55話 作戦会議
なんだかんだでユイに膝枕をしてもらいまた寝てしまった。それから目が覚めたら天さんが向こうから戻ってきていて、傍らには立派な破魔矢があった。えらく立派な黒い羽が付いてる。
「こんな羽のデカいカラスおんの?全長1m超えるんちゃう?ローパちゃんよりデカいカラスやぞ」
「シッ!ソラ君」とウミが制する。
ん?
「ソラ!それはわしの羽じゃ!霊験あらたかな天狗様の羽ぞ」
「あ、天さんの抜け毛か。そりゃデカいわな」
「お前、わしの羽をわしを季節変わりの犬の毛みたいな扱いするか?」
その例えわかりにくいわ。
「天さん、夜中に協力ありがとう。助かった。で?この破魔矢の力、ウミやユイから見てどうなん?」
「どうもこうも、持って来たパパがずっと天狗のままなのはこれのせいよ。隠蔽術がかき消されてずっとコレ」
「ユイよ、パパをつかまえて『コレ』扱いってどうなん?その言い方!」
「それはさておき、そんくらい効果はありそうなんやな?」
「わしと合掌寺住職の折り紙付きや。あと、うちの山小屋に置いてたウミの槍も持って来たぞ。でも空海の金剛杖でしばいても無理なら、こんなカーボンの陸上の槍じゃ曲がるだけぞ」
「しばかへんわ。剣道素人のウミなら手首いわすわ、あんなんしばきに行ったら」
「それこそその槍をどうするの?」
「寝ながら考えてたんや。名付けて四位一体攻撃!」
「何それ?三位一体じゃなくて?」
ウミよ、僕は何度も寝ながら勝ち筋を考えてたのだ。悪鬼を貫く自信はイマイチ無かったけど、天さんの羽のおかげで確率上がったぞ。
「ええか?悪鬼の足の封印が消える前にまたあそこに戻る。で、サチ!お前がキーマン……いや、キーワンや」
「ワン?」
ちゃんと会話しとるな、幽霊犬。
「お前、最初に会った時みたいな怨霊になれ!一時的にな。犬神と恐れられてた頃を思い出して邪悪さMAX。今抑えてる悪いの全部放出して凶悪な犬神風に。今まで食ってきた俺の邪念を大放出しろ」
「せっかく浄化してもらって白くなったのにねー」
また漂白してやるからええやん。
「そしたらあいつはさらに悪神を取り込もうとサチに気が向く。その辺の土地の悪神ちゃうからな。全国に名を轟かせていた犬神やぞ。ホンマは犬神の母やけどそこは置いといて。で、悪鬼がサチに意識がいってる間に破魔矢で貫く」
「そもそもどうやって撃ち込むの?あなた実は昔、弓道もしてましたとかいう後出し設定?そういうの一番嫌いそうだけど」
「弓なんて先が吸盤のしか打ったことないわ。ダーツの的みたいなやつに」
「それファミレスのお子様セットのおまけだね」
正解!
「今回の作戦はウミの槍の先に破魔矢を縛り付ける。ウミは悪鬼に襲われんくらいの距離をとって全力でヤツの胸を狙って投げる」
「それじゃあ弾かれない?僕が投げたくらいで。ソラ君の面もへっちゃらだったよ」
「そこで最後のピース、ユイの出番」
「え?私?私のビームを何発撃っても通用しないわよ。当たらないもん。ソラも見たでしょ?」
「光線自体をやつに当てなくていいんだよ。ちなみにさ、ユイと天さんどっちが強い?」
「突然何よ?聞くまでもなく圧倒的にパパに決まってるじゃない」
「じゃあ仮にユイが天さんに全力でビーム撃ったら?」
「私程度じゃ背中の羽の一枚も飛ばせないわよ。パパをなんだと思ってるの?」
え?天さんでしょ?
「そこだよ!ユイは全力でウミの投げ槍にビームを打ち込んで。当たったビームは槍を伝って破魔矢の羽に力が伝わる。悪鬼はビームは避けられても、天さんすら丸裸にする破魔矢の霊力は弾けんだろ?ウミの投擲力にお前の全力のビームでブーストかけてブッ刺す」
「面白い事を考えたの。ユイの力じゃ確かにわしの羽を使った破魔矢を壊すことはできん。ビームの力を推進力に利用するのか!さすがだの、お前」
「天さんの羽を使わせてもらう発想は僕には無かった。だから矢自体がビームを耐えられるかが実は一番不安だったんだよ。天さん、知恵をありがとう」
「ふふん……まぁ羽を使うのはわしの案じゃないけど」
サトちゃんずっとやりとりメモってるな。膝枕されてたとか書くなよマジで。
「もう書きましたー!」
あれ、君も心読む系?と思ったらユイが小声でヒソヒソ伝えてた~。既成事実みたいに書かさないで。
「あとソラ、社長がこれをってさ」
「ん?皮の運転用のグローブ?社長が本気で運転する時つけるやつやん。前にカッコいいからくれって頼んでもこんな高いのやるか!って言ってた特注のやつや」
「お前が手のひら怪我したって言ったら用意してくれてたぞ」
「えっ?マジで?ありがたい……」
ちゃんと僕の事を考えてくれてるんだ。
「でも怪我は労災にせんからな、って。田中さん霊柩車で事故ったから怪我が何度も続くと労基署がうるさいからって」
なんじゃそれ!まぁ社長なりの照れ隠しやな。ありがたく使わせてもらいます!
