?それはかわいそ過ぎる。


「あのな、お前、それ一番隠さなあかんとこやぞ、いわゆる秘密結社の本拠地やろ?」


「ああ!本当だ!ソラさん、バレたらヤバいとこでした~」


「アーワ国三好郡三加茂町……」


ユイが目をつぶって口ずさむ。


「え?ユイさんなんでアウル教団の暗部の場所を……」


うぉ、ホンマにアデヤさん全部お見通しなんか。怖っ!


「女の勘よ」


おいおい。


「凄いですね!ユイさん!勘で当てるなんて」


ああ、こいつは本当に心底悪人じゃないな。こんなアホな奴に悪人はつとまらん。


「ソラさん、なんか不憫な子ですね、男前なのに」


サトちゃん、そっとしておいてあげよう。


「???」


キョロキョロすんなアオ。ええよ、アオは男前やから。それだけでなんとかなるよ、この世の中は。多分。


「まぁどうせ密書も送る前にサトちゃんの添削がっちり受けて、『問題無し』ばっかりの報告になるから、半年に一回くらい送ったらええんちゃう?」


「問題無しなら別にいいですかね!じゃあそうします」


隠密の仕事とは……まぁええか。


「そう言うわけでアオよ、先に行っといてくれ。ローパーちゃんがお前からの手紙持って戻ってきてから俺らは出るわ」


「わかりました!じゃあ先に出ますね!気持ち駆け足でいきま~す!」


そう言うと、アオは宿屋を出て走り出した。ん?あいつ走るのものすごく速くないか?


「ウソでしょ?彼、100メートル走のトップスピードを維持したまま見えなくなったよ!あり得ない速さだよ。あのスピードを維持できるならバケモンだよ」


「あれ、ボルトより速いんちゃうか?」


オリンピックで見た時の衝撃と同じくらいの衝撃を感じている。


「もしそうなら時速45キロくらいじゃないかな。僕ら高校生の短距離のスピードじゃないよ、あれは」


さすがアスリート。


「そしたらフルマラソン1時間切るぞ!しかも靴だってこっちの粗末な革靴ぞ」


「バケモンだね、彼……」


「ソラ、私もちょっと引いちゃってるわ。あれはなんなの?チートって言うやつ?」


足が速いってチートなんか?特技?才能?


「アオ君が隠密になったのって……あくまで憶測ですけど、ひょっとしてただ単に足が異常に速かったからでは?」


サトちゃん、そうかも知れん。頭が切れるじゃなくて連絡スピードの速さ重視で選ばれた可能性大。


「ソラ君、僕はちょっとショックだよ……まさかこっちの世界にあんなバケモノのアスリートがいるとは。今日からちょっと真剣にトレーニング始めていい?」


いや、ウミ張り合うなよ。ここにも記憶は天才のくせに残念な奴おったわ。


「でもソラさん、アオ君、さっき報告はた半年に一回でいいか?って言ってませんでした?」


「言うてたな」


「そうなると彼の唯一の利点、足の速さが全く無意味になっちゃいますね」


「サトちゃん鋭い!」


「彼の存在意義って教団にとってなんなんでしょう?」


全員思考停止。


「まぁ男前ですしね!」


「それでいいんじゃない?顔さえ良ければ他はアレでもなんとかなるわよ」


まあの。


「それよりなにより、俺はあいつの実直さと言うかウソが言えない所とか素直さとかが気に入っているのよな。生まれたときから親に言われたまま、ずっとアウル教団が正しいと思い込んでるんやろ?俺、あいつにもっと色んな事を教えてやりたい。あいつの世界ってアウル教団だけやん?長い間旅はしてるけど、アウル教の為に俺らの後をついてきているだけ」


「うん、僕らがやって来たことを何も理解してなかったね」


「アオが馬鹿だからじゃないの?」


「素直なだけなんだよ。言われるがまま、俺らを見てても表面をなぞっているだけ。本質が見えていない。教団に報告って言ってもあいつのなんて、多分『何月何日晴れ、今日はどこそこに行って何がありました。終わり』程度やろ?もっと近くで俺らの影じゃなくて、手元を見せてやって、それを見てあいつがどう感じるかやな」


