その35 骨がいっぱい
グードたちと別れたあと、バスターとパワードは1階の探索を行なっていた。
「おいパワード! こっち来てみろよ!」
バスターは遊園地に来たかのようなはしゃぎようだ。彼はこの屋敷から出られないと言う現状を忘れているのだろうか。そして彼と行動を共にしているパワードは保護者のように振り回されている。
「おい、もう少し慎重に行けよ。何がいるか分からないんだぞ」
パワードはメイシンから貰った紙を握りしめ、彼を追いかけるように部屋へと入る。ドアを通ればそこはなにやら少し狭い部屋だった。壁には2段の棚があり、たくさんのカゴが並べられている。さらに端には壁が木材や石材の代わりに鏡が貼られている部分もあった。だが、バスターの姿は無い。
「パワード早くこっち来いよ!」
バスターの声はさらに奥の部屋から聞こえてきた。パワードは通路を通り抜ける。
「うお、なんだここは・・・」
パワードの視界にはとてつもなく広い空間が広がっていた。白い大理石調の床、壁、天井でさえもそうだった。部屋はパワードがジャンプしても届かないくらい高い。そして見渡すと大人が10人ほど入れるような円形の風呂が3つもある。
「すげーよなここ!」
目の前ではバスターが手をお風呂の中に入れていた。
「お湯が出ているのか?」
お風呂を覗くと綺麗な水がしっかりと張っている。
「いや、ただの水だ」
バスターは入ろうと思ったのか、少し残念そうだ。
「流石金持ちって感じだな」
このとき、パワードは疑問を抱いていた。屋敷があまりにも綺麗すぎる。前の住人が綺麗好きだったのではないかと依頼人のローデラは言っていたが、この風呂場を見る限り毎日誰かが掃除をしているとしか思えない。そのくらい綺麗にされていた。
だが、ここには特に何も見当たらない。紙もほとんど反応しなかった。
「ここには何もないみたいだ、出るぞ」
そう言うとパワードはバスターを連れてエントランスへと戻った。
「よーし、次はあそこ行こうぜ!」
バスターは今度は玄関からまっすぐいったところにある両開きのドアの方へと進む。
「おい、待て!」
またしてもパワードを置いて先に入っていく。バスターだけまるで物件の内見をしているかのようだった。
「うおぉぉぉぁ!」
突然、ドアの向こうからバスターの叫び声が聞こえた。急いでパワードも後を追ってドアを開けた。
「どうし・・・な、なんだよこれ」
パワードは目の前の光景に愕然とした。食堂と思われる横に長い部屋だ。流石金持ちの家といったところだろう。しかし、彼らが驚いたのはそこではなかった。
部屋の中に人間の骨が並べられていたのだ。数名だけではあるが、まるで展示されているかのように一人一人綺麗に並べられている。
「なんで家の中に骨が置いてあるんだ!?」
「しかもこんな綺麗に並べられてる、誰がやったんだ?」
2人は顔から汗が流れる。よく見ると骨にはヒビが入っていたり、酷いものだと砕けていたりしているのがほとんどだった。
「こいつらが幽霊かよ!? どうするよ!?」
バスターはビビりまくっている。だが、パワードは至って冷静だった。彼は紙を取り出す。色は何やらうっすらと変化しているようにも見える。
「うーん、これどう判断すれば良いんだ? くそっ、ちゃんとメイシンに聞いとくべきだった・・・ バスター、これどう思う?」
顔を上げたが、さっきまでそこにいたはずバスターの姿が無くなっていた。
「おい、どうした? まさか・・・」
ふと部屋の端に目をやると、ドアが開いているのが見えた。
何かあったのではないか、そんな嫌な予感をパワードは感じドアに向かって走り出した。そして勢いよく隣の部屋へと入る。
「おい、どこだ!?」
パワードが入った先はキッチンのようだったが、ここだけなぜか荒らされていた。暗い中、必死にバスターを探す。窯の中、机の下、樽の中、どこを探しても見つからない。
「おーい、こっちこっち!」
突然、バスターの声が聞こえた。しかし、周りを見渡しても、姿が見当たらない。
「こっちだよ、下!」
また聞こえた。パワードは声が聞こえた方向に行く。すると暗くて見えてなかったが、開いている床があり、下へと続く階段があるのが見えた。
階段を下っていくと、石の壁と床と天井に囲まれた大部屋へと出た。暗いがただ広いだけで、特に何も見当たらない。
「依頼人が言ってた地下室だぜ!」
バスターが嬉しそうにしていた。手にはメイシンから貰ったのとは明らかに違う紙を持っている。
「何持ってるんだ?」
「これか? なんかキッチンのとこのドアに貼られてた」
バスターがひらひらと紙を揺らす。だが暗くてパワードにはよく見えない。困ったと思い、壁を伝っていくと、松明がかけられていた。
「ちょっと灯りをつけるか・・・」
パワードとバスターは壁を伝いながら、かけてある松明すべてに火をつけることにした。
ひとつひとつ灯す毎に部屋が明るくなる。半分くらい終えたとき、バスターは部屋の端に大きな姿鏡が置いてあるのに気づいた。
「なんだこれ?」
「依頼人が言っていたな、地下室に鏡があるって」
パワードは鏡を見る。しかし、曇っているのかはっきり自分の姿が映らない。
「もう何年も使ってないんだろう、汚いな・・・」
そんなこと言いながら鏡をこするパワード。
バスターは壁を伝って次の松明に火をつけようとしたとき、彼の足に何かが当たった。
「なんだ?・・・うおっ!」
足元を見ると、人の骸が壁にもたれかかるように置いてあった。
「ここにもあるのかよ・・・」
見ると少し子供のような大きさだった。骨の手の部分が光った。
「金貨・・・?」
バスターがよく見ると、確かに金貨だった。思わず骨の手から取り出す。
「・・・・・・!」
「まぁ、取り敢えず部屋全体を明るくしてからでいいか」
パワードが進んでいくと、何かにぶつかる。
下を見ると、バスターが倒れていた。
「おい、どうした・・・?」
起こそうとしても全く反応がない。彼の手には金貨が握られていた。
「金貨・・・?」
パワードはバスターの手から金貨を取る。その時、パワードは何か直感的に嫌な予感がした。
咄嗟にメイシンから貰った紙を見る。すると今度ははっきりと紙が焦げたように真っ黒になっていた。
「まさか・・・」
何か気配を感じたパワードは顔を上げる。次の瞬間、彼は恐怖を覚えた。
青白く、若い女性の幽霊が彼の目の前に現れたのである。そして幽霊はパワードの目を覗き込むと、パワードは意識を失い倒れ込んだ。
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