43話 光
「ソラ、ここちょっと切ってよ」
と左右の肩甲骨の下あたりを指さす。
「切れってお前…そのドレス、ダメにならない?」
「これ?別にいいわよ。多分ZARAとかで買った安いやつだし、この前成長してサイズパツンパツンになっちゃったし」
「確かにムチムチやもんな」
「失礼な人ね!」
と背中をパーで思いっきり叩く。背中に絶対紅葉型の手形ついたな、こりゃ。自分でパツンパツン言っておきながら。まぁ本当にロングドレスがミニみたいになってたからもうダメになってもいいか。
「ほな切るっていうか破るで?」
と言って、今はもう乗る事も無い社用車のキーホルダーに付けてるミニアーミーナイフでまっすぐ切れ目を入れてから、縦に20㎝ばかり切れ目を入れる。もう片方も同様に。
「お前、これであんなでかい羽出せるん?」
「大丈夫よ。折りたたんでから出して、一気に広がるから」
「ジャンプ傘?」
といらんことを言ってまた蹴られる。どこが聖女や。
「ウミ、ほな俺らは先に少しだけ小走りに城に向かって、城門前で止められるやろうから、そこにユイが舞い降りるって算段で行こう」
「走って行けばいいんでは?」
とウミ。
ウミ、僕はね、文系なのだよ?アスリートと違うよ?あの坂走って上がれるか!
「若旦那も走って行ったよ、礼服みたいなの着てる割にあの体形で結構機敏に走って出て行った」
「あれは怯えて逃げ出したが正解や。あんな驚異的なアデヤ砲見せられたら命がけで行くやろ?」
あの威力で加減して、リサイクル可能な状態でバラバラにするその器用さが怖い。ガラスすら割れてない。どうやったんや?
「そのくらいなんとでもできるわよ。女神よ?あなた達、ママを割とバカにしてるけど本気を出したら…」
わかってるって。人類滅亡もありうるわな。腐ってもこいつ、アデヤ教の聖女やもんな。
「誰が腐ってるって!」
聖女ってなんなのさ……こんな短気で務まるのか?
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それから僕とウミと犬は、ゆるゆるとジョギングペースで城に向かった。
城門前には前より険しい顔をした城兵達が刀を構えて待ち構えていた。彼らにしたら、なんで聖女が来るのかわからんけど、教会の方に光の柱が見えて、その後緊急の前触れがあったら警戒度MAXやわな。
なんかわからんけど女神がお怒りだって。城兵達も殺気むんむん。まぁいいよ。
ん、いつの間にか空模様がなんか曇りに変わってるぞ……。
うぉ……一ヶ所だけ雲の切れ間ができて、翼を大きく広げてそこから聖女が優雅に舞い降りて来た。そこに光が差し、城門前で止められていた僕らの近くに舞い降りる、その時、雲がさーっと掻き消え晴天に変わった。
母娘共同の演出ですね。なんか…ちょっと好きだな、この母娘。めっちゃ僕の意図を理解してくれて、言わなくても思ってたこと、いやそれ以上の事をしてくれる。
ん?僕の心を読んでるだけか?ひょっとして。
「山内の殿をここへ」
とユイが静かに口を開く。
「一体、いかような御用で?」
と重役にあるらしい侍が恐る恐るユイに尋ねる。
「私はね、怒ってるの。すぐここへ呼びなさい」
静かな口調が怖いな。
「今、殿は所用で…」
と言った時に、天守閣のてっぺんに太い光が落ちた。
今度は容赦のない一撃、と思いきや瓦が割れて飛び散るくらい。一番高い場所に落ちて、破片があちこち飛び散ったのでビビらせる演出はばっちり。殿様がいる部屋もかなりの衝撃だったろう。これは焦る。雷の直撃受けたみたいなもんやもん。
しばらくして、前回よりかなり緩い洋装……ポロシャツとチノパンか?の殿様と、ダンディ家老がやってきた。家老はさすがに今日もちゃんとしてるな。
「聖女様、これはいかなる沙汰で?聖女様と言えどあまりに無体な事をされるとこちらも見逃せませんぞ」
と抗議の声を上げる殿様。挑発するなよ、怖いな。
その時もう一度天守閣にドーンと光が。
あ……アホやなぁ、瓦だけで済んでたものをこりゃ天井も大穴空いたな。アデヤ砲舐めんなよ。この母娘の怖さ思い知れ。
「たかが一国の藩主が、アデヤ教の聖女である私になにか言いましたか?よく聞こえなかったけど国ごと吹き飛びたいって言ったのかしら?」
怖いぞ。この前まで向こうの世界のただの留学生の少女だったのになにこの変化。誰のせい?