「手元……いい表現だね。遠くから見てるだけじゃわかんないもんね。きっと子泣きのおじいさんやサチとの戦いも岡豊城もなんか拝んでるな、くらいだったろうね。彼は霊とか見えない人みたいだから。ソラ君が毎回色んなところでジタバタしてる。僕はいつも同じ様に拝んでる。ユイは跪いて祈ってる。サチはそもそも見えてないし。報告された方も意味わかんないよね」


「ソラとウミの弔いの旅をアオが間近で見てどう変わるか見ものね」


「一人抜けとるぞ」


「え?」


「ユイも戦力やろ?」


「あ、そうね。私も仲間ね!」


「カプカプ……」


「サチもそうやったな、それ以上俺の煩悩吸うな。聖人になってまうわ」


「私は記録係、傍観者です!」


サトちゃんはそれでいいんだ。


「そしてリーちゃん、シカちゃんもいるしね!」


「大所帯やのぉ気づけばいつの間にか」


さて、おしゃべりはやめてボチボチ学校に行くか。


---


「リーちゃん、愛しのウミ連れてきたで~」


職員待機室にそっと入り休憩中で気を抜いているリーちゃんに後ろから声をかける。


「!!」


「ソラ君、別に連れてこられたわけじゃないよ!それに、愛しのってなんだよ!」


プー、クスクス。この前の仕返しじゃ。ぎこちない二人を見るのは愉快愉快。


「ところでリーちゃん、吉田さんはどう?校長として」


「吉田さん、今、ちょうど授業をしてくれているんですけど、とてもいいですね。当然ですが私より博識ですし、色んな事情を抱えた子供ら一人一人を理解して、対応してくれています」


「授業の配分は?若旦那……じゃなかった、坂本さんが差配してくれている、商家の人に先生してもらう話はちゃんとできてる?」


「それがですよ!皆さんイヤイヤ引き受けてくれるのかと思ったら、ものすごく先生になるのを志願してくれる人が多くて、その整理が大変です」


「え?金にもならんのになんでそんなことに」


「どうも優秀な子を育てて、自分の店に奉公できるようにしたいみたいです。思いの外みんな吸収が速くて、読み書きや算盤もできる子が増えています」


「できる子を早めに目星付けて引き抜くつもりやな?それはそれでものすごくいいと思う!大成功」


「大成功ですか?」


「だって、考えてよ。この前まで浮浪児みたいにしてたガキどもやで?家を放り出されて住むとこもなく町の郊外でひったくりとかしてた奴らが、今は商家が雇いたいって言って来てるんだよ?汚くて風呂も入れず、着るもんもボロボロで臭いとか言われてたのが……こんな嬉しいことがあるもんか」


「そうだね。ぶらぶらしてた大人たちだって、あちこちで職を見つけて職人になった人、茶屋や酒屋で働く女性、魚屋で魚をさばく人、みんな職について自分で稼いでるもんね」


そうそう。


「ソラさん達が来て随分コーチが変わりました……」


「リーちゃんもな。色々と」


「はい。まさか、隠れ仏教徒として宿屋の食堂で働いていた私が学校で先生するなんて想像もしていませんでした」


「だよな。でもまあボチボチかな?ウミ」


「学校が一段落着くまで修行って約束だったからね」


「どう?リーちゃん。吉田さんも来て、先生も交代で商家の人が来てくれるって事だけど」


もう頃合いかな、うん。


「そうですね……まだです!」


「ズコ~~~~」


「なんでよ!合流するタイミングじゃん!今の流れは!」


「そうだよ、リーちゃん、なんでまだなんだい?」


サトちゃん、メモで忙しそう。


「シカちゃんのお家まだ完成してないですよね?」


「うん、今絶賛普請中だよ」


基礎くらいまでいったのかな?


