708手間
くるりと踵を返そうとしてふと思い立ちくるりとまた振り返り、結果その場で一回転して倒れ伏す小角鬼どもの下へと向かう。
「はて、小角鬼の討伐を示す部位は何処じゃったかのぉ。いや、そもそもそんなのあったかのお、というか冒険者やらの寄り合い所帯のようなモノはこの国にあるのかえ?」
歳は取りたくないのぉなどと呟きつつ腕を組んで首を傾げる。手ぶらで帰ったところでフレデリックならばワシが倒したと言えば信じるだろうが、それでもやはり証拠と言うのは持ち帰った方が良い。
町の者からすれば不安の種があるのならばそれ以上の安心欲しいはず、集落と言える規模の小角鬼の巣が町の近くとまではいかずとも在り、ましてやそれが町の収入源である森の中に在ったのだ。言葉だけで、はいそうですかと納得は出来ないだろう。
「とりあえず角と魔石を幾ばくか回収しておくかの」
ならば善は急げと次々に刀で小角鬼の角を切り落としては腕輪から取り出した袋の中に放り込み、狐火で小角鬼の体だけを焼き残った魔石を拾い上げそれも取り出した別の袋の中へと入れてゆく。
十匹分の角と魔石を手に入れた所で袋の口を閉じ腕輪に収納して、今度こそ踵を返し子オオカミの待つ花畑へと行きよりも速く走り戻る。
ほどなくして花畑へとたどり着くと遊ぶのに飽きたのか子オオカミの姿はそこには無かった、しかし子オオカミの気配自体はあるので花畑には居るのだろう。
もしや寂しくて一人震えてるのかとはっとして子オオカミの気配を急いで辿る、ワシから見て灯篭の影となって見えない場所から子オオカミの気配は漂っており、悪い事をしたと若干しょんぼりしつつ灯篭の裏へと回り込み子オオカミを見つけると思わず目尻を下げる。
「よく寝ておるのぉ……」
一先ず泣きはらしているという事も無く、ほっと胸をなでおろし子オオカミの様子がよく見えるようその場にしゃがみ込む。
子オオカミはお腹を晒し、足をかわいらしく折りたたんで寝ておりどう見ても泣き疲れて寝たような状態ではない、むしろ遊び疲れ安心しきったようにしか見えない。
確かにここは灯篭から噴き出すマナのおかげで動物たちにとっては安心できる空間なのだろうが、それにしたってこのお腹丸出しの、野生を一体どこに捨ててきたというような寝姿はどうなのだろうか。
「寂しくて震えておるよりはましかの……」
何か美味しいモノを食べてる夢でも見てるのかだらしなく口を開けてる子オオカミのお腹を軽く撫で、起こさないようにそっと赤子を抱くようにして抱え、ゆっくりと町へと戻るのだった……。