「あなたよ!」
とこっちを睨んで言う。周りの人からしたら???だよな。
「先ほどアデヤ教会の司祭は罷免しました。新しい司祭が来ましたらまたご挨拶させますわ」
「は……はっ」
と殿様がかしこまる。昔、先祖が山内の殿様としてこの国に来て一番運の悪い殿様やろうな。かわいそ。
「司祭は罷免したと言いましたが、その理由は不正な私財の蓄財。過度の浪費。町民への献金の強制。あと…山内家とも繋がりが深かったわよね?」
と鋭い目を殿様に向ける。
「まさか……我ら、アデヤ様に仕えるもの。なんらやましい事はござらぬ!胸を張って断言できますぞ!のう!」
とまわりの家臣を見まわす。あら、まわりのえらいさん達は下をうつむいてますが大丈夫ですか?
「お前ら、答えんか!」
と殿様が焦りながら言う。
家臣団の一人がおずおずと「司祭様より多額の上納金を受け取っておりました」と言う。
「なぜじゃ?領民達の税で全て賄えておったろうが!米もずっと豊作じゃと言うとったではないか?」
「米は……もう上様のはるか前の代より不足が続いておりまして」
「なぜじゃ。田畑の数は帳簿上では十分だったのではないか。不作の年が続いたのか?」
「殿様、横から失礼。聖女の付き添いなので発言を許してくださいね。あなた、自分の城から外に出る事ないでしょ?現実見えてます?城の周りの田畑なんて荒れ放題ですよ。こんな城見たことないですわ。城の周囲の田畑が放置されて何十年、何百年経っているのやら。他の藩主なら恥ずかしくて表に出れんですよ」
「なぜだ?わしはそんなの見ておらん。わしだって城の外に出る時もあるぞ。だが稲穂がたわわに実った所しかみておらん!戯言を言うな!」
「それはね、あなた駕籠に載って出る時、御簾下ろしてるでしょ?さぁ殿どうぞって言われた時だけ上げて見るだけでしょ?不都合な事実を見せないようにされてるんだよ。そこの人達に」
「待て!なんで田畑が城の周りにあるのに人手がないなんて事がある?町には人が溢れておるぞ」
「それはね、働き手の郷士がいなくなり、その子供たちも働き方を知らずに育ってきたからだよ。今から自分の足で歩いて見てまわるがいいさ」
「どういうことだ!なぁ!なぁ」
と子供のように近習達に詰め寄る殿様。
「その者が言った通りよ。あなた、現実をその目でしっかり見なさい。あなたが悪いわけじゃないわ。周りの人達が悪いんでもない。ずっと前から、続いてきた事よ。私たちが来なければ、あなたはそれも知らずに楽しく暮らせたのでしょうけどね」
ユイ、辛辣だね相変わらず。いいぞいいぞ〜。
「ちょうどいいや、着飾ってないその普段着のまんま僕らに着いて来てください。一緒に社会勉強しましょうよ」
そう言って殿様を連れ出す。いつもは駕籠で楽して城下まで移動してるんだろうけど、歩け歩け。
ユイは翼を広げて舞い上がり、郷士達の子孫が住む集落の方まで飛んで行った。あ、翼の付け根の切れ目、バタバタしてるから下の方に向かって広がっていってる。かなりセクシーな感じになってるけど、まぁそれはそれであり!
