108話 アデヤ像
「リク、スイ、お前ら悪いけど近所の子供ら集めて、花とかシキビとか榊集めて来てくれるか?」
「なんじゃそれ?花ならわかるがシキビとかシャシャキ?とか知らんがよ」
「シカちゃん、わかるかい?」
「うん、わかる」
「じゃあちびっこたち引き連れて集めてきてくるかな?」
「わかった、みんな、来る」
「なんじゃ、おんし、どこの子じゃ?」
「うるさい、来い」
シカちゃん、ピシャリやな。そこらで見物してた子供らを引き連れて町外れの丘の方へ歩いていく。後ろからリクがシカちゃんに色々話しかけているけど完全無視しとる。シカちゃんらしいな。
「ソラ、仮にも神様自身に自分に供える榊とか集めさせるなんて不敬もいいところね」
とユイが笑う。
「使えるもんは何でも使う!」
「ウミ、俺は適当に材木集めて祭壇組むわ。仏具はリュックにあるとして、お供え置く三方みたいなのは一本さんに作ってもらうか」
「え?三方使うの?神式でやる気?」
とウミが驚く。
「ん?そうじゃないけど、せっかく神さんもおるんやで?もうごちゃまぜでええやん」
「ごちゃまぜって、神も仏も一緒にって事?」
「そうよ。アデヤ教の人がメインやろうけど、アデヤ教に切り替わる前の霊も彷徨ってたやろ?あの中には仏教の人もおれば神道の人もおったかなって。せっかくシカちゃんも仲間になったことやし、できることは全部やりたい」
「面白いね。どうなるんだろう。初めてのセッションだねえ!ユイとリーちゃんとはあるけど」
「俺がいつも言ってるやろ?何を信じてもええって。でも結局行き着くところはひとつだと思うんよな。何を信じていようが亡くなったらみんな同じとこに行く気がする。それこそキリスト教やユダヤ教、イスラム教が信じる神さん的な何かがな。みんなが違う角度で見て違う解釈してるだけで、日本の神さんも仏さんも結局最後は一つなんちゃうかなって」
「ソラ、あなた、何が見えているの?」
とユイが不安そうに見つめている。
「な~んも見えん。一本さんも言ってたやろ?頭の中空っぽって。何も考えてない。シンプルに世の中見ていたらそう思えただけよ。深い考えちゃうで?俺、ウミみたいに賢くないし」
「考えずにそこに行き着くのがソラ君なんだよ、ユイ」
「祭壇、三方、仏具はある、アデヤ教は弔いの儀式で使うもんはないけど、まぁアデヤ像あるからええか」
「うちはそれでいいわ。まぁお花くらいはあったら嬉しいかしら」
「サトちゃん、手持ちの本に神道関係ある?あったら一本さんに……」
「小僧舐めるなよ!お前らが生まれる前からおる神じゃぞ。神道も仏教も耶蘇教もなんでも知っとるわい」
おお心強い言葉。
「さすが一本さん!じゃあね、この際に頼んじゃう。今ある簡易な祭壇やけど、折りたたみ式でもっと軽く小さくできない?」
「そんなもん、必要な強さ保って見えんとこ削ったら軽くなろうが。今使ってるやつ貸せ、釘も残っとるからそれで丁番付けて畳めるようにしてやるわい」
と言うと道具を取り出し、あっという間にいつもの祭壇が透かしの入った豪華な彫刻入りの折りたたみ式祭壇に生まれ変わった。
「うぉおおお!一本さん!神!」
「だから神さんや言うとるが」
確かに!続けて、神道に使う道具もあっという間に作ってくれた。あとは半紙やら果物やら魚やら米などのお供えか。ガキどもまだかな?
