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星屑シネマの七番スクリーン  作者: パラレルワールドの住人


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6/12

星屑のシネマ ― あの日、言えた言葉

今回はあるあるかつ王道なストーリーを上映したいと思います。


卒業式の帰り道。


制服のまま、花束を抱えたまま、

人の少ない道をひとりで歩く。


朝よりも、少し軽くなった校舎の空気。

でも、胸の中はやけに重い。


結城ひなのは、今日——


好きな人に、何も言えなかった。


ずっと好きだった。


同じクラスで、何度も話して、

笑って、からかって、でも——


最後まで、“友達”のまま終わった。


「……バカだな、私」


小さく呟く。


そのとき、ふと空を見上げる。


星が、やけに多い。


視線を戻すと、見慣れない建物があった。


「星屑のシネマ」


なんとなく、引き寄せられるように中へ入る。


館内は静かで、天井に無数の小さな光。


まるで夜空の中にいるみたいだった。


支配人が、チケットを差し出す。


その紙も、ほのかに光っている。


『あなたが、あの日、言えた人生』


ひなのは、一瞬だけ息を止める。


「……そんなの」


ありえない、と思いながら席に座る。


上映が始まる。


映し出されたのは——今日の朝。


卒業式。


体育館。


同じ風景。


同じ空気。


そして——


同じ“自分”。


違うのは、ひとつだけ。


放課後。


校舎の裏。


“もう一人の自分”が、彼を呼び止める。


声が少し震えている。


「ちょっと、いい?」


ひなのの指が、ぎゅっと握られる。


見ていられないのに、目が離せない。


“向こうの自分”が、深く息を吸う。


「私、ずっと——」


言葉が詰まる。


でも、逃げない。


「好きでした」


静かな声。


でも、はっきりと届く声。


時間が止まったみたいになる。


彼が驚いた顔をする。


少しだけ、困ったように笑う。


そして——


「……そっか」


短い沈黙。


「ごめん」


その一言。


ひなのの胸が、ぎゅっと痛む。


だが——


“向こうの自分”は、泣いていない。


少しだけ笑っている。


「うん、知ってた」


その声は、震えているけど、崩れていない。


「でも、言いたかっただけだから」


風が吹く。


制服のスカートが揺れる。


「じゃあね」


そう言って、背を向ける。


その背中は——


少しだけ、軽そうだった。


映像はそこで終わらない。


数日後。


部屋の中。


ひとりで泣いている。


でも、そのあと——


スマホを見て、友達のメッセージに返信する。


少しずつ、いつもの日常に戻っていく。


完全には消えない。


でも、止まってもいない。


上映が終わる。


館内の星が、静かに瞬く。


ひなのは、動けなかった。


「……振られてるじゃん」


小さく笑う。


期待していたわけじゃない。


でも、どこかで——


違う結末を思っていた。


支配人が静かに言う。


「彼女は、“終わらせること”ができました」


ひなのは、何も言えない。


自分は、終わらせられなかった。


「あなたは、まだ持っています」


胸の奥に残る、言えなかった言葉。


外に出ると、夜空は変わらず綺麗だった。


ひなのは、スマホを取り出す。


彼とのトーク画面。


「卒業おめでとう」


それだけ送って、終わった会話。


画面を見つめる。


「……今さらだよね」


指が、キーボードの上で止まる。


「好きだったよ」


打てる。


消すこともできる。


星が、ひとつ流れる。


ひなのは、小さく息を吐く。


そして——


画面が、そっと暗くなる。


スマホを閉じたのか、

送信したのか、

それとも——


その夜、誰にも分からなかった。


ただ、空の星だけが、静かに瞬いていた。


星屑のシネマは、またどこかで現れる。


言えた言葉と、言えなかった言葉。


その“ほんの少しの違い”を映すために。

どうですかあるあるすぎましたかね。

誰にでもあり、そして誰もが悩み続ける答えのないものですね。


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