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その34 日記


 グードとメイシンは2階を探索していた。


「ここも埃がほとんどないね」


 グードが手すりを指で擦っても全く滑らない。


「本当綺麗な屋敷ね、誰か住んでいるんじゃないのかしら」


 確かに、グードはそう思った。考えてみればこんな立派な屋敷、しかも周囲に人の姿はほとんど見当たらない。賊や魔物の住処に最適だ。


「もしかしたら幽霊屋敷というのも誰かが流したデマなのかもしれないね」


「え、でもそれならローデラが言ってたことも嘘になるわ・・・」


 メイシンは顎に手を当てる。依頼人のローデラは幽霊を見たと言っていた。もしそれが嘘ならば彼は何かを隠そうとしている可能性が高い。


「どうやらローデラもただの被害者じゃないみたいね・・・」


 更なる緊張感が走り、2人はゆっくりと廊下を歩いた。


 2階の廊下にはいくつかの部屋があり、メイシンとグードは一部屋ずつ見て回ることにした。寝室や客間がほとんどで、部屋には多少血のシミがあったり傷なども多く家具もぼろぼろではあったが、特に何か怪しいものが見つかることは無かった。


 そしてついに、廊下の一番端の方にたどり着いた。


 メイシンは何かに気づく。


「何かいるわ!」


 グードを静止するメイシン。薄暗い廊下の端に人が立っているのが見えた。

 彼女は得体の知れない相手に半身で杖を構え、先程と同じ火の玉を出した。

 火の玉が辺りを照らす。


「ちょっと待って、メイシン!」


 今度はグードがメイシンを止めた。彼女が作り出した火による光が前方の状態を暴いたのだ。


「あれは・・・」


「ただの飾りだよ」


 光が照らすその先には鎧兜が飾られていた。頭から足の先に当たる部分まで光沢を放っている。前には剣が垂直に立てられており、その上に両手を乗せている。もちろん、甲冑の隙間から見えるのは空洞だ。


「これ動いたりしないでしょうね・・・」


 メイシンカは出来るだけ距離を取ると杖で鎧を小突く。


「これもやっぱり綺麗だ・・・」


 もはや2人は汚れていないことに驚いてはいなかった。それどころか廃墟であることすら疑っている状態だ。


「ここが最後だね」


 2人は鎧の隣にあるドアをゆっくりと開けた。


「ここは・・・」


 部屋の中は本でいっぱいだった。立派な机と椅子が部屋の奥で存在感を放っている。


「仕事部屋って感じかしら」


 入ってきたドアの上を見ると、壁に凛々しい女性の姿の絵が飾ってあった。赤褐色の髪は後頭部で束ねられている。絵の下にはご丁寧に「初代 アレックス・マーティン」と記されていた。


「この絵に見守られながら仕事していたみたいだね」


「相当なカリスマ性があったってことね」


 その後、2人は部屋の棚にある本を調べた。主に帳簿や簿記といった記録に関するものだった。きちんと年代順や種類別に並べられているようだった。しかしところどころ抜けている部分があったり、書類も破れていたり血などの染みがあったりボロボロになっていたりと、やはり荒らされたあとが目立っていた。


 残っている記録の最後のほうを調べていると、グードはとあることに気付いた。


「どうやら最後らへんは経営がうまくいってなかったみたいだ」


「幽霊屋敷になったことと何か関係があるのかしら」


 メイシンはそう言いながら仕事机を調べる。引き出しの中にあった大きな分厚い本を開くと、中に少し小さい冊子が入っていた。

 

「何かしら・・・?」


 開くと、最初のページの端に小さくアレキサンダー・マーティンと記されていた。


「アレキサンダー、ここの最後の領主だね」


 グードが横から覗く。

 冊子はどうやら日記のようで、途中からであるが彼の日々が綴ってあった。


" 我が1人娘のアンナも12歳となった。あの子は特に魔法の力がすごい。自分で言うのもアレだが、私はアレックス様の武としての強さと威厳を引いていると言われてきたが、あの子はアレックス様の魔力と優しさを継いだらしい。無くなってしまった妻にも見せたかった。あの子は集落の者たちとの仲も良い。きっと素晴らしい領主になるだろう"


 その後の日記は娘のことだけではなく、仕事のことや自分のことなどの日常を3日〜5日に1度、まとめて書かれていた。


 しかし、最初の日記から2年ほど経ったときから様子がおかしくなっていった。


"また、家畜が襲われた。ここ最近、何者かによる被害が多くなっている。人々は不安を抱いているようだ。どうにかせねば"


"とうとう犠牲者が出てしまった。雇った戦士たちも戻ってこない。元々我々一族は魔物の脅威から救ったことで信頼を得た。このままではその信頼を失ってしまう。アンナに引き継ぐ前にどうにかしなくては"


"領民たちはもう限界に近い。だから明日、森へ行って魔物の討伐する。これまでの被害の状況からほぼ目星はついている。ただアンナはまだ14歳、まだここを継がせるのは早い。必ず戻らねば。

 アレックス様、私に勇気と力をください・・・"


 

 日記はここで終わっている。


「なるほどね、アレキサンドロスは森に魔物を倒しに行った。そして恐らく・・・」


 メイシンが言いかけたそのとき、2人の背後から囁くような声が聞こえた。


"オマエカ"


読んでいただきありがとうございます

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