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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3635/3638

3612手間

 ドワーフたちは折角だし旨いものを用意するからと、調整された日程を確認してから港町へと戻ったためか、特に問題も延期などもなく視察を行う日程となった。

 港町へと向かう道中で馬車の中から塔の様子を見てみたが、なかなかに盛況なようで塔の前にはいくつもの天幕などが張られており、ちょっとした集落の様相を呈していた。

 

「道中でも行き来する傭兵、いや、冒険者たちを見たし魔石の供給は問題なさそうだね」


「とはいえ、刃傷沙汰こそ怒ってはおらぬが、獲物を巡って喧嘩などは多いようじゃな」


 道中で通りすがるだけとはいえ見ることを決めたので、ギルドから上がって来た報告などを見たのだが、塔内での獲物の取り合いなどで喧嘩が日常茶飯事となっているらしい。

 しかし、名を変えたとはいえ傭兵は傭兵、そういったことは元々当たり前の事であり、刃傷沙汰になってないだけかなり治安は良いとギルド側は思っているようではあるが。

 そしてそういった血の気の多い者たちが仕事を求めてこの場へ集まったこともあり、他の領では傭兵くずれの者たちによる治安低下が改善されているという報告も文官から貰っている。


「しかし、獲物が足りないというのはどうしようもないんじゃないか?」


「普通はのぉ、じゃがここまで人が集まっておるならば獲物を増やしても良かろう」


 普通は狩りを続けている場所で獲物が増えるなんてことはまずなく、人が増えれば狩れる獲物が減るのは当然の事なので、わざわざ子細に渡って報告するような事でもないと今までワシの所まで話がやってこなかったのだろう。

 しかし、この塔はいわば巨大な魔導具で、そしてその狩り場はワシの制御下にある。

 ならば獲物を増やすのもワシの思うまま、今までは魔物が溢れることを懸念していたが、この人数で狩っているのならば問題ないだろう。


「だがあの中には流石に入っていくのは、色々と問題になるんじゃないかい」


「別に中に入る必要は無いからの、馬車はこのまま進めてよい」


「どうするつもりだい」


「なに、ちょっと手を加えるだけじゃよ」


 そう言ってワシは塔から死角になっている側の扉を開け、一度道へと飛び降りると、そのまま即座に塔の頂上へと飛び移る。

 かなりの数の冒険者たちが珍しい馬車を見ていたようだが、気配を断って動くワシを見れた者はいないだろう。

 そう思って頂上へと飛び移る直前に下を見てみたが、何かを探すように周囲を探っている者がおり、なかなかに勘や目の良さを併せ持った者がいるのだろうと口の端を上げる。

 

「ま、こちらを見ておらぬところを見るに、まだまだじゃがの」


 独り言ちた後にワシは塔の屋根へと手を付けると集中して塔の制御を司っている部分を探り、傭兵たちが活動している階層に出現する魔物の数を増やす。

 とはいえすぐに増加する訳ではないので、いきなり魔物の数が増えて彼らに被害がということもないはずだ。

 これで獲物が増えたことで取り合いによる喧嘩は減り、冒険者たちは魔石による収入が増え、ワシらは魔石の供給がさらに安定すると正に三方よしであろう。

 何にせよ今はこれ以上ここに居る意味はないと、今度は塔の頂上から馬車の近くへと飛び降りて、何事も無かったかのように車内へと戻るのだった……

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