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68話 再建


「なにこれ!車で高速走るより速いやん」


「スピード違反で捕まる心配ないし、石ころだらけの道もシカちゃんは浮いているから関係ないしね」


「さっき川の上も走ってましたよ」


「究極のショートカットできるから無敵やな。途中でサチ追い抜いてたもんなぁ」


「犬と鹿の差だねえ」


「クゥ~ン」


元気出せよ、サチ。そもそも歩幅が違うから。


「鹿って人乗せて走るもんなんですね、知りませんでした」


あ……サトちゃんするどい!奈良で乗っている人見たこと無いわ。


「あ、でもアシタカはヤックルに乗ってたし!」


「あしたか?やっくる?」


あ、ごめん。ジブリの話でした。


「そうだ!ソラ君、トナカイは鹿の仲間だよ」


「そうや、トナカイがおった!……ってあれ、ソリひいてるんちゃうか?」


「そうだった、人はあんまり乗せてないね」


「私は神様の乗り物ですのでその辺は問題ないかと」


「なるほど!じゃあ別にいいか。納得」


まぁ僕らは神じゃなくてリーマンと学生と書店店員だけど。


「ひょっとしてユイが飛ぶより速かったりしてな」


「失礼ね!本気出すとこんなもんじゃないわよ。と言うか私は別にわざわざ自分で移動する必要無いのに、あなた達のペースに合わせてるだけだからね。抜け穴を抜けたら即コーチでも山の家でも」


いや、ムキにならんでも。


「私は人を乗せて空高く飛ぶことはできません。せいぜい地面すれすれくらいがやっとです。神様でしたら高く飛ぶことも可能ですが」


ああ、俺らの体重だと30㎝くらいしか浮かべないのね。じゃあやっぱりユイの方が汎用性は高いんだな。


「汎用性って何よ!人を道具みたいに!」


ああ、久しぶりのハイキック。相変わらず綺麗な足ですこと。


「ソラ君、なんか蹴られるの快感になってない?」


「いや、蹴られるのは死ぬほど痛いけど、たまにいいもん見せてくれるから、へへ」


ビシッと今度はローキックが決まる。これはなんも楽しくない。


「バカソラ!」


などとバカな事を言い合いながら町に入る。シカちゃんは鹿の姿から幼女に実体化した。う~ん便利な体。


「あら、聖女様達、お帰りなさい。今日は早いですね」と乾物屋のおばちゃんが言う。


帰ったんちゃうわい。


「今朝はどこまでいっとたが?今から昼ごはん?」


ちょっと散歩に行ってたみたいな言い方やめて、大工のおっちゃん。


「サイタニ屋さんに戻るがか?あとでうまい魚持って行くがよ。リーちゃんに焼いてもらいや」


ん~なんかここの町の人に僕たち完全に勘違いされてるな。住んでないからな!


「いやいや、旅の途中で寄っただけだから!」


「そうなが?ほとんど毎日顔見ゆうがやき」


うぐっ。痛い所を突かれた。毎日この辺ずっとウロウロしてるからなぁ。まぁいい、とっとと教会へ向かうぞ。


「あ、ウミさん、皆さんお帰りなさい。お昼ご飯ですか?」


リーちゃん、君もか。ちょっとお昼を食べに戻ったみたいに。


「あら、かわいいお嬢ちゃん。あなたも学校でお勉強したいの?」とリーちゃんがシカちゃんに言う。


「うぬ?わしの事か?誰に口を聞いておる!娘」


ゴツンと、とりあえず軽めのげんこつ。うらめしそうに僕を見るシカちゃん。初対面で人を威嚇するのやめい。鹿の時は流暢な丁寧語、威嚇する時はおっさん言葉、普通の幼女の時はカタコト、見事に使い分けてるけどどれがホントなの?


「あ、この子はシカちゃんね。こんな格好してるけど……」


「また厄介ごとですね?ソラさん、フフ」


お見通しなんか~い!


