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異世界怪異巡礼譚 ~異世界に仏がいてもいいじゃないか~ 社畜リーマンと見習い坊主の裏四国八十八ヶ所巡り  作者: 杏林 尚
札所

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51話 再封印?


「な~んでまた国分寺の方までUターンしてんだよぉ~!もっと言えば体感的に岡豊城に向かってるんですけどぉ!また山見てるんですけどぉ~」


「しょうがないよ、あのまま善楽寺に向かえば良かったけど、コーチに一旦戻ったから」


「同じ道は嫌なんだよぉ~せっかく進んだのにめっちゃ損した気がする。こんなルート作った人バカなの?」


「だからそれはあなたにも責任の半分あるでしょ、って前も言ったわよね?」


「前も言ってましたね。ちゃんと順路守れば一筆書きで行けるはずです」


サトちゃん、そうなんだよ、そうなんだけどさぁ。言いたくもなるさ、同じところ行った来たり。僕らこんなんばっか。


「同じ道とか通ると気分が滅入るんだよ。あ、あの木見た!とか、あの家あったなぁとか。ほんでまたきっとここ通るんだぜ?あ~やだやだ」


「文句しか言わないよね、相変わらず」とウミが笑ってる。


ポジティブな事ばっかり言う僕は僕じゃない。そんな僕ならきっと何かが乗り移ってるんだよ。


「サトちゃん、その茂みの先の左手に小さい祠が見えて来るよ。俺には未来が見える!」


「なにバカな事言ってるのよ。高知入る前に封印解いた祠の事でしょ?くだらない」


そう言うなよユイ。くだらん事でも言ってないとやっとられん。


「そこの祠は確か火の荒神様だったね」


そうそう。台所の火の神様。こんな祠まで封印するとはアデヤ教徒恐るべしってあの時言ってたな。


「ほら、そこ!サトちゃん。俺らがこの前……俺らって……ん?」


「あれ?おかしいな?」


「どういうことよ、これ」


「解放したはずだよな?荒神さん。出て来て話したよな?俺サングラスかけて見たもん、火の神さん」


「間違いなく解放したよ。丁寧にお礼言われたもん。突然封じ込まれてわけがわからなくて助かったって」


だよな、ウミ。


「なのにまた封印されて、より頑丈な封印が施されてるっぽいな。前よりごついぞこれ」


一体誰が?そんなバカな事をするのって。


「ユイ、今の時代になってもそんな事している教団の組織あるのか?アデヤさんの教義を曲解した異教徒狩り集団ってのは?」


「まだ一部の異教徒狩りは残ってるわよ。安穏寺さんも言ってたでしょ?仏教徒狩りの存在。そういうのもまだいるにはいるけど……」


「いるけど?」


「そんな封印できる力がある人が今の世にいるかしら?確かにアデヤ教が唯一教になろうとしていた過渡期にはそれこそ、色んな宗派から改宗してきた宗教家がたくさんいたから、そういう力を持つ人はたくさんいたわ」


「過去形?」


「そう、元々山伏として修業をしていた人とか陰陽師崩れとか、あとは密教の……」


「密教もか……。信じていた物を諦めてアデヤ教に改宗したからこその、アデヤ教至上主義に走って暴走したのかもな。一概には言えないけど極め切れなかった半端者の末路か」


「自分が諦めて選んだ物は一番じゃないと自分への言い訳が立たないからね。自分を守るための暴走でしかないね」


「そういう人が一番怖いですね」


サトちゃん、その通り。それって推し変したらその推しを一番にしないと気がすまないオタク心理みたいだな。度が過ぎるともうストーカー予備軍じゃん。


「でもさ100年以上も前の異教徒狩りがこの世にまだいるなんて事あるかな?」


「うん、さすがに人ならとっくに死んでるよなぁ」


「人なら?」


ユイが疑問を呈した。ん?


「アデヤさん、それずっと見てきてるよな?一体何があったか。教えてくれんのかな?」


「当然見て知っていると思うわ。でも私達に直接関係してない事に関しては教えてくれないわよ。セキュリティはしっかりしてるから。個人情報的な?」


融通が効かんAIかよ。まぁ神がべらべら喋ってたら懺悔もできんわな。そこは理解した。


「元々、異教徒狩り全盛の時も見逃してたしな。それの良い悪いは置いといて、その場では絶対手を下さんのがアデヤさんよな。その後そいつらが亡くなってからどういう処置したのかは知らんけど」


「その後?知らない方がいいわよ、フフ。ママの意向に背いて自分のいいように曲解して実践した狂信者だもの。みっちり教育されたんじゃないかな」


詳細知るの怖いわ!