「前にシカちゃんを預かる話をしたじゃないですか?ここでって」


「うん、したした。シカちゃんが俺らについてくるって言うから無くなったけど」


「私は、シカちゃんがいつでも帰ってこれるように待っていようと思います」


「でもシカちゃんは俺らと一緒にいるから大丈夫だよ。旅してるし」


「そうなんですけど、皆さんそもそも帰る為の家はあるでしょ?ソラさんもウミさんもユイさんもサトちゃんも」


「そりゃあるけど」


「みんな帰るところはあるけど、シカちゃんはないんです。ここを帰れる場所にしてあげようかなって」


「リーちゃんいなくても吉田さんがいればいいんじゃない?」


「それが……シカちゃん……ものすごく人見知りなんです。私がいないと隅っこで固まってて」


ゲッ!そうなん?


「シカ、ソラ達としか、喋れない」


「時々喋るやん!他の人とも」


「ソラ達いるから」


「盲点!!」


「シカちゃん、神様の使いやけどそもそも家って必要なん?元は野生動物っぽいけど。名前も神様に適当に『シカ』って言われてたんだろ?」


「うん、シカはシカ。家無くなって後、外にいた」


100年以上壊された神社跡で神様待ってたもんな。


「そのことなんですけど……皆さん、これを見てもらえますか?」


ん?リーちゃん、なんか棚から紙を持ち出した。


「この前シカちゃんが来た時に書道をしていた時のものですけど」


「あ~。いつの間にか神社の設計図書いてたときのやつ?残ってたの?現地で図面が足りないとかないのかな?」


「これは設計図を書く前に、遊びでお習字をしていた時のなんですけど」


「うわ!シカちゃん達筆!すごい綺麗」


サトちゃんびっくり。サトちゃんは速く書くために綺麗さを犠牲にしているからさ。


「『花』って書いたのか。子供の字じゃないね。凄いよシカちゃん」


「シカ、神様と練習してた、フフン」


自慢しとるな。


「え?ソラ君、文字の横になんか書いてるけど」


なんかってなんぞいな。


「これシカの名前」


シカって書いたんだろう?……「詩歌」ん?


「シカちゃん、『詩歌』って何よ!」


「シカ、名前」


「ひょっとしてシカちゃん、本当は『シカ』じゃなくて『詩歌(しいか)』じゃないの?」


「ん、神様『シーカ』って呼んでた。だからシカで合ってる!」


「合ってな~~~~い!!」


なんぞそれ。


「これ、神様が名前を付けてるって事?名付けしてるって事は……シカちゃんってほんとにただの神様の使いなんか?」


「ちょっとドキドキしてきたけど、僕ら……神様の使いのシカじゃなくて、神様の子供の背に乗ってたんじゃ……」


「そう言えば、白鹿が人間に変身して喋るなんて話、今まで聞いたことないわね」


ユイも若干焦ってる。


「あの~ちょっといいですか?実はシカちゃん、白鹿になった時、体のサイズとか自由に変えてます!ユイさんを乗せた時少しだけ伸びてました」


サトちゃん?それ今言う?自由自在に変化(へんげ)?


「白鹿が人に化けてるんじゃなくて、神様が自由に子供や白鹿の姿に変わっているだけの可能性があるってことじゃぁ」


ウミも冷や汗かいてきたな。


「じゃあシカちゃんて神様の子供なんじゃないの?」


ユイ、やっぱり?


「シカちゃんがまだ小さいから神様のお出かけに連れていかれてただけで、ただの神様の乗り物じゃなかったって事?先入観って怖い!」


サトちゃんも認めた?


「ソラ君が『シカなんて愛の無い適当な名前』とか最初に言うから」


ウミ裏切ったか。


「みんなそれに納得したじゃん!俺のせい?」


シカちゃん以外全員頷く。僕のせいらしい。


「ん~ちょっと神社行って考えようか?」


と冷や汗をかきつつ提案した。


あ、いい所にローパーちゃん帰ってきた。アオからの手紙やな。なになに?


「なんか白髪で長髪のヨボヨボの爺さんがあれこれうるさいので仕事が滞って困ってます」


……絶対神さんやろ?これ?


*(85話へ続く)*


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