「あのさ、郷士の連中で大工見習とか結構おったやん?教会を建て直した後、今はどこで作業しとるか知らん?町の入り口からここまでの間では見てないんやけど」


「ああ、皆さんお城ですよ。お殿様の命令で、まずは前の司祭様の家があった所を教会として建て直しを最優先してくださって、その後やっと最近お城の天守閣の修理にかかってます」


「あ~なんか前に派手に雷が落ちたとこねぇ~、運が悪かったよねぇ」


ユイ、お前の母ちゃんがやったとこやぞ、と隣を見ると知らん顔してやがる。まぁ、あれなかったら殿さん居留守使う気やったから必要な被害やったな、うん。


「リーちゃん、こっから見ただけやけど天守閣の瓦もしっかり葺かれてだいぶ直ったんちゃう?」


「はい、この前の大雨で雨漏りがひどかったらしくて、人が揃ったところで突貫工事で作業してたみたいです」


「ほな、ぼちぼち何人か大工の手はあきそうやな。ありがとう。ちょっとお城に行ってくるわ」


「はい、行ってらっしゃい。あ、その子はどうします?ねえ、シカちゃん。みんなと一緒に行ってもつまらないと思うからお姉ちゃんやお友達とここでお勉強する?」


シカちゃんを見るとモジモジしながらこっち見とる。まんま幼女やな。


「シカちゃん、俺ら行ってくるからここでお勉強しとき。このお姉ちゃんと……あ、吉田さん!」


「これはこれは皆さん、今日はもうお戻りですか?お疲れ様です」


吉田さんきた~!


「ううう、この人、なんか嫌な感じする」


シカちゃん鋭い!この人神さん追い出した張本人。神社ぶち壊しの犯人。でも本人知らんからな。


「おや、新しいお友達かな?ほら、あそこの席が空いているからお座り。次はお絵描きの時間だよ」


さすが元寺子屋の先生!


「お絵描き!」


シカちゃんは目を輝かせて空いている席に座る。周りの子供より一回り年下みたいやけど、存在感は抜群やな。さすが神の使い。周りの子供が知らない子が来たから興味津々で話しかけとる。


「なんぞ、お主ら、なれなれしく寄るな!」


とかまた言うので


「コラ!」


とげんこつを落とす真似をすると頭を押さえて小さくなった。本当にもう!謙虚にしなさい。とりあえず吉田さんには小声で


「あのさ、あの子、神様の使いなんやけど、前にあんたがぐしゃぐしゃに壊して封印した神社で見つけた。神様が出て行って一人ぼっちで百年以上じっと待ってたらしくてな。これから神社を建て直すからその間面倒見たって」


「え?私が壊した神社の?で、その神社を建て直すですって?寺じゃなくて?」


「うん、神様が帰ってくるところが無かったらあの子これからも一人のまんまやからさ。とりあえずガワは俺らが用意してやろうかなって。金出すんはあの子やし」


「なんと……。しかしソラさん、あなたどこまでお人よしなんですか?郷士や郷士の子達、そしてほとんど死んでいたに等しい私まで救って」


「吉田さん、そんなどころじゃないわよ、この人。ここ以外でもあっちこっちで似たような事ずっとしてるから、だから旅が全然先に進まないのよ!あっち行ってはコーチ戻って、こっち行ってはコーチ戻って、今日もやっと西に進んだと思ったらまたコーチ。どんだけコーチ好きなのよ」


「ん?せやなぁ。まぁこの町は好きよ。リーちゃんにも会えたし、幽霊の吉田さんや殿さん、ダンディ家老、坂本さんに四郎さん、みんな好きやからな」


「僕も同じ意見だね。いい出会いがあったもん」


「お前はリーちゃんだけだろうが!ケッ!」


思い出したらムカつく。裏切り者ウミめ。


「まあ、そんなわけでここにはこっちの無理を聞いてくれる人もいっぱいいるしな。みんな頼りにしてるんだ。じゃあちょっと殿様の脛でもかじりにいくか!ガリガリっと」


そう言ってシカちゃんを残して僕らは城に向かった。シカちゃん、あ、もう必死で絵を描いてるな。どっからみてもただの幼女だ。今まで寂しかった分、いっぱい遊べ。


---


「殿さま~来たよぉ~!開けてぇ~」と大手門の前で声を上げる。


「これはこれはソラ殿、よう来られた。ささ、こちらへ」


最初来たときとは全然対応が違うな、おい。居留守つかわんのか?使ったら直したての天守閣また壊すけど。


「もうママも壊さないわよ!それにあなた達、お殿様の客分でしょ?そりゃ丁重に扱わないとこの人達の首が飛ぶわよ」


こわ~。ま、僕らは勝手知ったる城なので案内不要でずんずんと書院まで入っていく。僕らが武器なんて持っていないのはみんなもう知ってるしね。そもそも武器なくてもユイが人間凶器だから問題無い。


「誰が凶器ですって~?」


「お前、なんでいつも俺の心を読むんだよ?勝手に読むなよ、プライバシーの侵害だぞ。セクハラだぞ、知らんけど」


「ソラ君、言いたくないけどさ、それってソラ君が常に心を全開にしてるからだよ。僕やサトちゃんは開けてないから読まれないじゃない。ソラ君がユイに対してフルオープンにしているから全部バレるんじゃない。隙だらけだよ」


「え?ユイに?フルオープンってか?俺が?んなアホな」


「本当だよ。そもそも読まれたくなければ閉じればいいのに」


ん~、よし閉じろ!


