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165話 秋風

「ああああああああ!」


「ソラ、うるさい!」


「これ前通った道やん!くそぉ、損した」


「あ、気づいた?ウーワのお城を見下ろしてた時、気づくかと思ったけど」


とウミが笑う。


「みんな、苦にならんの?同じ道をまた戻るなんて。なんでこう行ったり来たりいつもしてるんだよ、俺たち」


「ソラ君のせいじゃん」


「あれこれ首を突っ込むからじゃないですかぁ」


サトちゃんだって楽しんでるじゃん。


「とにかく、シカちゃん!この前の地点まで乗っけて。誰かのせいで寝不足なんだわ」


誰とは言わんけど、誰とは。


「うん、いいよ」


とシカちゃん。


「クシュン!」


あ、サトちゃん鼻水出てる。


「大丈夫ですか?」


すかさずアオがポケットからティッシュを取り出す。


なんでお前がティッシュを持っている?


「アオ君ありがと」


と思いっきり鼻をかむサトちゃん。


サトちゃん昔はもっと可憐だった……っけ?


違うな。きっとあれはサトちゃんじゃないわ。サトちゃんに似た冒険者の女子!きっとそう。


「なんですか?ソラさん」


「いや、こっちのこと。ていうかアオよ、なんでお前がポケットティッシュなんて持ってる?」


「ユイさんが、紳士の身だしなみだから持っておけって渡してくれてます」


「ん?ユイ!お前なんでタクシーのポケットティッシュなんて持ってるんだよ?」


「え?家にいっぱい置いてあったのよ。多分パパじゃない?」


「天さん?天さんなんて移動は空を飛べばいいだろうに」


「お酒飲んで飛ぶと危ないからって、タクシーで帰ってるみたいよ」


酒気帯びに敏感な天狗だ。


「え?善通院のスナックから?」


「どこかは知らないけど」


「ん~?このティッシュの表にブロータクシーって書いとるぞ。丸亀の業者やん!丸亀から箸蔵までってタクシー代アホほどかかるぞ」


「いいんじゃない?羽振りよさそうだし。丸亀のボートで大勝ちしたって言ってたし」


「だから丸亀からか……多分、淵さんやな。天さんにギャンブル教えてるのは。あのおっさんだけはホンマに……」


「まあ楽しそうでいいんじゃない?パパの心がすさんでくるとそれこそ大変だから」


「天さんが?天さんがすさんでくるとどうなるのよ?」


「前は地球温暖化が進んだり、火山が爆発して火山灰が地球を覆って気温が下がったり、前は大きな大陸が沈んだとか言ってたけど」


「それもう天変地異やん。そんなアホな。そのうち海が割れたこともあるとか言い出すぞ、あのおっさん」


「それやったのパパのお使いの人だと……」


「え?」


「いえ、何でもないわ」


「しかし、本当にちょっと肌寒くなってきたね」


突然ウミが話題を変える。


まあ確かに、Tシャツじゃちょっと寒いな。


「サトちゃん、いつまでヘソ出してんのさ。もっと長袖のシャツとかにしなよ」


「持ってないもん」


「冒険者の服着てたじゃん」


「ダサいからイヤ」


「ダサいってなんだよ。似合ってたじゃん」


「服欲しい」


「え?」


「新しい服欲しい」


「じゃあウーワで買えば良かったじゃん」


「こっちの世界の生地が伸びないからやだ。ゴム入ったのがいい」


「食べ過ぎてもウエストが楽やからやろ?どんだけ自分に甘いのさ」


「シカも服!」


え?シカちゃん神様やん。


寒さとか関係ある?そこら辺に花咲しせたりできるんちゃうの?


「シカも服っ!」


ええ~。


「じゃあ私も長袖の服欲しいです」


「リーちゃんまで?」


「ソラ君、僕らもそろそろ衣替えしようよ。いつまでもTシャツじゃね」


「俺、会社のジャケットあるけど?」


「それを言ったら僕もジャージあるけどさ」


「仕方ないわね。またあっち行く?」


なぜかユイも乗り気だ。


「え?俺らもトンネル通っていいの?」


「もちろんダメよ」


ダメなんかいっ!


