103話 再考
「じゃあちょっと情報の整理しようか?」
宿屋に戻った僕らはリクの話を元に整理することにした。
「霊になったリクのおやっさんの『違う』って何が違うと思う?」
「死んでしまった今の自分の状態に対してかしら?」
「自分が死んだ事に対して、話が違うってアデヤさんにクレームを言っているって線か?聞いてた話とちがう!転生できてないやんけ!って」
「それも可能性の一つじゃないですか?」
メモしてるサトちゃん。ちゃんと整理してくて助かる。
「あとはそうだな、鯨を追い出す事についての反省とかは?」
「どういうこと?」
「鯨を追い出そうとすべきじゃなかった、間違ってたとかかな」
「でもそれは漁師さんたちの漁の邪魔だったんでしょ?鯨みたいな大きな生き物があの狭い湾まで入ってきてたら、舟の出入りに支障がでるわ」
「そもそもやけど、俺とユイは鯨って存在を細かいとこまで知ってるやん?種類も色々いるし。シロナガスクジラから小さいのならうちの実家の半島にもおるスナメリっていうイルカサイズくらいのやつ」
「あ、スナメリって私、知ってますよ。あれ鯨なんですか?瀬戸内海の燧灘とかにもいますけど」
「そうそう、うちの実家の半島も燧灘近くだからまさにその鯨。子供の頃海水浴場の手漕ぎボート盗んで板で漕いでたときに、横にぬっと出て来て一瞬サメかと思ってビビった記憶ある」
「じゃあその小型の鯨の見間違いとか?」
「でもスナメリなんて人間と同じくらいのサイズだよ。手漕ぎの小型の舟ならひっくり返せても、漁船をバラバラにするような力は無いよ。何人も人が死ぬ前にボコボコにされてやっつけられると思う」
「そうそう、おじさんが言ってたけど、片方のヒレを出して横向きでって言ってたのが、私は引っかかっているわ」
「ユイ、まさに俺もそれ。何のために横向きになる必要がある?」
「やっぱり変だと思うわよね?」
「うん。なので可能性のひとつめは巨大なサメ。ホオジロザメとかなら舟をバラバラにして人も食うかもしれん。手足に噛みついたって言うてたしな」
「私がさっき疑問に思って口にしたら、おじさんの癇に障って怒らしちゃったやつね」
「あの剣幕だったら多分見間違えでもなく本当なんだろうな。なんかもうその時点で鯨じゃないんじゃないかって俺は思った」
「映画のジョーズの可能性を考えたの?」
「サメの映画以外にもあるやろ?海の生き物のパニック映画」
「オルカ?」
「そう……オルカって映画にもなったウミの殺し屋シャチ」
テンタクルズってタコの映画もあったけど今回はその線は無い。
「それが一番合点がいくんよな。水面に出てたのは鯨の片ヒレじゃなくて背びれ、サメにも背びれはあるけどサメはエラ呼吸。この湾内を泳ぎ続けんといかん。シャチは哺乳類だから肺呼吸で、とどまってても時々勢いよく潮を噴いて息するやろ?」
「そうね。それが一番自然かも」
「昔、ドキュメンタリーで波打ち際までオットセイ狙いに来てるの見たから、きっとこの浅い湾内でも来るぞ」
「漁師さんたちが片ヒレ出して横を向いていると思ったのは、普通に水面近くで息してたのね」
「お二人とも納得したみたいですが、そもそもシャチってなんなんですか!教えてください」
「ああ、そうだな。シャチとは……」
と、しばらくサトちゃんにシャチについてレクチャーをしてたら夜になった。明日、アオが戻って来るかな?