「バカなの?全然閉じれてないわよ」


え~なんでぇ~。


「ソラ君がユイに心を完全に許してるからだよ。多分、出会った時から読まれてたって事は、アデヤさんのスパイかって疑ってた時から全く警戒してなかったって事」


「あ~そう言えば最初から心の中全部バレてたよなぁ。失敗したのは初対面でかわいいとかって思ったから。俺、かわいい子は全面的に正義だと思っちゃうから」


「ソラ君、これからもその調子で頼むね、フフフ」


ウミ、お前俺を完全に見下してるな。全部読まれるならそれを逆手に取る事もできるのだ。例えばだな、ユイの●を●して●●したら●で●っと……。


「ソラ、このド変態!スケベ!バカ!」


効果てきめん。時々、牽制の為にエロいことも想像してやる。


「あの~いつまで待てばいいんじゃ?わしは」


あ、知らん間に殿さんおった!


「来てるんやったら、はよ声かけてよ!」


「ソラ、お主なぁ親しいとは言えお殿様に向かってなんという口のきき方を!」


ダンディもいたのね。


「あ、まずは教会の協力ありがとう。郷士の連中もええ感じで溶け込んできたみたいで助かりますわ。学校も子供ら、前よりちゃんと椅子に座って勉強する態勢になってたし。町も活気出て来てこの調子でええんちゃうかな」


「そうじゃのう。まだそれほど日が経ってないが今のところ及第点と言うところじゃろう。ソラ達のおかげじゃ。で、ソラよ、今日は何の無心で来た?金か?物か?客分だから報酬はもちろん出すが」


「あ、じゃあ報酬は遠慮なくもらうね。旅の資金が必要やし。あとね、木材とか分けて欲しいのと人手が欲しい。城の西にある潰れた神社を復興したい。そこを建て直す材料と大工とその代金」


「わしに神社を建て直せと?」


「あ、金はちゃんと出すよ。これから何年か分の俺とウミの報酬を全部そっちに使って」


「お前らの路銀はいらんのか?」


「うん、まぁいるんやろうけどなんとかするよ」


「ソラさん、建て直すお金はシカちゃんが隠してた……」


「あれは使えんよ。もともと俺らの金ちゃうもん。昔の人たちが神様にって送ったもんやろ?使い道を神さんが決めてシカちゃんが出す分にはええけど、俺らが勝手に使ったらいかんやろ?シカちゃんが物の値段わかってるとは思えんし。あれはそっくり神様に返す」


「うん、賛成」


さすがウミ。


「またお前らなんぞ面倒ごとに足を突っ込んだか?面白い。わしもアデヤ教兼ソラ教だわ。それに一枚かませろ。わしが寄進という形で建て直しの資金を私財から出そう」


「あ、殿、そういう事なら私もかませてもらいます。残り半分は拙者が」


ダンディ~!かっちょええ。


「その代わりにでっかくわしらの名前を鳥居にバーンと書いてくれよ、フフフ」


あ、なんかただで神社できる!いやいや、そうもいかんなぁ。


「まあ気持ちは嬉しいけど全額は甘えられん。じゃあ俺は無給でいいよ。ウミには報酬払うって事で」


「ソラ君それはダメだよ、僕だけって……」


「あほか、俺ら全員でその金、使うに決まっとろうが!」


「なるほど、じゃあ賛成!」


「では殿様、ダンディ……じゃなくてご家老様、城の西の神社の再興頼んます。建てる為の図面はなんとかこっちで用意するんでそれに従って大工さんに建ててもらってください。あと、皆さん多分今までちゃんとした神社なんて見た事ないと思うので、不明な点があったら学校の吉田さんに聞いてください。あの人なら昔の寺や神社に詳しいので」


