706手間
腕輪から刀を取り出し森の中を風よりも早く駆け抜ける。
小角鬼の巣の位置は先に倒した十匹のマナの気配と同じモノを探り大体把握した。それに道中最初に倒した十匹ほどの大所帯ではないが、三匹ほどの組になっている小角鬼が点々といるのでワシが向かっている方でほぼ間違いないはずだ。
「ふむ、それにしても数が多いの。もしかしたら巣分かれの時期なのかもしれんのぉ」
またも道中に三匹組の小角鬼が現れ、すれ違いざまに一閃、三匹の小角鬼の首と胴体が泣き別れになるのを見送ることなく先へと進む。
先ほどから鎧袖一触を繰り返して、先の十匹を除いたとしても、もうニ十匹以上の小角鬼は屠っている。しかも出会う小角鬼は皆やせ細っておらずしっかりと肥え太ってるとまではいかずとも、奴らの栄養状態がよい事が傍目にもわかる。
豊かな森ゆえに奴らの生活をも支えてしまっているのだろう、管理人曰く灯篭の花畑より手前であれば魔物を討伐するが、それより奥であれば手前に出てこないよう追い返すだけで済ませているらしい。
この森はそれなりに広く半分、いや三分の一でも猟場とするには十分すぎるほど、ならば危険を冒してまで魔物を討滅するよりもある程度までにとどめた方が安全で手間もかからない、今回はそれが裏目に出たのだろうが……。
「何にせよ運のよい事じゃ。ワシがおるのじゃから、のっ!」
スパッと足を止めることなくまた新たな小角鬼のグループの首を飛ばしながら奥へと進むと木々の隙間から開けた場所が見え始めたので地面を蹴り、木の上へと跳びそこから開けた場所を眺める。
「ほう、これは意外にも立派なもんじゃな」
無作為に切り広げた為か歪な円形の、その広場の中には複数の掘っ立て小屋と百匹を超える小角鬼の群れ。寝転がったり棍棒を適当に振り回していたり何かを貪っていたりと呑気に過ごしていることから、ワシの襲撃には気付いていないのだろう。
「しかし掘っ立て小屋が厄介じゃのぉ、中に誰かが囚われておるとも限らんしの」
ここに居る小角鬼を全滅させるのは簡単だ。狐火で豪快に燃やすか刀で一刀両断すればいい。しかしそうなれば確実に掘っ立て小屋も巻き込むわけで……。
「仕方ない、小屋を一軒一軒まわるしかないの」
掘っ立て小屋はほぼ一か所にまとまって在るとはいえニ十ほどもある、あれを全部見るのは億劫だなぁとため息をつきつつ木々よりも高く跳びあがるのだった……。