「おんちゃん~!これでえいがか?」
リクたちがシカちゃんに引率されて帰ってきた。シカちゃんがお姉ちゃんに見える。
「映画化?」
「違うでしょ!バカ」
わかってるわ、僕は高知のハーフだぞ。高知県民おちょくる時に使う言葉だ。
「映画自体通じないでしょ」
あ、僕がバカだった。
「リク、スイ、お疲れ。バッチリや。このあと教会で準備するから、暇やったらそこのお姉さんに勉強教えてもらえ」
とリーちゃんを指さす。
「えっ?私ですか?」
ふふふ、お客さんじゃないのだよ。君も仲間なんだから働いてもらう。
「じゃあ、私も一緒にお勉強しよ~っと」
とサトちゃんが言うと子供らも興味を持って、みんなリーちゃんの元に向かう。
「おほん、じゃあこれから今からする事のお話をするね」
とリーちゃんが言うと子供らが輪になって話を聞く姿勢になる。サトちゃんといいコンビだな。
ウミ、お前は法衣に着替えて準備して。ユイは……どうしよ。
「ソラ、あのドレス着させてもらうわ」
「別に飛ばなくてええけど」
「翼がある方がルックスにパンチが効いてていいでしょ?ハッタリよ」
「ハッタリってお前、俺みたいな……」
「許嫁だからね、似てくるのよ。ふふふ」
「アオ、お前は船団の皆さんも一緒に参加してもらって。多分やけど、今までに亡くなった船乗りさんが何人かカヘイさんにくっついてるわ。鯨獲りしてる時の事故かの。一緒に弔う。実は室戸の町も俺とウミとユイでこっそり弔いしたんやけどの。そん時は一緒に漁についていってたんかも知れんの。死んでもカヘイさんから離れたくないんやな。人望ある人や」
「そうなんです!カヘイさんってそんな人なんです。男が惚れるってやつです!」
「そんな人にお前は惚れられてるって凄いことやぞ」
「でも僕は、ソラさんに惚れてますから!」
え?恥ずかしいからやめて。
「アオ、渡さないわよ」
ユイ、怖い。
「僕はユイさんにも惚れてます!あと、ウミさんもサトさんも」
気が多いやつやなぁ。そりゃあちこちで泣く女の人出るわ、こいつ。
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教会にはたくさんの人が集まった。アデヤ像の前には祭壇を組んだけど、祭壇には大日如来像と共に鏡、三方に乗せたお供えを備えている。これ宗教関係者が見たら激怒するシチュエーションだろうな。知らん知らん。集まった人達も見たことがない祭事に興味津々だ。霊が見える司祭さんは既に目が潤んでいる。なぜかこれまで教会に集まっていた手足が折れたり、血まみれだった霊が生前の姿に戻っているのだ。モキチさんも!
「ユイ、どうしてこうなった?アデヤさんの力か?」
「私にはわからないけど……きっとリーちゃんとサトちゃんね」
「リーちゃんとサトちゃんが?どういうこった?」
「リーちゃんが子どもたちに弔いの儀の事を教えていたでしょ?場所を変えずあそこでリーちゃんが子どもたちを集めて話ししたのは狙ってやったと思うわ。まさに霊たちが教会に向かって歩く道だったもの。その真中でリーちゃんが、わかりやすく話していたのよ。サトちゃんに聞いたんだけど、仏教で僧侶がする説法を子供でもわかるようにしてたんだって。ウミや私が近くにいるとサトちゃんも霊が見えるでしょ?霊が立ち止まって話を聞いてたそうよ」
「リーちゃんが説法を?」
「ええ。子供たちに分かるように噛み砕いてね。アデヤ教徒も死後に関しては子どもと同じよ。リーちゃんの話を聞いているうちに、みんな死を理解して受け入れたのね。腕が千切れて痛いから、死んで苦しみから解き放たれたような顔に変わっていったって」
リーちゃん、凄すぎる!僕の想像以上の事をしてくれた。だからみんなもう安らかな顔をしていたのか。