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殿様は町の外に出て鼻を摘まんでいる。臭いってか?そりゃそうだ。浮浪児だらけだからな。案の定、またたくさんの浮浪児が近寄ってきた。
「あっちへ行け!汚いのぉ!臭いぞっ!」
とか言いやがった。こいつ殿様か…殿様よなぁ。でもまぁしょうがないなぁ……
「おいっ!人に向かってなんじゃその態度!」
と言って頭を叩いた。パーで叩いたのは優しさだ。
殿様の周りの侍達が「無礼者!」とざわめいて刀を抜いた。まぁそうやろうな。こっちは手ぶら……さぁ困った。
その時もの凄い衝撃音と共に、前に僕らが腰かけていた松の根元に雷?が落ちた。雷なら高い木の上にするだろうけど、地面に大きな穴があいた。威嚇の軽めのアデヤ砲やな。あれ?アデヤさん、僕を助けてくれた??
「神の怒りだと思った方がいいよ」
と静かにウミが言う。仏教徒なのに。
「あのな、まぁ本当に臭いから心で思うんは仕方ないで。でも人に直接言うんはちょっと違うんちゃうか?あ?殿さん」
叩かれた怒りと、アデヤ砲の威力を目の当たりにしてどうしていいか困っている。頭なんて叩かれた事無いんだろうな。なんで大人が涙目になっとんねん。
子供らは殿様を見てもだれかわかっとらん。なんで急に周りの侍が刀を抜いて僕に斬りつけようとしたかもわかってない。でも僕が彼らをかばった事と、その後ごっつい光が落ちたのを見てテンション上がっとる。
「ごっついなぁ!おんちゃん!」
「おんちゃん言うな、お兄ちゃんと言え、ぼけっ!」
と言って子供の頭を軽くはたく。ふへへへへと笑いながら逃げていくガキども。殿様は僕を指さして抗議の目で見ている。わかって無いのぉ、これがコミュニケーションや。
「あ、殿様言っておくけどもう次は無いからね」
とウミが殿様と取り巻きに凄む。怖い。サチはいつでも殿様に噛みつけるようにきっと待機してるだろうな。
「わかった、わしが悪かったようだ。すまん」
「僕に謝るもんじゃないでしょ?僕こそ叩いて悪かった」
「お〜い!そこの子供達!臭いと言ってすまなんだぁ~~」
と大声で子供らに謝る殿さん。あれ?こいつええやつやん。
「誰が臭いんじゃ〜!臭い言うたもんが臭いんじゃ〜」
と応酬する子供達。思わず皆笑い出す。いや、お前らマジ臭いから。
そしてユイが降り立った所に行くと、皆珍しそうに大人の子供もユイの羽をいじったり触ったりしている。あ、ドレスめくろうとしている子もおる。しばいたる!と思ったらユイが先に頭しばいてた。さすが!しかしここもボロボロの汚い建物の集落だなぁ。
「ここは?」
と顔をしかめた殿さん。。
「ここはな、あなたの先祖が皆殺しにした郷士達がいたところよ」
「皆殺し?郷士?郷士とはなんだ?」
郷士そのものがいないもんとして教育されてきたんだね。しゃ〜ないわな。そこで僕は山内家高知城の入城時の惨劇と桂浜で起きた事の顛末を殿さんにかなり端折って話した。
「その吉田…吉田某の手紙を破り捨てたのは誰じゃ!誰のせいで郷士達がこうなってしまったんじゃ!そいつが、そいつが…」
と殿さんは涙を滲ませる。
僕が眼鏡を掛けて見まわすと吉田さんが静かに泣いていた。心の中はわからんけど。何よりこの集落の現状を見てショックを受けて泣いているんだろうな。浮浪児達の生まれた集落だ。城周辺よりさらにひどい。これは親としたらここから出してやるためにあえて子供を売ったり、捨てたんじゃなかろうか。極貧もいいとこだ。
「殿……それは私の祖先のやった事かと」
と前に出たのはダンディ家老。
「お主の祖先?なんでそんな事をお前が知っておる!」
「先ほど話に出てきた吉田某という接待役の手紙を、殿に見せずに捨てたのは間違いなく私の先祖に違いありません。なぜなら我が家に伝わる初代土佐山内の家老の遺書がございます」
「遺書!!」
思わず、ウミとユイも声を合わせて驚いた。吉田さんも泣くのをやめてこっちを見ている。サチも目をまん丸にして口を開けて……いたかもね。