「神の為、神の為って言っても、それを本当に神が望んでいるかなんて普通の人間にはわからんよな」


「そうよ。ちなみにあなた達二人はもうご神託を受けられる立場だからもう普通の人じゃないからね」


ああ、アデヤさんそんな事言ってたな。


「でも俺ら仏教徒やから知らん言うてるやん」


「うん、お釈迦様の肉声聞けたらテンション上がるけどね。それよりアデヤさんが無理なら、自分らでこの状況を打開するしかないね」


「そうやな。何者かはわからんけど、俺らが封印解いたところをまた封印されたらイタチごっこになるな。まずは荒神さん解放して話聞こうか?」


それを聞いてサトちゃんがワクワクした顔でメモ帳とフリクションを取り出した。気に入ってるな、それ。


「じゃあさっさと荒神様を解放しましょう!」


ユイがそう言うと僕らは再度儀式を執り行った。以前より強力な封印でかなり手こずった末に封印を解除した。ふむふむ、なるほどね。やり方さえわかれば次からはもっと楽にできるはず!


「荒神様、一体何があったんですか?」


「おお、お前らはこの前の!助かったぞ。まさかあんなのが出てこようとは思っておらなんだわ」


「あんなのって一体?アデヤ教徒ですか?」


「あでや?なんじゃそれ?そんなもん知ら。わしを封印したのはあちこちの悪神と神を取り込み続けてた鬼じゃの。悪鬼じゃ。鬼が神を封じるなんぞ聞いた事が無いが実際に変なまじないと結界を布いて、昨日わしをこの祠に閉じ込めよった!話をしようとしたが全く話が通じんかった。聞こえてなかったようじゃの」


「え?鬼だって?鬼なんて……今まで出会った事あったっけ?」


「鬼は徳島の札所を巡った時も出会った事は無かったね。今後は愛媛、香川辺りで出会うかも知れないけど」


「でも悪鬼がなんで祠の封印なんて真似するんだ?」


「ん~目的が読めないね、本当に」


「ああ、わからん。しかし悪神を取り込んで鬼になったってかなりヤバそうやな。なんとかなるんかな?」


「わからないね。犬神であんなにてこずったくらいだから」


「くぅ~ん」


お前は悪くないぞ、サチ。そしてお前はかなりタチが悪い方だったから自信持て。犬神以上の悪だったぞ、きっと。


「ソラ、初めて対峙する鬼が出るなら一旦ママに助けてもらう?」


「それは無いな。封印する鬼を祓うなんてアデヤさんにとってはデメリットでしかないわけやん。昔の神が放たれるのは一神教を謳うアデヤさん本人に頼むことはできんよ。かつては不本意ながら狂信者がやる事を見逃すくらいの決意だったんだろ?。それを俺らが頼んだから退治って、アデヤさんの信念をひっくり返させるのは筋が違う」


「筋って……」


「ユイ、僕たちソラ教だからさ。しょうがないよ。これがソラ君だもん」


「それもそうね、ふふ、じゃあ私もソラ教の聖女になろうかしら」


「ソラ教の聖女ってユイ……」


照れて二人で俯く。ダメだって、僕に色恋の話は。慣れてないんだから。


「あの~、二人でいちゃつくのやめてもらっていいですか?記録書くの恥ずかしいんですけど。まだ付き合ってもないのになんなんですか」


あ、それもそうか。意識し過ぎてるかな。


「まあ初々しくていいじゃない」


「ウミさんは大人ですね。リーちゃんがいる余裕ですね」


「ん……」


否定しないの?ねえそこは否定しないの?ウミ?くそ、平静を装いやがって。


「あの……わしの事見えてる?」


あ、ごめん、忘れてた。


「荒神さん、まさに昨日だったんですね?鬼が来たのは?」


「そうじゃ、夕方突然現れて……えらい目にあったわ」


「まだ近くにいるかもな。俺らが解放した寺や祠を狙って再度封印してまわってるのか悪鬼がって……あっ!」


「ここまでは再封印した祠に当たってないって事は……僕らが前に通って来たルートでこの先って」


「まさか安穏寺さん?」


ユイ、やっぱそう思うよな?


「サチ!悪い!安穏寺さんの無事を確認して来てくれ!俺らもすぐ後を追う!」


「ワン!」


そう言うとサチは素早く宙を駆けて行った。


「私も行く!」


そう言ってユイも翼を広げて飛び立つ。


「サトちゃん、僕らも走ろう!ソラ君、ソラ君は無理せず追って来て」


と言って走り出す。一人残された僕は……


「アホか!こんな時しか本気は出さんのが俺の主義や!」


と言ってウミと並走して走り出した。


「え?ソラ君、走れるの?」と驚くウミ。


「走れるのかと聞かれると走れる。普段は無駄にエネルギー使いたくないだけだ」


「ソラさん凄いです。ちゃんと息切れもせず走りながら喋れるなんて」


サトちゃん、褒めてくれてありがとう。でも安穏寺さんが心配で心臓の方が先にバクバクしてるよ。


*(52話へ続く)*



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