701手間
二日続けてのデイワズ前伯爵のコテージでの歓待、昨日と違うのは同じテーブルにフレデリックが座っているのと同じ食堂に、ワシの子オオカミが居ることだろうか。
デイワズ前伯爵はフレデリックの、と言うよりも近衛騎士のファンであり本人から話を聞きたいがために食事の席に呼ぶ、その為にワシへの阿りとして子オオカミの同席を許したのだろう。
わざわざそんな事をしなくても話がしたいと言うのであれば二つ返事で許可をしたというに、だがそのおかげでかふかふと美味しそうに円いグラタン皿のように、厚くしっかりとしたお皿に入ったお肉にミルクをかけたモノを食べてる子オオカミが見れたのだからワシに文句などあるはずがない。
「ほうほう、フレデリック殿も準騎士時代にはあの砦に」
「デイワズ様のお話を聞く限り、今も昔も何も変わって無いようですね」
「えぇえぇ、新人が叩きこまれる砦の中でも殊に厳しい事で有名でしたからなぁ、お蔭で早々に騎士の道を諦めることになってしまいましたよ」
フレデリックとデイワズ前伯爵は準騎士、正式に騎士へと任命される前のいわゆる新人やら見習いといった段で放り込まれるブートキャンプ的なモノの話題で盛り上がっている。
話を聞く限り二人はどうやら時期は全く違うものの同じブートキャンプに叩き込まれたようで、当然上官などは変わっているのだが厳しさだけは変わらなかったようで、愚痴とも思い出話ともつかぬ話に花を咲かせている。デイワズ前伯爵はそこであまりの厳しさに、騎士の道を諦めこそすれ狩りの面白さに目覚めたらしい。
そんな二人を生温かい目で見つつワシは饗された食事を楽しむ、本日のメニューは鹿肉のローストを薄く切ったものに、ホースラディッシュの様なピリリとした辛みが特徴的な見た目は水菜な野菜と赤みが強いマスタードをそえたもの。
鹿肉で水菜をくるくると巻きそこにマスタードを付けてぱくりと口に含めば、やわらかい鹿肉と水菜のシャキシャキとした食感、鹿肉の淡白で癖の無い味を水菜とマスタードの辛みが引き立てる。そして口の中に残った油を果実酒で洗い流しと言うのを繰り返し楽しみ合間にちらりとフレデリックを見れば、今度は砦のどこそこに付いてた傷がどうのこうのなどと盛り上がっている。
共通の話題だということもあるが、まるで青春の全てがそこに詰まってるとばかりの二人の勢いに、アレは長くなるなとグラスに残る果実酒をぐびりと飲み干すのだった……。