「実は、吉田某に郷士達の謀殺を指示したのも、手紙を握りつぶしたのも遺書に書いてありました」
「待て、遺書とはどういう事ぞ」
「はっ、うちの初代土佐山内家家老を務めた先祖は、吉田某の手紙を握りつぶした直後に、土佐山内の犯した黒い仕事の全ての責任は自分が負うと遺言を残し腹を切りました。覚悟の上の郷士謀殺だったようです。先祖は高知入城時の郷士の反乱に激しく動揺し、常々郷士謀反の不安を抱えておりました。一方で初代の上様は郷士を慰撫して恭順させようと思っていたので、両者の思惑が真反対だったのです。折しも上様より、普段不満の溜まっているであろう郷士達を集めて、宴を開いて歓待せよという命令があり、その責任者を吉田某に指名し準備させたのです」
「郷士への思いが初代山内の殿さんと反対だったのか。まぁそれは悩ましいな」思わず声に出してしまう。
「そして先祖は自分が汚れ役となり、山内家の安泰、後顧の憂いを断つ決断をし吉田某に郷士謀殺を実行させ、責任は自分が取るという形にしたのです」
「なんと…わしより先に家老自らが腹を切っていたと申すか……知らなんだ」
吉田さんが震えている。二人も死ぬ必要なかったのか…
「道理で城であれから家老の姿を見ぬと思った。ずっと書院で待っていたのに一度も現れなかったわ。そういう事じゃったのか」
「家老は吉田さんまで死なすつもりがなかったから、手紙を読まずに捨てたのか。で結果、郷士の家族は忘れ去られた」
「うん、でも家老はどっちにしても郷士に対しては生きていても同じように冷遇しただろうね」とウミが言う。
「根本的な考え方が違うからどうしようもないな。どっちが正義、悪なんて……毎回同じようなところに辿り着くな。どちらもそれぞれの正義がある」
「で、家老さん、その遺言は代々語り継がれてきたのかい?」と聞いてみる。
「そうだ。決して忘れたらいけない、うちの先祖がやった非道の行いだ。未来永劫、我が家は郷士達の無念の恨みを受けて生き続ける」
「は?郷士の恨み?そんなもん誰も恨んじゃいないよ」
「ん?」
家老と殿様が驚いた顔をしている。
「その吉田某さん達接待役は郷士を誰一人斬ってない!」
「なにを言っておる?」
「さっきは便宜上皆殺しにしたって言ったけどさ。詳細は省くけど、郷士達は全員がその夜酒に酔ってなぜか皆で一緒に太平洋に泳ぎに行っただけだ。彼らはひょっとしたら今も異国の地に向かって泳いでいるんじゃない?別に吉田さんに斬り殺されたわけじゃないぞ」
「なにをバカな事を。現に郷士達はあの日全員いなくなったのではないか?この集落を見ればわしでもわかる」
「ユイ?例の話のわかる人見つけた?」
「ええもちろん。しかしこの集落の人達、アデヤ教すら知らないので私が来たら『女天狗が降りてきた〜』って大騒ぎよ。羽をべたべた触るわ、何本か羽を毟って行く子もいたし。ホントにもう!あ、そこの彼、彼が言い伝えを覚えてるって」
なんか気弱そうな少年がそこに立っていた。
「あ、君?悪いけど君の家に伝わる郷士の男の大人たちがいなくなった夜の理由教えてくれる?」
「あ、はい。わしの家に伝わる話ながです。山内のお侍さんにまっことぎょうさんの酒や肴を振る舞ってもろうて、相撲やらとってまっこと楽しかったいうがです。ほんで皆で酔って競争じゃ言うて、全員が太平洋の荒れた海に飛び込んで泳ぎに行ったがですと。うちのじいさんから聞いた話やと、うちの先祖は泳ぐにはお前はまだ早いから参加させちゃらん、帰れ帰れ言われて一人帰ってきたちゅう話です。まぁあんな楽しい酒はもう飲めんちゅうて、それから一滴も飲んでないがですと」
「くっ……あいつ、まだ子供で宴の最初から一滴も飲んでなかったぞ……」
と吉田さんが泣きながら言う。
「???」
ときょろきょろする若者。見えないけどなんか聞こえたか、君にも。
「あいわかった!」
と話を聞いていた殿さんが急にシャキッとなった。
「そこにおるのが吉田某と申すか!」
え?なんで?見えるの?
