155話 国越え
「全員でやったら凄かったな?オールスター感謝祭みたいな?」
「他の人に伝わらないからね、ソラ君」
「なんかもう、ごった煮みたいで楽しいな。俺らがやったら、葬送の儀やら解放の儀も全部お祭りみたいになる」
「それ、シカちゃんの雅楽の影響が大きいと思います!」
と、サトちゃん。
「あ?アオイさん!おる?」
「いますよぉ~!」
サトちゃんからひょこっと顔を出す。
よかった~。サチが昇天しかかったから心配してたんだ。
「でも、本当にお祭りみたいでしたね。詩歌様の舞に感動しました」
「シカ、頑張った。えへん」
「シカちゃんって、普段からあのカッコしたらしんどいの?」
「頭、重い。着物、重い。草履、痛い」
ああ、着物姿で旅なんてできんわな。
「あ!そうだ!シカちゃん、詩歌様バージョンの洋服買っちゃう?またゆめタウンとかで」
「ん……」
シカちゃんが考え込む。
「ソラ、よく考えなさいよ。詩歌様から白鹿の姿になった背中に、あなたまたがれる?」
「うっ……確かに。シカちゃんなら、まあいいかって思うけど、詩歌様には……」
「ソラ、なに!それ!」
シカちゃんがプンプンしている。
「いや、同一人物というか、同一神物でしょうが。微妙に全員スタンス違うのが気になるけど」
「すたんす?」
シカちゃんが首を傾げる。
「シカちゃんは神様の子供、白鹿さんは神様の乗り物、詩歌様は女神じゃん。立ち位置どうなってんのよ」
「神様も色々ある」
シカちゃんが言う。
ふむ、色々あるんか。ならしゃーない。
「それで納得なの?ソラ?適当~」
心を読んだユイがまた突っ込む。
ふん。僕にはこいつの扱い方はだいぶわかったのだ。
頭の中でちょっとあれこれ考える。
「もう~ソラぁあ!」
嬉しそうに照れながら、背中をバンバン叩いてくる。
「ユイちゃん、ちょろい」
サトちゃんが冷静に言う。
「ちょろいですね」
「ユイ、ちょろい」
「かわいくていいですよ」
フォローするアオイさん。一番大人だ。
そんなことを言いつつ、いつものように僕らはサチを先頭に旅をしている。
もうイーヨの国との国境のはず。
「アオイさん、次の霊場は?」
「あ、私、コーチから出たことないので~」
あ、有能な秘書が戦力外になった。
「サトちゃん、急いで調べて」
「はい、次の峠を越えたところに茶屋があると思います!」
誰がグルメ情報を言えと。
百年以上前のお遍路さん情報がまだ通用するなんて……。
「ワンワンワン!」
向こうでサチが吠えた。
「ソラ君、この向こうにお茶屋さんがあるから、そこで休憩しようってサチが」
「あるんか~い!」
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「ここが国境じゃき」
店の看板娘のおばあさんが言う。
いや、娘か?看板おばば?