「前にアオイさんも連れて行くって約束したでしょ?ソラ」


「ああ、そうだったな。色々楽しいこと教えてあげるって言ったわ」


「とりあえず別行動して善通院集合でいい?」


「いいけど、ユイの家からどうすんの?シカちゃんは俺らを運んでもらわなあかんからダメやぞ。こっちサイド」


「ふふふ、タクシーがあるじゃない」


「お前、箸蔵まで迎車ってなんぼかかると思ってるのよ?めちゃくちゃかかるぞ?」


「丸亀からなんて呼ばないわよ。もっと近くのタクシー呼ぶわ」


「ちなみにタクシーっていうか車は天さんの山小屋まで行けんからな?社長の車で一回行ったけど、車の腹すりまくってUターンもできずにおっさんバックで戻ったんやぞ」


「あら?あなた国道までちゃんと道あるの知らないの?」


「なんじゃぁ~~~?そんなん天さん一言も言うてないぞ」


「バカね。隠蔽かけてるに決まってるでしょ。そんなサクサク一般人が天狗の住む小屋に車で来られたら困るじゃない」


「そりゃそうだけどさ……なんかズルい」


「なんとでも言いなさい。じゃあ女子たちは一緒に来て。ソラ、明日の朝には善通院に到着しといてね」


「へいへい。シカちゃん、悪いけどお願いできる?清滝寺のラビリンス通って善通院に行って、そっから目印辿って元の世界の善通院に行こう」


「うむ」


「久しぶりだね、清滝寺まで行くの」


「またコーチじゃん。シカちゃん悪いなぁ」


「よい。白鹿になる」


---


「鹿さん、鹿さん、もっとゆっくりでいいんですよ」


白鹿さんになったシカちゃんじゃなくて鹿さんに話しかける。


「何をおっしゃいますか。これでも抑えておりますよ」


いやいや、男三人と金槌一本だから軽いせいか、めっちゃ高いところを高速で飛んでますやん。


ユイがいないから隠蔽無しだけど、高所を飛んでいるので村人から見つかることは無い。


「鹿さん凄いですね。僕の走りなんてまだまだです」


いや、アオ、こっちは飛んでるからな。


お前は川とかあったら渡し使ったりせないかんけど、こっちは最短距離を直進だから。


神様と張り合おうとするなよ。


「ひょっとして鹿さん、急いでます?」


「ユイ殿たちに置いて行かれると困りますゆえ」


「置いて行かれないですよ。僕らの案内が無けりゃ、やつらただのお上りさんですもん。夕方には清滝寺でしょ?そっから戒壇を逆打ちしたら善通院ですから。晩御飯はウミの家でいただけるかな?」


「ソラ君、うち精進料理だけどいいの?」


「え?ヤダ」


「じゃあ会社で車借りて外食に行こうよ」


「外食っ!」


鹿さんが反応した。


白鹿さんの中のシカちゃんのリアクションだな。


「え~と、俺とウミとアオとシカちゃん……四人か。軽のバンでいいな」


「わしも忘れるな!」


リュックの金槌が何か喋ってる。


「一本さんは金槌の時は飯食わんでいいでしょ?シゲさんになったら車に乗りきらんもん」


「車というのがよくわからんが、このまま運んで飯屋に入る前に人になったらいいんではないのか?」


「ああ、確かになぁ……」


「なんじゃ、なんぞ不満か?」


「不満って言うかさ、ウミは高身長で男前、アオは人だかりができるぐらい男前、シゲさんはやたらと渋い男前。俺だけただの兄ちゃんやん」


「フフフ、そう思ってるのはソラ君だけだよ」


「え?」


「ソラさんの方が、僕よりよっぽど魅力的です」


「ええ?」


「お前、もっと自分に自信持つべきだぞ。口は悪いが見てくれは悪く無い」


「えええ???」


「ソラ様は魅力的だと思いますよ」


「白鹿さんまで、ええええ????」


「そ、そうかな?えへへへ」


「まあ今どきの女子には受けないかもしれないけどね」


「なんじゃそりゃ」


「まずは中身より外見から入るからね。ソラ君が言う通り、身長が高いとか顔立ちが整ってるとか」


「じゃああかんやん!」


「まあ、かわいらしい顔をしとると思うぞ」


「立派な大人じゃ!」


「ソラさんはモテたいんですか?」


アオが真顔で言う。


「いや、そうでもないかも……」


「ソラ、お前にはとんでもない許嫁がおるんじゃぞ。わかってるのか?」


「ユイ?確かにトンデモないね。唯一無二だ」


「前もそれ言ってたね。気に入ってるの?」


「本音だからなぁ。なんだろう……じっくり考えたことないけど、最初はなんじゃこいつって思ったけど。まあすぐにしばくし蹴るしビーム出すし……でもなんか最初からこの子が俺には必要だって思ってたなぁ。空気みたいなもん?こいつおらんと生きられんみたいな」


「ベタぼれじゃん!バカみたい。聞いて損したよ」


とウミ。


お前が振ったんじゃん、その話。


「ソラ殿、ひとついいですか?」


「鹿さん、どうしました?」


「一応お伝えしておきますが、アデヤ様にこの会話、すべて聞かれておりますよ?」


「え?ウソ?」


空を見上げると……。


「うふふ」


アデヤさんが笑っている。


そういやこの人……この女神、昔は時々上空に姿見せてたなぁ。


しばらく忘れてたわ!


「ソラ」


「いや、話しかけないで下さいよ。僕は預言者とか伝道師とかになりたくないんで!」


「今のやり取り、ユイに筒抜けですよ~。ふふふ、それだけよ」


そう言ってアデヤさんは姿を消した。


「ユイに筒抜けぇ~~?やめてくれぇえええ!」


「かわいそうに。リーちゃん、今頃ユイに背中とか肩とかバンバン叩かれてるよ」


「想像できますね。照れて顔真っ赤なんでしょうね」


アオも笑う。


「お前ら、それをこんな山より高い上空で話すような内容か?わしゃ下を見れんぞ」


一本さんが言う。そう、ここは高度三百メートル。


少し厚手の上着がないと寒いな、うん。でも顔と耳たぶが熱いのはなぜ?


*(166話へ続く)*


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