「カヘイさん、前に来て」
「なんでじゃ?」
「あなたに三人ほど亡くなった船員の方がくっついています」
「なに?三人じゃと?ソラ、見えるんか?」
「見えますよ。ちょっと小太りで笑うとエクボができる人。頭の禿げ上がった痩せ気味の人。腕に『信』って入れ墨入れてますね。もう一人は若い男の子です。肩までかかる長い髪の美男子ですね」
「ソ、ソラよぉ~そいつら、皆、漁で死んだうちの連中じゃ。太ってるのはゴンゾ、入れ墨のあるのはシンザじゃ。最後の若いのは……わ、うちの跡取りじゃったヨウジ……わしの長男じゃ。ヨウジがおるのか、ここに」
「御子息さんでしたか。ずっとカヘイさんの側にいましたよ。気を失っていた時も心配そうに。それを慰めていたのがゴンゾさんとシンザさんですね」
「ヨウジ、ゴンゾ、シンザ……おるのか?そこに。わしの側におるのか!このままずっと側におってくれ。おまんらがおらんようになってわしは……わしは」
と泣き崩れるカヘイさん。
「ダメです。この人たちも居るべき場所に行ってもらいます。ずっと一緒じゃダメなんです」
「なんでじゃ!今まで一緒におったらそれでえいがよ!なんでじゃ」
そこに、霊が見えると言ってくれたカヘイさんの舟の銛打ちの人が話に入ってきた。
「網元……わしはずっと三人が見えちゅうが黙っとったがよ。網元がせっかくヨウジの死から立ち直ったと思うたからじゃ。アオが来てから網元は元気になった。あいつを婿に迎える言うての」
「あ、確かにヨウジさんってアオにどことなく似ている気がする」
「ヨウジはもう戻って来んがよ。あんたがいつまでも執着しとるき、こいつも安心できんがぞ」
「おっしゃる通りです。今からこの町の霊たちも一斉に空に帰します。カヘイさんもここで見届けてください」
「……」
「おやっさん!しっかりしてくれ!これからは俺らが支えるき、ちゃんと三人を送ってやるがよ!」
と外から見ていた船員からも声がかかる。
「……すまん!格好悪いとこ見せたの!ヨウジ!ゴンゾ!シンザ!ありがとう!もう安心して帰れ。そのうちわしも行くがやき。しばらく待っちょれや」
うん、心の準備できたな。シカちゃんは大丈夫かな?
「それでは只今より、須崎の町人、漁師、室戸の漁師の合同慰霊祭を執り行います。一同合掌!」
と僕の声で祭事は始まった。最初に法衣を着たウミが前方の入口から入ってきて祭壇正面に座る。その横に同じく法衣を着たリーちゃんが控える。続いてユイが反対側入口から入ってくる。僕があげたドレスを着ている。美しい……。ウミを挟んでリーちゃんの反対側に跪いて座ったかと思うと、美しい純白の翼を広げて参列者のど肝を抜いた。ユイが小さく三度羽ばたくとどよめきが起こった。
「聖女様……」
と言って泣き出す人もいる。続いて教会の外がザワつき始め辺りが急に霞がかったようになり、教会入口からゆっくりと平安貴族の様な服装を着た美しい女性が入ってきた。外のザワザワが教会内にも伝播しあちことでため息が漏れる。不思議なことに誰も演奏していないのに雅楽の荘厳な音が聞こえてくる。その女性は祭壇の前で深々とお辞儀をして自然とウミの前に立つ。この中で一番高位だから当然か。次期春日神社の女神詩歌様の本来の姿だ。初めてこの姿に変身してもらった。ずっと子供のままでいたかったろうけど、シカちゃんにお願いしたら快く了承してくれた。
「女神詩歌様、アデヤ教聖女ユイ、真言宗ウミとリーに向かって一同礼!」
と言うとわけもわからず、雰囲気に飲まれ皆一斉に頭を下げる。それを合図にリーちゃんがゴーンと鐘を鳴らす。そしてウミの読経が始まり、リーちゃんがそれに合わせる。ユイは小さな声で手を組んでアデヤさんに祈り始める。さらに詩歌様はよく通る声で祝詞を読む。もう色んな宗教がごちゃまぜになっているけど、いいんだよ、僕らはこれで。祈りの言葉が混じり合いひとつの旋律を奏で、この世のものとは思えない不思議な空間に参列者を誘う。