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次の日の朝早くにローパーちゃんが飛んできた。この子、あちこち行ってもらってるから、どこから来たのか手紙読むまでわからんのよな。
「え~と、なになに……ウミからだ!無事、一本だたらの活躍でソロとユキさんの御殿が完成……はぁ?御殿ってか?何やっとんだあの神さん。ほんで、そのままシカちゃんのお父さん神がいる春日神社入り。あの姿で奉行や職人の前でやるわけにもいかないので、ウミとリーちゃんが離れたところで作業をするふりをして、次々と装飾用の金具やら材木の削り出しまでおこなって、あとは人力で組み立てて金具とかをつけていけば完成できる段階まで来たって。プラモのパチ組み段階を残す程度って事か」
「一本さん頑張りすぎですね」
「多分、色々これまで鬱憤溜まってたのを一気に吐き出してるんやろ。おまけにシカちゃんのお父さん神にも会えて喜んでるやろ。シカちゃんですら感動してたんやし」
「で、ウミさんとリーちゃんはどうするんですか?」
「なんか一本さんは完成まで見届けて山に戻るらしいので、ウミとリーちゃんは大量に作った金具を現場に運んだら、こっちに向かうってさ。多分今日中には来るやろ」
「じゃあローパーちゃんにウミへの手紙を託しておきましょう。須崎の宿屋に来てって。あとここの弔いもするって。ウミとリーちゃんがいれば安心だわ」
「そうやな、鯨の件はアオが来ないと話にならん。逆にウミは荒事向いてないしな」
「ソラ、隠密のアオ頼みなんてなんかおかしいわね」
「隠密なぁ。それはどうでもええけど、俺は早いところあいつの洗脳が解けたらええなと思うだけやけどな。洗脳が解けたらあいつももっと普通の若者らしく生きられるやろ」
「ソラさん、ジジ臭いです」
「あいつ、ホンマにおるだけで女の敵になりそうやから、それだけが心配。サトちゃん、俺らがもとの世界に戻ったあとアオのことお願いできん?」
「アオ君?別にいいですよ。私の創作活動の邪魔さえしなければ」
「え!面倒見てくれるの?」
「はい、うちの本屋手伝ってもらってもいいし、あの足は魅力です。本の配達とか、ちょっとした取材とか。アオ君の人としての魅力って本当に武器になると思いますし。聞きにくいことも女性からも男性からもするする話しちゃう」
「サトちゃん、どういう意味で面倒見るって言ってるの?アオは便利な道具かな?」
「え、アオ君かわいいし全然お婿さんに来てもらってもいいですよ」
「は?お婿さん?俺が弟に見えて、アオならいいってどういうこと!」
「ソラさん?ソラさんは好きですよぉ。世界中でユイさんの次くらいには。ただユイさんの思いが強すぎて私なんてとてもとても」
「……え?あ?そうだったの?」
「ソラ、あなた気づいてなかったの?アオもだけどあなたも自分が思う以上に人たらしだからね」
「俺なぁあんまり人の好意って感じないから、愛されたことないからなぁ」
「あなた馬鹿なの?本気で言うけど、私もサトちゃんもユキさんもあなたに好意を抱いているわよ。なんならサチもね。男性だってパパも、サブロウさん、ソロも、山内の殿様もこれまで関わった人みんなに愛されてるの!ソラは鈍感すぎるわよ」
「え?そうなん?本気で人の好意ってわからんのよ、俺」
「学生時代モテなかったっていうのもあなたがそう思ってるだけよ。あなたを好きにならない人なんて、いたら私が消し去ってあげるわ」
いやいや、僕は人一倍口が悪いし、好き嫌いも激しい。でもまぁそう言われて悪い気はしない。しかし過激やな。
「怖っ!そうなるとユイ、お前のライバルばっかりになるが」
「あ、本当だ……」
「ね?こんなにソラさんを好きな人に私が勝てるわけ無いでしょ?わかった?」
「そうか……。ならもっと俺はがんばらないとだな!」
「なんでそうなるのよ」
「聖女に釣り合う男なんてこの世界におらんよ。ちょっとでも近づかんといかんやろ?釣り合いが取れるようになるまで頑張るわ」
「あなた老衰で200回くらい死なないと無理よ」
「え?そんなに?」
「ソラさんガンバ!」
う~む。
*(104話へ続く)*