「あいわかった。廃止されていた寺社奉行の職をまた作って再建しようぞ。ところで聖女様、聞きたいんじゃが」


「はい?」


「神社を再興してもアデヤ教の教義には反しないですか?」


「私がこうやって動いているんですからその行為に問題は無いです。そもそも寺社仏閣を破壊する行為自体、アデヤ教の意思ではございませんでしたし」


「良し!心配も無くなったね。じゃあ殿様、後をお任せしますね。神社が完成したらご一報ください。連絡は学校のリーちゃんに手紙でも渡してくれたら私らにすぐ届きます」


「ん?手紙?お前らいつもこの辺におるじゃろ?使いに呼びに行かせるが」


いや、だからさぁ~それは誤解だっての。おらんおらん。


「僕らコーチにいないから!もうすぐ発つからね!もう当分会えないからね。じゃあ」


「わかった、では1週間後くらいにまた顔を出せ、ソラ」


クソぉ~からかわれとるのぉ~完全に。


---


「じゃあシカちゃんは神社が完成するまでは、リーちゃんに任せておこうか。あ、教会の宿舎で吉田さんに見てもらってもええけど」


「そうだね。工事はしばらくかかりそうだから、あの神社跡地に置き去りはいやだね」


「ずっと一人ぼっちだったのが、やっと人と触れ合う機会ができたんだものね。子供たちと一緒に勉強するのもいいと思うわ」


「そうですね、私もあそこに置き去りは反対です」


うん、みんな同じ意見やな。


「じゃあ、シカちゃんの事は神社が完成するまでは、学校で面倒を見てもらおう。寝泊りは教会でええかの」


と意見をまとめて僕らは学校に戻った。戻るなりリーちゃんが走って来た。なんかもめごと?シカちゃんの事?


「あの、シカちゃんが」


ビンゴ~。なにやらかした~。


「凄いんです!筆と紙で絵をいっぱい描いていると思ったら……」


と言いつつリーちゃんが見せてくれたのは大量の絵の束。


「ソラ君、これ……図面、神社の図面じゃあ?」


「うわ、凄いわね。これ緻密な設計図よ、それも寸法入りで」


「骨組みになるところの木組みの組み方まで、図解入りで指示書いてるやん、なんぞこれ。CADで作った?」


「神の使いって凄いんですね」


サトちゃんメモってる。


「お~いシカちゃん~」と呼ぶと座っていた椅子から飛び降りてまっすぐ走って来た。


「お帰り。みんな。私、図面描いた。これで神様の家、建てられる」


幼女モードはトークも片言になるのね、シカちゃん。


「凄いなぁ、よく描けたな。これがあれば大工さんも神社を建てるのは初めてでも、しっかり建てられるよ」


「よかった。建てるの見てたから思い出して描いた」


「これを大工さんに渡すから、建物ができあがるまではシカちゃん、ここでお姉さんやおじさん、お友達と一緒にいてくれるか?神社ができたら俺らすぐ戻って来るから神様を呼び戻そう」


「え?嫌だ」


……ん?なんて?


「嫌だってか?」


「うん、嫌。ソラ達と一緒」


「え?なんでよ。俺らこれからあちこち遠くまで旅しなきゃならんのよ。お寺やシカちゃんがいたような神社、祠とかをまわって封印を解かなきゃいけない」


「うん、一緒に行く」


「なんでよ!」


「楽しかったから」


「は?」


「ずっと一人だった。今日みんなと神社から出た。三人乗せて走った。犬も一緒、羽の人も一緒。楽しかった」


「ん?あんなん一瞬やん。シカちゃんのおかげで、大して時間もかかって無いし」


「楽しかった……一人イヤ」


「ここにはお友達もおるし、おっちゃんもお姉ちゃんもおるで」


「ソラいない、ウミいない、犬も羽の人も」


「ふふふ、なつかれてますね」


いや、リーちゃんまで。


「仕方ないですね!一緒に行きましょうよ、ソラさん」


「うん、別に邪魔じゃないし、神様の使いだから助けになるよ、ソラ君」


「何より文句言う人が減って、移動時間が短縮できるわ」


それに頷くウミ、サトちゃん、サチ……お前まで。


「なんやぁ~、俺が歩くと文句言うけどシカちゃんがいたら、俺の愚痴も減るし移動が速くなるから大歓迎って感じ?」


全員頷く。笑ってるリーちゃん。


「あ~そうですかそうですか。シカちゃん、こんな俺らについて来て大丈夫?」


大きく頷くシカちゃん。ほなしゃーないな。


「もう一回自己紹介な。俺はソラ、眼鏡がウミ、そっちのお姉さんがサトちゃん、犬がサチ、羽の人はユイ、以上」


ユイがめっちゃ睨んでるけど知らん知らん。


「じゃあリーちゃん、悪いけど城から神社が完成の連絡来たら、ローパちゃんに手紙くっつけて飛ばして」


「わかりました。で、次はいつお帰りですか?」


だからぁ~!さあ今日中に次の札所行くぞぉ!覚悟しとけよ、シカちゃん。旅は厳しいのだ。


*(69話へ続く)*






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