そんな荘厳な雰囲気に酔っている僕に、一本さんが隣に来て小声で話しかけてきた。
「おい、なんであそこにわしが作った像があるんじゃ?」
「あ、木彫りのアデヤ像ですか?なんか山の中で、突然現れたからかさ小僧が作ったって伝承らしいですよ」
と小声でからかってみた。
「なんじゃと!あれはれっきとした神であるわしが作った像じゃ。本物の証拠に実はあれには仕掛けがしてあっての」
「仕掛け?なんの?」
「見とれ?」
と言うと何やら怪しい動きをする一本さん。すると女神像の両方の目からツーっと涙が流れて、教会内がざわつき始めた。荘厳な雰囲気台無し。悲鳴やら、拝む人やら、プチパニック。いらんことさせてしまった。ユイが振り返ってめっちゃ睨んでる。ごめんよう~。
「一本さん、信じるからやめてやめて」
「え?やめろってか?無茶言うな。あれ、中の水が抜けきるまで止まらんぞ」
マジか。このポンコツ!この雰囲気どうしてくれる!半分は僕のせいだけど。その時シカちゃん……詩歌様が立ち上がって祭壇前を静かに鈴を振って歩き出した。シャンシャンという鈴の音を聞くと皆の意識も落ち着いて詩歌様の優雅な動きに見惚れる。場も落ち着いたしそろそろか。
「サチ、ユイに合図してからお前は上で、霊たちがはぐれないように誘導してあげて」
「ワウ」
と言ってユイの方に走っていき背中を鼻先でつついた。なんか鼻の頭が濡れてたみたいで不快そうなユイだったけど、祈りのボルテージを一段上げると、空から光の柱が降りてきた。ウミとリーちゃんの声が一層大きくなり何かが起こる予感を感じさせる。
開いた教会の扉から霊たちが順に中に入ってきて光の中に入ると、その一瞬だけ参列者の人に霊の姿が見える。年功序列なのか百年以上前に亡くなった人から順に上がるので、最初は参列者も顔を知らない人ばかりだったが、時間が経つにつれて少しずつ顔見知った人が出てきたようだ。
「おばあちゃん!」「親父!!」
などという声が参列者席から聞こえるようになり、光の柱に向かって駆け寄ってくる。でも近づく頃にはもう空に上ってしまっていて言葉を交わすことができないことがほとんどだ。
「イチロ!イチロか!鯨は、敵はとらんでええがか!」
と叫んだのは例のシャチを殺すと主張していたじいさんだ。イチロと呼ばれた屈強な漁師の霊は
「事故じゃ」
と一言だけ言って笑顔で上がっていった。泣き崩れるじいさんだが、憑き物が取れたような顔になったな。
「父ちゃん!父ちゃん!」
と叫んだのはリクとスイか。奥さんも親父さんも来てるな。
「母ちゃんとじいちゃんを頼むな!気張れよ!」
と笑って上がっていった。奥さんと親父さんは泣いていたが、ガキ二人はにこやかだった。
「父ちゃん笑うちゅうが。わしらが泣いたらいかんがよ」
成長したな、ガキ共。
最後に室戸の漁師三人が上がる番だ。
「おまんら安心して行け。わしは大丈夫じゃ」
とカヘイさんが言うと三人は笑顔で頷く。空に上がりかけた時、下に向かってヨウジさんが「親父、ゴメン」と言った。カヘイさんは笑って「何を言うが。わしの所に生まれて来てくれてありがとうな」と言うと、ヨウジさんを知っている屈強な船員達が皆声を上げて泣き始めた。
「泣くな!笑って送るがぞ!」
とカヘイさんは気丈に皆を励ました。そしてヨウジさんたちは見えなくなり、光の筋が徐々に細くなりやがて消えていった。それを見届けてからカヘイさんはおおいに男泣きした。
「何年ぶりに会えたがか。あれからもう五年か?五年ぶりにまた三人に会えたがぞ」
