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異世界怪異巡礼譚 ~異世界に仏がいてもいいじゃないか~ 社畜リーマンと見習い坊主の裏四国八十八ヶ所巡り  作者: 杏林 尚
幕間

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独り言

なんなのよ!一方的に許婚って。いつの時代の話よ。あ、1000年以上前の約束って言ってたかな。それにしても私が生まれる1000年以上も前の約束を、なんで私が守る必要があるのよ。バカじゃないの?


私が人間の年齢で言うところの10歳くらいに見えるようになった時にパパから連絡があって、軽い調子で「こっちの世界も見てみない?」って言われて、何十年も過ごしてきたわ。大きな戦争も何度か見た。パパの守る村や町から若者が戦争に駆り出されて、そのまま戻ってこない人、戻ってきた人、何人も見た。戻ってきた人もそれから年を取り死んでいった。


圧倒的に私達とは寿命が違いすぎる。何人も生まれて何人も死んだ。私は見た目はほとんど変わらない。学校に行ってもいつまでも大きくならない私は気味悪がられた。パパの力で何度も転校した。同じような授業を何度も受けさせられた。ずーっと4年生、やっと5年生、それが何度も繰り返される。同級生たちがどんどん大人になっていくのを遠くからずっと見ていた。


仲良くなっても意味がない、人はすぐ死ぬ。この見た目になるまで100年以上かかった。やっとここから出られる。留学して海外の生活を体験できる。私の知らない新しい町!文化!歴史!そう思った矢先に帰ってこいって——勝手すぎる。あっちでまた何十年か過ごしてあちこち巡って戻るつもりだったのに。


とりあえず小学生の頃と違って1年や2年で周りの子も私も体格はすぐには変わらないので、成長しなくても気づかれず何年間かは同じ場所でいられると思ってたのに。


あ、そうだ!ママの世界に行って許婚とやらのお守りをするにしても時差があるから、あっちが夜の時に時々こっちに来て知らん顔して学校で授業を受ける二重生活をしたらいい。世界の移動すら自由にできる天狗の血を引く私だからできる特技。これはママにもできない。ママは向こうの世界から出られないのに、パパは都合が悪くなるとこっちに逃げてきてズルい。だから私も朝晩で両方の世界を行き来すればいいんだ。


そう思うと気は楽になった。別に結婚する気はないけれど、パパのお気に入りの空海さんがどんな人かは興味が出てきた。死にそうになったらとりあえず手は差し伸べよう。それ以上のことをする義理は今のところないわ。今のところ。


私が同じ世界にいたと知ったら、その人たちより長い時間を過ごしたと知られると色々面倒くさそうだから、私は何も知らないフリをしておこうっと。くれぐれもこっちの言葉とか使ってボロが出ないようにしないと。自由に行き来できると知ったら、あれしてこれして、挙句の果てはこっちの世界に戻してとか泣きつかれそう。


何度も言うけど、そこまでする義理はないもんね。


一応ママには伝えておこうかな。私の許婚がそっちに行ってママの邪魔してるみたいだけど、殺すとパパが怒るよって。復縁の目がなくなるって言うとママは手を緩めるだろうし。


どこがいいんだろう?あんな適当でちゃらんぽらんな天狗……のフリをしている絶対神だっけ?ほんとはどんだけ底が知れない神様なんだろう、パパって。想像もつかないけど、とりあえずいい子のフリしてお守りしましょうか。パパの親友の生まれ変わり達の。


服装や持ち物も気をつけないと。こっちの物を持っていくとバレちゃうかな。ママは昔パパに見せてもらったっていう外国の町並みの本が気に入っちゃって、すっかりあっちの和風建築を洋風に変えたけど、なんか違和感あるのよね。なんかUSJみたい。日本語のウォーターワールドを見てる感じよ。パット見は洋風なのに日本人だらけ。


さてZOZOかなんかで白いゴシック風のドレスでも買って、届いたら行こうかな。あっちの世界。頭を切り替えて。


*ユイの独り言*


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