「難儀な接待役、大義であった!長期の務め、心より感謝いたす。土佐山内を代表しこれにて郷士接待の任を解く。これからはゆるりと過ごせ」
殿様が涙目で吉田さんの手を握る。えっ?えっ?
「殿…」
「郷士の子孫の件、わしが必ずなんとかする。約束する。お主の手紙は初代山内には届かなんだが、わしの胸にしかと届いた。命を懸けて約束する。わしに任せよ!」
「あ、ありがたき幸せ…」
そう言うと吉田さんの体は金色に輝きだした。準備できたのか?吉田さん。
ウミが静かに念仏を唱え始めた。ユイが祈りに入った。まぶしい光が空からゆっくり降りて来て、吉田さんを包んだ。この光はアデヤさん?ああ、吉田さんとお別れか…と思ったら、突然吉田さんが僕に抱きついてきた。
「ありがとう、本当にありがとう。わしを城から連れ出してくれてありがとう。また郷士達に会わせてくれてありがとう。健気な郷士達を空に送ってくれてありがとう。ここで郷士達の子孫に会わせてくれてありがとう。殿様に会わせてくれてありがとう。そして家老の……家老の本心を、決心を知らせてくれて本当にありがとう…」
いかん、この僕が珍しく涙が出そうになっててきた。プロの葬祭プランナー失格やな。知るか!
「吉田さん、僕もあなたに会えてよかったよ。まさか岡豊城に始まって、長宗我部の心残りの話からこんないっぱい勉強できると思ってなかった。吉田さんの事、忘れないから!絶対」
と言って僕も強く抱きしめた。しがみついたはずなのに手応えが少なくなってきた。いよいよお別れか。
その後、吉田さんは読経をしているウミの所に行って一礼。ウミも黙礼する。読経の声が震えた。
次にひざまずくユイにひざまずいて頭を下げる。祈りのために組んでいた指をほどいて吉田さんの頭を優しくなでるユイ。
最後に家老の所に行き、じっと見つめて深々と礼をする。家老は見えていないが何かを察したのか、こちらも深くお辞儀をする。
そして吉田さんはゆっくり宙に浮かび、郷士達の子孫の住む集落を眺めて上に上がっていく。
サチ、噛まなくていいから先導してあげて。吉田さん初めての経験で空に上るの怖いだろうから。なんならお前も上がってええんやで。
そして吉田さんは小さく見えなくなっていった。空から伸びた光は少しずつ薄くなり、そして消えていった。僕は眼鏡をそっと外した。ああ行ってしまった。
ああ、吉田さんやっと帰ったな……サチも一緒に行っちゃった。と思ったら足首をかぶりと噛まれた。戻って来たのねやっぱり。
「殿さん!吉田さん見えたの?」
「なぜか見えたな。普段はそんなもん見たことないが。不思議なもんだの」
「きっと僕とユイ、聖女の力に共鳴したんだろうね」
「殿さん、この集落やあの子ら、その時の郷士の子孫達ね」
「ああ、わかっておる」
「なんとかする気ある?」
「命を懸けても約束は守るぞ」
「よし、じゃあ僕の考えてる事に協力してね」
「わしにできる事ならなんでもする」
よっしゃ、約束したな?ほな題して「コーチの改革」始めましょうか!あれ?そもそも僕は一体何をしにここに来たんだっけ?最御崎寺に行くのでは?
「なんかかなり大がかりな事になるわよ」
「お前、本丸ぶっ壊したのどうすんよ。怒られるで」
「でもあれがなかったら、殿様も家来の人もここまで来てくれなかったよ」
「じゃあまあ、必要な犠牲だったという事でOK!」
さぁやるかぁ〜。宿に戻ってリーちゃんも説得せねば。
*(第44話へ続く)*