つられてそれまで我慢していた船員たちまでもが泣き出した。こんなときくらい全部吐き出したらええよ。……アデヤ像から流れる涙の量がさらに増えた気がした。
慰霊祭が終わり、皆が口々に僕達にお礼を言ってくれた。シャチを殺すと主張した三人もスッキリした顔をしていた。これで良かったな。シャチは当面、漁師さん達が餌を与えてくれることになった。もう追い立てることもせず、シャチたちの意思でいつでも出ていけるように湾に網を張ることはやめた。
室戸の船団はさっき隊列を組んで帰っていった。アオだけじゃなく僕もカヘイさんや船員さんに気に入られて、ぜひ婿にと言われたがそこはユイが強硬に抵抗して破談になった。会ったこともない人のとこに婿入りするかい!あの親父の息子なんて無理、無理。
「ふ~長かったけど、とりあえず一段落やな」
「ねえ、ソラ君、言いたくないけど僕らと別れてから全然先に進んでない気がするけど?」
「ん、まぁ俺らだけで行くのもさみしいやん?みんなで行こうや!」
「そう!みんなで行く、楽しい」
あ、シカちゃんもとに戻ったのね。女神様モードもかなり素敵なのに。
「今回も見どころありましたね!記録する紙が足らなくなるかと思いました。またシャチョゾンで新しいノートほしいです!」
「私、久々に合流しましたけど、相変わらずですね、ソラさん」
リーちゃん、どういう意味かな?
「アオ、ひとっ走り次の札所の場所確認してくれ。あ、ややこしいのは見つけなくていいからな。また時間取られる」
「わかりました!行ってきます!」
「じゃあ、そろそろ行くか……」
と荷物を背負って立ち上がったら後ろから声がした。
「おんちゃん、もう出ていくんか?」
リクとスイか。
「おう、お前らのお陰で色々解決できたわ、ありがとうな」
と頭をぐしゃぐしゃに撫でると突然リクが抱きついてきて泣き出した。
「おんちゃん、ありがとう!父ちゃん笑顔にしてくれてありがとう!」
「こちらこそありがとうや。お前らがおらんかったらなんもできんかったわ」
「おんちゃん、わしらこれからどうしたらええが?」
「どうするもなにも父ちゃんの跡をついで漁師になるのもええし、違うことしてもええ。お前らまだ何にでもなれる可能性があるからな!なりたいもんになれ!」
「なりたいもん?」
「ほうよ。もし勉強がしたかったらコーチ行け。俺が話しつけたる。リーちゃん先生がおった学校あるからの」
「ほんまか?」
「ほんま、ほんま。お前らみたいなガキばっかりいっぱいおるわ。ただし母ちゃんがええって言うたらや。母ちゃん一人にしたらかわいそうやからな。だから……」
「だから……」
「それまではあの白黒鯨の面倒をお前ら責任持ってやってくれ。ほんまはシャチっていう名前やけどな。あいつらちゃんと餌食べとるか、とかの。漁師さんたちもちゃんとしてくれるやろうけど、お前らが責任者や!ええの?」
「うん、わかった。わしらが責任者する!」
「任せたぞ!じゃあこれはお前らに渡すから大事にしてくれ」
「なんじゃこれ?」
「風車。お前らみたいなガキに俺が渡すんじゃ。約束したときにの。大事にせえよ。次来るときまで壊すな」
「また来てくれるんか?」
「おう、来る、来る。お前ら困ってたらいつでも来るぞ。シカちゃんおるしあっという間じゃ。任せとけ」
「わかった!おんちゃん、ありがとう」
「おっとリク、スイ!」
「ん?」
「おんちゃんちやうぞ。お兄ちゃんや、お兄ちゃん。わかったか?」
「わからん!」
「ほうか、まあええわ。ほな、またの!」
と手をあげて僕らは次の札所に向かうのだった。
「あ、ソラ君、一本さんは?」
「ああ、今頃アデヤ像に仕込んでた、いらん仕掛け取り外してると思うぞ」
「あ~あれねぇ……。それはしょうがないね」
*(109話へ続く)*




