天狗と娘
もしも~し、娘ちゃんですか?」
「なに?パパ?どうしたの?明日の授業の用意で忙しいんだけど。あとパパと連絡取り合うとママの機嫌悪くなるから、あんまり連絡しないで」
「報告があります!」
「なんなのよ。ママと復縁するの?やっと帰る気になったの?それならウェルカムだけど」
「ブブー残念でした!でもいいお知らせです」
「早くして」
「前から言っていた君のお婿さんが見つかりました!」
「は?」
「君が生まれる前からの許婚です!」
「なんでテンション高いのよ。空海だったっけ?そんなの知らないわよ。私に勝手に決めた話でしょ?今はそんな時代じゃないの。出会って恋愛して結婚するのよ!」
「出会いなんてないでしょうに」
「うるさいわね!今は留学中でそれどころじゃないのよ!英語難しいのよ」
「留学費用を出しているのは?」
「パパ」
「こっちの世界で暮らせているのは誰のおかげ?」
「パパ」
「さぁ、一度帰っておいで!」
「いやよ、勉強の途中で帰るなんて。その私のお婿さんになる予定っていう空海って人はどんな神様なのよ」
「ブブー残念、人間です!」
「なんで人間が天狗と女神の娘と釣り合うのよ!」
「多様性の時代です」
「多様性にもほどがありすぎるでしょ?寿命が全然違うじゃない」
「神の一族に入れば寿命伸びますぅ」
「それにしてもなんの力もない人間が、私と一緒に暮らせるわけないじゃない。どっかの宗教の偉い人?」
「なんか興味出てきた感じ?残念ながら社会人1年目の平社員。さっき山を見回っていたらなんかバイクで旅してたのを見つけた。ビビッと来たね!わし」
「切るわよ」
ツーツーツー
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1年後
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「もしもし!娘ちゃん!」
「久しぶり!申し訳ないけど帰国して」
「なによ突然に。まぁキリがいいと言えばいいとこだけど。留学させるお金無くなったの?」
「空海が……」
「切っていい?」
「違う違う。緊急事態なの」
「どうしたの?」
「娘ちゃんの許婚が、とある事情でママのいる世界に行っちゃって……」
「行っちゃってって何をどうしたらそうなるのよ」
「空海が仕掛けたおちゃめなトラップに自ら引っかかって行っちゃった」
「バカなのそいつ?」
「なのでヘルプ!そいつ、ママとか野生動物とかヤバいのとかから守ってやって」
「パパがやればいいじゃん」
「あっちの世界でウロウロしたらママにバレるじゃん。捕まっちゃうじゃん。戻されちゃうじゃん」
「もう十分自由を謳歌したでしょう?何十年?百年?」
「神様なんてやりたくないの!自由がいいの!パパは独身なの!」
「結婚もせず子ども作って養育費だけは払うからってこっちの世界の無責任な男と一緒ね」
「申し訳ない……」
「ママは一人で世界を守るの無理だからってパパと2人で手分けしてやるつもりだったのに、パパが責任放棄して逃げたからママはワンオペで苦労してるんじゃない。唯一神なんて考えてもなかったのに結果、一人で世界を見る羽目になって手が回らずイラついてるし」
「面目ない」
「戻って手伝いなよ。あっちの世界、昔ママが殿様と約束した内容が最初に言ってたことと違うって、不満が出てきそうよ。ママ怒ると滅ぼしちゃうよ、あれ」
「多分、そうならないように空海らが送り込まれたような……ごにょごにょ」
「はぁ?『ら』って言った?今!『空海ら』って。なんで複数形」
「あの、それはね、空海の魂が2つに分かれちゃってて……」
「なんでそんなめんどくさい事するのよ!バカなの?」
「遊び心満載のおちゃめな男だったのでそういうことかと」
「私は2人と結婚するの?わけわかんない」
「それは好きな方と……」
「ちょっとそっちに行くわ!山の家ね?」
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5分後
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スパーン!
「パパ、どういうことよ!」
「いきなりスリッパで頭を叩かんくてもいいでしょうに」
「適当すぎる!勝手な婚約もだし、候補が2人いてどっちでもって適当な」
「あ、でも片方は坊さんになると思うから、会社員の方でいいのかと」
「時代は変わったって言ったでしょ。今はお坊さんも普通に結婚できるでしょ!」
「ありゃ、そうだったわ」
「なら候補は2人のままじゃない」
「でもな、きっと娘ちゃんは会社員の方を選ぶよ」
「なんでよ」
「空海の心をより強く感じるからね。『動』と『静』。ソラという男は、勢い、情熱、多弁、直情。ウミという男は、慎重、冷静、無口、深慮。空海の魂が2つに分かれて、それぞれ通常の人以上の力を持っている」
スパーン!
「何かっこよくまとめようとしてるのよ!知らないわよ」
「痛いなぁ。でもわしが空海を強く感じるのはソラの方だ。ウミはきっと立派な坊主になる。嫁取りもせんだろう」
「関係ないわ」
「ソラは周りを見ず人を助けようと飛び込むバカだ。今回ママのいる世界にもウミが先に落ちて、あとから自分からその世界に飛び込んだ。ウミは冷静で無理はしないから生き延びるだろう。でもソラは放っておくとすぐ死ぬぞ」
「そうなのね。いいんじゃない?」
「娘ちゃんももう◯歳過ぎたよね?こっちの人間世界ではなかなか年を取らないけど、適齢期だよね?人間は寿命が短いからダメって言うなら、神界で探すしか無いよね?でも一番若いのが娘ちゃんで、その上って……オジ好きだっけ?」
「ううん」
「年下……100歳以上下のショタコン?」
「ううん」
「ずっとシングル?」
「ううん、ってポンポンうるさいわね!どうしろっていうのよ!」
「とりあえず、こっちの世界で住んでた事は隠して、空海の魂を持つ2人が死なないように見守ってよ。その間、あいつらがどういう奴か見極めたらいいよ。特にちっさいソラの方をね」
「ママが聞いたら怒るよ」
「そこは内密に」
「ママの世界に行くと基本、会話とかは筒抜けになるよ。いいの?」
「まぁこっそりやるから平気でしょ。どうしてもの時は遮断して」
「どっちの味方もしないからね」
「それはもう任せる」
「娘ちゃん、悪いね。あいつらの目的果たしたらこっちに戻すから」
「今連れてきたらいいのに」
「あいつらはママのやり方に反対なんだとよ。統一神による支配はおかしいって」
「まあこっちの世界はある程度自由だもんね。住むところで強制されるところもあるけど」
「何が正しいかまでは分かってないけど、信じるものは自分で決めるべきだそうだ」
「スタートは間違ってなかったと思うけど、パパが逃げるから」
「まぁそういうことなので、あいつらが死にそうな時だけ助けてあげて」
「私はなんて名乗ればいいの?『天狗の娘』?」
「それはあっちが決めるだろう。いい名前になるといいな。ちょくちょくパパも顔を出すからよろしく頼む」
「ずっと一緒にはいないわよ。学校に籍は置いといて出れる時は授業に出るから」
「あいつらが寝てる間ならいいんじゃない?」
「許婚の話は納得してないからね!」
「へいへい」
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