「ソラ君、声に出てる……」
ウミが苦笑する。
ごめん。
「次は観自在寺だね。宿毛から北に行った海沿い」
「まあ覚悟はしてた。ここ通るのが一番の近道なんやろ?」
「そうだね。海沿いを行けたらよかったけど、延光寺が内陸だったから」
「仕方なし!まあ海沿いのほうがフラットでいいしな」
「その次はまた、ぐっと離れて山の中」
「ぬぐぐぐぐぐ。仕方なし!あ、ユイ。ローパーちゃん呼んで。ここでコーチの殿さんに礼状書いて送っとくわ」
「礼状?」
「さんざん世話かけたし、国越えたらこれまでみたいにホイホイ行き来もできんやろ?出ていく前に一言伝えとかんと」
「サラリーマンだね」
ウミがからかう。
「ソラ、見かけによらず偉いわね」
ユイは感心して言う。
「これでも社会人ぞ。常識じゃ」
そう言って、殿様にこれまでのお礼と、イーヨの殿様への紹介状のお礼、今後のコーチの進むべき道について少し意見を書かせてもらい、ローパーちゃんへ託した。
ちゃんと届けてよ。
心で思っただけなのに睨まれた。
このカラス怖い。
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「ウミ、ここら辺って、あっちの世界でいうところの宇和島ってホンマなん?」
「僕らうどん県民からしたら違和感あるよね。勝手に、象の鼻みたいな佐田岬があるところを宇和島って勘違いしちゃってる」
「そうそう。原発のある辺りから、ず~っと宇和島って感覚があるわ」
「八幡浜とこんがらがっちゃうよね」
「ああ!そうやった。八幡浜か」
「ウミ、ソラ、愛媛県の人に怒られるわよ。ソラはバイクで四国一周したんでしょ?なんで知らないのよ」
「え?山の中で天狗が扮した農家のじいさんに、クマが出るって脅されたから、一気に大洲のほうに抜けて戻ったから」
「それじゃ一周になってないじゃない」
「みんなそんなもん。日本一周とか世界一周とか言いながら、行ってないところいっぱいあるって」
「自称四国一周だもんね」
ウミ、厳しいな。
「私はどこに行っても新鮮で楽しいですよ。山も海も川も」
アオイさんが楽しそうに言う。
「アオイさんがいると、見慣れた世界も輝いて見えます」
「アオ君、アデヤ様見たとき見惚れてたあなたが言ってもねぇ」
サトちゃんがすかさず刺す。
「まあ、アオイさんには色々と、生きてたときに経験できなかったことを知ってほしいし、こっちの世界で生きてても体験できなかったようなことを体験させてあげるから!」
僕が宣言すると、
「ソラキン?」
「イルカ?」
シカちゃんとサトちゃん、同レベルの反応。
「善通院ですか?」
リーちゃん……もっと楽しもうよ。
「あ、思いつきだけどさ、ユイ。天さんって一本さんのときみたいに、アオイさんにも身体を作ったりできないの?転スラの受肉みたいな」
「アオイさんの身体を?そ……それは……」
「ソラさん、私は身体なんていりません。サトちゃんの中で、皆さんとこうして旅をしているのが楽しいんです。私はもう死んでいるんです。そこに身体があったとしても、ただの人形じゃないですか。私は私。ずっと皆さんのそばにいたいです」
「アオイちゃん、ずっと一緒にいようね!」
サトちゃんが嬉しそうに言う。
「じゃあ、サトさんのそばにいます」
渋々アオが言う。
「じゃあってなによ!じゃあって!」
いらんこと言うから。
「アオイさんがそれでよければ。サトちゃんもいいんだね?」
「はい。いくら食べても全然太らないんですよ。アオイさんがいるからですかね?」
みんな『え?』という顔をしている。
最近、サトちゃん、グラマーになってきたのでは疑惑が、みんなの頭の中で渦巻いていたからだ。
でも口にするのは怖いので、全員コクコク頷く。
アオイさんはそんな様子を見て笑っている。
癒やしだなぁ。
「ところで、みんな。お堂作ったあと、一本さん見た人おる?ダンディになってからどっか行ったみたいなんよ。はぐれてしもたな」
「おるぞ!ソラ」
ん?
と思ってリュックを見ると、いつの間にか自分で金槌になってぶら下がっている。
「何しとるんや、一本さん。足あるんだからちゃんと歩けや。せっかく天さんに整形してもらったのに!」
「え?嫌じゃ。久々に人の身体になったらしんどい。アオイさんとやら。さっきの選択で正解じゃ。人のふりして生きるのは肩が凝る。死んだら死んだで、そのまんまが一番。過ぎたるは猶及ばざるが如しじゃ」
「そうですね、一本さん」
アオイさんが笑顔を向けると、リュックにぶら下がった金槌が熱を持った。
「あっつ!やけどするわ!水かけよ、水」
「やめて、やめてくれソラ……」
純情な少年かよ、この神さんは。
「大人の姿、疲れる。同意」
小さくシカちゃんが呟く。
「子供の姿なら大丈夫なの?」
「うん、楽。寝たら、運んでくれる」
そこかいっ!
おおっと。
坂の向こうに海が見えてきた。
「さあ、来い宇和島!さぁ何が待っとる!」
声を上げて気合を入れる。
「宇和島といえば牛鬼だねぇ……」
さらっとウミが言う。
「え?……また牛鬼?」
*(156話へ続く)*