「あと社長からこれ。レンジでチンして食えって」
電気来てないのにレンジなんぞあるかいっ!
「なんな?この冷えた惣菜の盛り合わせは」
「深夜で王将はもうしまってたからってトライアルの惣菜やて」
「なぜにトライアル~」
「24時間あいとるからやろ。あれ?せっかく買ってくれたのにいらんの?わし持って返ってチンして食うぞ」
「食う!」
そう言って僕らは久々にあっちの世界の惣菜を食べた。味付けが濃い!化学調味料万歳!美味い!泣きそう。
「これなんて料理ですか?」サトちゃん、興味津々。
「ピザと肉団子と唐揚げとカツサンドとロールキャベツと麻婆豆腐と……レバニラやな」
ありがたい。
「社長、統一感ないね」
そういうなウミ。あの人、じじいやから普段はスーパーの惣菜とかほとんど食べへんねん。俺ら若者の好みに合いそうなのを社長なりに考えてくれたんやろ。センスは……ないけど。
「ピザってやつ、冷たくて歯ごたえがあって美味しいです!」
サトちゃん、ごめん、ホントは熱々を食べるのだよ。
「天さん、食べ終わったプラごみ回収して捨ててね。プラなんてこの世界にあったらダメなもんだから」
「へいへい。ユイにも口を酸っぱく言われてますよ」
「ソラの信念だから仕方ないわ。いつかはこっちでの存在を消して、自分たちの存在がこっちに無かったものとして元の世界に帰るからって。自然に還る、完全に消えるものしか使わない、形が残るものは回収してあっちでポイって」
「サトちゃんがそんな話もいっぱい記録しとるがええんか?」
「空想物語にするからいいのです!」
だそうです。
「よし!体もだいぶ回復した!手がこんなんだから破魔矢と槍の作業はウミに任せていい?」
「もちろん。元ボーイスカウトのロープワークの見せ所だね」
ほほう心強い。
「サチ!お前抑えてる力解放できる?」
「ワン!」
お前も心強いな。くれぐれも悪鬼に取り込まれないように。
「サチ、悪鬼の邪神や悪神がバラバラになったら今度はお前がそれを食え。あのサイズなら俺の邪念なんて比べ物にならんくらい腹一杯になるぞ」
「ワン?ワワン♪」
楽しみにしとけ。
「はっきり言って昨日の負けはこれまでの相手がイージー過ぎて油断してたな。俺が甘かった。みんなごめん!」
「ん?」
ん?どうしたウミ。
「はぁ?あなた本気?今までイージーって。何度死にかけてたか分かってないの?」
死にかけたって、そんなんあった?
「サブロウさんだって力は僕らの何倍も強くて川に連れ込まれたら終わり、大蛇もそう。子泣きさんの時もサチの時も死にかけてたし、岡豊城もギリギリよ。一つ間違えば何回死んでたか」
「そうなん?」
「徳島まわってる時も、崖から落ちそうになったり、食あたりとか、クマと鉢合わせとかで何度も死にかけてたよ」
「そ、そうだっけ?」
「そもそもよ、あなたがいつも無茶するから死なないようにってパパが私を見張りにつけたんじゃない!」
あ、そうだったか?
「まぁ、今度からは慎重にやりますって事で!」
「どうだか……」
「俺、この戦いが終わったらユイに……」
「あなたワザと死亡フラグ立てようとしてるでしょ?バカなの?」
「勘のいいガキは嫌いだよ」
「何でいきなりタッカーさん!」
ハガレン好きなんだ。それがわかるウミ、やっぱりお前はわかってる!
「まぁ、ソラ。社長にはお前のことを未来のうちの婿さんって伝えたから!わしも本気でお前が危ない時は最小限のフォローはするぞ」
え?天さん!
「パパ!」
「まあお前は好きにしてたらええよ。社長の元でまた葬祭プランナーに戻ってディレクター目指すのもええ。神になれと強制もせんよ。でもまぁユイを頼むわ。ほな頑張れ!死ぬなよ。あ、付け足しみたいですまんけど安穏寺さん、困ったことあったらいつでも言って。なんとでもするから!じゃあね」
と言って消えた。
「わし、空気やったけどホンマに天狗の格好してたな。すごい……」
あ、安穏寺さん、忘れてたわ。安穏寺さんの家やのにすまん。
さあ朝が来たら行くぞ!体中痛いけど。
*(56話へ続く)*




